2023年03月08日
2023シンガポール第2便 4
3月15日の発表会を迎えて、稽古も熱を帯びてきました。
例年は「邯鄲」と「紅葉狩」の2つの能を上演しますが、今回は人数が多いのでもう1曲「竹生島」を加えました。
能が3曲になり、教える方は大変です。
ただ、能に懸命に取り組む学生たちの姿を見ると、その苦労は吹き飛びます。
日本語が全く分からない外国人が、能の舞台の成功にむけて一生懸命に稽古をしている姿を見ると、胸が熱くなります。
わりに動きが多くてストーリーがはっきりしている「邯鄲」と「紅葉狩」に比べて、「竹生島」は能らしい能です。
後場は、天女の美しい舞と龍神の力強い舞を楽しむ内容ですが、前場は地味な内容です。
「舟に乗って、竹生島に渡って、ワキを竹生島明神に案内して自分たちの正体を明かす」
これだけです。動きもそんなにありません。
始めは、動きと舞の多い後場を中心に上演しようと思いましたが、学生たちに稽古をしているうちに考えが変わりました。
彼らは、役者であり身体能力は抜群です。能の仕舞などもすぐに覚えてしまします。
また、上級生はアジアの色んな古典演劇を既に学んでいます。京劇などとても激しい動きだったそうです。
「そういった学生たちは、むしろ止まっている演技を教えた方が良いのではないだろうか」
世阿弥は能の演技を「せぬところが美しき」と言いました。
何もせずに止まっているところが美しくなければ能は成り立ちません。
自分を殺して、ずっと立っている。またはずっと座っている。
これこそが、能らしいと言えます。
せっかくだからこういう能らしさを、しっかり学んでほしいと思い、「竹生島」の前場もしっかりやらせることにしました。
さあ、あと一週間で発表会です。