シンガポール第二便 2シンガポール第二便 4

2006年02月17日

シンガポール第二便 3

私がシンガポールで教えている学生たちは、現役のプロの役者かその卵です。
当然、取り得は抜群に良い。

でも、何と言っても能というものを見たことも聞いたこともない人たちです。能を習うことに対してモチベーションが低いようです。前回は決して真面目に取り組んでいるとは言えませんでした。

でも、今回は明らかに違います。
初日の「屋島」と「紅葉狩」の試験で驚かされた私は、その後も毎日驚いています。
学生たちが、やたらと熱心なのです。
うーん? 私がいなかった3週間の間に何があったんでしょうか。


ところで、この学校には2年前に教えた学生が、まだ3年生として残っています。
前回、久しぶりに学校を訪れた私は、さっそく2年前の学生に囲まれました。
懐かしい面々。しばしノスタルジーに浸り、近況報告など話していると、そんなことはどうでもいい、と言わんばかりに学生のうち一人が質問してきました。

「先生、この歌知っていますか?
 ma-rui ma-rui ma-nmarui……」

「うん? 聞いたことがあるぞ。ひょっとして、この歌?
 ――出た 出た 月が。まあるい、まあるい、まんまるい。盆のような、月が――」

「そう、その歌。それを私に教えて下さい」

何でも、3年生たちが今取り組んでいる芝居に、「月」の役があって、「月」がその歌を歌うそうだ。
その芝居の演出家は、オーストラリア人なのですが、黒澤明監督の映画「まあだだよ」にその歌が出てきて、何だかタイソウ気に入ったらしく、芝居の中に取り入れたそうです。

「月」の役はまだ誰がやるか決まっていません。全員、この歌が歌えるようにならなければなりません。
みんな、熱心に私に習っています。

まさか、2年前に謡と仕舞を教えた学生に、日本の童謡を教えることになるとは思いもよりませんでした。


at 19:54│

この記事へのコメント

1. Posted by さくら川   2006年02月19日 22:22
次々と新たな楽しい展開。
演劇を目指す学生の生き生きとした様が、伝わってきます。
シンガポールに行かれるだけで、能楽普及と若者教育、国際親善の
大切なお役目を充分果たしておられますね。
続きを心待ちにしています。
2. Posted by クワタ   2006年02月20日 14:41
さくら川さま
現場にいると、そんなに楽しくないですよ。
それに、能楽普及はともかく、若者教育や国際親善の役目などという、大袈裟なことはしていませんよ。
まあ、毎日ネタには困らないので、次々とアップ予定です。
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