2017年06月
2017年06月27日
銀座の観世能楽堂
渋谷の松濤で、長年親しまれていた観世能楽堂が、この4月から銀座に移転しました。
松坂屋の跡地に建てられた銀座の新しい名所、GINZA SIX。
その地下3階に観世能楽堂はあります。
同じ観世流でも、私が所属します観世九皐会は矢来能楽堂を本拠地とするので、観世能楽堂にはあまり縁がありません。
1年に一回行くか行かないかでした。
開場から2ヶ月経って、今日初めて参りました。
「観世流 研修会」の地謡のお手伝いです。
研修会とは、全国の観世流の研修生(いわゆる内弟子修業をしている書生さん)が年2~3回、一同にかいして、御家元を始めとする観世流の偉い先生方の前で謡と仕舞を発表する会です。
研修生にとって、生きた心地のしないものです。
私も書生時代は、大変な緊張感で舞台に上がっていました。
今回、地謡の手伝いに初めて伺いました。
もう、研修生ではなくなって16年になるのに、やはり緊張します。
なんたって、広い観客席に偉い先生方がポツポツ座っているだけです。
先生方の視線が痛い位です。
何はともあれ、新しい観世能楽堂はとても良い雰囲気です。
銀座という街に、上手く溶け込んでいます。
これから、幾多もの名舞台がここに刻まれることでしょう。
私も、毎年開催している自主公演「桑田貴志 能まつり」を来年は、観世能楽堂で開催することにしました。
2018年4月14日(土) 観世能楽堂
桑田貴志 能まつり
「望月」桑田貴志 桑田大志郎
どうぞ宜しくお願い致します。
2017年06月23日
大分・宮崎公演
今週は、日曜日に国立能楽堂の催しの後、羽田空港へ直行。
日曜日のうちに大分入りし、文化庁学校巡回公演の大分・宮崎公演です。
今日までの5日間、大分・宮崎の各地を回って能楽公演を行ってきました。
この巡回公演に参加していると、普段行かないところへ行けるのが楽しみでもあります。
この間の西表島など、こういう機会でもなければなかなか行かないところです。
今日は、宮崎県の高千穂町の中学校での公演でした。
中学校のすぐ近くには、天照大神の岩戸隠れの神話の舞台となった天岩戸神社があります。
せっかくの機会なので、午後からの公演の前に立ち寄ってみました。
日輪の神様である天照大神(アマテラスオオミカミ)が世を憂いて天の岩戸に隠れてしまい、世の中は常闇となってしまいます。八百万の神々は集まって相談し、天鈿女命(アマノウズメノミコト)がセクシーな舞を楽しく舞って大騒ぎすることにしました。外が騒がしいので天照大神が少し岩戸を開くと、その隙に(タジカラオノミコト)が開いた岩戸をこじ開け、中から天照大神を連れ出し、また太陽が降り注ぐ世となった。。。。
これが、いわゆる岩戸隠れの神話です。能では「絵馬」や「三輪」にこの神話が登場します。
この天岩戸神社は、その岩戸を祀る神社です。
拝殿から、天照大神が隠れた岩穴が見えます。
ご神体なので撮影は遠慮しました。写真でお見せ出来ないのが残念ですが、深淵なる渓谷の岩肌に、確かに大きな岩穴があります。
近くには、八百万の神たちが集まって相談したという天安河原などあり、神話の舞台にふさわしい壮大な風景でした。
そんな神話の世界に囲まれて育った高千穂町の生徒たちは、大変に礼儀正しい子たちでした。
学校の体育館にもこんな絵が掛けられています。
神話の世界の高千穂町は、九州のほぼ真ん中にありどこからもアクセスの悪い場所です。
良い機会を頂いて、心が洗われた気持ちです。
昨日訪れたのは、宮崎県延岡市立土々呂(ととろ)町にある、土々呂小学校。
もちろん、宮崎駿監督の「となりのトトロ」とは関係ありません。
でも、同じ読みのよしみでしょうか、学校の玄関にはトトロのぬいぐるみが飾っていました。
このように、楽しいエピソードに出会えるのも良い経験です。
2017年06月02日
西表島公演2
今日は、連絡船に乗って西表島へ行きました。
西表島は、島の90%がジャングルという自然にあふれた島です。
特別天然記念物のイリオモテヤマネコが有名ですが、島にはもう一種、特別天然記念物の動物が生息しています。
カンムリワシです。
またヤエヤマセマルハコガメは、国定天然記念物に指定されている珍しい生き物です。
このように、貴重な生物が生息しているのがこの島の大きな特徴です。
島に着いて、バスに乗り学校に向かいます。
運転手さんはとても愉快な方で、独特の語り口で西表島の案内をしてくれます。
楽しく聞いていると、
「見て下さい、電信柱にカンムリワシがとまっています。この鳥は西表島に100羽くらいしか生息していません」
へえ、珍しいなあと思いながら見ていると、また運転手さんが叫びます。
「また、カンムリワシです。あの電線にいます」
今度は慌ててカメラに収めました。
逆光だったので真っ暗です。カラスにしか見えません。
西表島と石垣島にそれぞれ100羽位しか生息していない絶滅危惧種を、続けて見られるなんてとても得した気分です。
なおもバスで進んでいるうちに、運転手さんが急ブレーキ。
「危うく、天然記念物を踏むところだった・・・」
みると、道端にヤエヤマセマルハコガメ。
遠目では石にしか見えないこのカメを、よく見つけるものです。
また、横に歩かずに前後に進むカニも見せてもらいました。
このカニは運転手さんがバスの中の水槽で飼っています。観光客に見せるためなのでしょう。
珍しい生物を次々に見られてラッキーです。
こうなると、有名なイリオモテヤマネコも見たかったのですが夜行性なので、滅多に見ることはないそうです。
残念です。
代わりに銅像をのせておきます。
さて、学校に着いたらやることは日本中どこでも同じです。
舞台をセッティングして、能と狂言の上演です。
西表島は流石に暑かった。30度は優に超えている灼熱の中での能上演です。
小学校の体育館なので、クーラーなどあるはずもなく、風も通らない中、汗だくになりながらの公演でした。
でも、このような離島での公演こそ本当に意義深いと思います。
人口2400人ほどの、日本の端っこに位置する小さな島。
この島で能楽の公演が行われることは、予算的に厳しいことでしょう。
こういうところに赴いてこそ、文化庁の学校巡回公演の意義があるように思います。
当日は、小学校の生徒さんだけでなく、近隣の方も体育館に集まっていました。
おそらく、西表島で初めて行われた能楽公演は、素晴らしい成果を得たと思います。
終演後、学校からお土産を頂きました。
リンゴや柿など、土地の名産を頂くことはよくあります。
今回頂いたのは、、、、、
なんとパイナップル。
西表島らしいお土産にほっこりしました。