2018年10月13日
若山牧水記念館「秋の宵に楽しむ 能の響き」
今日は、静岡県沼津市の若山牧水記念館で「秋の宵に楽しむ 能の響き」というコンサートに出演しました。
大倉流小鼓方久田舜一郎が主催するコンサートですが、私が沼津で活動していると聞いていて、お声がけくださいました。
久田師は、大阪在住の大御所の先生です。
そういった方から出演依頼をいただいて、身に余る光栄です。
それと同時に、責任重大です。
演じた曲は、「羽衣」「三井寺」「小袖曽我」「高砂」と、わりにおなじみの曲です。
しかし、それを小鼓の大御所相手に一人で謡うのは、勝手が違います。
おなじみの曲が、どれも大変な曲となりました。
能のお囃子は、小鼓と大鼓で一対となっています。それぞれ担当する領分が違います。
主に、謡い出しのきっかけは大鼓が出すことが多いです。
小鼓だけのお相手で謡うと、どれも謡い出しのタイミングがとても難しい。
私達シテ方は、普段は小鼓と大鼓の打つ音や掛け声を、つながった音楽として耳に覚えていますが、小鼓だけだと、その音楽がどうも違うものに聞こえてきます。
例えば、「一セイ」という登場音楽では、大鼓が「シカケ」「コイ合」という手を打ったら謡い出します。
この「一セイ」の登場音楽では、謡い出しのタイミングは、ほぼ大鼓の音と掛け声を聞いています。
これが、大鼓がなく小鼓だけだと、なんとも謡い出しにくいのです。
また、太鼓が入ってくると、私達はほぼ太鼓の音しか聞いていません。
太鼓が入るパートでは、太鼓がリードするからです。
太鼓入りの謡の部分を、小鼓だけを相手に謡うのは、なかなか謡いにくいものです。
ヒヤヒヤしながら謡っていました。
コンサートは、満員のお客様にお運び頂いて、大盛況でした。
沼津は、若山牧水や井上靖、大岡信、芹沢光治良など、多くの文化人ゆかりの地です。
どことなく、街に文化の香りが漂っています。
良い雰囲気の催しでした。