福岡公演2013年 御礼

2013年12月15日

「融」御礼

緑泉会「融」、無事終わりました。御来場の皆様、どうも有難うございました。

 

この能は、とにかく謡の分量の多い能です。

感覚的には、ずっと謡いっぱなしです。

 

単調にならないように、段落ごとに強弱をつけてメリハリをきかせるよう心がけました。

総体的には、まあ上手くいったかなあと思います。

もちろん、100%満足なんてことはありません。

現時点で出来ることを精一杯やれたかなあという感じです。

 

前シテでは、田子(水を汲む桶)の扱いに細心の注意を払いました。

こういった小道具をさりげなく扱うのは、本当に難しいです。

能面をかけていたので、自分では良く分からないのですが、まあ無難にこなせたと思います。

 

冒頭の「一セイ・サシ・下歌・上歌」の長い謡が最初の関門です。

ここは、去年の稽古能で絶句をしてしまった場所です。苦い思い出のある場所です。

ここで間違えると、完全に苦手意識が植え付けられてしまいます。

長くややこしい文句を、丁寧に謡っていきました。

こういう長い謡は、ダレてしまう癖があるので、なるべく運ぶように心がけました。

 

その後この能は、ワキとの問答、語り、名所教え、ロンギと次々に難関が待ち受けます。

本当にたいへんな能です。

謡っても謡っても、先は長い・・・・

 

しかも今回、紐の調整を誤ってしまい、少々頭の痛みをこらえながらの舞台でした。

 

頭に着ける尉髪か能面の紐を、キツク締めすぎたようです。

たまに、こういう事があります。

たぶん、最初締めた時より、汗で段々と締まってきたのだと思います。

この日は、暖房がよく効いて、舞台はかなり暑かったのです。

 

またこの能は、ワキの言葉が観世流と下掛り宝生流とはかなり違っております。

その違いに惑わされないように、気を使って謡います。

いつもは、観世流のワキを謡いながら稽古していますので、何だか違和感があります。

気を抜くと、自分の言葉が分からなくなってしまいます。

 

とにかく、各方面に気を配りながら慎重に演じた前場だったなあと思います。

 

中入り前に、田子で汐を汲むシーンも、上手くいったようです。

このシーンは、天秤のように担いだ水桶を前後に振って、両方とも舞台に首尾よく倒すという大業をしなければなりません。

田子は、壊れやすいので本物を使って練習することは出来ません。

ぶっつけ本番です。

 

水桶の振り方や、前へ出て行くタイミングや歩数など、全て事前に綿密に計算してシミュレーションしました。

私は、流れに乗ってアバウトに演じることの多いのですが、この場面はかなり計算しました。

 

後場は、舞囃子でよく演じられるので、お馴染の舞です。

ベタつかないように、流れよく颯爽と演じました。

 

今回、もう一番の能が墨敬子師の「胡蝶」でした。

「胡蝶」で舞われる「中の舞」と、「融」の「早舞」は型がほとんど同じです。

 

こういうときは、「早舞」を変えるのが習わしのようです。

五段構成の長いバージョンで、「替之型」でさせて頂きました。

 

「替之型」で舞うのは、プレッシャーです。

全体的に廻る型が多くなり、また度々袖を掛けるので、雑になりやすいのです。

丁寧に、かつ颯爽と舞うのはなかなか大変なものです。

 

「上手い人がやらないと様にならない」

そう言われている「替之型」に、あえて挑戦いたしました。

 

こういう遊興の舞を上手くみせるコツは、楽しそうに舞うことだと、兄弟子から言われました。

とにかく楽しげに舞ってみました。

実際、なかなか良い気持ちで舞うことができました。

 

装束も、白を基調とした爽やかな出で立ちでした。

光源氏のモデルとなったイケメン貴公子の源融を、華麗に演じられたかなあ。。。

 

謡も舞もどっさりのこの能は、終わってみると、「いかにも大曲を演じたぞ」という充実感でいっぱいでした。

kuwata_takashi at 00:22│Comments(0)TrackBack(0)

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