2023年08月31日
緑泉会「絵馬」
9月18日(月祝)に緑泉会にて、能「絵馬」を演じます。この能の見どころを紹介致します。
能「絵馬」は、賑やかな能です。
まず前場は、伊勢神宮にて新年の天気の祈願のため、白い馬(晴れの象徴)の絵馬を持った老人(シテ)と、黒い馬(雨の象徴)の絵馬を持った姥(ツレ)が言い争います。互いに和歌や故事などを引いてどちらの絵馬をかけるべきか争いますが、結局両方の絵馬をかけることします。
この双方良しのめでたい結末が、祝言性を大事にする能らしい演出です。この辺りの老人と姥のやり取りは、心がほっこりします。
後場は大スペクタクル能です。伊勢神宮のご祭神の天照大神(あまてらすおおみかみ)の有名な神話「天の岩戸隠れ」を再現します。
悪い神様を懲らしめるため、天照大神は洞穴に隠れ、岩の戸を閉じて引きこもってしまいます。太陽の神様である天照大神が隠れたことで、この世は闇となりました。八百万の神々は、天照大神に岩戸を開けさせようと、岩戸の前で楽しく舞い戯れると天照大神は面白そうだなと思って岩戸を少し開けます。その隙間に天照大神を引きずり出し、世の中は再び光がさしてくる・・・ というのが「天の岩戸隠れ」神話です。
この有名な神話を、能「絵馬」では壮大なスケールで描きます。
まず天照大神(シテ)が神様の威厳を見せ神々しく舞った後、「天の岩戸」を表す作り物の中に入って、本当に姿を消してしまいます。
困った神々のうち、まず天鈿女命(あめのうずめのみこと)が「神楽」という独特の軽快なリズムの舞を、手力雄命(たじからおのみこと)が「神舞」という力強い舞を舞います。この神舞は、極めて速く演奏され躍動的な舞を見せます。
この静から動への二つの舞を面白く思い、天照大神は作り物の戸を少し開けます。そこへ手力雄命が猛突し、作り物の中からシテの天照大神を引きずり出してしまいます。
このように「絵馬」は、天照大神・天鈿女命・手力雄命の三つの舞が楽しめ、さらに作り物に引きこもっているシテを強引に引きずり出す様など、見た目に鮮やかで、爽快な能です。
天照大神という日本随一の神様を、凛々しく演じたいと思います。
この公演では能「絵馬」の他、舞囃子「熊野」、狂言「狐塚」、仕舞など見どころ満載です。
舞囃子「熊野」は本来、杉澤陽子師が舞う予定でした。しかし杉澤師は2月に急逝したため追善の意を込め、緑泉会の会主・津村禮次郎師が舞います。
チケットご希望の方は、私までご一報下さいませ。ご用意させて頂きます。