2017年09月
2017年09月17日
「橋弁慶」御礼
緑泉会「橋弁慶」、無事に終わりました。
当日は、台風接近のため悪天候でしたが、多くのお客様がお運び下さいました。厚く御礼申し上げます。
これは、我が家のリビングに飾っている橋弁慶の人形です。
次男が生まれたときに、義母が買ってくださいました。
子供たちは、この人形を見ながら育っています。
この愛着の「橋弁慶」は、いつかは演じたいとずっと思っていました。
今回、親子で演じることが出来て大変嬉しく思います。
この能は、謡のお稽古を始めた方は一曲目か二曲目くらいにお稽古する曲です。
話の内容も、童話などでおなじみですので親しみ易い能だと思います。
ただ、能で演じるとなるとなかなか厄介です。
まず、シテは武蔵坊弁慶という歴史上のヒーローです。
能において弁慶は、豪快ほうらくでありながら尚且つ思慮分別も備えた大人物として描かれます。
「弁慶役者」などという言葉があるように、弁慶を演じて様になるのはなかなか難しいのです。
そしてこの能は、子方と派手に斬りあうというのが大きな見せ場となっています。
子方の型も多く、息を合わせて演じるのはたいそう難しいのです。
今回は自分の子供が子方だったので、何度も一緒に稽古しました。
型の呼吸を合わせるのは、問題ありませんでした。
長男も、じっと座っている子方よりは、このようにチャンバラが出来る役は楽しいようです。
ノリノリで演じていました。
小さい子供相手だと、怖がるといけないので薙刀はソフトに振りますが、今回は全く容赦なく、ブンブン振り回しました。
間違って当たっても、自分の子供なら気兼ねがありません。
長男にも、鋭く太刀を振り回させました。
緊迫感のある斬り組(チャンバラ)が出来たと思います。
この「橋弁慶」には、特別の思い出があります。
大学生に入学し能楽研究部の門をたたいて2か月が過ぎた6月上旬。明治大学と国学院大学と日本大学の三校合同で行う発表会「三校交歓会」で連吟として初舞台を踏みました。
そこで謡ったのが「橋弁慶」です。
明大能研は「力強い謡」を謡うことを伝統としています。
その第一段階として、初舞台の「橋弁慶」でシャカリキに声を出させます。
技術的なことはほとんど求められず、とにかく大きな声を出すように厳しく先輩から指導されました。
私たち一年生も気合を入れて大声をだす稽古を積みました。部室棟の屋上で、階下のグランドで大声出して練習しているテニス部にも負けない声を出すよう、特訓を受けました。
能の稽古ってもっと優雅に行うものだと思っていた私は、戸惑いました。
ただ、もともと中高生とバスケ部で汗を流した私は、そういう体育会系の稽古は性に合ったようです。
がむしゃらに稽古しました。
初舞台では、他の大学が目を回すほどの大音量で圧倒出来たと思います。
私は今でも「橋弁慶」というと、大学時代の初舞台を思い出します。
今回は、親子で楽しんで演じることが出来ました。
5年生となり、体格も大きくなってきた長男は、そろそろ子方も卒業です。
今回、ひょっとしたら親子共演は最後になるかもしれません。
最後、橋掛かりを帰って行く長男を見送りながら、ちょっとシミジミしました。
2017年09月11日
緑泉会「橋弁慶」
相変わらず、お知らせが遅くなりまして申し訳ございません。
今週の日曜日に緑泉会にて能「橋弁慶」を演じます。
この能は、五条の橋での牛若丸と弁慶との出会いを描いています。童話などでお馴染みのあの話です。
五条の橋の上で弁慶が刀狩りをしていると、ちょうど1000人目として牛若丸が現れます。
牛若丸は、子供ながら軽い身のこなしで弁慶を翻弄し打ち負かします。やられた弁慶は牛若丸の家来になるというのが一般の童話のあらすじです。
能ではどういう訳か、刀狩りをしているのは牛若丸という設定です。
橋の上で通る人に悪さをする少年がいると聞きつけた弁慶は、少年をやっつけようと五条の橋に行きますが、牛若丸に返り討ちにあってしまいます。少年のあまりの強さに、名前を聞くと源氏の御曹司であるという。弁慶は牛若丸に忠誠を誓い主従の契りを結びます。
正直どちらが正しいのか分かりません。面白い違いです。
能「橋弁慶」では、源義経と武蔵坊弁慶という能における二大スターの出会いが、劇的に上手くまとめられています。
見せ場はやはり、弁慶と牛若丸の斬り組(いわゆるチャンバラ)です。
薙刀を振り回して襲い掛かる弁慶に対して、牛若丸は太刀を持って軽快に立ち回ります。
大男の弁慶が凛々しい少年にまんまとやられてしまう様は、時代劇を見ているようで胸がすく爽快さです。もし、「能は幽玄の美」などという先入観があれば、大いに打ち破られることでしょう。
後場はほとんど牛若丸が主人公と言っても差支えないほど、牛若丸は大活躍します。
この能の眼目は、少年の大人顔負けの演技を楽しむことでしょう。
この牛若丸の役に、長男・潤之介(小学五年生)が挑戦します。
とても難しい子方ですが、本人は張り切って稽古に励んでいます。子供にとっては、太刀を持ってのチャンバラは楽しいのでしょう。生き生きと稽古しています。
我が家の居間には、次男の初節句に頂いた「橋弁慶」の人形が飾ってあります。
幼いころからこの人形を見て育った子供たちは、「橋弁慶」には親しみを持っているようです。
今回、親子共演という形でおなじみの「橋弁慶」を演じることが叶い、大変に嬉しく思います。
まだチケット様はお求め頂けます。
ご希望の方は、私までご一報下さいませ。
2017年09月02日
旅芸人日記
19日(土) 昼・東京 国立能楽堂 夜・甲府
20日(日) 昼・東京 矢来能楽堂 夜・札幌へ移動
21日(月) 札幌公演
22日(火)23日(水) 帯広公演
24日(木) 釧路公演
25日(金) 町田稽古
26日(土) 浜松ワークショップ
27日(日) 浜松公演
28日(月)~31日(木) 札幌公演
9月1日(金) 旭川公演
さらに、
明日3日(日)は千葉・印西市にて公演。
4日(月) 富士宮・富士稽古
と、移動続きです。
暑い中、西へ東へ、北へ南へ奔走しています。
移動は慣れているとはいえ、これだけ連日あちこち行くことは珍しいです。
甲府や浜松は、中央線快速や新幹線で移動なので、そんなに大変ではありません。
ただ、甲府は珍しく東京と地方公演との掛け持ちだったので疲れました。
浜松は、土曜日は毎年恒例の浜松の能楽愛好者グループ「ざざん座」が主催する小学生が対象のワークショップです。
「能を舞う家康くんと直虎ちゃんを囃そう!!」と名うって、子供たちに能の体験をしてもらいます。
浜松のゆるキャラ「家康くん」は有名ですが、大河ドラマにかこつけて「直虎ちゃん」もことしから売り出しているようです。
日曜日は、クラシックの殿堂・アクトシティ浜松での能公演です。
楽器の街・浜松の威信をかけて建てられたこのホールは、日本でも屈指の設備を誇るホールだそうです。
北海道は、いづれも文化庁学校巡回公演です。
公演自体は、おなじみなのですが、今回は移動距離が半端ではありません。
一週目は、札幌から帯広。帯広から釧路。それぞれ250キロほどの距離をバス移動です。
北海道といえば雄大な自然です。
バスの車窓から見える、圧倒的な光景に目を奪われます。
ただ、どこまで行ってもこんな景色です。
さすがに飽きました。
ただ、同じ北海道でも景色は違います。
札幌から外れると、原生林が生い茂る原野がひたすら続きます。
帯広が近づくと、ひたすら広大な農地と牧場です。さすが酪農王国です。
釧路のあたりは、ひたすら湿原。はああ、これが釧路湿原かあと感心しました。
最近、東京でも少々涼しくなってきましたが、北海道は、涼しいを通り越して肌寒いです。
北海道はお盆を過ぎたら秋だそうです。
トンボが飛び、コスモスが咲いていました。
ここのところ、すっかり旅芸人です。