2015年03月05日
2015シンガポール最終便 5
発表会から一夜明け、今日は学生たちへの評価とミーティングの日です。
昨日の頑張りを称え、10週間の能のクラスの採点をしました。
採点の後は、学生とのミーティングです。
様々な質問が出ます。
今回の学生は、質問好きの人が多く、稽古の間もいろんな事を質問してきました。
能の先生に質問できるのも、今日が最後です。
大質問大会になりました。
中には、「へええ、、、 こんなことを思っていたんだ?」
と感心する質問もあります。
様々な国の人たちと過ごしてきた10週間のことが、色々思いおこされました。
毎回、この日は切ないのです。
学生たちとお別れをしなければなりません。
ミーティングが終わると、「Tiger time」いわゆる宴会です。
昼間っから、飲みまくります。
今回の学生たちは、よく飲む連中が揃っていて、何度もこうして一緒にお酒を飲みました。
最初はおとなしく飲んでいました。
徐々に盛り上がってきます。
途中で、インド人の学生が絵の具のようなものを持ってきます。
明日は「ホーリー祭」だから前祝いだ、と言って顔に絵の具を塗り始めました。
「ホーリー祭」とは、ヒンドゥー教のお祭りです。
普段はあまりお酒を飲まないインド人も、この日は昼間から酒を飲み、見知らぬ人同士でもお互いに絵の具を塗り合って、色水を掛け合って、大騒ぎをするそうです。
お互い絵の具だらけになった後は、「ハッピー ホーリー」といって抱き合うのが習慣のようです。
黄色と赤と緑の絵の具が基本です。
黄色は尿、赤は血、緑は田畑を現すそうでして、悪魔や邪気を払い、豊作を祈念して春の訪れを祝うお祭りです。
こういう風に、色んな国のお祭りや文化や風習が同時に楽しめるのも、多民族国家シンガポールの醍醐味です。
私がいたこの2か月の間にも、普通の正月、ポンガル・フェスティバル、タイプーサム、チャイニーズニューイヤー、ホーリー祭など、インドや中国のお祭りが目白押しでした。
そうした様々なお祭りが、それぞれの住民の間で普通に祝われているのが、シンガポールの凄いところです。
アメリカ人の学生が言っていました。
「僕は、ニューヨークにも住んでいた。よくニューヨークは人種のるつぼといって、多民族社会だと言われる。確かにニューヨークをはじめアメリカには世界中からたくさんの人種の人が集まってきます。
でも、アメリカはそういう人達に全てアメリカの文化風習を押し付けて、アメリカ化させようとする。アメリカこそ一番で、それぞれの国の人達のことなんて、全く尊重しない。
シンガポールは、色んな国の人がいて、それぞれの文化風習を尊重して、共存している。
シンガポールこそが本当の多民族社会だ」
アメリカ人に、こんなことを言わせるほど、シンガポールという国は魅力的なのです。
さて、ただでさえハイテンションで盛り上がっている学生たちが、絵の具と色水という絶好のグッズを手に入れておとなしくしているはずがありません。
顔面中塗りたくって、大騒ぎ。
私が、ちょうど日本でライブを行っていたイギリスのロックバンド「KISS」みたいだねえ、というと皆次々に「KISS」の決めポーズをしてくれます。
そのうち、色水を掛け合い始めると、もう止まりません。
みんな身体中絵の具に染まって、ところ構わず「ハッピーホーリー」と叫んで抱き合う変な集団と化しました。
楽しいTiger timeは、日が暮れても続きいよいよ飛行機の時間が近づいてきました。
もうお別れです。
学生にタクシー呼んでもらいました。
学生に別れを告げます。
タクシーが到着します。
8人乗りの大きなタクシーが来ました。
すると、学生たちが次々とタクシーに乗り込んできます。
え???
「先生を空港までお見送りします」
確かに、飲んでいる時そんなことを言っていましたが、本当に来るの?
しかもそんな絵の具だらけの格好で。
それで、8人乗りタクシーなのですね。
一人でしんみりとシンガポールとのしばしの別れにひたろうと思っていた私でしたが、思わぬ盛大な別れとなりました。
乗り切れなかった学生たちは、もう一台のタクシーで後を追いかけてくれました。
ホーリー祭の熱気のまま、空港に乗り込み、また大はしゃぎ。
今までに何度も、この学校の学生たちとお別れをしていますが、空港まで来てくれたのは初めてです。
嬉しかったです。
彼らと過ごしたのは、10週間です。
長いようで短いその期間。
素晴らしい時間でした。
嬉しさとともに、気恥ずかしさもあります。
何せ彼らは泥だらけ。
さすがに服は着替えていましたが(そうでなければタクシーに乗せてもらえなかったでしょう)、顔はまだ絵の具だらけです。
いつまでも尽きない別れの時間。
このままいてもキリがありません。
かえって別れがつらくなります。
私は程よい時に、意を決して搭乗入口に向いました。
シンガポールの空港は、入口に入るとすぐ出国検査があります。
そうそうに出国検査を済ませ、振り返ってみました。
先ほど、出国検査の前に振り返るとまだ学生たちは手を振っていました。
まだいるかなあと思って振り返りましたが、さすがに姿は見えませんでした。
もう帰ったか。。。
そう思っていると、向こうから手を振りながら走ってくる学生たちの姿が見えました。
なんと、さらに学生たちが地下鉄で追いかけてきてくれたのです。
急いで戻ろうかと思いましたが、出国検査を済ませた後、もう戻ることは出来ません。
遠くのガラス越しで、いつまでも手を振っている学生たち。
その光景は忘れません。
出国検査で写真を撮ることは禁止されていることは知っています。
でも、ダメもとで写真を撮ってみました。
遠くだったので、誰が来てくれたか分からなかったのです。
写真を元に、後でメッセージを送ろうと思いました。
写真を撮ると、すかさず出国検査官が寄ってきます。
「ここで写真を撮るのは禁止されている」
私は没収も覚悟しました。
でも、出国検査官は私たちの別れのやりとりを見ていたのでしょう。
「写真を撮っては駄目だから、あとでその写真消しといてね」
彼はお茶目に笑っていました。
私の見送りに、空港まで大勢押し寄せてくれた学生たち。
また、お別れです。
今度学校に行くのは2年後です。
1年生は、まだ在学していますが、2年生はもう卒業しています。
もう会えなくなる人も多くいるでしょう。
でも、お互い役者です。
舞台の上でそれぞれの仕事を頑張っていれば、きっとどこかで再会できるでしょう。
そんな気がします。
現に、今回も今までの学生たちと何人も再会しました。
この間、テレビで昔の映画をやっていました。
「セーラー服と機関銃」です。
薬師丸ひろ子さんのファンだった私は懐かしくて録画して、シンガポールに持って行って見ました。
その主題歌がジーンときました。
「さよならは別れの言葉じゃなくて、再び会うための遠い約束」
今日、私は学生たちと「遠い約束」をして、シンガポールを後にしました。
昨日の頑張りを称え、10週間の能のクラスの採点をしました。
採点の後は、学生とのミーティングです。
様々な質問が出ます。
今回の学生は、質問好きの人が多く、稽古の間もいろんな事を質問してきました。
能の先生に質問できるのも、今日が最後です。
大質問大会になりました。
中には、「へええ、、、 こんなことを思っていたんだ?」
と感心する質問もあります。
様々な国の人たちと過ごしてきた10週間のことが、色々思いおこされました。
毎回、この日は切ないのです。
学生たちとお別れをしなければなりません。
ミーティングが終わると、「Tiger time」いわゆる宴会です。
昼間っから、飲みまくります。
今回の学生たちは、よく飲む連中が揃っていて、何度もこうして一緒にお酒を飲みました。
最初はおとなしく飲んでいました。
徐々に盛り上がってきます。
途中で、インド人の学生が絵の具のようなものを持ってきます。
明日は「ホーリー祭」だから前祝いだ、と言って顔に絵の具を塗り始めました。
「ホーリー祭」とは、ヒンドゥー教のお祭りです。
普段はあまりお酒を飲まないインド人も、この日は昼間から酒を飲み、見知らぬ人同士でもお互いに絵の具を塗り合って、色水を掛け合って、大騒ぎをするそうです。
お互い絵の具だらけになった後は、「ハッピー ホーリー」といって抱き合うのが習慣のようです。
黄色と赤と緑の絵の具が基本です。
黄色は尿、赤は血、緑は田畑を現すそうでして、悪魔や邪気を払い、豊作を祈念して春の訪れを祝うお祭りです。
こういう風に、色んな国のお祭りや文化や風習が同時に楽しめるのも、多民族国家シンガポールの醍醐味です。
私がいたこの2か月の間にも、普通の正月、ポンガル・フェスティバル、タイプーサム、チャイニーズニューイヤー、ホーリー祭など、インドや中国のお祭りが目白押しでした。
そうした様々なお祭りが、それぞれの住民の間で普通に祝われているのが、シンガポールの凄いところです。
アメリカ人の学生が言っていました。
「僕は、ニューヨークにも住んでいた。よくニューヨークは人種のるつぼといって、多民族社会だと言われる。確かにニューヨークをはじめアメリカには世界中からたくさんの人種の人が集まってきます。
でも、アメリカはそういう人達に全てアメリカの文化風習を押し付けて、アメリカ化させようとする。アメリカこそ一番で、それぞれの国の人達のことなんて、全く尊重しない。
シンガポールは、色んな国の人がいて、それぞれの文化風習を尊重して、共存している。
シンガポールこそが本当の多民族社会だ」
アメリカ人に、こんなことを言わせるほど、シンガポールという国は魅力的なのです。
さて、ただでさえハイテンションで盛り上がっている学生たちが、絵の具と色水という絶好のグッズを手に入れておとなしくしているはずがありません。
顔面中塗りたくって、大騒ぎ。
私が、ちょうど日本でライブを行っていたイギリスのロックバンド「KISS」みたいだねえ、というと皆次々に「KISS」の決めポーズをしてくれます。
そのうち、色水を掛け合い始めると、もう止まりません。
みんな身体中絵の具に染まって、ところ構わず「ハッピーホーリー」と叫んで抱き合う変な集団と化しました。
楽しいTiger timeは、日が暮れても続きいよいよ飛行機の時間が近づいてきました。
もうお別れです。
学生にタクシー呼んでもらいました。
学生に別れを告げます。
タクシーが到着します。
8人乗りの大きなタクシーが来ました。
すると、学生たちが次々とタクシーに乗り込んできます。
え???
「先生を空港までお見送りします」
確かに、飲んでいる時そんなことを言っていましたが、本当に来るの?
しかもそんな絵の具だらけの格好で。
それで、8人乗りタクシーなのですね。
一人でしんみりとシンガポールとのしばしの別れにひたろうと思っていた私でしたが、思わぬ盛大な別れとなりました。
乗り切れなかった学生たちは、もう一台のタクシーで後を追いかけてくれました。
ホーリー祭の熱気のまま、空港に乗り込み、また大はしゃぎ。
今までに何度も、この学校の学生たちとお別れをしていますが、空港まで来てくれたのは初めてです。
嬉しかったです。
彼らと過ごしたのは、10週間です。
長いようで短いその期間。
素晴らしい時間でした。
嬉しさとともに、気恥ずかしさもあります。
何せ彼らは泥だらけ。
さすがに服は着替えていましたが(そうでなければタクシーに乗せてもらえなかったでしょう)、顔はまだ絵の具だらけです。
いつまでも尽きない別れの時間。
このままいてもキリがありません。
かえって別れがつらくなります。
私は程よい時に、意を決して搭乗入口に向いました。
シンガポールの空港は、入口に入るとすぐ出国検査があります。
そうそうに出国検査を済ませ、振り返ってみました。
先ほど、出国検査の前に振り返るとまだ学生たちは手を振っていました。
まだいるかなあと思って振り返りましたが、さすがに姿は見えませんでした。
もう帰ったか。。。
そう思っていると、向こうから手を振りながら走ってくる学生たちの姿が見えました。
なんと、さらに学生たちが地下鉄で追いかけてきてくれたのです。
急いで戻ろうかと思いましたが、出国検査を済ませた後、もう戻ることは出来ません。
遠くのガラス越しで、いつまでも手を振っている学生たち。
その光景は忘れません。
出国検査で写真を撮ることは禁止されていることは知っています。
でも、ダメもとで写真を撮ってみました。
遠くだったので、誰が来てくれたか分からなかったのです。
写真を元に、後でメッセージを送ろうと思いました。
写真を撮ると、すかさず出国検査官が寄ってきます。
「ここで写真を撮るのは禁止されている」
私は没収も覚悟しました。
でも、出国検査官は私たちの別れのやりとりを見ていたのでしょう。
「写真を撮っては駄目だから、あとでその写真消しといてね」
彼はお茶目に笑っていました。
私の見送りに、空港まで大勢押し寄せてくれた学生たち。
また、お別れです。
今度学校に行くのは2年後です。
1年生は、まだ在学していますが、2年生はもう卒業しています。
もう会えなくなる人も多くいるでしょう。
でも、お互い役者です。
舞台の上でそれぞれの仕事を頑張っていれば、きっとどこかで再会できるでしょう。
そんな気がします。
現に、今回も今までの学生たちと何人も再会しました。
この間、テレビで昔の映画をやっていました。
「セーラー服と機関銃」です。
薬師丸ひろ子さんのファンだった私は懐かしくて録画して、シンガポールに持って行って見ました。
その主題歌がジーンときました。
「さよならは別れの言葉じゃなくて、再び会うための遠い約束」
今日、私は学生たちと「遠い約束」をして、シンガポールを後にしました。
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