2025年05月
2025年05月11日
「蝉丸」御礼

観世九皐会「蝉丸」、首尾よく演じ終えることが出来てホッとしております。
ここ2か月、膝を悪くして舞台を休んでおりました。
2か月ぶりの復帰戦が今回の「蝉丸」でした。
やっと能舞台に帰ってくることが出来て、演じながらジーンときました。
さて、「蝉丸」のシテである逆髪という狂女は、かなり特異なキャラクターです。
まず大きな特徴として、天皇の皇女ということがあげられます。
狂女物の中では、格別に高貴な身分です。継体天皇の妃となる照日の前がシテである「花筐」に並んで品位が必要とされるシテです。
また、このシテは生まれながらに狂乱している点が特殊です。
能の中の狂女は、ほとんどが後天的に狂乱した人たちです。多くは、子供や恋人などと生き別れてたことがきっかけとなって狂乱して、物狂い芸を見せながら諸国を旅して子供や恋人を捜します。
この能のシテは、生まれながら髪の毛が逆立っていたことから狂乱して諸国を彷徨っています。
やはり、生き別れたことから狂乱している狂女とは演じ方が変わってきます。
生来の物狂いなので、やはり強い狂いが求められます。
そういった特徴から、この逆髪という狂女は難しいシテと言われます。
まず、髪の毛が逆立っていることを能ではどう表すのでしょう。
上の写真のように、鬘を前に垂らすことによって上に逆立っていることを表します。
何とも能らしい表現です。
この垂らし髪、左だけの垂らす場合と両方の髪を垂らす場合と二通りあります。
どちらも検討しましたが、両方垂らすとそれはそれでバランスがとれていてあまり異形な出で立ちに見えません。
片方だけ髪の毛が垂れているというアンバランスさが、いかにも狂乱の態に見えます。
途中、何度か髪をなでる型がありますが、本来は後ろにきれいに束ねられている髪の毛が前に垂れているシュールな感じがよく出ています。

装束も、狂女らしく派手な柄のものを選びました。

扇も派手な柄のものです。
全体的に、皇女としての品位よりも生まれながらの物狂いという特異性を強調した装束と
扇を選びました。
ただ、謡があまり荒くならないように気をつけました。
そのあたりは、お稽古で師匠に繰り返し指導を受けました。
皇女としての品格を持っての表現と、生まれながらの物狂いとして強く表れる狂乱の態。
その二面性をうまく内在させて演じました。
また、この能はシテの逆髪の弟として蝉丸という盲目の皇子が出てきます。
この蝉丸が大事な役なのです。
蝉丸はシテと同格の役で、両シテ物と言われます。
シテよりも上の立場の人が蝉丸を演じることもよくあります。
今回は、観世喜正先生が蝉丸をつとめてくださいました。
たいへんに光栄なことです。
喜正先生に負けないように、懸命に食らいついていきました。
二人で謡を掛け合うところなど、喜正先生の呼吸を受けて細心の注意を払いました。
能の掛け合いとして成り立たせるためには、私が何とか喜正先生についていくしかありません。
とても良い経験をさせていただきました。

能「蝉丸」では、姉弟再会の場面では肩に手をかけて結構リアルに喜びます。
能としてはかなり写実的な表現です。
稽古や申合では恥ずかしかったですが、当日は上の写真のようにお互いに能面を着けていますので問題なく出来ました。
この能では、せっかく再会した姉弟はまた別れていきます。
姉の逆髪がゆっくりと橋掛かりから去っていき、舞台に弟の蝉丸が一人取り残されます。
何とも言えない悲しい終わり方です。
普通の演劇なら、ここで緞帳が降りて終演です。
緞帳のない能舞台では、この後蝉丸がゆっくり橋掛かりを帰っていきます。
余韻を残しながら、蝉丸は一人歩いて姿を消します。
盲目のため、杖を突きながら歩きます。
静寂の中、能舞台には杖を突く音だけが響きます。
そうして舞台を歩くだけの表現が、無限の余韻を作り出します。
能の表現技法って、素晴らしいなあと思います。
kuwata_takashi at 23:00|Permalink│Comments(0)│
2025年05月10日
明日、「蝉丸」


いよいよ、明日は九皐会「蝉丸」です。
万全の準備をして明日に備えています。
さて、いつも来ていただくお客様から素敵な楽屋見舞いが届きました。

「走り井」は、能「蝉丸」の道行に出てきます。
「水も走り井の影見れば。我ながら浅ましや」
と、井戸に映した自分の姿にショックを受ける場面です。
中身は、水のしずくの形をしたお餅です。
さっそく一つ頂き、明日に備えます。

kuwata_takashi at 20:06|Permalink│Comments(0)│
2025年05月06日
能楽タイムズ5月号インタビュー記事掲載

能楽界の様々な話題をとり上げている能楽の専門紙「能楽タイムズ」に、私のインタビュー記事が大きく掲載されました。
8ページの紙面のうち、2面と3面はほぼ私のインタビュー記事です。
能楽の専門紙はいくつかありますが、能楽五流の話題を全て網羅している専門紙はいくつかしかありません。
その中で能楽タイムズは、創刊から70年以上経つ一番の老舗紙です。
いつもは、各流のお家元クラスや人間国宝等の能楽界の重鎮たちの対談が掲載される中、異例の抜擢によりインタビューしていただきました。
6月29日に演じる二度目の「道成寺」のことを皮切りに、入門30年となった私の能楽師生活を振り返り今後の抱負を述べています。
社中の稽古やシンガポールなどの海外での能の指導や私が本拠地として活動する深川のことなど、盛りだくさんの内容の記事です。
能楽タイムズの対談にとり上げられることは、能楽師として一世一代の名誉なことです。
詳しい内容は、下記の能楽タイムズのWEBページをご覧ください。
能楽タイムズ5月号 ダイジェスト版
貴重な紙面です。ぜひ、能楽書林(千代田区神田神保町3-6)にてお買い求めください。
オンライン購入もできます。下記リンクからお願いいたします。
能楽書林オンラインショップ
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2025年05月03日
5月九皐会「蝉丸」


5月11日、五月九皐会「蝉丸」を演じます。
能「蝉丸」は、天皇家に生まれながら非業の人生を送る姉弟の物語です。
盲目の身として生まれた弟・蝉丸は逢坂山に捨てられてしまい、そこで道行く人に施しを受けて暮らしています。
そこへ、姉の逆髪がたまたま通りかかります。逆髪は、生まれつき髪が逆立っているという強烈なクセ毛の持ち主。それが故、狂乱して諸国を彷徨っています。
たまたま逢坂山に訪れた逆髪は、そこで弟・蝉丸が弾く琵琶の音に耳を奪われます。まさかの姉弟の再会。姉弟は走り寄り、互いに肩を抱き再会を喜びます。
姉弟は、お互いの境涯を嘆きつつも、やがて再び分かれていきます。
何ともシミジミとした風情の能です。
姉弟が、再会を喜び抱き合うシーンは、能の表現としてはかなり劇的な演技です。
一曲を通じて、ドラマチックな展開を見せる人情劇です。
「蝉丸」は、シテが姉の逆髪で、ツレが弟の蝉丸ですが、曲名にもなっている通り蝉丸は、極めて重要な役です。シテより上の立場の方が勤めることもよくあります。
今回は、逆髪は私が演じますが、蝉丸をお相手してくださいますのは観世喜正師です。
とても光栄なことです。
喜正先生に全て持っていかれないように、私も存在感を発揮して演じたいと思います。
チケットは、絶賛発売中です。正面席は残りわずかです。
何とぞよろしくお願いいたします。
kuwata_takashi at 21:48|Permalink│Comments(0)│