2024年10月13日
「三輪」御礼

九皐会「三輪」、無事に終了いたしました。
シテが神楽という舞を舞う能は三番あります。
「三輪」「龍田」「巻絹」です。(「葛城」も「大和舞」という小書が付くと神楽の替えの舞を舞う)
その中で、「三輪」は特別な扱いです。
神楽を舞う能の中では、一番難しい能です。
小書も多く、中でも観世宗家のみ演じることが出来る「誓納(せいのう)」や、誓納に代わるものとして片山家が作った「白式神神楽」などは、特別な習いとして別格に扱われます。
能「三輪」は、以前稽古能で演じたことはあります。
また、「深川八幡祭 能奉納」で後場のみ演じたこともあります。
厄年の年回りに「三輪」を演じると良いと聞いていたので、42歳の時に富岡八幡宮の境内というこの上ない場所で「三輪」を演じました。
お客様の前で一番全て演じるのは、今回が初めてです。
ただ、稽古能や後場だけでも演じたことのある能は、初演のものより心に余裕があります。
今回は、落ち着いて演じられたように思います。
前場は、訳ありげな里の女。
謎めいた感じで演じてみました。

能面は、白曲見(しろしゃくみ)
白っぽい顔立ちで、ミステリアスな雰囲気の顔立ちです。
中入は、舞台上の作り物の中で装束を替えます。
普通の能では、楽屋で行います。
楽屋で前場の装束を脱ぐと、ほんのひと時ですがホッとします。
広い空間でゆったり装束を替えるので、気持ちが切り替えられます。
「三輪」は、半間(90㎝)四方の狭い空間で無言での着替えです。
もっとも、実際に装束を着けるのは後見の仕事ですので、私は積極的には動きません。
ただ、狭い空間なのでなるべく後見が仕事をしやすいように体を動かしたり装束を自分で抑えたりと、気が休まりません。
何より、能舞台のピンっと張り詰めた空気感をもろに身体に感じます。
舞台上で装束を替える能は、疲労感が半端ないです。
後は、三輪明神。
神様の凛とした舞です。

神楽を舞った後、「天の岩戸隠れ」の神話を見せます。
これは、三輪と伊勢の神は同一体という言い伝えに応じた演出です。
去年能「絵馬」にて、伊勢の神様、つまり天照大神(あまてらすおおみかみ)を演じているのも奇遇な縁です。
三輪明神の中に、日本総氏神の天照大神を重ねて舞いました。

装束は、普通は紫の長絹(ちょうけん)という上着を羽織るのですが、今回は白の長絹を選びました。
神々しい感じになりました。
長絹が白だったので、烏帽子は金色の風折烏帽子を選びました。
本来は黒の風折烏帽子なのですが、師匠に特別にお許しをいただいて、本来は小書(特殊演出)の出で立ちである、白の長絹と金風折烏帽子を着けさせていただきました。
まさに御神体という恰好です。
気持ちよく舞うことが出来ました。
写真 駒井壮介
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kuwata_takashi at 23:00│Comments(0)│