2022年07月18日
入院から・・ 経過良好
先日の「葵上」の舞台報告でお知らせいたしましたが、入院しておりました。
鼠径(そけい)ヘルニアを患いました。いわゆる脱腸です。
この病気は、子供のころか50過ぎの年齢でなる人が多いそうです。
下腹部の足の付け根あたりを鼠径(そけい)部と言いますが、そこは腹膜が薄いそうです。
鼠径部に穴が開いて、腸や大網などの臓器が出てくる病気だそうです。
子供のころになる場合は、先天的なものがほとんどだそうです。
大人になってなる人は、加齢により腹膜が薄くなってなることが多いそうです。
力仕事や立ち仕事など下腹部に力を入れる仕事をしている人がなりやすいようです。
まあ、能楽師は常に下腹部に力を入れて謡っておりますので、なりやすい職業かもしれません。現に、聞くと鼠径ヘルニアを患っている能楽師はそこそこいるようです。
とにかく、ここひと月ほど、ぼんやりとした痛みがずっと続いておりました。6月16日にどうにも激しく痛むので、慌てて病院を予約しました。
6月26日に主催公演「能まつり」を控えておりましたので、その前に憂いをなくそうと思って受診しました。
そこで鼠径ヘルニアであることがわかりました。
この病気は治療や投薬では治りませんが、手術をすればすぐ直るそうです。
外科手術ではもっともポピュラーな手術で、年間15万件から20万件も手術が行われているそうです。
まあ、そう言われると、安心です。主催公演の前にお腹を切るのは怖いので、その翌日から入院手術をすることにしました。
とにかく「能まつり」までは安静にして、身体を休めて「葵上」に臨みました。
主催公演の翌日から5日間の入院です。その際、一番ドキドキしたのはPCR検査です。
入院患者は、入院の72時間以内にPCR検査をしなければなりません。
私の場合、土日を挟むので金曜日に受けなければなりません。
「あの~、PCR検査が陽性だったらどうなりますか?」
「入院は延期となります」
いや、入院が延期になるのは良いのですが、金曜日の段階でPCR検査陽性だと、日曜日の主催公演に出演することは出来ません。そうなるとどうなるのだろう。
チケットはかなり売れておりますので中止には出来ません。座長公演なのに、代役を立てなければならなかったでしょうね。
もちろん、感染対策は気にし過ぎなほど行っております。外での会食もここ2年半ほど行っていません。
でも、第7波と言われる昨今の感染状況では、どこで感染してもおかしくありません。
金曜日は、午前中に主催公演の申合を行って、午後にPCR検査でした。
PCR検査は今まで何度も行っておりますが、一番緊張する検査でした。
まあ、緊張したところで検査結果は変わりません。無事に陰性判定でホッとしました。
さあ、病院に行き手続きをして入院です。初日は手術前日ということで、昼から何も食べず、下剤と浣腸で胃と腸を空にします。この日はのんびりとしたものでした。
二日目に手術です。人生で3度目の手術です。
1度目は小学校4年生の時に左手骨折。2度目は高校2年生の時の盲腸です。
鼠径ヘルニアの手術は全身麻酔です。手術時間は3時間ほどだったそうですが、あっという間でした。
麻酔で寝ている間に、あっさり終わっていました。
直後はは麻酔も効いているので、痛みはありません。
麻酔が切れてくる夜からが大変でした。
その日は傷口が開くといけないので、寝返りも禁止です。
でも、一日中ベットに仰向けに寝ていると、腰と背中が痛くてたまりません。
仰向けに寝ていると、本も読めないしテレビも見れません。スマホをいじっているとすぐ手が疲れてきます。
仕方がないから、ラジオをずっと聞いていました。
最近は「radiko」というアプリで全国のラジオをスマホで聞くことが出来ます。私は、贔屓の広島カープの試合を聞くために、ずっと広島のラジオを聞いていました。
私が入院したころ、ちょうどカープにメジャーリーガーの秋山選手が加入が発表されました。
広島のラジオ局では、朝から晩まで秋山選手特集をしていました。おかげでとっても詳しくなりました。
入院の前は、「手術したら動けないからのんびり過ごすぞ」なんて思っていましたが、全くのんびりできません。
まず、傷口と患部が痛い。そして酸素マスクや心電図がつながれていて、なおかつ寝返りもできないのでベットの上で身動き出来ないという辛さ。
とにかく、苦痛だったのでラジオを聞くしかありませんでした。
しかし私が入院していた期間、カープは3連敗。ラジオを聴いていても苦痛でした。
3日目の午前中に、心電図の管と酸素ボンベは外され少し自由になりました。午後には徐々に歩くことが出来るようになりましたが、手すりにつかまりながらヨチヨチ歩きです。
3日目の晩からようやく食事を食べることが出来ました。病院食はまずまずでしたが、とにかく味が薄く量が少ない。まあ、お腹もすかないので、無理やり流し込んだ感じでした。
4日目になると、痛みはかなり引いてきました。でもお腹に力が入りません。
「お腹に力を入れると痛い」のではなく、「全くお腹に力を入れることが出来ないのです」
人間って、お腹に力が入らないとかなり行動が制限されます。
歩くのはもとより、立ったり座ったりもツライ。しゃべるのも一苦労。
また、お腹が痛むので、笑うのは厳禁。せきやくしゃみをしようものなら激痛がはしる。
でも夜になると、だいぶんマシになりました。
夕食を食べても、病院食だと物足りないので、病院の隣のコンビニまでおにぎりを買いに行く元気がありました。(後で、勝手に外出しないで下さいと看護師さんに怒られてしまいました)
5日目、まだまだ痛み、日常生活はままなりませんが、退院しました。
そのあとは、一週間ほど自宅で養生しました。
徐々にできることが増えてきました。
退院から一週間後に舞台に復帰しました。
翌週7月10日の観世九皐会では、めったにないことなのですが、地謡のリーダーである地頭の大役を頂いておりました。
相変わらずお腹に力は入りませんが、精一杯謡いました。
周りの人に聞いたら、声はしっかり出ていたそうです。
「かえって変な力みがなくて良かったよ」と言ってくださる方もいました。
なんとか地頭の大役を務められ、ホッとしました。
1観世九皐会の翌日11日は、夏の稽古会である歌仙会。
今年は舞うのは辞退して、地謡に専念。地頭も二曲つとめました。
終わった後さすがにぐったり疲れました。体力はまだまだ戻りません。
先週からお弟子様のお稽古も徐々に始めております。今週からは、延期していたお稽古等がぎっちり入り、大忙しになります。ちょっと体力が心配ではあります。
ざっと、入院の様子からその後の経過まで書いてみました。
病気になると、健康な身体の有難さを痛感いたします。
これからも健康に留意して、元気よく舞台に稽古に励みます。
kuwata_takashi at 19:18│Comments(1)│
この記事へのコメント
1. Posted by 浜名輝好 2022年07月18日 20:26
今月初めの緑泉会を休演されていたので、
大変心配しておりました。
まさか入院されていたとは…
翌週の九皐会定例会でお見かけいたし、
正直ほっといたしました。
引き続きお体にご自愛くださいませ。
仕事終わりで少し到着が遅れるかもしれませんが、
来月富岡八幡宮での能奉納にもうかがいます。
大変心配しておりました。
まさか入院されていたとは…
翌週の九皐会定例会でお見かけいたし、
正直ほっといたしました。
引き続きお体にご自愛くださいませ。
仕事終わりで少し到着が遅れるかもしれませんが、
来月富岡八幡宮での能奉納にもうかがいます。