2022年10月

2022年10月26日

緑泉会「天鼓 弄鼓之舞」ご案内

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5日(土)緑泉会にて能「天鼓 弄鼓之舞(ろうこのまい)」を演じます。

 

新型コロナウイルスの蔓延も3年目となり、新しい行動様式での日常を徐々に取り戻しつつあります。

能楽公演も、感染対策をしっかりした上で以前のような公演形態が戻ってきました。能を演じられる喜びをかみしめつつ、今回の公演に精一杯取り組みたいと思います。

 


今回演じる「天鼓」は、「愛児を失った親の悲しみ」を主な枠組みとし、前場は「父親の嘆き」が、後場は「弔いを受けた少年の喜びの舞」がメインテーマです。前半と後半で雰囲気はガラリと変わります。

 

前半は、子供に先立たれた父親の悲しみに焦点を当てています。

前場の最後(ロンギ)で、父親が悲しみのうちに鼓を打ち、見事に鼓が鳴り響くシーンは、能楽屈指の名場面です。父親は、実際に作り物の鼓を打つ所作を見せます。鳴らない鼓でどれだけ美しい音色を感じさせるか、演者の力量が問われる場面です。

 

後場は一転して、明るく華やかな曲趣となります。

舞の軽やかさ、テンポの良さは格別です。この天鼓という可憐な美少年は、殺されたことを全く怨まずに、逆に弔いを感謝して喜びの舞を舞います。その姿には、一種の祝言性と安らぎが見て取れます。とても爽やかな作りの能です。

 
私は10年前にこの「天鼓」を演じておりますので、今回は弄鼓之舞」の小書(特殊演出)に挑戦します。

「弄鼓之舞」では、前場の父の登場シーンが整理されてスッキリとします。後場の舞は太鼓が入り、「楽」の舞の調子も盤渉(高い旋律)となり、より賑やかになります。橋掛かりや作り物をダイナミックに使用して、型や動きも派手になります。とてもよく出来た面白い演出です。

「弄鼓之舞」という難しい演出に、猛然とチャレンジします。

チケットご希望の方は、ご連絡ください。





kuwata_takashi at 22:36|PermalinkComments(0)

2022年10月09日

「班女」御礼

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観世九皐会「班女」、無事終わりました。

6月の終わりに鼠径ヘルニアの手術をして3か月程たちます。
その間、なかなか体力が戻らない日々でした。

能面との能装束を付けて一曲の能を演じるのはかなりの体力を要します。
今回の舞台は体力面で不安でした。
特に後半はクセから中の舞、舞アトと舞が続きます。どうなるか心配でした。

しかし、それは杞憂でした。身体がとてもスムーズに動きます。
夏の間にしっかり休養を取ったのが良かったようです。


「班女」は、好きな能です。いつか演じたいとずっと思っていました。

この能は、若い男女の恋物語です。しかも現在物ですので、とても馴染みやすい物語です。
私は恋する乙女の花子(はなご)を演じます。
私はもう50歳を超えたオジサンなのですが、この歳で恋する乙女を演じることが出来るのが能の素晴らしさです。

もちろん、恋する乙女の気持ちは分かりません。しかし能は、役になりきって演じてはいけないと言われているので、50歳のオジサンでも問題なく演じることが出来ます。

考えてみれば今年は、4月に「須磨源氏」で絶世の美男子・光源氏を演じ、6月に「葵上」で皇太子妃という高貴で気品のある女性・六条御息所を演じ、10月は、恋する乙女。
かなり尖がったキャラクターを演じている気がします。


装束は、色目の派手なものを選びました。
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通常は、赤と白の段模様の唐織を着るのですが、あえて赤と浅黄の段模様の唐織を着ました。
狂女物としての物狂いの様を、派手目な色合いで表現しようと考えました。

後場は、右肩袖を脱いで登場します。
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これは狂女物の決まりです。片袖脱いだ格好が、いかにも狂乱した感じです。

狂女物は、鬘物の女性より強く演じることになっております。
乱暴にならないように、声を張り上げて演じました。

この辺りの具合がなかなか難しいところです。
申合では、慎重に謡いすぎたきらいがあったので、当日は思い切って声をハリました。
ちょっと強いかな、くらいの謡がちょうど良いみたいです。

ただ、あくまでも恋する乙女であることは忘れません。
特に肩身の扇の扱いには最新の注意を払いました。

この女性にとって、恋する人とのつながりはこの扇だけですので、それはそれは大事に思っていたことでしょう。
最後、ワキツレに扇を見せるよう求められますが、シテは扇を胸元に隠します。
ここは、型付け上は胸元に扇を入れるだけなのですが、ちょっとした小芝居をしました。
胸元に入れた後、下の写真のように扇を抱きしめるような所作をさり気なく入れてみました。
ちょっとした工夫なのですが、効果的であったように思います。

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この「班女」という能は、三部作と言われます。
能「班女」、狂言「花子」、能「隅田川」です。
いずれも花子と吉田の少将の物語です。

「班女」は、2人の出会いを描いた能。
「花子」は、2人の夫婦生活を描いた狂言。
そして「隅田川」は、吉田の少将に先立たれた花子が、生き別れた子供を捜す物語。

現代でも、ヒットしたドラマや映画は、その後の続編が作られたりします。
例えば、今話題の「トップガン」など良い例です。

それくらい、この「班女」という能は人気を集めたのでしょう。
今回演じてみて、よく出来た能だなあとしみじみ感じました。
今まで以上に「班女」が好きになりました。


kuwata_takashi at 22:26|PermalinkComments(0)

2022年10月08日

矢来餅

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明日の「班女」を前にして、お客様から素敵なお菓子をいただきました。

「矢来餅」と書いて「やき餅」と読みます。
能「班女」の舞台となっている下賀茂神社の御用達のお菓子です。

下賀茂神社の御祭神は「矢」であるので、「矢が来る」と書いて「やき」と読ませているのでしょう。

明日の観世九皐会が開催される能楽堂は「矢来能楽堂」です。言うまでもなく、観世九皐会のホームグランドです。

こんな縁起の良いお菓子はありません。

明日はよい舞台になりそうです。

どうぞよろしくお願いいたします。

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kuwata_takashi at 23:00|PermalinkComments(0)