2022年04月
2022年04月10日
「須磨源氏」御礼
4月10日(日)、九皐会「須磨源氏」無事に終わりました。ご来場の皆さま、ありがとうございました。
長く楽しむことが出来たソメイヨシノも、さすがにほとんど散ってしまっていましたが、舞台の上には満開の桜を咲かせようと、張り切って演じました。
「須磨源氏」のシテは、光源氏です。
光源氏と言えば、「源氏物語」で数々の女性と浮名を流すイケメンですが、この能には女性は全く出てきません。
ひたすら、光源氏のイケメンぶりを楽しむ能の作りとなっています。
舞台の上とはいえ、絶世の美男子を演じるのは気分の良いものです。
光源氏らしく、颯爽と舞を舞い、楽しく演じられました。
能装束も、華やかなものを選びました。
前シテの老人も、若々しい配色の装束を取り合わせました。
声の調子も少し高くとって、華やかな老人となるように工夫しました。
そうは言っても、あまり声を張りすぎると若者の謡になってしまうので、声は抑えながら張って謡いました。
声の出し方の塩梅って、能の謡で一番難しいと思います。
老人の役柄はたくさんありますが、能によってその声の出し方は全く異なります。
例えば、2月に演じた能「項羽」の前シテの老人は、実は中国の猛将・項羽の亡霊ですので、抑えた声の調子の中に、武将らしい強さを込めなければなりません。
「須磨源氏」は、老人だけど華やかさを内包させて謡うとい難事を求められます。
だから謡というものは、難しいし、面白いのだと思います。
前場は、丁寧に演じました。まあ滞りなく出来ました。
ここで気を抜かず、後場へ突入です。
後シテは、ことさら華やかな能装束を選びました。
謡の中に「青にびの狩衣 たおやかに召されて」とあるので、上着の狩衣は、品の良い青色を選びました。
袴は、紫色の指貫です。これは、上着の青色との相性と、紫式部からの連想です。
そして、内側には赤色の厚板を着ました。厚板は普通に構えると全く見えないのですが、上の写真のように狩衣の袖を翻したりすると、脇からチラッと見えます。この「チラ見せ」が、日本の美意識と言われます。
師匠にも、「光源氏らしく優雅に華やかに演じなさい」と何度も注意をされました。
より優雅に、より華やかに見えるよう、工夫して演じました。
眼目の「早舞」は、通常は三段構成の舞のところを五段で、しかも替之型でさせてもらいました。
これは、もう一番の能「采女」と舞が重なっているためです。
「須磨源氏」の「早舞」と「采女」の「序之舞」は、舞の動きがほぼ一緒です。こういう場合は、「早舞」の方を替之型で舞うことになっています。
替之型は、普通の早舞より動きや回転や多くなり、より華やかな舞になります。
せっかく替之型で舞うことが出来るので、のびやかに楽しんで舞いました。
能が終わった後、いつもはイロイロ反省するのですが、今回はおおむね満足できた舞台となりました。
こんなことは珍しいです。
kuwata_takashi at 22:00|Permalink│Comments(0)│