2015年04月

2015年04月17日

徳川家康公 400年忌

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今日は、昼は埼玉県川越市にて「川越能」
夜は、矢来能楽堂にて「のうのう能」

ダブルヘッダーでした。

川越能は、本日が没後400年の命日である、徳川家康公を偲んでの催しでした。

川越市は、別名「小江戸」と呼ばれるなど、何かと江戸幕府に縁のあるところだそうです。

そして、源義経にも所縁があるということでの「船弁慶」の上演です。

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ご覧のように、長男・潤之介が子方を勤めさせて頂きました。

長男は、5日前の日曜日に九皐会にて「百萬」の子方を終えたばかりです。
まあ、よく頑張っていました。

「船弁慶」の子方は、謡も型も多いので、「百萬」と並行してずっとお稽古していました。

もっとも、ひと月前に「鞍馬天狗」があったので、お稽古はひと月しか出来ませんでした。
この短期間で、よく二つの子方を演じられたものです。

舞台で頑張った長男もエライですが、忙しいスケジュールの合間をぬってお稽古をつけたお父さんも大変でした。

ちょっと、自分で自分を褒めたいと思います。

「百萬」の時は、能面をしていたので、長男の動きは全く分からなかったので、気になりませんでしたが、今日は気になってしかたありません。

自分がシテやるよりずっと疲れました。

本当は、川越まで車でピューっと行きたいのですが、長男が電車に乗りたがるので、大荷物を抱えて電車を二回乗り換えて行きました。

行きは、西武鉄道の特急レッドアロー号「小江戸」に乗れて、大喜び。

男の子って、どうしてあんなに電車が好きなのでしょうねえ。

帰りは時間が合わないので、東武東上線。夕方のラッシュアワーに重なり、電車は大混雑。
長男は、満員電車も嬉しかったようです。(何故だああ)

長男を家まで送り届けると、疲れた体に鞭打って矢来能楽堂へ向かいます。

今日の「のうのう能」は「千手」です。私は副地頭という大役です。
懸命に謡って、疲労困憊。


長い一日でした。


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2015年04月14日

「百萬」御礼

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九皐会にて能「百萬」を無事に演じ終えました。
ご来場の皆さま、有難うございます。

この能は、ずっと演じたいと思っていました。
人気曲なので、たえず誰かが演じていたので、なかなか機会がありませんでした。

今回、親子共演という形で演じることが出来て嬉しく思います。


申合の後にも書きましたが、この能の構成は特殊です。

いきなり舞から始まります。

だいたいの能は、前半は静かな構成です。
「謡」で徐々に世界観を形作っていき、積み上がった頂点で「舞」が舞われます。

そういうリズムに慣れているので、いきなり頂点が訪れる「百萬」はちょっと「入りにくい」能でした。

狂女ものですので、基本は物狂い芸を見せます。
のっけからハイテンションで舞い狂うというのは、なかなかやりずらいです。

ただ、見ているお客様としては、いきなり見どころが訪れ、楽しさイッパイの能ではないでしょうか。

最小は戸惑ったのっけからハイテンションの能ですが、慣れてくると実はやりやすい面もあります。

感覚としては、仕舞を舞う時の感じに似ているかなあと思います。
あまり考えずにとにかく舞う。
そうすると、カラダが温まってきて、自然と狂女が演じられます。

この能は、細やかな感情の変化を表現するようなシーンはあまりありません。
狂女物らしく、物狂いの芸尽くしを見せるのが第一です。

そういう意味で、基本的な技術がものをいう能のようにも思います。

「百萬」の柱となる「車之段」「笹之段」「クセ」の三つの仕舞は、とにかく舞い込みました。
自分で納得いくまで何度も稽古したので、当日は安心して舞うことが出来ました。


またこの能は、囃子との兼ね合いが難しい個所が多々あります。

特に「車之段」「笹之段」はシテ謡も多く、また囃子との合い方が難しいので、集中して囃子を聞きながら謡いました。

少々、上手くいかないところもありましたが、まあ無事に謡えたかなあと思います。

狂女物なので、もっと伸びやかに自在に謡えればなお良いのでしょう。今後の課題です。


子方を演じた長男も、よく頑張りました。
この能の子方は、謡いも型も少ないので普通に演じるのは簡単です。

子供にとって大変なのは、能の最中、45分位動かずにじっと座っていなければならないことでしょう。
長男は、去年も「桜川」「自然居士」と、同じく45分位座り続ける能を経験しています。

やはり、経験していると違いますね。

一番余裕をもって座っていたようです。

「ようです」というのは、私は実は子供のことは全く分からなかったからです。

能面をかけていると、周りがほとんど見えません。
子方も、たまに視界に入る程度です。

まあ、目に着くとどうしても気になってしょうがないので、見えなくてかえって良いのかもしれません。

本番の舞台では、たとえ何か問題がおこっても、どうすることも出来ません。
見えない方が、自分の役に集中できます。

正直言って、私も子供のことを気にしているほど余裕がありませんでした。

そう思うと、舞台で能面をかけるというのは、色んな意味で有益なことなんだなあと感じます。


今回は、冒頭の写真の通り、良い能面と装束を着けさせて頂きました。

上に羽織る、「長絹」という上着も、下半身に履く「縫箔」も、矢来観世家の名品です。

能面は、桃山期の能面です。
これは、矢来観世家のお宝面の一つと言えるものです。

このように、良い能面と装束を着けると自然と良い舞台が勤められます。

矢来観世家の数多の先人達が、着けて「気」を吹きこんだものです。
そのオーラに身を任せれば、自ずと動きの質が変わってくるように思います。


今回は、総体的にはとても気持ち良く舞うことが出来た舞台でした。


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2015年04月10日

「百萬」申合 終了

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今日、9月九皐会の申合でした。

私は「百萬」のシテを演じます。

子方は、長男の潤之介です。
最近、親子共演が多いです。


「百萬」は、母子再会の物語で、私は生き別れた子供を捜す母親役を致します。

長男に「実際はお父さんだけど、能ではお母さんだね」

と言われました。
「うーん。そう言えばそうだなあ。。。。」
子供は変なところが気になるようです。

この能は、とにかく舞いっぱなしです。

最初に「車之段」「笹之段」と続けて舞って、後半は「クセ」「立廻」と舞が続きます。

この能の構成は、たいへんユニークです。

だいたいの能は、最初はゆっくりとした展開から徐々に盛り上がっていって、その頂点で舞を舞うという構成になっています。

「百萬」は、シテが登場すると、いきなり「車之段」「笹之段」と続けて舞います。

舞から始まるので、見る人をのっけから引きつけます。

非常に斬新な展開なのですが、作者は能の大成者・観阿弥です。
つまり、「百萬」は能の現行曲の中でも最も古いものの一つと言えます。

去年演じた「自然居士」も観阿弥作の能ですが、これも現代劇を見ているような、斬新な能です。


そもそも能は、観阿弥の子・世阿弥が複式夢幻能という形を完成させ、それ以降の構成のスタンダードとなります。
大成したばかりの能は、もっと派手で目を引くものだったのでしょう。

何はともあれ、いきなり舞から始まる能「百萬」って、面白い作りだと思います。
私の好きな曲です。


さて、今日申合が終わって、ようやく日記を書く余裕が出てきました。

申合にて、色々課題も見えてきました。
あと二日で上手く調整して本番を迎えたいと思います。

長男も、よく頑張っていました。
あとは、明後日まで風邪やケガなどないように気を付けなければなりません。

子供の体調管理も、大事な仕事です。


kuwata_takashi at 22:56|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2015年04月03日

シンガポール映画

今日、久しぶりに映画を見に行きました。

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見た映画は「イロイロ ぬくもりの記憶」です。

「ん? そんな映画聞いたことないなあ」とお思いでしょう。
そうです、これはシンガポール映画です。

先日の日記で紹介した、シンガポールの演劇学校ITIの卒業生・Yeo Yann Yann(ヤンヤン)が出演している映画です。
(詳しくはこの日記をご覧下さい)
http://shitashimu.dreamlog.jp/archives/51992036.html

昔、シンガポールで能を教えた学生が映画に出演していて、その映画が世界的にヒットして日本でも日本語字幕で見れるなんて、嬉しいことです。

彼女の活躍ぶりは、映画のパンフレットのキャスト紹介をご覧ください。
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先日、シンガポールで彼女に会ったときに「この映画は確か去年、東京でもやっていたはず」と言われました。

インターネットで調べてみると、確かに上映されていました。
そして、今でもミニシアターなどで上映され続けています。

評価の高い映画のようです。
世界中で様々な映画賞を受賞しています。

詳しくは、同じくパンフレットの写真を載せます。

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私は何だか嬉しくなって、その上映館の一つを訪れました。


映画は、シンガポールの普通の家庭の日常の普通の出来事を描いています。
派手な事件や、ドラマチックな恋愛なんかも出てきません。

日常生活の中の小さな出来事を、細やかな感情の変化をうまく描写しています。

号泣したり胸がワクワクしたりはしませんが、心の奥がじんわりと温まってくる、良い映画でした。


準主役で出演している、ヤンヤンの映画での存在感もたいした物です。

主演は、外国人であるフィリピンの若い女優です。
その彼女を、上手く引き立てながら演じていました。

スクリーンの中の彼女を、感極まりながら見ていました。


さて、7年半前に彼女から「シンガポール・ドリーム」という主演映画のDVDを貰いました。
この映画も、なかなか評価が高く、2007年第20回東京国際映画祭で見事最優秀アジア映画賞を受賞しています。

その中で彼女は妊婦の役を演じていました。

妊婦に見えるように、仕草など気を付けて大変だったと、東京で会った時に言っていました。

今回、シンガポールで話した時、また妊婦の役を演じると言っていました。

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またもや、こんな大きなお腹で出ています。

私は、「昔も確か妊婦役で出てたねえ。今回も演技は大変だったんじゃない」
と聞きました。

彼女は得意げに答えました。

「前回は妊婦の真似だったけど、今回は本当の妊婦だったから、何てことなかったわ」

そういって彼女は横にいた2歳の娘を抱き上げました。

「この娘が、お腹に入っていたのよ」

ナント、本当に大きなお腹で演技していたなんて・・・・

すごい女優魂です。

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これは、先日シンガポールで彼女と撮った写真です。
彼女に許可を得て載せています。

映画を見ながら、
「そうか、あのお腹の中にこの娘がいるんだ」
と思うと、可笑しくてたまりませんでした。


kuwata_takashi at 23:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)