2013年11月

2013年11月26日

「茉莉会」御礼

日曜日は、私の指導しておりますお弟子さんのおさらい会「茉莉会」がありました。

清々しい好天の中、大盛況のうちに終わりました。

出演のお弟子様方、お疲れ様でした。
また、ご来場の皆さま、精一杯の舞台への温かいご声援有難うございます。

今回の「茉莉会」は、2年に1度の大会として、矢来能楽堂で行いました。

観世喜之師、観世喜正師を始め、観世九皐会門下の方々や、日頃お世話になっております御囃子方の皆さまのご来演を頂き、華々しく開催出来ましたことは、大きな喜びです。


出演の会員方は皆、大熱演でした。
お手伝い頂いた兄弟子から、

「桑田のお弟子さんは、みんなドラマチックに謡うなあ」

と、お褒め(?)の言葉を頂きました。

矢来能楽堂でひらく大会は、今回で3度目です。
一番多い人でも3度目の能楽堂での発表ですから、「とにかく思い切りやりましょう」と、常々言ってきました。
まあ、その成果は存分に出たと思います。

見に来て下さった方を満足させることは、大変なことです。
ですから、せいぜい思い切り自己満足をしましょう。

終演後の宴会で、こう言いました。
アマチュアの発表会ですから、それが大事なことだなあと、思います。


image
今回、次男・大志郎の初舞台をさせて頂きました。

今まで、内輪の小さな会や深川八幡祭での能奉納などに飛び入り参加したことはありますが、正式な能舞台に上がるのは、初めてです。

ただ、図太い次男はほとんど緊張も見せずに、堂々と謡い舞いました。

当初、次男は仕舞「玄象」だけの予定でした。
イキイキとお稽古していました。
そして、長男に仕舞「吉野天人」のお稽古もじっと見ています。

次男は、本当にお稽古が好きなようです。

あるとき、次男がオモチャで遊びながら、鼻唄で「吉野天人」を歌っていることに気付きました。
彼にとって、ウルトラマンやドラえもんのテーマソングと「吉野天人」は同じようです。

試しに「吉野天人」を謡わせてみると、驚くことに、文句も節も正確に謡います。
一度も稽古していないのに、、、、

長男の稽古を2~3回見ただけで、すっかり覚えてしまったようです。

次男に「お舞台で謡ってみる?」

と聞いたら、「謡いたい」と言うので、急遽独吟「吉野天人」も加えました。

子供の記憶力、恐るべし。
うらやましいことです。

当日は、保育園の同級生達から大応援団が駆け付けました。

独吟の時は通常、角柱の方を向いて謡います。
座る向きも、きちんと稽古したのですが、次男は少々右向きに座ってしまいました。

そして、向いている先を見ると、保育園のお友達たちが陣取っています。

「そうね、キミはそっちに向かって謡いたいのね、どうぞどうぞ」

大した余裕です。

長男は、先日の岡山で能「船弁慶」の子方をやったばかりなので、余裕で素謡「船弁慶」の子方を謡っていました。

「船弁慶」のシテを勤めたのは、家内の母親です。
つまりおばあちゃんです。
嬉しい孫との共演となりました。


色々ドラマもありましたが、無事に終わってホッとしました。

会員の皆様、また新しい気持ちでお稽古に励みましょう。



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2013年11月22日

茉莉会 大会


image私が指導しております、お弟子さんの発表会「茉莉会」の大会が、いよいよ明後日となりました。

火曜日に申合(リハーサル)を終え、今日最後のお稽古が終わりました。

後は、当日を待つのみです。

今回の番組は、

舞囃子「難波」「菊慈童」「熊坂」「敦盛」「班女」「花月」「紅葉狩」

素謡「定家」「弱法師」「松風」「船弁慶」「善界」「殺生石」「竹生島」

後、仕舞25番、独吟2番、連吟5番に、

番外仕舞が、観世喜之師「老松」に、桑田貴志「融」

といった、超豪華番組です。

imageまた、私の次男・大志郎(6歳)に初舞台をさせます。
長男・潤之介(7歳)共々、宜しくお願い致します。


会場は、矢来能楽堂という最高の舞台です。

入場無料です。
皆さまのご来場をお待ち申し上げます。


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2013年11月15日

「阿漕」地頭

今日は、のうのう能「阿漕」
私は、何と地頭という大役を仰せつかりました。

地頭とは、地謡のリーダーです。
地謡の音の高さや、速さ、雰囲気などを決めるのは地頭の裁量です。

そもそも、能は地謡が一曲の成否を決めると言われています。
そういう意味で、地頭の責任の重さは大変なものがあります。

普通、地頭は地謡メンバーのなかで一番序列の高い能楽師が勤めます。
必然的に、経験豊富な年長の方となります。

現在、準職分以上の九皐会メンバーの中で、一番序列が低い私が地頭を勤めることは本来あり得ません。
のうのう能という公演では、若手の勉強のため、序列を変えて地頭を抜擢することが、ままあります。
今回もそういう配慮から、私に地頭が回ってきました。

しかし、今回の「阿漕」の地頭は、かなり高いハードルです。

今まで、のうのう能では、「安達原」「舎利」「羽衣」の地頭を勤めました。
いずれも、比較的謡いやすく、また度々謡っているので、謡もよく記憶しているものです。

今回の「阿漕」は、まずそんなに謡ったことのない曲というのが、まず高い関門です。
やはり、あまり謡わない曲は位どりが難しいものです。
そして、謡の文句の記憶もあいまいです。

そして、この曲は強弱や緩急が大変に多いのです。
ただ謡うだけでも、難しい曲です。

強弱や緩急をうまく謡うためには、囃子方との兼ね合いが難しいのです。

そして、今まで地頭を勤めた能は、シテが割に近い年代の方でした。
今回は、重要無形文化財の指定を受けている大先輩です。

そういう意味でも、とても緊張しました。

この地頭の役の打診を受けたのは、1年半ほど前です。
1年半、ずっと緊張しっぱなしでした。


ここ数日、「阿漕」ばかり謡っていました。
最低でも、謡の文句と間合いは間違えないようにしなければ。。。

上手く謡えないなりに、一生懸命謡おう。

そう心がけました。


終わって。。。。

まあ、ホッとしました。
うまく謡えたかどうかは分かりません。

でも、精一杯の地頭は出来ました。

地頭をすると、囃子方と会話している感じになります。

囃子方が打つ鼓や太鼓の粒のひとつひとつが、

「ここは、こう謡うんだ」
「この速さだぞ」

と言っています。

私も、それを受けて

「自分はこう謡いたい」
というメッセージを込めて謡います。

そのやり取りが、楽しめるようになると、地頭ってやりがいがあるのでしょうが。。。

私は、まだまだそこまではいきません。


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2013年11月04日

「船弁慶」御礼

image昨日は、岡山後楽園能舞台にて、「後楽能」でした。

岡山在住の能楽師・西出昭雄師が、満を持して秘曲「鸚鵡小町」を披かれました。

西出師は、13年前の「卒都婆小町」に続いて2曲目の老女物です。
地方在住の能楽師が地方で2曲目の老女物上演。これは能の歴史に残る快挙です。


私は、岡山の隣の広島出身という縁でもう一番の能「船弁慶」の前シテ、静御前をさせて頂きました。

子方の源義経は、7歳の長男・潤之介です。
初の親子共演です。

後楽園の能舞台は、岡山藩2代藩主・池田綱政公が大の能好きだったことに因む能舞台です。

明治以降出来た能楽堂という建物と異なり、江戸時代までの大名屋敷や神社に設えた能舞台の様式に則った、雰囲気の良い舞台です。

image能舞台は、野外にあります。見所と呼ばれる観客席は、少し離れた所に別棟で建てられ、その間には白州が敷かれています。
橋掛から見所をみると、こんな感じです。

この素晴らしい雰囲気の舞台で、初めてシテをさせて頂きました。
いやあ、気持ち良かったです。

舞っていて、こんなに良い風情を感じたことはありません。
昨日は、午後から少々雨が落ちてきました。

お客様は、見所から雨越しに舞台を見る形になります。
「船弁慶」の前半の、静御前と源義経との悲しい別離の場面に、却って効果的だったというお客様の声を聞きました。

後場も、海上での戦いの効果音として、
しとしとと降り注ぐ雨しずくが生きていたようです。

船弁慶は、今回4度目だったので落ち着いて出来ました。
自分の舞台には、憂いなく余裕を持って望めました。

今回は、何といっても子供の事が心配でした。

今まで長男は、「鞍馬天狗」の花見の稚児と「隅田川」の子方しか勤めたことはありません。

それらと比べると、謡も型も格段に多く、段違いに難しい役です。

春頃から、口伝えの鸚鵡返しで一行ずつ謡を謡わせる所から始めて、少しずつ稽古していきました。

謡は、割にすぐ覚えました。
今度は、長い能の中でどこで謡うのか、覚えさせるのが大変でした。

何せ子方の謡は、小間切れに出てきます。
また、向きを変えたり向き合ったりすりタイミングを覚えるのも時間がかかりました。

後場は、太刀を抜いて斬り組(チャンバラ)の型をします。
最初にやらせると、何ともヘナチョコで弱そうな義経でした。
徐々に、太刀の捌きも様になってきました。

ここまで稽古するのは大変でした。

「船弁慶」は非常によく出る能ですので、今まで数多くの子供が、源義経を演じるのを見てきました。
今回、自分の子供がお馴染みの子方の装束をまとって、舞台に立っている姿は、何だか不思議でした。

前日の申合で、細かな間違いはあったのですが、概ね出来たので、当日はそんなに心配はありませんでした。

でも能の最中、子供の方を向くときはやはり子供の事が気になります。

「顔が曲がってるぞ。。。」
「ああ、そんなしかめっ面をするな。。。」
「キョロキョロするんじゃない。。。」

少しの動きがとても気になります。


終わって、お客様とお話すると皆さま口々に長男のことを褒めてくれます。
確かに、よく頑張ったと思います。
お客様にお褒めの言葉を頂くと、私も誇らしく思います。

でも、私のことは誰も褒めてくれません。
子供に全て持っていかれた日でした。


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