2024年01月

2024年01月10日

香港から 7

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香港での能ワークショップ「風姿花伝 能劇大師班」も、7日目を迎えました。

今日で3曲目の「屋島」を仕上げました。
この7日間で「鶴亀」「羽衣」「屋島」と、3曲も稽古できました。これは驚異的なペースです。

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ローマ字で作った特別謡本で、キチンと謡の稽古もしています。
全く分からない日本語の謡を、なかなか立派な声で謡っています。

シンガポールでも感じましたが、演劇をやるにあたっての基本的な身体技術はあまり変わらないと思います。

参加者は全員演劇に関わっている人です。中にはかなり有名な役者や舞踊家もいるようです。
そういった人たちは、やはり演劇をやるにあたっての基礎がしっかり定まっています。

普段から発声トレーニングをしているから、声は立派ですし、身体技法をしっかり学んでいるので仕舞の構えも様になります。

少し教えれば、どんどん覚えていくので、たいへんに稽古のしがいがあります。

さあ、「能劇大師班」もあと3日になってきました。
この3日間で、今まで稽古した3曲をしっかり復習して、最終日の発表会に臨みたいと思います。


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2024年01月08日

香港から 6

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月曜日も、ワークショップはありません。

どう過ごそうかと思っていたら、Wahwahからお誘いがきます。

「先生が行きたいところに連れていきます」

街中は一人で行けそうなので、郊外のお寺に行くことにしました。

最寄駅から25分ほどケーブルカーに乗り、山頂に行きます。

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このケーブルカーは、床がガラスになっていて迫力満点。空を飛んでいるような気分になります。

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香港の仏教寺院「寶蓮禪寺」

ここには、世界最大の野外座仏の天壇大仏があります。
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とりあえずお約束の手乗り大仏
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お寺の横には、「心経簡林(サムキンガーンラム)」というパワースポットがあります。
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仏の教えを刻んだ38本の木柱が、圧倒的に語ってきます。


「大仏の他に、行きたいところないですか」と聞かれたので、

「何かエンターテインメントが見たい。できれば中国オペラがいいなあ」
とリクエストしたら、
「今日は月曜日だから難しいなあ」

と言いながらも、懸命に調べてくれました。

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香港の中国オペラの情報は、なあなか日本語では出てこないので、助かりました。

鑑賞したのは「花田八喜」という広東オペラ。
勘違いからおこるコメディでした。

台詞は全く分かりませんが、隣でWah Wahが説明してくれるので、だいたいのストーリーは分かりました。

とにかく、声が美しく所作がキレイ。

能もそうなのですが、言葉が分からなくても歌と踊りで楽しめるのが歌舞劇の良いところです。

アーテンコールは写真を撮っても良いそうです。

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昨日に引き続き、香港の休日を堪能しました。

この二日間、日本人観光客がまず行かないであろう、長洲島、郊外のお寺、地元の人が楽しむ広東オペラと、深い観光が出来ました。
香港人の案内が無いと無理だったでしょう。

Special Thanks,  Wahwah &  Melissa.


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2024年01月07日

香港から 5

香港のワークショップ「風姿花伝 能劇大師班」、日曜日と月曜日はお休みです。
休日を満喫いたしました。

20年前の2004年にシンガポールの演劇学校で指導した学生の中に、Melissa(メリッサ)とWahwah(ワーワー)と言う2人の香港人がいました。
今は香港で演劇をやっている2人と久しぶりに香港で再会しました。

まず、メリッサが住んでいる長洲(チョンチャウ)島へ行きました。
長洲島は、香港島からフェリーで1時間ほどかかる離島です。香港のビーチリゾートの地のようです。

香港と言えば高層ビルが立ち並ぶ、金融と経済の街というイメージでしたが、街中を離れると自然豊かな地もたくさんあります。

フェリーで長洲島まで行くと、今度は漁船のような小さな船に乗って島の反対側へ行きました。

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舟の船頭さんや道端の露天のおばちゃんと、気さくに話すメリッサを見て驚きました。

20年前のシンガポールでは学級委員のような立ち位置のリーダー的存在だった彼女の今の姿をみて、微笑ましく感じました。

長洲島は小さな島ですが、それでも2万5000人ほど住んでいるそうです。離島としては結構な人口です。
その割に、風景はどこから見ても「のどかな漁村」

島には車すらないそうです。確かに道も狭くとても車が走れそうな感じはありません。
それなりに店が立ち並び多くの人が普通に生活しているのに、いまどき、車が走っていない街があるというのが驚きです。

島人達はみんな気さくに話しかけてきます。
吉野さんという日本人の方にも会いました。この人がお話し好きで、長洲島の話などを延々と語ってくださいました。
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こんな暖かい気持ちの島は、日本でもなかなか無いように思います。店に入っても、見知らぬ人がどんどん、話しかけてきます。

ああ、メリッサって良いところで暮らしているんだなあと、暖かい気持ちになりました。

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まず、島をハイキングです。
メリッサとワーワーと、もう一人の男性は私の通訳をしてくださっている香港人の方です。こんな風にプライベートなお出かけにも同行してくださって、感謝です。


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途中からメリッサの娘も合流しました。お嬢さんとは、11年前にシンガポールで会っています。その時はほんの小さな子供でしたが、今は15歳になり立派なレディです。

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途中、疲れたら海を見ながらビールを飲みます。

うう、至福のひと時。

知らないおじさんと会話してもしょうがないのでずっとスマホをいじっていメリッサの娘さんも、イマドキっぽい。

夜は、地元の海鮮料理の名店へ行きました。416956371_340669995428980_2585046106149114774_n

右端の女性は、ワークショップの参加者のBonni(ボニ)という方です。なんとこんな遠くの離島から毎日ワークショップに参加してくださっているそうです。
平日のワークショップの終了時間は22時30分です。
彼女は22時40分のバスに乗ってフェリー乗り場へ行き、23時30分のフェリーに飛び乗って帰宅しているそうです。

どうも彼女は香港ではかなり有名な女優でありダンサーだそうです。


とても良い一日を過ごしました。

彼女たちに能を教えたのは20年前です。
お互いに年と取ったねえと、語り合いました。

彼女たちは20年前のことをよく覚えていました。
「能を勉強して学んだことは、今でも体の中に残っている」と言ってくれます。「演劇の創作活動に役立っている」と、嬉しいことを言ってくれます。

思えば、20年前は私も必死でした。
能楽師として独立したてのペーペーでした。懸命に能を指導をしました。

その年はいろいろあって、通訳が授業にいませんでした。必死に片言の英語で授業を乗り切ったことも良い思い出です。

2002年に初めてシンガポールの演劇学校に指導に行きましたが、その時はサブ的な指導しかしませんでした。
2004年の学生は、私が初めて本格的に指導した人たちなので思い入れも格別です。学生のアパートにまで行き、ビールを飲んで語り合ったのも良い思い出です。

その同窓会が、20年後に香港で実現するなんて、感慨深いものがあります。

長年、シンガポールで能を指導してて良かったなあ。
なんだか、いろいろ報われた気分です。


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2024年01月06日

香港から 4

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香港での能ワークショップも、いよいよ半分が終わりました。
この5日間で仕舞「鶴亀」「羽衣」を終え、今日から3曲目の「屋島」に入りました。

参加者は、プロの役者や役者の卵たちです。身体能力に優れ、モチベーションも高いようです。すぐ覚えていきます。
ただ、参加者が29人と大所帯なので、細かなことを指導するのは大変です。参加者の中を回って注意するんのも一苦労です。

そんな中、一生懸命取り組んでいます。


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最初は、皆で能の映像を見ることから始めました。能という演劇がどういう特徴を持っているのかは、映像を見てもらうことが一番てっとり早いですね。

そして、能の構えとすり足から丁寧に教え、徐々に仕舞の型を教えていきます。
このあたりの流れは、日本で普通のお弟子さんに教えるのと一緒です。

構えやすり足は、能の稽古の基本なのですが、何度かやらせるとそれなりに様になっていきます。
やはり、役者なんだなあと感心します。

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「鶴亀」「羽衣」は、基本の動きが多いのですぐにマスターしていきましたが、今日から入った「屋島」は、扇を盾や太刀に見立て、複雑な動きをするので、四苦八苦しています。
まあ、3曲目にいきなり「屋島」を稽古させるのも、かなり高いハードルのように思います。

ただ、能の色んなエッセンスを学んでほしいので、あえて高度なカリキュラムを組んでいます。

あと1週間でいろんなことを教えていきたいと思います。


さて、ワークショップも1週間が過ぎ、参加者の顔と名前も覚え、徐々に打ち解けてきました。
29人もいるので、顔と名前を覚えるのは難しいことだと思っていましたが、意外にすんなりでした。
ほとんど日本人と変わらない様相の中国系の人達だから覚えやすいのでしょうかね。

平日は、22時30分まで稽古しているので終わった後はすぐに帰りますが、土曜日の稽古は18時に終わります。
参加者の有志たちと、食事に行きました。


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最初は、ポウチャイ飯という、釜めしのような香港料理の名店に行きました。

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その後は、若者が集まる生ビールのお店。
西洋風のバーなのですが、店のカウンターの上には「福禄寿」と書いてあるのが香港らしいです。


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2024年01月03日

香港から 3

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香港にて、能の稽古に励んでいます。

さて、まず香港で能のワークショップを開催することになったいきさつです。

2019年の12月頃、一通のメールが届きました。
ウィリアムと名乗る香港の方からの突然のメッセージに最初は警戒しました。

メッセージにはこう書かれていました。

「自分は、香港でアンディとウォルターに演劇を習っています。彼らからよく能について聞いています。私は香港で演劇トレーニングのワークショップを企画しています。あなたにぜひ香港に来てほしい」

アンディとウォルターは、私が2002年にシンガポールの演劇学校「Intercultural Theatre Institute」で能を教えた学生でした。20年前は、若い役者の卵でしたが、現在は演劇学校で講師をするほど立派な役者になっています。

20年以上シンガポールで能を教えてきたことから、こんな風に他の国まで広がったことを嬉しく思います。

私は二つ返事で了承し、具体的な日程調整を行いました。
当初は、2020年の秋ごろという話でしたが、とても2週間も香港に行く日程を空けられません。

ダメもとで聞いてみませした。「年末年始なら、日程が取れます。でも、その期間だと人があつまらないですよね」

返事は驚くものでした「香港では、新暦の正月は別に何の変わりはない。ワークショップを開催することに何の問題もない」

そうか、香港も旧正月を祝う文化なんだった。

そういう訳で、いったんは2021年の正月に開催することが決まりました。
しかし、コロナ禍によりやむなく延期となり、ようやく3年遅れで今回の訪問に至ります。

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ここ香港でも能に対する注目はそれなりにあるようです。30人の定員は、すぐ埋まったそうです。

そんなこんなで、1月2日から、2週間(10日間)の能のワークショップが、いよいよ開催されました。

外国人に能を教えることは、シンガポールでのノウハウがあるのでスムーズです。
ただ、演劇学校で教えていたシンガポールと違い、今回は一般募集から応募してきた参加者を対象に指導します。それなりの難しさがあります。

学校では、ある程度生徒間のコミュニティが出来ているので、そこにうまく入っていけば、稽古はやり易かったです。
今回は、中には元からの知り合いもいますが、お互いに初対面の人たちが大半のようです。

そんな中では、まずはワークショップのクラスの雰囲気づくりから始めなければなりません。
ただ淡々と能の稽古をしても面白くありません。
楽しく稽古できるように、様々工夫しなければなりません。

そうして、一人でも多くの参加者に「能って、面白いなあ」と思ってもらいたいなあと思います。

このワークショップの参加者の中から、次のアンディとウォルター(今回私を招待してくださった方の先生)が出てきてほしいなあと思います。


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