しまなみ海道薪能歌仙会

2006年08月02日

TVドラマ監修

今日午後9時から、TV東京で放映された

山村美紗没後10年企画 不倫調査員片山由美?
「京都着付け教室殺人連鎖~平安貴族末裔の鬼姑VS美人嫁!
恨みと血染めの能狂言が不倫男女を地獄に落とす」

を見た方いますか。

2時間サスペンスの題名って、馬鹿みたいに長いですね。

この2時間ドラマは、山村美紗没後10年企画ということで、TV東京としてはいつに無く予算を組んだ様でして、かなり豪華な内容でした。
主演は、池上季実子と神田正輝です。

題名の通り、内容は能にちなんだ殺人事件。

能の「小督」「定家」「大原御幸」を元にしたかなり壮大な物語です。
山村美紗先生は、能に造詣が深いようでして、なかなか本格的な能サスペンスでした。

実は私は縁あって、このドラマの能楽監修を勤めました。


実は、自分で監修しておきながら、今日の放送日まで戦々恐々としておりました。
というのも、今まで能を題材にした2時間ドラマは数々ありましたが、いずれも勘違いと偏見に満ちたスゴイ内容だったからです。


とにかく私は能楽愛好者が見ても、眉をしかめない普通のドラマとなるように、様々なアドバイスをしました。

一番困ったのは、制作スタッフから
「能の「大原御幸」にちなんだ扇を教えて下さい」

と言われた時です。

だって・・・ 「大原御幸」のシテは扇を持たない役ですから、因んだ扇なんかあるわけが無い。

スタッフは、自信満々に
「国立能楽堂でビデオを見ましたが、最初に出てくる演者が扇を持ってますが、あの扇ではいかがでしょうか」

と聞いてくる。

私は困りながら
「最初に登場するのはワキツレですが、彼が持っているのは「男扇」といって、ワキやワキツレがかなりの頻度で持つ扇です。「男扇」だから「大原御幸」というのは無理がありすぎます。」

ドラマを見た方ならお分かりと思いますが、「大原御幸」に因んだ扇は、物語の進行上、欠かすことの出来ない大事なシーンです。


故山村美紗さんの台本を変えることは、死人に口無しということで出来ません。

とは言うものの、能「大原御幸」のゆかりの扇なんてある訳がない。

スタッフの注文は、
「ひと目見て、「大原御幸」だと判る扇」
です。

これは、特別の扇を作るしかないと思い、
「嵯峨野を連想される図柄に、「大原」の字でも入れたオリジナルの扇を作りましょう」

と提案しました。
また、その扇を賽銭箱に入れると言うので、

「台本では、能の中啓ということになってましたが、それは不可能です。
中啓では大きすぎてとても賽銭箱に入りません。
普通の仕舞扇で創作しましょう」

と提案しました。ドラマでは、ただの扇子になっていました。仕舞扇の意味が分からなかったのかなあ。

「大原御幸」の図柄は、まあ及第点。よくぞ上手くごまかしたものだと、感心しました。


マズイところは結構台本を手直ししましたので、そんなに変な内容とならなかったようです。

ただ、能「小督」のチラシに使われている写真が「巻絹」だったのはどうしてなんだろう。
おかしいなあ、「小督」の写真も渡したはずなのですが。

ドラマの最中、様々な能の写真が登場しますが、それらは全て私の写真です。
画面の隅々を隈なくみると、様々な写真が出てきます。
それらの写真・・・気がつきました?

能って、装束つけて能面をかけると誰だか分からなくなります。このドラマに出てくる月刊「能楽」なる雑誌の表紙や、容疑者の自宅の壁にかかっている額などに、私の写真は使われておりました。

まあ、見逃すくらい一瞬出てくるだけですが。


当初は、能のシーンばかり気になってしまいましたが、それがクリアされると、ドラマにのめりこんでしまいました。

面白いサスペンスでした。
ベテラン俳優たちが繰り広げる、愛憎劇。あっと驚くストーリー展開。
最後の意外などんでんがえし。

見逃した方、多分再放送はあると思います。
感想をお聞かせ願います。


at 23:44│

この記事へのコメント

1. Posted by さくら川   2006年08月03日 22:51
只今、拝読。
残念~ん。こんな時は、前もって御報せ下さいませ。
再放送は? 
分りませんよねえ。 残念~ん。
2. Posted by クワタ   2006年08月05日 00:32
さくら川さま
ゴメンナサイ。私も放送日を忘れておりました。
当日の新聞を見て気が付いたので、お知らせ出来ませんでした。
8月27日には、大河ドラマ「功名が辻」に出演します。
まあ、チョコッと映るだけでしょうけど。
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