2025年03月

2025年03月26日

桑田貴志 能まつり「道成寺」

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自身の芸の研鑚のため立ち上げた「桑田貴志 能まつり」は、今回で第15回公演となります。

この節目を記念して、大曲「道成寺」に挑戦いたします。

 

「道成寺」は、能楽師の卒業試験と言われます。私が師匠のお許しを得てこの大曲に挑んだのは
2009年でした。身を削るような稽古を重ね、全身全霊で演じたことを昨日のことのように思い出します。

「道成寺」は能楽師が必ず通る登竜門なのですが、普通の能楽師は生涯に一度しか演じません。まさに一世一代の舞台なのです。

そんな中で、有難いことに今回再び挑戦する機会を得ました。これまでの能楽師キャリアの集大成の覚悟で挑みたいと思います。

 


「道成寺」は、能の中でかなり特殊な演目です。演者にとっては、一瞬たりとも気の抜けない山場の連続ですが、お客様にとっては見どころ満載の楽しい能と言えます。


一番の見どころは、鐘入りです。上から落ちてくる80kgほどの大きな釣鐘の中にタイミングを合わせて飛び込むという、危険と背中合わせのスリリングな舞台展開をみせます。

 


今回は、初演の時とはワキとお囃子の流儀を全て替えました。「道成寺」は、お相手の流儀が変われば演じ方がかなり異なります。全く新たな気持ちで挑みたいので、あえて全て違う流儀の方にお相手をお願いしました。


特に観世流小鼓の乱拍子は、掛け声と足遣いが特殊でとても魅力的です。観世流小鼓方宗家・観世新九郎師をお相手に、裂ぱくの気合で演じたいと思います。

 


また今回は、「赤頭」という小書(特殊演出)で演じます。
後半のシテの出で立ちが同封のチラシの通り、赤頭と緋長袴に変わります。

緋長袴は矢来観世家初代・観世清之師が考案したと言われます。いわば、矢来観世家の十八番(おはこ)の演出です。師匠や先輩からしっかり芸を受け継ぎ、「これぞ矢来観世家の道成寺」と胸を張って演じたいと思います。

 


仕舞は、観世喜正師の「籠太鼓」と観世喜之師の「卒都婆小町」です。どちらも女の情念を描いた舞です。
観世喜之師の「卒都婆小町」は自家薬籠中の得意曲です。平成14年にはこの曲にて芸術祭優秀賞を受賞しました。その至芸をじっくりとご堪能ください。

 


また、15回記念として、狂言は人間国宝の野村万作師にご出演いただきます。90歳を超えてなお一線で活躍を続ける狂言界の至宝・万作師の至高の舞台をお楽しみください。



毎回お願いしております野村萬斎師には、ご子息の野村裕基師とともに、能「道成寺」のアイ狂言をお願いしました。
「道成寺」のアイは狂言方の大役で、能の中で重要な役をつとめます。現代狂言界の第一人者である野村萬斎師の胸を借りて、精一杯演じたいと思います。

 


チケットは、私の公式ホームページの申込みフォームまたはメールからお申込みください。



お電話でのお申込みは、矢来能楽堂か深川能舞台にお願いします。不在時は留守番に伝言をお残し下さい。折り返しこちらから連絡いたします。


WEB予約 
http://fukagawanohbutai.sakura.ne.jp/  E-mail    shitashimu@hotmail.com

TEL予約 03-3268-7311(矢来能楽堂) 03-3643-0891(深川能舞台・桑田)




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2025年03月06日

2025シンガポール第2便 7

MP

シンガポールの演劇学校「Intercultural Theatre Institute」能クラス、無事に修了しました。
終演後、みんなで記念撮影。良い笑顔です。


今日は、評価とミーティングの日。また学生たちとお別れの日です。

今回教えた学生は、ITIの17期生と18期生。
シンガポール・インド・マカオ・フィリピン・台湾・中国・オーストラリアの7か国から集まった13人の学生たち。

昨日のプレゼンテーションの後、装束を取ったあと泣きながら「Sensei・・」といいながらハグしてきた学生がいました。終わった瞬間感極まって泣いている学生たちを見て、私ももらい泣きしました。
みんな、私の心に刻まれました。

今回の学生は、例年より人が少なかったのでその分細かく指導出来ました。
一人一人を引き上げていく過程をじっくり見られた学年でした。

それだけに感慨深いものがあります。

1・2年生が少ないので、3年生もプレゼンテーションでは様々なお手伝いをしてくれました。

中でも一人の3年生は、普段の稽古から参加して地謡を謡ってくれました。
その学生は、能が大好きだそうです。だからプレゼンテーションにぜひ参加したいと言ってくれて、嬉しそうに稽古していました。

その学生の謡を聞いてびっくりしました。
すごく上手なのです。

2年前、1年生で能クラスに参加したその学生は、確かに熱心に稽古していたけどそんなに上手であったわけでありません。まあ、普通の謡でした。

今回、その学生の謡の上達ぶりに驚きました。
気が付くと、1・2年生を統率して謡の指導までしています。

そのリーダーシップにも驚きました。

その学生はこの2年間、能の謡の稽古を毎日やっていたわけではありません。本人に聞いたところ、たまに謡っていただけだったそうです。(というか、たまに謡っているのがすごいのですが)

それなのにこんなに上達しているのです。

その学生が、この2年間に積んできた発声トレーニングや、他の古典芸能の稽古が、役者としての基礎技術を底上げしたのでしょう。

そしてその基礎技術が、謡を謡うことにも生かされているのでしょう。

まあ、驚きました。

どんな演劇を演じるにしても、根底にある基礎技術は共通しているのでしょう。

私は、その3年生の例をあげ、学生たちに基礎トレーニングの重要性を説きました。

そして、能の稽古で身につけたことを自分たちの演劇表現に生かしてほしいと述べました。
自分の国に帰ったら、能の良さを広めてもらいたいものです。


今年で開校25周年を迎えたこの学校の活動は、シンガポール内でも知られてきているようです。

今回のプレゼンテーションには、在シンガポール大使ご夫妻とJapan Creative Centre(JCC)の所長がお見えでした。

楽屋までご挨拶に来てくださいました。
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在シンガポール大使ご夫妻と

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JCC所長と

日本とシンガポールの文化交流の一端を担っていること、嬉しく思います。

ある学生に、聞かれました。

「KUWATA先生は、いつまでシンガポールに教えに来てくれるんですか」

私はドヤ顔で言います
「Forever(永遠に)」

本当に、ずっと来たいと思っています。

最後に、楽屋でのスナップです。
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おまけ
袴の紐の結び方を覚えた学生の一人。
自分のスカートの紐も、袴の紐の結び方をしていました。

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2025年03月05日

2025シンガポール第2便 6

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いよいよ、ITI能クラスの集大成がやってきました。
プレゼンテーション当日です。


今回は、新たな試みとして19:30からのプレゼンテーションの前の昼間に、プレゼンテーションとは別に学生たちに一人ずつ仕舞をさせました。

これは、能コースの採点評価をするための試験のようなものです。
ITIも学校なので、学生に対して採点をしなければなりませんが、プレゼンテーションでその評価を下すのはあまりにも過酷なので、前回からプレゼンテーションとは別に評価の時間を作りました。

そもそも、プレゼンテーションの最中はとても忙しいので、学生たちの舞台をじっくり見る時間がありません。
今までは、録画したビデオを見ながら採点したりしていました。

それでも今までは、プレゼンテーションで舞う仕舞を事前に舞ってもらって採点をしました。
しかし今回は、プレゼンテーションでやらない仕舞を評価のためだけに舞ってもらいました。しかも一人ずつの仕舞です。

今までは、時間の都合で2~3人ずつ舞ってもらっていました。
プレゼンテーションの時間も限られているので、そうするしかなかったのです。

今回は、プレゼンテーションとは別にやるので時間の制約はありません。
学生も12人と、比較的少ないので一人ずつ仕舞を舞ってもらいました。

稽古の時は、何人かで舞っています。一人で舞うのはかなりハードルが高いようです。
最初は、上手く舞えませんでした。

時間はかかりましたが、一人ずつ根気よく稽古しました。
学生たちも、一人での仕舞はまさに自分との戦いです。稽古するしかありません。

日に日に上達していきました。

結果的に、今までと比べて全員の底上げがなされました。
グループの仕舞だと、どうしても甘えてしまう人が出てきますが、今回はそんな人は一人もいませんでした。

評価のための非公開の仕舞。みんな素晴らしい出来でした。
私は、採点しながら今までのことを思い返していました。

「全然覚えなかったあいつが、ノーミスで仕舞やっている」
「精神的に弱かったあのこが、こんなに堂々と舞っているなあ」
「今まで落ち着いて完璧だったのに、こんなところで間違えるなんて、意外だな」

なんか、始まる前からジーンときました。


仕舞の評価と、プレゼンテーションまでは少し間が空きました。
学生たちはどうしていたのかというと、、、、

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ずいぶん緊張していたのでしょうね。みんなでお休みでした。



さあ、プレゼンテーションが始まってからは怒涛の忙しさ。
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順番に装束を着けます。

そして次々に舞台に送り出していきます。

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素晴らしい舞台成果でした。

最後はカーテンコールに全員登場。
正座で「A RI GA TO U GO ZA I MA SHI TA」
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2025年03月04日

2025シンガポール第2便 5

今日は、劇場に移動して舞台製作とリハーサルです。

今回の劇場は「実践劇場」という所です。ITIの創始者である故クオ・パオ・クンの娘さんが経営している劇場です。

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Waterlooという演劇や芸術関係の施設が集まる街にあります。
いかにも芸術の街という外見をしています。

毎回この日がくると、「いよいよだなあ」というシミジミとした感傷が押し寄せてきます。


まず、場当たりをして舞台の大きさを決めます。MP

そして音響と照明を決めていきます。演劇学校であるので、これも授業の一環です。

その後は、毎回恒例の舞台拭きです。
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夕方は仕舞のリハーサル。
今回は、学生が少ないので一人ずつ仕舞を舞わせました。

いつもは2~3人での仕舞でしたが、今回初めて一人ずつの仕舞に挑戦させました。
言うまでもなく、一人で舞うためには完ぺきに覚えていなければなりません。
「型を忘れたから横の人を見る」が出来ません。
プレッシャーがかかりますが、学生にとっては良い稽古になります。


能のリハーサルは、ゲネプロ形式で夜7時から行われました。
本番通りの装束を着て、本番と同じ手順で通しました。
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昨日は、あれだけ立派に演じていたのに、やはり場所が変わると勝手が違うようです。

普段間違えない人が、意外なところで間違えたりします。
これが、舞台の怖さです


また学生たちは、大道具や小道具も自分たちで作ります。
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「竹生島」の舟

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「竹生島」の小宮

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「邯鄲」の宮殿

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「竹生島」の宝の珠

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「竹生島」の龍戴

これらは、全て学生たちが作ったものです。

大道具や小道具を揃えるのも役者のつとめなのです。


さあ、明日はいよいよ本番です。


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2025年03月03日

2025シンガポール第2便 4

今日から観世喜正師と中森健之介くんが合流し、いよいよ今回のITI能クラスも最終週です。

 

今日、学校のスタジオでの最後の稽古を終えました。能「竹生島」「邯鄲」に、一人ずつ演じる仕舞。

もうすっかり出来ております。

1月中旬から2か月間行われたこのスタジオでの稽古。もうここで稽古することはありません。


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稽古の後、忘れ物をスタジオに取りに行くと、学生たちが居残りで稽古していました。本番に向けて袴の修繕をしている人もいます。

 

毎度のことながら、舞台へ向かう学生たちのエネルギーはすごいものです。



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