2024年12月04日
緑泉会「源氏供養」
今年は大河ドラマ「光る君へ」の影響で、紫式部と源氏物語がブームとなっています。様々なところで関連した講座や書物を目にします。世界最古の長編小説である源氏物語と、その作者の紫式部は、日本はもとより世界的にも有名です。
能「源氏供養」のシテはその紫式部です。紫式部自らが源氏物語を語り、登場人物の光源氏の弔いをするという面白い趣向の能です。
紫式部は、うそ偽りの物語で人々を惑わせた罪(狂言綺語)によって死後成仏できずに苦しんでいるという言い伝えが平安時代末期からありました。その紫式部を救うために行われた法要が源氏供養であり、そこで読まれたのが、「源氏物語表白」という法要文です。この法要文は、源氏物語の54の巻名を全て織り込んで、仏の教えを巧みに説いています。
能「源氏供養」は、その法要を能の形にしたものです。特にクセという段落では、「源氏物語表白」をそのまま取り入れた美しい詞章と巧みな節付けの謡にのせて、紫式部が華麗に舞を舞います。
「空蝉」「夕顔」「若紫」「末摘花」「花散里」「明石」「玉鬘」「浮舟」など、源氏物語に出て来る数々のヒロインたちの名前が次々登場するクセの詞章は、源氏物語の総集編を見ているかの如く、優雅な気分に浸ることが出来ます。
紫式部は、小説を書き和歌を詠み漢学の才もあり、また琵琶も嗜んだと言われています。ただでさえ世界的に有名な才媛なのですが、能はさらに舞の名手という設定を加えています。
平安時代の宮中絵巻の雰囲気に浸りながら、紫式部の優雅な舞をじっくり楽しむのがこの能の見どころです。
源氏物語と平安文化が話題となった今年の締めくくりに、華やいだ気分で「源氏供養」を演じたいと思います。