残席わずか今度は「善界」

2013年06月03日

「井筒」御礼

JPG主催公演「桑田貴志 能まつり」が無事に終わりました。
おかげさまで会場は満員御礼!!

ご来場の皆さま、有難うございました。


早速、写真が届いたのでいくつか載せてみます。
撮影は、能楽写真家の駒井壮介氏です。

会場の宝生能楽堂に到着すると、前の道を神輿が通っています。
どうやら、能楽堂の隣の神社でお祭りをやっているようです。

ある兄弟子に言われました。
「お、今日はお隣同士お祭りだねえ」

そうです、私の主催公演は「能まつり」とうたっています。
こいつは朝から縁起が良いや。

まるで、お神輿に祝福されるかの如く始まり、すっかり良い気分にひたりました。

例年の通り、主催公演は楽屋の中がとにかく忙しいのです。
慌ただしく動き回っているうちに、はや出番です。

今年、取り組んだ「井筒」という曲は、とにかく大変な曲です。

当日番組に、
「およそ能役者で、『井筒』が嫌いという人はいないのではないでしょうか。
 誰もが、節目節目に取り組みたいと願っています。」

と書きました。

その通り、この曲には色んな能役者が様々な思いやこだわりを持っています。

稽古から、稽古能、申合と色んなアドバイスやご注意を師匠や先輩から受けました。
中には全く異なる、教えもあります。

それらを、全て考えて消化してきた日々でした。

今回、舞台に出た時はもう迷いはありませんでした。
自分の中で「井筒」の方向はもう決まっていました。

様々な教えを自分なりに咀嚼して、桑田貴志の「井筒」が演じられるよう、勤めました。
舞台の良し悪しの前に、そういう強い気持ちを持つことが出来たのが、今回の収穫かなあと思います。

こういう三番目物の幽玄な能は、荒くならないようにするあまり、力の感じられない舞台になりがちです。

今回は、敢えて強めに表現してみました。

キッチリとした骨格をキチンと見せる。

まずそれがないと、どんな表現にも説得力が生まれません。
その上で、謡や所作や型に「井筒」らしい情緒を加えていきました。

前場は、ほとんど動きがないので、綺麗に姿勢よくカマエを決めることを、一番重視しました。

あと、冒頭の「次第」「サシ」「下歌」「上歌」の段落で、謡がダレないよう気遣いました。
ここの段落は、なかなか名調子なので、謡っているうちに気持ち良くなってきて、ついつい間延びしてしまいがちです。

情緒は出しながら、気持は冷静になれるよう心がけました。

この段落を謡いきったところで、いつもなら疲れ果ててしまうのですが、今回は力がみなぎっているのを感じます。

前場は流れ良く出来たかなあと思います。

JPG後場は、逆に少々悔いが残ります。
一種狂乱となった女性を演じたかったのですが、少々消化不良でした。

どうしても丁寧に演じようとするあまり、大事にやりすぎてしまいます。


「丁寧に演じなくてはいけないけど、力が抜けてはダメだ」

師匠がよくおっしゃる注意です。
三番目物の難しさって、結局はここなんですね。

「『井筒』なんて、ただやるだけだったら誰でも出来る。いかに情緒をもって『井筒』らしく演じるかが大事なんだ」

稽古能が終わった後、師匠から受けた注意です。
今回は、この言葉との戦いだったように思います。

「序の舞」では、笛の松田弘之師に特別にお願いして「初手」という変えの旋律を吹いて頂きました。
見事にはまっていました。

舞っていてダレやすい「序の舞」以降は、とにかく情熱的に演じてみました。
当然、表面上は静かに落ち着いています。
情熱は内に込めて演じられるように、常にブレーキをかけながらの舞えるよう、心がけました。


昨日終演後、元気よく動き回る私に、ある兄弟子が、
「よくそんな元気あるなあ。自分がやった後は、グッタリだったよ」
と言われました。

昨日は、カラダが興奮していたのでしょう。意外に元気でした。
一夜明けて、今日は布団から起き上がるのがツライ・・・

どっと疲れました。


さあ、来週は九会で「善界」です。
気持ちを入れ替えて頑張ります。



kuwata_takashi at 13:57│Comments(0)TrackBack(0)

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