シンガポール第四便 4シンガポール おまけ

2006年03月21日

シンガポール第四便 最終回

20日の発表会は、大成功に終わりました。
今までで一番良い出来でした。

当日は、なんと「ニュース・アジア」(アジア版のCNNのようなもの。アジア中で視聴可能)が取材に来ました。今週の土曜日にアジア中で特集番組が流れるようです。

その「ニュース・アジア」のインタビューで、インド系シンガポール人がこんなことを言っていました。
「能に出会えて、人生が変わりました」
私達は、「何言ってんだこいつ」と茶化していました。

彼は、当初はたいへん出来が悪く、私は何度も頭を抱えました。
ただ、徐々に進歩していって、発表会の出来は素晴らしかったです。
舞台の上で、堂々と演じている存在感は、今年の学生の中でもピカ一でした。
それは、他の能の先生も同じ意見で、「彼は大化けした」という評価を下しました。

一夜明けた今日は、能の採点の日。私達はその彼の頑張りを称えました。
採点後、彼は涙ながらにこう言ってきました。

「今まで自分は、どうしても自信が持てなかった。何をやっても不器用で、笑われてばかり。
役者になるなんて言ったらみんなにバカにされた。
いつも先生に怒られてばかりで、この学校も辞めようと思っていた。

でも、能の先生はそうじゃなかった。ダメな私を親切に丁寧に何度も教えて下さった。
いつも私は、自分は不器用だからと、すぐ諦めていたけど、今回は初めて頑張ることが出来た。そして、舞台に出てお褒めの言葉をもらったのは初めてです。
自信になりました。本当に有難うございます。」

そして、インド式の最敬礼をしてくれました。

彼の言葉を聞いて、私も熱いものがこみ上げてきました。彼は、本当に人生が変わったのです。

彼は、昔から演技が好きで役者になりたかったのですが、自分には無理と諦めてしまっていたようです。
ただ、この学校の存在を知って、ここで諦めては悔いが残ると思って、ナンとシンガポール航空(日本で言えば日本航空。世界でも有数の航空会社)を辞めて入学してきたのです。

彼は太っちょでコロコロしていて、体も切れない。およそ、役者には見えません。
でも、美男美女ばかりでは芝居はやれません。
彼にも当然彼の良さがあります。それを、シッカリ伸ばせば、いい役者になれると思います。
頑張ってほしいです。


シンガポールの演劇学校TTRPコースにおける、三ヶ月間の能の稽古と発表会の成果に関しては、彼を紹介すれば充分だと思います。
素晴らしい成果が上げられたと、自画自賛いたします。


また、2年前に能の稽古を受けた学生が、今回の発表会に全員参加してくれたことが、私は最高に嬉しかったです。
やはり2年前に、今回と同じように朝から晩まで3ヶ月間能の稽古をして過ごした学生が、もう一度能をやりたいと、修了した能のクラスに戻ってきました。
みんな、能は楽しいと喜んでくれます。
今回の発表会、地謡を担当した3年生は、上演中・約1時間、ずっと正座をして謡っていました。2年前は5分と正座していられなかった学生達がです。
1時間の正座なんて、日本人でもほとんど出来ないでしょう。

2年後、また新たな学生を指導にシンガポールへ行くことになっておりますが、その時には3年生は卒業してもういません。
2年前から、トータルして6ヶ月間も一緒に過ごした学生たちですから、本当に愛着があります。
これで、お別れと思うと、やはり目頭が熱くなります。

1年生は、2年後に向けて、正座の練習をスルゾーと、早くも張り切っています。もう、2年後の発表会に、地謡で出る気でいます。
そして「今回の3年生みたいに、新しい仕舞を教えて下さい。」と、お願いされました。


私にとっても、かけがえのない経験となりました。

演劇に向かって熱く取り組んでいる、私と殆ど年の変わらない学生たちを見て、うらやましくもあります。
私も、この学校に入学したくなりました。

でもきっと、能以外の伝統芸能は、ほとんど居残り特訓だろうなあ・・・
京劇なんか、バック転しないといけないですし・・・・


at 18:24│

この記事へのコメント

1. Posted by さくら川   2006年03月23日 19:42
大成功・おめでとうございます。
思い掛けない良い事つづき、さすが、世界遺産のお能!
桑田様始め、関係の皆々様と世阿弥に乾杯!
2. Posted by クワタ   2006年03月24日 01:01
さくら川さま
今はとにかく、ホッとしています。
さあ、気持ちを切り替えて、日本の仕事を頑張らなくては・・・
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