2013年07月

2013年07月27日

織田信長になりました

IMAG0045

猛暑日を記録した暑い某日、NHKに行ってきました。

NHKには、今までFMラジオ「能楽鑑賞」の録音や大河ドラマの能のシーンなどで幾度となく訪れていますが、今回は私一人のお仕事。

NHK教育テレビで毎週火曜日の夜11時より放送されている歴史ドキュメンタリー
「先人たちの底力 知恵泉」
http://www4.nhk.or.jp/chieizu/

という番組に出演します。

NHKのディレクターから出演オファーを頂いた時は、
「まあ、どうせ再現ドラマかなんかにチョコっと出るのだろう」
と思って気軽にOKしました。

その後、どんどん話が大きくなってきました。

この番組は、毎回様々な歴史上の人物を取り上げて、彼らが色んな局面で行ってきた知恵を検証して、現代に役立てることを目指しています。

私が出演する回で取り上げるのは、「織田信長」です。
何と、歴史上の人物の中でも大物中の大物。

で、私は何をするのかと言うと、番組上で流れる映像で、信長に扮するのです。

放送前なので、あまり詳しく内容は語れませんが、織田信長といえば、あの舞です。
「人間50年 化天の内に比ぶれば・・・」

ひょっとしたら番組の中でどこかに出てくるかも知れません・・・(おっと、ここまで)


「織田信長」
私の大好きな武将です。

私は小学校4年生くらいの時、織田信長の伝記を読んで以来の歴史好きです。
特に戦国時代物が大好きです。

戦国時代の中心を駆け抜けた織田信長は、ずっとあこがれの武将でした。

その信長を、私が演じる!!!!

こんなやりがいのあることはありません。


ディレクターと何度も番組内容を打ち合わせしました。
大体は向こうの提案を呑みましたが、いくつかどうしても譲れない点もありました。

そこはキッパリと断りました。

NHKの歴史ドキュメンタリーのディレクターといっても、能の知識は限られたものでしたので、私は能楽師としてはっきりと意見を言いました。

お互いに良い番組を作りたいという気持ちで、内容を吟味いたしました。

どんな内容になったかは、放送をお楽しみにしてみて下さい。


収録当日、私は前の仕事が長引いたので、30分ばかり遅れてNHK入りしました。
すると、西口玄関でスタッフが私を出迎えて下さいました。

車から降りる私。すかさずスタッフが私を取り囲み、荷物を運んでくれます。
気分は大物俳優です。

まず控え室に入ります。控室入口には私の名前があります。
NHKの衣装スタッフに手伝ってもらって、能装束を着てスタジオに入ると、もう18時半です。
スタジオ内では、20~30人のスタッフが待機していました。

ひたすら私の準備が終わるのを待っていたのです。

私が入ってくると、一斉に「おはようございまーす」
どうも、この芸能界の挨拶には馴染めません。
私は、普通に「こんばんわ」と言ってしまいます。


撮影は、長引きました。
当日になって、色々打ち合わせと違う点が出てきます。

結局、若いころの信長の舞を2カット。、熟期の信長の舞を2カット、天下布武に燃える狂気の信長を2カット、そしてあの舞を2カット・・・

舞は、能の既存の舞を参考にして全て私が考えました。

ずっと装束は同じでしたが、能面と頭は変えました。
それぞれの舞ごとに動きチェックや、カメラリハーサルをやって、本番です。

何回舞ったか分かりません。

NHKのスタジオに、ドライアイスによるスモークをたいての収録。
ドライアイスマシーンも連続して使用できませんので、撮影はどうしても休み休みになります。

ワンカット終わると、背景を変えるので、やはりインターバルです。

その間は、能面を外して待機です。
すると、スタッフの人が、すかさずタオルと飲み物を持ってきてくれて、ウチワで扇いでくれます。
良く見る、あの光景です。

そんあ扱いに慣れていない私は、恐縮して
「そんな、ずっと扇いでくれなくていいですよ」

「いえ、スタジオ内は暑いですから、大変ですねえ」
「実は、ドライアイスのスモークが良く出るように、空調は切ってあるんですよ」

今日は、東京でも35度を超えた猛暑日です。どうりで暑いわけです。

「まあ、薪能なんかはもっと暑いですから、平気ですよ」

幸い、暑さには強いのでまあ、乗り越えられました。


結局、撮影は4時間位続きました。
空調を止めた蒸し暑いスタジオで、装束を着たまま4時間過ごし、その間に何度も舞を舞ったので、さすがに疲れました。

でもそれだけの時間、スタジオ内で一緒に過ごすと、スタッフさんたちとも自然と一体感が生まれてきます。

良い映像を撮るため、一生懸命に作り上げてゆく感じは、良いものです。
なかなか良い体験が出来ました。

何よりも、あこがれの織田信長を演じられて、本当に嬉しいです。
といっても、私が演じたのは織田信長のイメージ映像です。
どのように番組で使われるのか、私も楽しみです。

放送は、8月27日(火)夜11時00分から11時55分まで。NHK教育テレビ(最近はEテレといってますね)にて、
普段は25分番組ですが、この日は時間を拡大してのスペシャル版です。

一回10~15秒くらいの舞の映像が、幾度も出てくると思います。
ただ、残念なことに能装束に能面で覆われていますので、私の顔は出てきません。

能のシーンが出てきたら、それは私です。

皆さま、是非ともご覧くださいませ。


kuwata_takashi at 09:14|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2013年07月14日

俄かに疾風吹き

今日は、九皐会。番組は「夕顔」と「阿漕」。
私は、「阿漕」の地謡でした。

阿漕は、最初は老人がおっとりと謡を謡います。
そのうち、俄かに疾風が吹き、ただならぬ気配となり、舞台は急展開。

その時、空より雷鳴が轟き大豪雨。

木造モルタル造りの矢来能楽堂は、自然の音響に晒され雰囲気満点。

なかなか良い風情でした。

築60年を超える歴史的建造物ならではです。
コンクリート造りの最近の能楽堂では、得られない経験でした。


kuwata_takashi at 20:34|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年07月06日

自然居士 古式

「のうのう能プラス」にて、「自然居士 古式」が出ました。
シテは、人気実力共に能楽界を代表する役者・梅若玄祥師。私は地謡を勤めました。

観阿弥が作ったこの能は、時代とともに様々な編さんを重ねています。
今回、昔の演出を見直して、一部新たな試みを加えて上演されました。

地謡で参加している身から言うのも何なのですが、「いやあ、面白かった」です。

「自然居士」は少々不自然なところがあり、腑に落ちない点があったのですが、うまく処理されていました。

また、それを洒脱に演じている梅若玄祥師の芸の力に感服いたしました。

良い刺激になりました。


実はこの日、私を悩ませていたのは、他にありました。
仕舞の地頭のお役を頂戴したのです。

番組は「菊慈童 観世喜之」「東岸居士 観世喜正」
何と、師匠と若師匠の仕舞の地頭です。

有料の玄人会で師匠の仕舞の地頭をさせて頂くなど、当然初めてです。
と言うより、玄人会で仕舞の地頭すら初めてのような気がします。

特に「東岸居士」は珍しい仕舞です。この仕舞の地謡を謡うことすら初めてです。

で、結果は・・・
初めて尽くしの地頭で、何だか分からないまま終わりました。

うーん。。。。 巧く謡うのは難しいですねえ。

「菊慈童」など、しょっちゅう謡っている曲でも緊張しました。
ましてや「東岸居士」。。。。

貴重な経験をさせて頂きました。


kuwata_takashi at 22:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0)