2023年05月19日
桑田貴志 能まつり「松風」
自身の芸の研鑚のため立ち上げた「桑田貴志 能まつり」。第13回公演は、能「松風」に挑戦します。
日本の舞台芸術文化が集まる銀座にある能楽の殿堂・観世能楽堂にて、今年も開催できることを嬉しく思います。
俗に、「熊野、松風に米の飯」と言われます。何度見ても面白い能「熊野」「松風」を、どんなお惣菜にも合い、飽きが来ないおコメに例えた言葉です。また、「謡三井寺、能松風」という言葉もあります。この様に様々な言葉で語られるほど、「松風」は能を代表する屈指の名曲・人気曲と言われています。
この能を一言でいうと、9世紀から1200年続くラブストーリーです。
花の都の貴公子・在原行平を、須磨の浦で待ち続ける松風とのロマンティックな恋愛は、時を超え永遠に続いています。その悠久の恋物語が、能「松風」では美しく描かれています。
前半、旅の僧の前に若い海女の姉妹が現れ、汐を汲む所作を見せます。この段落は、後に歌舞伎や日本舞踊の「汐汲(しおくみ)」など様々な芸能に取り入れられるほど、よく出来た名場面です。うっとりするような流麗な節遣い、気高い文言の美しい詞章は、実に見事です。
この段落をキチンと演じられるかが、能「松風」のキモだと思います。気持ちを込めて演じたいと思います。
能の中程で、旅の僧に在原行平との恋を語るうちに、松風は恋慕の念が押し寄せてきます。そして、行平の形見の烏帽子と舞装束を取り出して、情感的に抱きしめたかと思うと、やがてそれを身にまとって狂おしく舞います。この舞が後半の見せ場です。
男性の衣装を着て舞うということは、男装の舞です。能には日本の芸能には、白拍子舞など男装の舞というジャンルはたくさんあります。現代でも宝塚歌劇団にそのスタイルは受け継がれています。
男性である私が、女性の松風を演じる。そしてその松風は男装の舞を舞う。この二重の変身によって作り出される艶やかな雰囲気が、この能の最大の見せ場です。
この舞は、「イロエ掛り中ノ舞」「キリ」「破ノ舞」と次から次へと続きます。囃子との兼ね合いも難しく、能楽師としての力量が試されるところです。自分の技芸を余すところなく出し切りたいです。
仕舞は、観世喜之師の「井筒」と観世喜正師の「船橋」です。どちらも恋物語を描いた舞です。
「井筒」は在原業平を思う紀有常の娘の懐旧の舞です。幼馴染が結ばれる純愛物語となっています。「船橋」は、親に反対されたことによって非業の死を遂げた男女の情熱的な舞。能版「ロミオとジュリエット」です。
狂言は、TVや映画など多方面で活躍されている人気狂言師・野村萬斎師にお願いしました。「文荷」は、恋文(ラブレター)を巡るやり取りが見せ場となっています。野村萬斎師の華麗で洒脱な芸を、お楽しみ下さい。
チケットは、私の公式ホームページの申込みフォームまたはメールからお申込みください。
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