2023年06月

2023年06月17日

「松風」御礼

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第13回「桑田貴志 能まつり」 無事に終わりました。
暑い中、多くのお客様にご来場いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

「松風」は能を代表する名曲と呼ばれます。
稽古しながら、「ああ、松風って良い能だなあ」と何度も感じました。

「こんな良い能を演じられるなんて、嬉しいなあ」
そんな気分で当日を迎えました。

しかし、そんなウキウキした気持ちはすぐ吹っ飛びました。
「松風は」、大変な能でした。

まず、謡が極端に多い。それも、大半はツレと一緒に謡って(同吟)います。
ツレとの同吟は、たいへん気を使います。しかし、一緒に謡ってもらえる安心感はあります。

ずっと一緒に謡っている中、一人で謡う箇所では、謡いやすい反面、心細さを感じました。

一か所、フッと謡が出てこないところがありましたが、ツレの佐久間二郎さんが上手くフォローしてくださいました。

佐久間二郎さんは、私より先輩ですが、あえてツレをやっていただきました。
「松風のツレは、シテを演じた人にやってもらうと良い」と聞いていました。佐久間氏は、シテも演じ、また何度も松風のツレを経験しています。是非にとお願いしたら、快く引き受けてくださいました。所々で助けていただき、心強かったです。


また松風は、中入の無い能です。
普通の能は、シテは一度舞台から引っ込んで楽屋で装束を変えて登場します。
シテが装束を変えている間のことを、中入といいます。多くはアイ狂言が物語の背景などを語っています。

中入は休憩ではありません。だいたい10分くらいの間で装束を変えるので、とても慌ただしいのです。

でも、前半の装束をとき、心も身体も一瞬だけど緩みます。
水分補給をすることも出来ます。

それを考えると、中入の無い能は一瞬たりとも気の抜ける時間がなく、ただでさえ大変なのです。
その上松風は1時間40分程の長い能です。
中入の無い能でこれだけの長さの能は、ほぼありません。他には「木賊」くらいでしょう。

1時間40分もの間、集中力を保って演じ続けるのはかなりの体力を要します。
後半は、本当にキツかった。。。

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装束は、前半は白い水衣。
下に着るのは縫箔を腰巻つけにしています。裾しか見えないので、裾の模様にはこだわりました。

シテは松風なので、松の模様の装束を選びました。
ツレは、妹なので可愛らしい明るい色のものを選びました。

こうやって装束の取り合わせを考えるのも能の楽しみの一つです。

途中、恋いしい在原行平の形見の舞装束と烏帽子をしみじみと見込む型があります。
ここは、わざとらしいほど情感たっぷりに演じてみました。

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後半では、水衣を長絹に着替えます。物着といって、舞台上で着替えます。

といっても、シテはただ座っているだけです。後見が落ち着いた様子で手際よく装束を変えてくださいます。
松風は、舞台の真ん中辺りで前を向いた状態で着替えるという特殊な物着です。
私は、能面をしているのでほとんど見えていないので、落ち着いていました。もし、周りが見えていたら、恥ずかしかったことでしょう。

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形見の装束を身に着ける後半になったら、舞が中心です。
ここまでくると、稽古や申合ではホッとしました。
「もうすぐ終わりだあ」

本番では、ホッとするなどという気持ちは全くありませんでした。
とにかく、「ツライ」

やはり松風は大変な能です。

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終わったらもう、疲労困憊。
体感としては「道成寺」や「安宅」くらい疲れました。

終わってみて・・・
何だか、まだ舞台に気持ちが残ったままです。

「上手く出来たなあ」と思うところもありましたが、「ああ、ダメだった」と思うところも多々あります。

「もっと出来たのに・・・」という後悔の念も強く残ります。

「松風」、手ごわい能でした。



注 このブログで紹介している写真は、全て駒井壮介氏の撮影です。


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2023年06月04日

観世喜之先生 米寿祝賀公演

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師匠の観世喜之先生が、この度米寿を迎えられました。

私が内弟子入門したとき、先生の還暦祝いを大々的におこなったことが思い起こされます。
つまり私が入門して28年の年月が経ちました。早いものです。

当日は、喜之先生の下で育った門下が勢ぞろいして仕舞を1番ずつ舞いました。
私は「熊坂」という、薙刀を振り回す仕舞を舞いました。正直、この年には少々しんどい仕舞ですが、先生から学んだことを精一杯だし切ろうと、張り切って舞いました。

当日の番組は下記の通りです。

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先生も、自ら舞囃子「菊慈童」を舞い花を添えて下さいました。
喜正先生と和歌さんと親子三大での仕舞「三笑」も見ごたえ充分でした。

先生に育てられた門下が集まり、終始和やかなムードで公演は行われました。
先生のお人柄がなせることだと思います。


私が入門して28年間、先生には言葉で尽くせないほどお世話になりました。
私がこのように能楽師として活動できているのは全て先生のおかげです。

今後ともよろしくお願いいたします。



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