2021年09月10日
緑泉会「鵜飼」ご案内
9月19日(日)緑泉会にて能「鵜飼」を演じます。
コロナと共に生きていかなければならない日々の中、今までとは違う行動様式が求められます。そんな時節だからこそ「今まで苦労して手にしたもの・身に付けたものを簡単に捨てたくはない」という思いは、誰の胸にもあることと思います。
能楽公演は、ありがたいことに半数の定員にての開催が認められております。能を演じられる喜びをかみしめつつ、今回の公演に誠心誠意取り組みたいと思います。
鵜飼とは、鵜という鳥を使って魚を捕る日本の伝統的な漁法で、現在は岐阜県の長良川などで行われているものが有名です。前半のシテは、その鵜飼を行う老人ですが、この老人は毎夜のように禁漁地で鵜飼を行ったため、殺されてしまいます。
一般的に能に出てくる老人は、「実は神様でした」とか「実は源義経でした」などと、有名な人物や神様や草花の精などの化身として登場します。必然的に能の老人はどこか超次元性をもって演じられます。
能という芸能は、どんなに卑賎な者にも美しさを求めます。卑しい漁師であってもその中に日本人の持つ美意識を体現しなければなりません。
美しい女性や貴公子を美しく演じるのはやり易いですが、卑賎物の中に美を醸し出すのは、難しい演技となります。
この老人は、「阿漕」「善知鳥」と違って後半に罪を許されます。その罪を許すのが、後半のシテである閻魔大王です。
閻魔大王は言うまでもなく、地獄の番人として死者を極楽へ送るか地獄へ落とすか決める者です。一般的には大柄で力強い存在として知られます。
後半、閻魔大王が法華経の利益を説教し豪快に舞を舞います。私は割に体格が大きいので、身体を活かして大振りに力強く演じたいと思います。
ワキは、安房の清澄から出て身延山がある甲斐の国に赴くところから、日蓮上人であるといわれます。結果的に日蓮上人の弔いでもって罪人が救われるところから、このワキは大変重要な役どころです。
今年は折しも、日蓮上人生誕800年ということで日蓮宗では様々なイベントが行われます。日蓮上人にも思いをはせながら、この能に取り組みたいと思います。