2026年01月
2026年01月30日
香港から2026 8

「風姿花傳 能劇大師班」も大詰め。9日目を終えました。
昨日までの8日間で「船弁慶クセ」「吉野天人」「経正キリ」の3曲の仕舞を仕上げました。
参加者たちは、驚くようなペースで覚えていきます。
参加者のほとんどは役者やダンサーなので、吸収が早い。
また身体能力も高く、初心者にとっては複雑な動きもすぐ出来るようになります。
また、声も立派でローマ字で作った謡本を片手に、なかなか良い声で謡います。
謡や仕舞という能の基礎技術は、ほかの演劇や舞踊とそんなに変わらないのでしょう。
それは、毎回シンガポールの演劇学校でも思います。
最終日の10日目には簡単な発表会を致します。
どんなことになりますでしょうか。
さて、今日は能の大事なエッセンスとして、能面の体験をしました。
体験講座などで、「能面を着けてみよう」などといった能面体験はよくあります。
そんな表面的な体験では意味がありません。
既に構えもすり足もキチンと稽古しているこのワークショップの参加者なら、良い経験となることでしょう。
最初に、能面の説明をします。
種類や効果などなど。
そして、能面を着けるのあたっての心構えと作法を説明します。
「能面は、能役者の命であり魂がこもっている。神が宿るともいわれます。くれぐれも丁寧に扱ってください」
参加者は、心して能面を取り扱っています。大事な精神です。

いざ、能面を着けて実際に仕舞をやってもらいました。

この写真のように、バラバラの動きです。
お互いの動きが見えないので、四苦八苦。
それでも、体験が進むと徐々に慣れてきました。



参加者にとって、良い体験となりました。
ワークショップの初回に能のビデオを見せました。
「能役者は何気なく、飛んだり跳ねたりし、違和感なく動いている。それは、たいへんに難しいことなのですよ」
私が説明すると、皆大きくうなずいていました。
9日目の後半は、発表会のリハーサル。
それぞれ課題も見えてきたことと思います。
あと一日です。しっかり準備して本番に臨むことでしょう。
kuwata_takashi at 12:23|Permalink│Comments(0)│
2026年01月27日
香港から2026 7

日曜日もワークショップはありません。
昨日の阮兆輝師との夕食で感銘を受け、また粤劇が観たくなりました。
ネットで検索して、高山劇場というところで粤劇公演を見つけました。
この劇場は、2年前に地元の人に連れて行っていただいた劇場です。
ちなみに2年前は、こんな劇を観ました。

2年前は、本格的な粤劇でしたが、今回は「新秀展演」という題名で推察されますが、若手の発表会です。
しかし結構人気があるようです。
夜の部開演30分前に劇場に着きましたが、1000人以上収容できる大きな劇場で、3階席しか空いていませんでした。

本格的な粤劇というよりは、粤劇の一幕(だいたい20分から30分位)を、若手が次々に発表するという上演形式です。
若手のエネルギッシュな粤劇を7演目も見ることが出来ました。
粤劇の表現の特徴は、美しい歌唱にあります。高く澄んだ声は大変耳に心地よいものでした。
また、指の表現や袖の使い方など独特の所作も多く、美しい所作につい見とれました。
先日の阮兆輝師との夕食にて粤劇の演技の特徴など伺いました。鑑賞において、たいへん参考になります。
言葉は全く分かりませんでしたが、全く退屈せずに7番見続けました。
能と同じように言葉がわからなくても、歌や舞踊を観て楽しめるのが歌舞劇の良さです。
これば対話劇だとそうはいきません。
台詞が分からないと、たぶん退屈でしょうがないでしょう。
終わった後は、カーテンコール

観客への挨拶の所作もぎこちないのが、いかにも若手という感じです。
その後、指導している先生方も舞台に上がってきました。
広東語が分かりませんが、たぶん今日の演技の講評を述べているようです。
そして優秀な役者は、表彰もされていました。


しかし、この勢ぞろいの舞台を見て何だか違和感。。。。
そうです。先生たちの服装です。
みんな、ダウンや厚手のコートを着ています。
前の記事で、香港の人はたいへんに寒がりと書きました。
実際に寒いのです。
この国には暖房というものは存在しません。
劇場内は、換気のためなのでしょうかなぜかクーラーが効いています。たぶん送風なのでしょうが、常に冷たい風が吹いています。
外の気温は15度くらいあるのでそんなに寒いわけではないのですが、むしろ室内の方が寒く感じます。
観客も皆コートを着たまま鑑賞しています。
冬でも室内の方が寒いというのが、不思議な感覚です。
以前、薄着で外出した時のことです。
バスを待っている間、思いのほか寒いのです。寒さに震えていましたが、まあ、バスに乗れば大丈夫だろうと思っていたら、バスの中の方が寒かったということがありました。
東京ではありえません。外はどんなに寒くても、電車やバスの中は暑いくらいです。
また、香港はヨーロッパ式で夜の時間を楽しむ風潮があるようです。
ヨーロッパは劇場は夜9時開演なんてざらにあります。
以前、スペインで薪能をしたときは、開演夜10時でした。
「今回の公演は、夜7時30分開演で、若手の発表会だからすぐ終わるだろうなあ。たぶん9時くらいには終わるだろうから、その後ゆっくりビールでも飲みながら夕食だ」
こんなつもりでいたら、終演はなんと11時過ぎ。
寒さと空腹にジッと耐えていました。
観客の年齢層は、おおむね能と同じ感じ。つまり、若い人もいるけどメインは年配の方。
しかし、その年配の方も、コート着たまま普通に11時まで鑑賞しています。
日本のお年寄りは、寒い中で11時まで鑑賞してくれないだろなあ。
そう思うと、香港のお年寄りは元気です。
kuwata_takashi at 15:04|Permalink│Comments(0)│
2026年01月26日
香港から2026 6

(粤劇の巨匠・阮兆輝師とご夫人と記念撮影)
土曜日は、ワークショップはありません。
流白之間のスタッフと広東オペラ(粤劇)公演を観に行きました。

カーテンコールは撮影しても良いようです。
このブログでは、広東地方の伝統演劇のことを広東オペラと書いてきましたが、地元の人は粤劇(えつげき ユエ・ジュ)と呼んでいます。
また、中国の伝統演劇・昆劇(こんげき)や、北京近辺で演じられる京劇(きょうげき)に対して、広東地方で演じられる粤劇という呼び方がしっくりくるので、以後このブログでも粤劇と書きます。
確かに、京劇のことは英語ではPeking Opera(北京オペラ)と言いますが、日本で北京オペラと呼ぶことは無いですね。普通は京劇と呼んでいます。
粤とは、広東地方を指す言葉です。広東語は粤語と言ってます。
香港の粤劇(広東オペラ)の殿堂「戯曲中心」にある小劇場「茶館劇場」は、定員200人ほどのミニシアター。
昔の粤劇の雰囲気を再現した劇場です。

観客は、お茶と点心を楽しみながら粤劇を鑑賞します。

内容は、初心者のための粤劇講座といった感じです。
ストーリや楽器の解説が広東語と英語でなされたあと、粤劇の一部分を鑑賞するというスタイル。
全部で1時間半ほどのプログラムでした。
広東語と英語の字幕もつくので、初心者にも観光客にも分かりやすい構成です。
能と同じように、粤劇も昔の広東語を使っているので、現代の人は聞き取りにくいそうです。
ちなみに、この戯曲中心には、本格的な粤劇を上演する1000人以上収容する大劇場やホールやホールなどもある、粤劇の一大拠点です。
31日に私もここのホールで講演を致します。

さて夜は、その講演での対談のお相手・阮兆輝師家族と流白之間スタッフとのお食事会です。
水曜日の粤劇の楽屋では、衣装や冠の着け方の実演を見せていただき、たいへんにお世話になりました。
楽屋内での阮兆輝師は、威厳に溢れ周りの方々の敬意もすさまじいものがあります。
それもそのはず、阮兆輝師は日本で言えば人間国宝のような存在です。
ウィキペディアにはこうしょうかいされています。
香港の広東オペラ俳優。「天才」「万能の達人」ともよばれている。名誉勲章、芸術後続賞、銅紫紫星を受賞。いぎりす・ロンドンでエリザベス2世女王の前で南音音楽を披露した最初のアーティストでもある。現在、香港広東オペラ協会副会長を務めている。
こんな偉い方の家族との食事会です。たいへん緊張します。
いつも冗談ばかり言っている流白之間スタッフたちも、さすがに緊張しています。

私の隣にいる方が、阮兆輝師でその隣が奥様。奥様の後ろにいらっしゃるのがお嬢様とその夫。
なんと、お嬢様のMusette(ムセット)さんは、2年前の「風姿花傳 能劇大師班」の参加者でした。
奇遇なご縁です。
2年前は、きさくな女の子というイメージでした。こんな偉い方の娘だったなんて思いもよりませんでした。

広東語の通訳を間に挟んで有意義なお話をたくさんしました。
能と粤劇の違いや共通点など、いろいろなお話をさせていただきました。
阮兆輝師は、水曜日に楽屋でお目にかかった時とは違い、とてもフレンドリーでした。
日本で話題の映画「国宝」は、香港でも上演され人気が高いそうですが、阮兆輝師もご覧になったそうです。
映画の話から膨らんで、能と歌舞伎との違い、若いころのお稽古方法など、お話しさせていただきました。
夜7時から始まった夕食は、気が付くと11時を超えていました。
楽しい夕食でした。
阮兆輝師から、「阮兆輝カレンダー」をいただきました。
一番好きな写真をお選びになって、それにサインまでくださいました。

kuwata_takashi at 14:54|Permalink│Comments(0)│
2026年01月25日
香港から2026 5

先日の21日(水)に、「錦田郷十年一届酬恩建醮」というイベントに行ってきました。
これは10年に一度、神々への奉納のため、臨時で作った竹の舞台で広東オペラを上演するイベントです。
31日に対談をさせていただく、広東オペラ界の巨匠・阮兆輝師よりお招きをうけました。
とにかく10年に一度の大きなイベントです。会場はすごい人でした。

劇場の大きさに圧倒されます。

世界最大の竹の建築としてギネス世界記録に認定されているそうです。
内部はこんな感じ。

本格的な広東オペラが上演されています。

特別に楽屋も見学させていただきました。

楽屋の仕切りも竹。

緞帳や背景の幕を吊るバトンも全て竹製です。
特別に舞台袖の特等席で鑑賞させていただきました。

長い髭の威厳のある王様が阮兆輝師です。出番を待つ佇まいにオーラがあります。

劇場の外には数々の屋台でにぎわっています。

屋台では定番のたこ焼き(日式章魚小丸子)もありました。

10年に一度の素敵な舞台に立ち会えた幸運を喜びます。
多謝。
kuwata_takashi at 12:00|Permalink│Comments(0)│
2026年01月24日
香港から2026 4

香港での能ワークショップ「風姿花傳 能劇大師班」も、5日間が終了。
はや半分終わりました。
稽古は順調で、3曲目の「経正」は、サムライの舞だというと、興味津々。
楽しんで太刀を抜く型などやっています。
さて、上の写真に着物を着ている女性が写っています。
今回のワークショップは見事に日本文化が大好きな人たちが集まりました。
参加者の中に、日本舞踊や茶道を習っている人が多くいます。
善竹十郎・大二郎師が去年香港で行った狂言ワークショップに参加した人もいます。
他にも、日本の殺陣や居合を習っている人、日本語の先生などもいます。

3年前シンガポールの演劇学校(ITI)で指導した香港人の学生の、ヨーヨーとマンイックも参加しています。
能が大好きと言ってくれます。
再び能が学べることをたいへんに喜んでいます。
気が付いたら、参加者は自主的に持っている着物を着始めました。
ジェシカという方は若柳流日本舞踊の名取と聞いて驚きました。
香港では日本舞踊が結構流行っているそうです。
「うちの先生は少なくて、弟子は50人くらいしかいない」
などと言っています。いや、すごく多いですね。
若柳流名取も10~20人ほどいるそうです。
名取試験は、日本まで受けに行くようです。

ジェシカは着付けも習っているらしく、浴衣の畳み方を他の参加者に指導しています。
他にもメイという方は表千家の茶道師範だそうです。

綺麗に着物をたたんで風呂敷に詰める姿は、決まっています。さすがお茶の先生です。

狂言と日本舞踊を習っているキーナと、殺陣を習っているデビットは、袴を丁寧にたたみます。
稽古場では日本語が飛び交います。
ワークショップも半分終わったので、金曜日の稽古終了後、参加者達と飲みに行きました。
ワークショップは22:30までやっています。着替えてスタジオを出たらはや夜の11時。
そんなに飲み会には来ないかと思ったら、多くの方が参加しました。

シンガポールでも香港でも、お酒の席では英語で話さなければならないので、けっこう大変です。
しかし、今回は心配無用。日本語がしゃべれる人がかなりいます。
日本語で会話が始まり、日本語が分からない人は会話に入れないという不思議な現象が起こりました。
いつもは、英語の会話に入れなくて困っているのですが、今回は逆でした。
バーのオーナー(たぶん)の娘さんも、日本語を勉強していて日本が大好きだそうです。
カウンターにいた娘を呼んできて、日本語で挨拶していただきました。
オーナーからドリンクのサービスもありました。
多謝。
kuwata_takashi at 13:29|Permalink│Comments(0)│