2024年06月
2024年06月30日
「融」御礼
第14回「桑田貴志 能まつり」、大盛況でした。
客席は、ほぼ満員。暑い中、多くのお客様がお運びくださいました。
この場を借りて御礼申し上げます。
今回演じたのは、「融」です。「舞返之伝」という特別な小書に挑戦しました。
「舞返之伝」とは、舞を返す、即ち舞を2度舞います。しかも「早舞クツロギ」「急之舞」という難易度の高い舞を立て続けに舞います。
技量はもちろん体力と気力も、求められます。
最近、私は膝を痛めておりまして、当日は正座もままならない状態でした。
膝は、能を舞う時のキモです。痛いなんて言っていられません。痛いの痒いのなどと弱音を吐かず、気合を入れて臨みました。そうは言っても気合だけでは心もとないので、痛み止めの薬も飲みました。
上演中はアドレナリンが出ていますので、膝の痛みなど忘れています。
思う存分動き回ることが出来ました。
膝は大事にせねばなりません。もっと、体重を落とさねば、、、
さて、前シテは汐汲みの老人です。
田子という汐汲みの桶を担いで登場です。
光源氏のモデルとも謂われるイケメン貴公子・源融ですので、老人とはいえ明るい色目の装束を選びました。
前シテは、とにかく謡が多い。次から次へと謡います。
ワキとの掛け合いも多いのですが、これが厄介です。
ワキの殿田謙吉師は下掛り宝生流のワキ方なので、観世流と謡が違います。
「融」は殊に違っているので、つい紛れてしまいます。惑わないよう気をつけました。
前場の見せ場は、田子で汐を汲む場面です。色んな汲み方がありますが、今回は舞台の外の白洲の水を汲むというケレン味たっぷりの型でいたしました。
能面を着けていると足元が見えないので、舞台の端へ行くのは怖いものです。
すり足で舞台の前へ進みます。足元が見えない中、頼りとなるのは足の裏の感覚だけです。進んでいくうちに、足の裏で舞台のヘリが感じられました。手探りならぬ足探りでの前進です。
この辺が舞台の端だと察したら、えいやと深くかがんで桶にて水を汲みました。
なかなか上手くいきました。
こういう風に遊び心を持った型も、能には多くあります。
後場は、楽しんで舞えました。
後の源融の装束は、直衣という能装束の中でも格の高い装束を着けました。
通常は狩衣という装束を着ますが、直衣を着るとグンと位が上がります。
能では、天皇かそれに準ずる位の役が着けます。めったにお目にかかれません。
源融は、左大臣という最高位の大臣であり、何より嵯峨天皇の皇子という皇室の血筋を引いている貴公子です。直衣にふさわしいと思い、今回は着させていただきました。
上着の直衣が気品のある白色なので、他の装束は朱色で統一しました。
下の大口袴と中に切る厚板から、腰に巻く帯(腰帯)や袖口のツユまで朱色です。
また、左大臣という偉い役職の人なので、自ら太刀を着けて戦ったりはしないのでしょうが、格好が良いので真の太刀という綺麗な太刀をはきました。
なかなか華やかな出で立ちの後シテ・源融でした。
「早舞クツロギ」は、囃子との兼ね合いが難しい舞です。
特に今回は、笛方の一噌隆之師が「句マタギ・吹きソラシ」という難しい替えの演奏をしてくださいました。
この替えの演奏は、聞く方は華やかで良いのですが、舞う方は聞きなれない笛の譜なので混乱します。
細心の注意を払いながらの舞でした。
「急之舞」は、文字通り急速の舞です。フルスロットルで動かなければなりません。
そうは言っても、ドタバタと舞うのでは台無しです。
左大臣・源融らしく気品を持って舞うよう心掛けました。
体力的には辛かったのかもしれませんが、気力が充実していました。
イメージ通りの舞ができたように思います。
舞の前に、扇を投げるという珍しい型があります。
笛の前辺りから、角に向かって軽やかに扇を投げるのですが、常座の方へ転がっていきました。
一瞬、扇を見失って焦りました。
舞台に落ちる音がしたから、どこかにあると思われます。
この場合、最悪なのは舞台の外に落ちること。(もちろん、落ちた時のために替えの扇も用意してあります)
その最悪の事態は避けられたっぽいのですが、能面していて視界が狭いので、扇がどこにあるのかわかりません。
キョロキョロする訳にいかないので、落ち着いてゆっくり舞台を見回し、何事もなかったように扇を拾いました。
お客様から、「あれは扇を落としたのですか?」と聞かれました。
あれはそういう型です。決して失敗したわけではありません。念のため。
大河ドラマ「光る君へ」の影響で、昨今平安貴族がブームになっております。
平安貴族の優雅な舞に思いを馳せながらの、楽しい舞台でした。
写真撮影 駒井壮介
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kuwata_takashi at 22:00|Permalink│Comments(0)│
2024年06月29日
明日、能まつり「融」です
いよいよ明日、「融」です。
チケットもコロナ以後では、売れ行き好調です。
まだ、若干チケットございます。当日券販売いたしますので、お運びいただければ幸いです。
申合も終わり、今日は明日に備えて、自宅舞台で最終チェック。
明日の用意も、ひと通り終わり、ホッとしたところです。
明日は良い舞台にしたいと思います。
お客様に、いつも当日の能にちなんだお菓子を送ってくださる方がいます。
今回は、塩釜の浦の藻塩を焼くところにちなんで、「塩釜の藻塩」の「焼ショコラ」
毎回、趣向を凝らしたお菓子です。
kuwata_takashi at 22:43|Permalink│Comments(0)│