はじめての大鼓初午

2009年02月09日

難しい曲

日曜日は観世九皐会。私は「東岸居士」の地謡でした。

前日の「昭君」に続いて、なかなか出ない曲です。
この一週間はこれら二曲の暗記で大変でした。


この「東岸居士」、とても難しい曲です。

謡のお稽古をしている方は、難しい曲と聞いて色んな曲が思い浮かぶことでしょう。

まず、お稽古を始めてしばらくは、難しい曲とは「難しい節がある曲」でしょう。
謡には様々な節付け(音階)があります。
それらを一通り謡えるようになるまでは、ずいぶん時間を要します。
最初の頃は、なかなかスラスラ謡えなくて苦労することでしょう。

さて、ある程度お稽古が進むと、節が一通り謡えるようになります。
そうなってきた方にとって難しい曲とは、「位が難しい曲」です。

能には曲それぞれの雰囲気や登場人物の性格があります。
それらを総称して「位(くらい)」と呼んでいます。

すなわち、若い女性には若い女性の位があり、老人には老人の位があり、源氏の武士、平家の武士、はたまた鬼畜や草花の精など、それぞれ位があります。

当然同じ若い女性であっても、例えば「吉野天人」の女性、「班女」の女性、「井筒」の女性。
皆違う位を持ちます。

また、能は演劇ですので、その台本である謡が棒読みではいけません。
場面に応じた緩急や強弱を付けて謡わなければなりません。

それらを謡い分けるのが、謡の難しさであり、面白さなのです。


さて、我々玄人にとって難しい曲とは何でしょう。

まず、なかなか出ない曲です。
どんなに難しい曲でも、しょっちゅう謡っていれば、スラスラ謡えます。
俗に、三難クセなどと言って、「歌占クセ」「花筐クセ」「白鬚クセ」が並び称されます。
どれもとても難しい曲ですが、「歌占」と「花筐」はよく謡う曲なので、玄人にとってはさほど難しい曲ではありません。

あと、普通じゃない構成や節付けや拍子当たりの曲です。
謡には、ある程度のパターンが存在します。そのパターンに則っていれば、どんなにややこしい節付けでも難なく謡えます。
パターンに外れると、よくある節でも何だか謡いにくいということはよくあります。


さて、前置きが長くなりましたが、「東岸居士」という曲は、まずなかなか出ないし、構成や拍子当たりが破格の曲です。
玄人にとって、至難の曲です。

いやあ、覚えるのも大変でしたが、その前にきちんと謡えるようになるのもとっても大変な曲でした。



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はじめての大鼓初午