2022年02月13日
若竹能「項羽」
来る2月27日(日)に、若竹能にて能「項羽」を演じます。
若竹能とは、九皐会の若手で構成される会です。毎回テーマを決めて、メンバーで取り組みます。
今年のテーマは、「異国探訪」です。
能が大成した室町時代、日本人にとって異国とは、中国のことでした。
ヨーロッパやアメリカなどは存在すら知りませんでした。
海を渡った向こう側には、中国という進んだ国があるらしい。そして、中国のさらにずっと奥の奥に天竺という仏教が生まれた神秘的な国があるらしい。
これが、室町時代の日本人の異国観です。
室町時代の日本人で中国に行ったことある人は、ごく少数でした。ほぼすべての人にとって、想像の世界です。きっと、今の私たちが宇宙に行くようなものであったことでしょう。
能には、中国を舞台とした能がたくさんあります。現行曲200曲のうち、24番は中国が舞台、または中国にちなんだ曲です。
中国物は、大きく分けて3つに分かれます。
まず、中国の有名な人物をシテにした能。「項羽」「楊貴妃」「白楽天」などがそうです。
そして、おとぎ話やファンタジー物。現代でもファンタジー映画などは、どこかの国が舞台となって空想の物語が展開します。
酒好きの妖精が出てくる「猩々」や、獅子の舞を見せる「石橋」、鶴と亀が皇帝の長寿を祝って舞を舞う「鶴亀」、不老不死の泉を飲んだ少年が楽しく舞う「菊慈童」など、ファンタジー物は数多くあります。
最後に、日本を舞台にすると具合が悪い物語です。例えば「天鼓」は、帝が少年の鼓を取り上げて殺害するという設定です。日本を舞台にすると、「天皇陛下がそんなことをするはずがない」と批判を受けてしまいます。だから、舞台を中国にしております。
そして、唯一中国以外の異国を舞台としている能が「一角仙人」です。
この能は、一番ぶっ飛んだ設定なので、ファンタジーを超えた世界として天竺を舞台にしています。
今回の若竹能は、こういった異国物を一気にまとめてみました。
私は、古代中国の大英雄・項羽の戦いを描いた能「項羽」を演じます。
中国では項羽は、大英雄だそうです。日本でいう源義経のような存在だそうです。
中国人に、「項羽」という能があるというと大変驚かれます。
考えてみれば、例えば「源義経」という京劇があったら日本人はたいそう驚くことでしょう。(京劇のレパートリーは知りませんが、日本を舞台としたお話は、おそらく無いと思います)
中国の大英雄を豪快に演じたいと思います。
もう一番は「東方朔」です。この能は、まさにファンタジー能です。
3000年に一度咲く桃の花が咲いたので、それを持って天女が現れます。そして天女と老体の神様がめでたく一緒に舞を舞うという楽しい内容の能です。
老体の神と若い女性がシンクロして舞う展開は、面白いです。
コロナ禍において、なかなか海外旅行に行けない昨今。
能楽堂の中で、つかの間の異国情緒を味わっていただきたいと思います。
チケットご希望の方は、ご連絡ください。
kuwata_takashi at 23:12│Comments(0)│