「道成寺」御礼「道成寺」回顧(2)

2009年04月29日

「道成寺」回顧(1)

「道成寺」も終わり、至福の休日を過ごしています。

全身全霊をかけて臨んだ「道成寺」
少し余裕も出てきたので、当日を振り返ってみたいと思います。

装束付けは、ギリギリでした。
何せもう一番が「摂待」という人数物です。
「摂待」と「道成寺」の間が一時間くらいしかなかったので、本来なら「摂待」の間に、鐘の仕込み等全て終えて装束付けにも掛りたかったのですが、「摂待」の間は楽屋に人が誰もいないので、一人で粛々と装束の準備を行い、「摂待」が終わるや否や、1時間半もツレとして舞台に座っていた兄弟子たちに協力を仰いで、鐘を動かして、鐘の中に仕込みを行って、慌しく装束を着けていただきました。

何せ、囃子方がお調べをしている時、まだ装束が着け上がっていませんでしたから・・・

さすがに少し焦りましたが、「道成寺」の場合、開演してからシテの出まで随分時間があるので、その間にすっかり気持は落ち着きました。
あまり早くから装束着けてスタンバイしていたら、かえっていろいろ考えて硬くなっていたかもしれません。

いよいよ、シテの幕が開きました。
申合で、橋掛かりの歩みが遅いと言われていたので、こころもちスラスラ運ぶ予定だったのですが、何故だか足が前に出て行きません。
何だか、自分であって自分でないような不思議な感覚でした。

後で聞くと、橋掛かりの歩みはゆっくりだったけど、囃子や雰囲気に合ったとても良い風情だったそうです。
足が前に出ていかないのは、緊張のせいかと思っていましたが、今になって考えると、何か大きな力に運んでもらったような感覚です。

次第・道行と、舞台は進んでいきます。
物着で烏帽子をつける時、申合の時はもうこの時点でクタクタでした。
それから思うと、力がみなぎって充実しているのが感じられます。
「よし、これからノンストップだ」

気合いを入れて、いよいよ乱拍子。
大鼓のK師の気合たっぷりの一調に送り出して頂き、小鼓のU師との一騎打ち。

申合と比べて、体がスムーズに動きます。
何だかこれも、大きな何かに動かされている感覚でした。

途中からはさずがに辛かったです。乱拍子やりながら思いました。
「もう道成寺はいい。二度とやらない」

乱拍子が終わりに近づくにつれ、また気持が昂ってきます。
「よしよし。。。キターーー」
なんて訳のわからないことを心の中で叫んでいました。
不思議な精神状態ですね。

本番の乱拍子は、短く感じました。
でも実際は、30分位かかっていたそうです。
終演後、小鼓のU師とそんなに時間かかったっけなあと、首をかしげ合いました。

さあ、いよいよ「急之舞」から運命の「鐘入り」です。続きは次回に。


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「道成寺」御礼「道成寺」回顧(2)