「知恵泉」再放送としま能の会

2013年09月09日

「殺生石」御礼

だいぶん、日が経ってしまいましたが、先日8月30日に演じた「殺生石」のレポートを書きます。

「のうのう能」でシテを演じるのは三回目です。
この催しは、今まで能になじみのなかった方々にも能に親しんでもらうことをコンセプトとしています。

そのため、イラスト入りの充実したテキストと、演者による詳しい解説に、装束付けの実演など、サービス満点の興行形態をとっています。

その特徴の一つに、開演時間が挙げられます。
なんと、平日金曜日の7時開演。能が始まるのは8時過ぎです。

お勤めしている方にも見やすい時間帯ということです。

そのコンセプトは、とても素晴らしいと思います。
時間の関係で、なかなか能に親しむことの出来なかった方々が、足を運んで頂けることは、大きな喜びです。

シテを勤める身として、問題となるのは、当日の自身のコンディション作りです。

だいたいにおいて、能公演は昼間に行われます。
その場合、朝ゆっくりして、昼前には楽屋入り。
というスケジュールをとります。

今回は、公演の開始時間は7時からです。楽屋入りはだいたい2時間前が目安なので、5時まで時間が有り余っています。

朝、一度稽古しました。といっても確認程度です。
当日色々やったら本番前までに疲れてしまいます。

ふだん、「のうのう能」の時は、昼間にお弟子さんのお稽古をしたりするのですが、シテの前はさすがにスケジュールを入れませんでした。

すると、5時まで時間を持て余します。
たまった、事務仕事をやろうと思っても、やはりシテの前なので気分が高揚して落ち着いて取り組めません。

とりあえず、次の日31日の素人会の覚え物を始めました。
すると・・・・

猛烈な睡魔が押し寄せてきます。
不思議なことに、覚え物をすると眠くなるのです。

午後からしっかりと昼寝してしまいました。

目が覚めて、苦笑い。。。。

「シテの前に、グーグー寝れるんだから、自分も大物だなあ」

結果的に、疲れも取れスッキリと楽屋入りです。


能「殺生石」は、今回はとても落ち着いて余裕を持って演じられたように思います。

今回は、前場のシテの声の作り方に、こだわってみました。

若く美しい女性なのですが、実は妖孤の精という役どころ。
もともとは、玉藻の前という、天皇に仕えた高貴な女性なのですが、今は田舎の女性。

この二面性を、謡の力で表現したいなあ・・・

そう思っていたのですが、とても満足いく謡にはなりません。

まあ、役者が自分の芸に満足してしまってはおしまいです。
現時点のベストを出せれば良いのかなあ、とは思います。

後半は、いろいろこだわっていた所が、上手くいかなかったところがちょっとありました。

一番は、「殺生石となって・・・」のところです。
ここでは、一畳台に乗って、両袖をかつぐ型をやりました。
格好良く決まったつもりだったのですが、左袖が少々落ちてしまったようです・・・

ううう、残念です。

そういうところが、少々ありました。
注意していても、ちょっとしたところで思い通りにいかないものです。
本当に舞台はナマ物です。


この「殺生石」を演じるのは9年ぶりです。
9年前は、それなりに精一杯の舞台成果だったと思うのですが、今回は少々悔いが残ります。

逆に6月に演じた「善界」は、8年前の残念な気持ちを、何とか晴らすことが出来ました。

長く、舞台を続けていくことは、こういうことの繰り返しなのでしょう。

もっとも、お客様は一期一会です。
今回失敗したから、次に頑張ります。 は通用しません

悔いのない精一杯の舞台を、いつでも目指したいと思います。


今回演じた「殺生石」は、今後能役者としてもうひとつ上のステップに上がる試金石だったように思います。

一度演じているので、気持はラク。
だからこそ、落ち着いた気持ちでより高い段階の能を演じることが出来るのでしょうねえ。

どんな能でも、初演の時は余裕なく演じているものです。
再演のとき、その能の本当の凄味が演じられるのかも知れません。

そういう能を演じていきたいと思います。

「殺生石」、良い経験となりました。


kuwata_takashi at 11:58│Comments(0)TrackBack(0)

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
「知恵泉」再放送としま能の会