大倉集古館所蔵 能面・能装束展よく働きました

2007年11月19日

町田市立博物館シンポジウム

昨日は、町田市立博物館主催のシンポジウム「能と風土 町田を舞台とした謡曲『横山』」がありました。

去年まで町田市長を4期16年務められた、寺田前町田市長は、かねてから町田市を全国に発信するものとして、町田を舞台とする能「横山」に注目していらっしゃいます。

今回、寺田前市長の念願が叶ってこのようなシンポジウムが行われました。

申し込みが殺到したそうでして、158人の定員は瞬く間に一杯になり、キャンセル待ちまで出る人気ぶりでした。

昨日は、まず冒頭に寺田前市長が能「横山」に注目した経緯を説明されます。

そして、法政大学能楽研究所 所長の西野春雄氏が、「横山」はどういう能で、何故演じられなくなったのかを説明なさいました。
また、西野氏らの研究者が20年前に「横山」を復曲なさったときの経緯なども説明されました。

「横山」とは、観阿弥の作と考えられ、能の昔の形を色濃く残しています。
色んな要素がギッシリ詰め込まれているので、かなり長大な作品のようです。

あまりに長すぎることと、類曲の「鉢木」に人気がとって代わられたことが演じられなくなった理由ということです。

ホールの一番前列の真ん中に、町田市教育長や博物館館長など偉い人達に囲まれて「桑田貴志様」と書かれた席が用意してあったので、気恥ずかしいながら、前半はただの観客となって楽しんでシンポジウムを聴いていました。

「面白い。なんか、とてもアカデミックな気分……」

良い気分で聴いている場合ではありません。
後半は、私の出番です。

今まで色んな所でお話させて頂いていますが、このようなアカデミックな場所は初めてです。

西野先生も、後半の謡をお楽しみ下さいと、折々におっしゃいます。

「さあ、これは困った……」

私は、アカデミックな話は出来ないので、いつもの通りざっくばらんにお話しました。
すると、それが大ウケ。
自然態で望むのが一番ですね、とりあえずホッとしました。


眼目は、「横山」の謡です。

観世流では、「横山」は蘭曲という扱いです。
蘭曲とは、最高位の曲という意味で、観世流ではとても大事にしています。

師匠に相談したところ、最初は顔をしかめましたが、なんとか許しを得ました。

蘭曲は重習です。
師匠にしっかり稽古を受けて、満を持しての上演です。

まさか、自分が能楽師人生の中で蘭曲を謡う機会があるなんて思ってもみませんでしたので、「横山」は当然初めて目を通します。

覚えるのはたいへんでしたが、またとない良い機会と思い、死ぬ気で覚えました。

シンポジウムの最後に、蘭曲とはいかにたいへんな曲かをしみじみと語り、心して謡いました。

出来映えはどうだったか分かりません。
ともかく、初の蘭曲は絶句や間違いも無く無事終わりました。



シンポジウムは、おおかた好評だったようです。

私は今、脱力感で満ちています。


私にこのような素晴らしい機会を与えて下さった、町田市立博物館の田辺館長を始め、全てのスタッフ、特に担当のSさんには深く感謝いたします。

いつか、町田の地で「横山」が上演出来れば良いですねと、言い合って一同別れました。

本当にそんな日が来ることを心から望みます。


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