2013年04月

2013年04月25日

手向けの『江口』

今日、あるお弟子さんから突然、「『江口』をお稽古して下さい。」と言われました。

理由を聞くと、「母が亡くなって、母のために告別式で『江口』を謡いたいので」
とおっしゃいます。

「告別式って・・・・・・、いつですか」

「土曜日が通夜で、日曜日が告別式です」

「ええ!! そんな忙しい時、お稽古にいらしたのですか?」

「はい、母との約束ですから」

このお弟子さんのお母様は、大の謡好きでした。
息子さんが4人いらしたので、自分が大好きな謡を息子にもやらせたところ、息子達はみな首尾よくお稽古から逃げてしまったそうです。

それでは今度は、息子達のお嫁さん達にやらせることにしました。
お嫁さん達は息子達と違って、お母様の命令を断ることが出来ず、みな強制的に謡のお稽古をさせられていまいます。

4人の嫁に、それぞれの先生を紹介して、お月謝もお母様が払ってくれていたそうです。

そんなこんなでその一家は、正月などで集まると、お母様を中心にずっと謡を謡っているようです。
今どき珍しい謡曲一家です。

もうずいぶん前だそうですが、そのお母様は、4人の息子と4人の嫁におもむろに
「私が死んだら、『江口』で送ってくれ」

そう言って、『江口』の謡本をみんなに配ったそうです。

やがて時が過ぎ、そのお母様もだいぶん高齢となって謡が謡い辛くなったそうです。
そして、4人のお嫁さんの中で未だに謡のお稽古を続けているのは、一人だけになってしまいました。
つまり私のところにお稽古に見えている方だけです。

その方は、お母様から紹介された先生が亡くなってしまったあと、新しい先生を探していて、縁あって私のところにお稽古に来るようになりました。

お稽古を再開したと聞いたお母様はたいそうお喜びになったそうです。

その家では、お嫁さん4人が、交代でお母様の家へ家事手伝いに行くそうです。
しかし、彼女が行くと、もう掃除も洗濯もお母様が自分で終わらしているそうです。

何もすることないなあと思っていると、お母様は一言
「では、この間お稽古したところを謡ってみなさい」

お弟子さんは、私との稽古よりお母様の前で謡う方がよっぽど緊張すると、いつも苦い顔して言います。


お母様と交わした約束を守るため、そのお弟子さんは、お通夜が間近であるのにお稽古にいらしたのです。

「お稽古もせずに謡ったら、母に怒られそうだから・・・・」

そういう彼女の言葉に胸をうたれました。
私も、心をこめて指導しました。

とても良い家族ですね。

江口の最後の詞章はこうです

これまでなりや帰るとて。
即ち普賢菩薩と現れ船は白象となりつつ。
光と共に白妙の白雲にうち乗りて西の空に行き給ふ
ありがたくぞ覚ゆる
ありがたくこそは覚ゆれ

合掌。


kuwata_takashi at 23:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年04月13日

源頼朝公・下馬桜の下で

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「狩宿 菜の花さくらまつり」で行われた「狩宿能」は、盛況に終わりました。

ご覧のように、富士山をバックに臨む特設舞台で、謡と仕舞を披露しました。

ただ、夜の催しでしたから、富士山は見えませんでした。
そして・・・・ とにかく寒かった。

聞くと、この辺りは標高が高いので、富士宮市街とは2~3度気温が違うそうです。

日中は暖かだったので、すっかり油断してしまいました。
謡っていると、吐く息が白い・・・

雰囲気を盛り上げるために、地元の青年会の方々が篝火を用意して下さいました。

それが、今までに見たこともない巨大な篝火。
「こんな大きい火だと、まずいんじゃないかなあ」

予感は的中。

茫々と燃え盛る火に炙られて、煙くてたまりません。
火の粉は周りに飛び散って、篝火の周りの草花が燃えてしまい、青年会の方々が慌てて消すシーンも度々見られました。

ただ、寒い夜空の下、火の近くは暖かいという、メリットもありました。

何はともあれ、幻想的な雰囲気のなか、気持ち良く舞台を勤められました。

出演は、私と富士宮のお弟子さん達。
あと、同じく富士宮でお稽古をしていらっしゃる、大倉流小鼓方の田邊恭資師。

好評だったようで、来年も予定されています。

来年は、下馬桜が満開だと良いのですが・・・


kuwata_takashi at 23:40|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年04月12日

狩宿 菜の花さくらまつり 前夜

明日は、富士宮観光協会主催の「狩宿菜の花さくらまつり」です。

富士宮には、能でも「小袖曽我」や「夜討曽我」などで有名な、源頼朝の富士の巻き狩りが行われた場所です。

その本陣が置かれた場所で、このイベントは行われます。

ここには、源頼朝が馬を降りて手綱をつないだとされる、「下馬桜」があります。
本当に、源頼朝が馬をつないだとすると、樹齢は800年以上になります。

国の特別天然記念物であるのも納得です。

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向こうに見えるのが、その「下馬桜」です。一昨日、現地を見て来ました。
山桜なので、例年満開は4月中旬なのですが、今年は早々と散ってしまいました。

ただ、菜の花はバッチリです。
とてもキレイに咲き誇っています。

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源頼朝と曽我兄弟に由来する、由緒のある地で、明日は謡と仕舞を演じます。

そうそう、近くには曽我兄弟が御祭神の曽我神社と、
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曽我兄弟のお墓もあります。
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明日は天気も良いようです。
是非お出まし下さい。

詳細は、下記のホームページをご覧下さい。

http://www.fujinomiya.gr.jp/



kuwata_takashi at 22:34|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年04月11日

福山が誇る能楽堂

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この新聞記事は、先の4月4日付けの日経新聞の一面コラム「春秋」に載ったものです。

新歌舞伎座の対極にあるのが福山の能楽堂ってのが素晴らしいですね。

大島能楽堂は、地方都市の個人所有の能楽堂としては、破格に立派なものです。
年4回定期公演も行っています。

私の郷里の福山の、誇りです。


kuwata_takashi at 22:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年04月03日

雑誌掲載

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現在、光文社から発行中の「美スト」という雑誌に、上記の写真が掲載されています。

本当は、取材依頼を受けたのですが、取材希望日がシンガポール出張中だったので、写真だけ提供しました。

記事によると、美容と健康には能の前傾姿勢が一番良いそうです。

肩こりも解消!! と書いてありますが、毎日肩がこっている私はどうなるのだろう。

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山口智子さんが表紙の雑誌です。
書店で見かけたら、手に取ってみてください。


kuwata_takashi at 23:50|PermalinkComments(0)TrackBack(0)