矢来餅緑泉会「天鼓 弄鼓之舞」ご案内

2022年10月09日

「班女」御礼

309994671_485091250249121_5246999368968215530_n

観世九皐会「班女」、無事終わりました。

6月の終わりに鼠径ヘルニアの手術をして3か月程たちます。
その間、なかなか体力が戻らない日々でした。

能面との能装束を付けて一曲の能を演じるのはかなりの体力を要します。
今回の舞台は体力面で不安でした。
特に後半はクセから中の舞、舞アトと舞が続きます。どうなるか心配でした。

しかし、それは杞憂でした。身体がとてもスムーズに動きます。
夏の間にしっかり休養を取ったのが良かったようです。


「班女」は、好きな能です。いつか演じたいとずっと思っていました。

この能は、若い男女の恋物語です。しかも現在物ですので、とても馴染みやすい物語です。
私は恋する乙女の花子(はなご)を演じます。
私はもう50歳を超えたオジサンなのですが、この歳で恋する乙女を演じることが出来るのが能の素晴らしさです。

もちろん、恋する乙女の気持ちは分かりません。しかし能は、役になりきって演じてはいけないと言われているので、50歳のオジサンでも問題なく演じることが出来ます。

考えてみれば今年は、4月に「須磨源氏」で絶世の美男子・光源氏を演じ、6月に「葵上」で皇太子妃という高貴で気品のある女性・六条御息所を演じ、10月は、恋する乙女。
かなり尖がったキャラクターを演じている気がします。


装束は、色目の派手なものを選びました。
308272771_555422066583495_3807388026887761265_n

通常は、赤と白の段模様の唐織を着るのですが、あえて赤と浅黄の段模様の唐織を着ました。
狂女物としての物狂いの様を、派手目な色合いで表現しようと考えました。

後場は、右肩袖を脱いで登場します。
308177815_880727712895050_4739464205891886101_n

これは狂女物の決まりです。片袖脱いだ格好が、いかにも狂乱した感じです。

狂女物は、鬘物の女性より強く演じることになっております。
乱暴にならないように、声を張り上げて演じました。

この辺りの具合がなかなか難しいところです。
申合では、慎重に謡いすぎたきらいがあったので、当日は思い切って声をハリました。
ちょっと強いかな、くらいの謡がちょうど良いみたいです。

ただ、あくまでも恋する乙女であることは忘れません。
特に肩身の扇の扱いには最新の注意を払いました。

この女性にとって、恋する人とのつながりはこの扇だけですので、それはそれは大事に思っていたことでしょう。
最後、ワキツレに扇を見せるよう求められますが、シテは扇を胸元に隠します。
ここは、型付け上は胸元に扇を入れるだけなのですが、ちょっとした小芝居をしました。
胸元に入れた後、下の写真のように扇を抱きしめるような所作をさり気なく入れてみました。
ちょっとした工夫なのですが、効果的であったように思います。

305066023_836380407802048_434968489946786953_n (2)


この「班女」という能は、三部作と言われます。
能「班女」、狂言「花子」、能「隅田川」です。
いずれも花子と吉田の少将の物語です。

「班女」は、2人の出会いを描いた能。
「花子」は、2人の夫婦生活を描いた狂言。
そして「隅田川」は、吉田の少将に先立たれた花子が、生き別れた子供を捜す物語。

現代でも、ヒットしたドラマや映画は、その後の続編が作られたりします。
例えば、今話題の「トップガン」など良い例です。

それくらい、この「班女」という能は人気を集めたのでしょう。
今回演じてみて、よく出来た能だなあとしみじみ感じました。
今まで以上に「班女」が好きになりました。


kuwata_takashi at 22:26│Comments(0)

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
矢来餅緑泉会「天鼓 弄鼓之舞」ご案内