2015シンガポール最終便 32015シンガポール最終便 5

2015年03月04日

2015シンガポール最終便 4

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能のプレゼンテーションは、大成功でした。
終演後の楽屋での記念撮影をご覧下さい。みんな良い顔しています。

今回のプレゼンテーションは、仕舞、能「邯鄲」、能「紅葉狩」と、今までのプレゼンテーションの中で、一番盛りだくさんの内容でした。

2年前の14人から、22人に増えた学生に対応するために、能「邯鄲」を新たに加えました。

人数が増えると、どうしても一人一人に対するケアは少なくなってしまいます。

それにも関わらず、プレゼンテーションの演目を増やしたのですから、必然的に稽古はハードになりました。

前回は、プレゼンテーションの前は割にノンビリと通し稽古が出来たのですが、今回はギリギリまでシャカリキに稽古していました。

それでも、2月中旬まではオーストラリアからの留学生が6人いたので、割合にゆったりと稽古していました。
ずっと厳しくしていたら、プレゼンテーションまでもたないと思ったからです。

オーストラリア人達が帰ったら後の2週間は、怒濤の追い込み稽古でした。

実は、事前に学校のスタッフと話し合いました。

「今回は、人数も多く能も2番やるので、稽古時間が足りない。発表会では仕舞は出来ないと思います。」

そう言う私に対し、

「是非、学生全員に仕舞もやらせてくれ」

とのリクエストです。

「相当、ハードに稽古しなければなりません」

というわけで、ハードな稽古を課しました。

2週間で、一人1番の仕舞と能「邯鄲」「紅葉狩」を仕上げるというスーパーハード・コースです。
学生達は、よく稽古してくれました。

学生達にとって一番難しいのは、なんと言っても日本語の謡を覚えることです。

「邯鄲」「紅葉狩」共に、謡はかなり削りましたが、最低限意味が繋がるように程度の謡は必要です。

役によってはかなりの謡の量になります。

「彼らにとって、全く意味の分からない日本語のセリフを謡うのは大変なことですので、日本語の発音が少々マズいのはしょうがないかな」

自分の英語のヒドイ発音を知っている私は、そう考えていました。

でも、学校のスタッフの考えは違いました。

「彼らは、この学校を卒業したあと、シンガポールはもとより、世界中で活躍するだろう。将来、日本人の役を演じるかもしれない。日本語の台詞を言わなければならないかも知れない。その時、日本語だから覚えられませんとは、絶対に言えない。だから、日本語もキッチリ指導してくれ」

成る程ねえ。そういうことなら、こちらも手加減無しです。

演劇学校に来ている学生達ですので、所作や舞の型などは、何度か一緒に動けば、すぐに覚えます。

結局、謡を正確に謡うことにかなりの時間を費やしました。

謡が間違えずに謡えるようになったら、今度は場面に即して謡えるように稽古します。

謡の強弱や緩急、または位取りです。

その辺の稽古プロセスは、日本人の愛好者の方と何ら変わりません。

日本人だろうが外国人だろうが、能で大事なのは謡なのです。

そんな中、地謡の完成度がなかなか上がらずに苦労しました。

個人的な訓練で何とかなる役謡と違って、地謡は協同作業です。

場面に応じて、皆で声を合わせて謡うのは、並大抵のことではありません。
特に彼らは、日本語が全く分からないのですから。

能の通し稽古をしていると、どうしてもシテとかワキとか立ち役の人の稽古が中心になります。
動きを覚えるまでは、そうならざるを得ません。
地謡は、一緒に謡っておしまいという状況が続きます。

立ち役の動きがある程度整ってきたら、地謡の不揃いが気になって仕方がありません。

やはり、能にとって地謡はとても重要ということが身にしみました。

直前の稽古で、地謡を何度も注意します。

あまりにうまく謡えないので、私が一緒に謡うことも検討されました。

今回は時間が無いのでしょうがありません。地謡があまりに滅茶苦茶だと、立ち役がどんなに頑張っても能が壊れてしまいます。


そんな相談を、稽古の休憩中に喜正先生としているさなか、地謡のメンバーが集まって自主稽古をしている声が聞こえてきました。

彼らも危機感を覚えたようです。

そうです。こちらがいくら注意しても、自分達で稽古しないと、良い地謡にはなりません。

その時を境に、地謡はみるみるうちに良くなってきました。

もう、私が一緒に謡う必要はありません。

学生達の自主稽古は、プレゼンテーションの直前まで続きました。

楽屋では、至るところで学生達の謡い声が聞こえてきます。
良い雰囲気です。

私は能のプレゼンテーションの成功を確信しました。



今回の「Intercultural Theatre Institute」の能クラスに集まってきた22人の学生達。

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出身は、シンガポール、マレーシア、香港、インド、ブラジル、アメリカ、フランス、デンマークと8ヵ国に渡ります。2月中旬までいたオーストラリアとスイスからの留学生を含めると10ヵ国28人の学生達。

「能って何?」から始まった、日本語の全く分からない学生達。

最初は、正座が出来ない人までいました。
(正座で長く座っていられないという意味ではなく、膝の関節が固いのか、正座の姿勢そのものが出来ないのです。どう座っても、かかとの上にお尻が乗らない人を見て、驚きました)

それが2ヶ月後には、能面と簡単な能装束を着け、全て日本語で、学生達だけで能が出来るまでになりました。

彼らの頑張りを称えたいと思います。


彼らへの能の稽古を通じて、私も色々な事を学びました。

良い経験をさせて頂きました。


学生達は卒業後、世界中に散らばってそれぞれ演劇活動をすることでしょう。

その時に、能を懸命に稽古したことを生かして欲しいです。

そして、能の魅力を世界中の人に伝えて欲しいなと、願って止みません。


kuwata_takashi at 23:50│Comments(0)TrackBack(0)

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