真面目な国民性あれ・・・ 何時だっけ?

2009年10月10日

三保の松原 羽衣まつり

今日は、静岡県清水の三保の松原にて薪能。

三保の松原といえば、言わずと知れた、あの名曲「羽衣」のご当地。
この薪能では、毎年、能二番のうち一番は必ず「羽衣」が上演されます。

今年は、もう一番は「安宅」と、これもまた大人気曲です。文句のつけようのない組み合わせです。


私は、清水の隣の富士には月二回お稽古に行っているのに、三保の松原へ行くのは初めてです。
あの「羽衣」の舞台に行けるのは、素直に楽しみです。

昼過ぎに到着すると、もうすっかり舞台は組み上がっています。
能舞台後方にそびえたつのが、かの有名な羽衣の松です。
さすがに見とれました。

この松に、天女は衣をかけて水浴びしていたのか・・・

海を望むと、富士山が見えます。今日は、残念ながら上の方は雲がかかっていて、ふもとの方しか見えませんでした。
舞台の上から、富士山の方向を見上げると、面白いことに気が付きました。

富士山と沼津にある愛鷹山と、富士にある浮島台地がほぼ一直線なのです。

謡曲を嗜む方は、かの有名な「羽衣」のキリを思い出して下さい。

「三保の松原 浮島が雲の。愛鷹山や富士の高嶺」

見事に結びつきました。


開演に先立ち、能楽教室が行われました。

そこでは、能装束の着付けの実演があり、私はモデルを致しました。

私のいかつい風貌が、徐々に天女になっていく姿に、お客様は楽しんでいる様子です。

装束が付き終わりました。そこで解説者が一言。

「せっかくですので、『羽衣』の一部を舞って頂きましょう」

「え!!! 聞いていない」

バックから「羽衣」のキリの謡が聞こえてきます。

「まあ、『羽衣』ならぶっつけでも何とかなるだろう」

舞っていると、何とも幸せな気分になってきます。

今、私は「三保の松原」で「羽衣」を舞っているんだ・・・

少し恍惚を感じながら、例の場所「愛鷹山や富士の高嶺」にきました。
能舞台のワキ座と呼ばれる場所から、常座と呼ばれる場所へサシという型をした時-ーー

何と、能面の狭い視界の先に愛鷹山がはっきり見えました。
その向こうには富士山も見えます。

「愛鷹山や富士山の高嶺」という謡に合わせながら、「愛鷹山」と「富士山」を見込む。

こんな素晴らしい瞬間があるでしょうか。

舞台設計者がそこまで考えていたかどうか分かりませんが、至福の時を過ごすことが出来ました。

「三保の松原」で「羽衣」を舞わないと出来ない経験・・・
これは、一生の宝物ですね。


at 22:20│
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