2013年01月

2013年01月20日

シンガポール第1便 4

今回の学生たちは、この学校では5期生と6期生になります。

これまでの学生たちと比べると、一番真面目に熱心に取り組んでいるようです。

前回話した通り、この学校は紆余曲折を得て再開し、その結果今までより入学基準を上げたようです。
比較的、いろんな面で技術の高い学生が多いように思います。

特に2年生は、今までに「クーリヤッタム」「京劇」を習っているので、身体の使い方が上手な人が多いですね。
舞や舞踊やダンスといったものは、やはり根底に流れる基礎技術は同じなのだと思います。

何かに秀でている人は、他の物をやっても結構様になるものです。

1年生は、この1月に入学したばかりです。


まさに、入学早々能漬けの日々を送っています。

どの学校でも同じだと思いますが、入学当初はお互いにそれぞれの性格やキャラクターを探りながら接している感じがありますね。
ましてや、この学校のように色んな国から集まっていればなおさらでしょう。
なんか、その初々し感じが、懐かしいです。

私も初めて会う人々なので、接し方に気を使います。
ましてや、今回の私は英語が全然ダメです。

前回までは、英会話学校にも通っていたし、何よりも隔年でシンガポールに行っていたので、何となく口と耳に英語がなじんでいました。
やはり7年間のブランクは大きいようです。


授業は真面目に取り組んでくれるのですが、残念なのは放課後。
なかなか、一緒に飲む機会が作れません。

日本人には信じられないのですが、アジアの人たちは驚くほどお酒を飲みません。

学生といっても、それぞれの国で役者をやっていた人たちばかりで、年齢もほとんど25歳を超えている良い大人たちです。
学校帰りにチョット一杯というふうにならないのが不思議です。

もっとも彼らにしてみれば、いつもお酒ばかり飲んでいる日本人の方が、不思議なのでしょうが。


一昨日の金曜日、いつものように授業を終えます。

私「はい、今日はおしまい。挨拶しましょう」

一同「A RI GA TO U GO ZA I MA SHI TA」

ここまではいつもと同じ。
すると学生たちは、示し合わせていたようで、続けて挨拶します。

「Let's start Tiger Time」

私は目が点????

「Tiger Time」とは、シンガポールで有名なビール「タイガービール」を飲む時間という意味。
私が作った言葉です。

私はよく学生に、「やっと、授業が終わった。これからは私の大好きなTiger Timeだ」
などと言っていました。それに引っかけての挨拶でした。

学生全員から、一緒に飲みましょうと誘われました。
今まで、6学年の学生を教えていますが、こんなことは始めてです。
素直に嬉しかったです。

学校に隣接するバーで、楽しく飲みました。


翌土曜日は、午前中授業。シンガポールでは、まだ半ドンが生きています。
そしてその後、ホームパーティーに誘われました。

「発声と会話(Voice&Speech)の先生のお宅で開かれるホームパーティーに、先生も一緒に行きましょう」

これも嬉しいお誘い。
ロビン先生という、ニュージーランド人の先生のお宅へ、学生たちとお邪魔しました。

ロビン先生のご主人は、ギリシャ人で料理が大変得意だそうです。
美味しいギリシャ料理に舌鼓をうちました。

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今まで学生たちとは、何となくよそよそしかったのですが、一気に打ち解けたように思います。

やはり、Tiger Timeは大切です。


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2013年01月17日

シンガポール第1便 3

私が教えに行っておりますシンガポールの演劇学校「INTERCULTURAL THEATRE INSTITUTE」は、とても特殊な学校です。

生徒は、アジア各国(今回は、非アジア人も4人います)から集まってきた役者か役者の卵。
創始者は、故クオ・パオ・クンというカリスマ的演劇人です。

演劇学校ですので当然、演技や発声の授業もあります。
音響や照明などのテクニカルな授業もあります。
それぞれ、シンガポールまた海外から招いた講師陣が丁寧に指導しています。

それだけだと、普通の演劇学校と変わりません。特徴は、他にあります。

この学校のコンセプトは、アジアオリジナルの演劇を創造することです。
だから、必修科目として、日本の「能」・中国の「京劇」・インドの「クーリヤッタム」・インドネシアの「ワーヤン・オン」を学びます。

アジア人が古代から大切にしてきた、表現方法や身体の使い方、また発声方法などを学んで、それぞれの役者としての表現に生かしてゆくというのが、最大の特徴です。

その一環として、彼らは毎朝7時から太極拳まで習っています。


そんな素晴らしい学校ですが、しばらく活動を2008年から3年間、しばらく活動を休止していたようです。
理由は、資金難です。

細かい指導を受けさせるため、学生は各学年7~8人です。
それに対して、講師陣は、常駐の演技や発声の先生だけでもかなりの数います。(正確な人数は知りません)
スタッフも5~6人はいるようです。
そして、目玉の「能」「京劇」「クーリヤッタム」「ワーヤン・オン」の先生たちは、全員それぞれの国からプロの演技者・指導者を招いて行われます。

その、渡航費・宿泊費・謝礼・・・
膨大な費用になります。

学費はそこそこ高額のようですが、とてもひと学年7~8人(現在は2学年しかいないので、総勢14人)の学生からの学費ではまかなえません。

ですから運営は、学校の活動に賛同してくれる団体や企業、そして政府の援助が不可欠のようです。

2011年、財政面の目途がついて、新たに再開されたとのことです。

スタッフも卒業生も、みな嬉しそうでした。

私にとってもこの上ない大きな喜びです。
世界中から集まってきた役者たちと、毎日真剣に能の稽古をする。

なかなか刺激的です。

彼らは能は当然素人ですが、身体能力や表現方法などは抜群です。
逆に、私が彼らから学ぶことも多いのです

同じ、舞台に立つ役者として。


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2013年01月16日

シンガポール第1便 2

7年ぶりに訪れたシンガポール。大きく変わっていました。

到着した日の朝、タクシーの中で見たマリーナエリアの変わりようは、目を張ります。

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まずは、屋上に船のモニュメントがあるホテル・カジノ・レストラン・展望台などの複合施設、マリーナ・ベイ・サンズ。
頂上の船の部分には、空に浮かぶプールがあることで有名です。

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次は、世界最大級の観覧車、シンガポールフライヤー。165mの高さまで上がり、一周約30分かかるそうです。
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お次は、半年前に出来たばかりの巨大庭園・植物園のガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
街中に、巨大な熱帯雨林を再現しているようです。

ちなみに、ここに紹介した写真は、私が撮ったものではありません。
私はまだ行っていません。

ユニバーサルスタジオも出来たし、もう一大観光地と化しています。
これらの施設は、7年前には無かったものです。
他にも、ガイドブックを眺めると、7年前にはなかった建物やアミューズメント施設がてんこ盛り。
7年前は450万人位だった人口は、今は530万人になっています。

海外から資本が続々集まり、急激な経済成長を続けるシンガポール。

街を歩くと、色んなものに圧倒されます。

7年前は、地下鉄は東西線と南北線の二つしか無かったので、とても分かりやすかった地下鉄網。
文字通り、東西に走る線と南北に走る線しかありませんでした。

今は、東北線とサークル線が出来て、かなり複雑になってきました。
まあ、それでも東京に比べると、ずっとシンプルですけどね。

さらに、新しい路線も建設中という事で、いたるところで工事をしています。

7年前に使っていた「EZリンクカード」というSuicaみたいなカードはもう使えなくなっていました。
新しいシステムに変わったそうです。

どんどん変貌するシンガポール。
多分、日本の高度経済成長期も、こんなものだったのでしょうか。

シンガポールは、日本を超えるテクノロジー大国という話は、7年前にしました。

http://shitashimu.dreamlog.jp/archives/2006-01.html?p=2#20060114

詳しくは、上記の日記をご覧ください。

今回も、その成長の速さを肌で感じました。

まず、人々が持っている携帯電話は、皆スマートフォンです。
聞いたら、スマートフォンの普及率は95%くらいだそうです。

ホテルも、学校も、無料WiFiが完備。どこでもスマートフォンが繋がる環境のようです。

学生に、シンガポールのテクノロジーは凄いね、と話をしたら、彼らはこう謂います。

「何言っているのですか。日本はもっとすごいでしょう」

「いや、日本のスマートフォンの普及率は20%から30%くらいだよ」

「でも、日本はたくさん物を作るじゃないですか。シンガポール人はそれをただ使うだけですよ。
日本には、SONYがあるし、パナソニックがあるし、SHARPもあるし、東芝や富士通、NEC,
三菱・・・
何でも日本人は作って、世界中の人がそれを使っているじゃないですか」

でも、彼らが手にしているスマートフォンをみると、iphone,サムスン、LG・・・
日本のメーカーのスマートフォンを手にしている人はいなかった。

7年前はは、学校のオフィスのパソコンは、全て日本メーカーだったが、今は全て韓国製か台湾製。
日本にいると、日本製品しか見ないのであまり気付きませんが、海外に出ると、日本のメーカーの弱体化が目立ちます。

ソフト面でも、大きく変わりました。
TVを付けると、毎日延々と韓国ドラマをやっています。

7年前は、日本のドラマばかりでした。
木村拓哉さんや江口洋介さんが、中国語しゃべっていて、面白かったものです。

あれだけ多かった日本のアニメも、全然見られません。

あと、インドのドラマも人気があるようです。
結構放送しています。


経済力やエンターテイメント面で、日本の影響力が弱まっているのは、事実です。

でも、日本はそればかりの国ではありません。

日本には、世界に誇る文化・芸術があります。
私が、このようにシンガポールの演劇学校から招かれて、能を指導するのも、日本文化が一目置かれている証拠です。

日本には、ゆるぎない文化・芸術がある。

世界中に、確固たる存在を現したいと思います。
そのために、世界中から集まっている学生に、能の良さを全力で紹介したいと思います。

今回、過去の卒業生たちにも何人か会いましたが、皆能が面白かったと言ってくれます。
今季の学生さんたちにも、その思いを感じてもらいたいと思います。


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2013年01月14日

シンガポール第1便 1

大雪の便りが伝えられる日本列島ですが、私は今常夏のシンガポールに来ています。

最近は、羽田空港を23時半に出発する便があるので、時間が有効に使えます。

日曜日に九皐会を終えて家に着いたのが18時前。
出発前に寄らなければならないところがあったので、そこを訪ねて帰宅すると18時半。
そこから食事をして19時。

さあ、シンガポールへ出発する荷造りを始めよう。

これで間にあいます。

例の如く、まだ何も用意は出来ていません。
もう納戸の奥にしまい込んだ夏服を慌てて取り出し、浴衣を準備します。

いつものように、適当に詰め込んで20時半には荷造り終了。
21時過ぎに家を出ました。

便利な世の中になったものです。

23時半羽田発の便が就航するときの宣伝文句が、「銀座で、夜9時まで飲んでいても間に合う」でした。

私の場合は、9時まで荷造りしていても間に合うです。
あ、来月は9時までお弟子様のお稽古してから出かけます。

離陸前、例の如くしこたまビールを飲んで、離陸と共にぐっすり。
大雪を降らした寒冷前線に背を向けて、朝起きると、もうそこは常夏の楽園・シンガポール。

到着してすぐお昼からお稽古です。

シンガポールの演劇学校に能を指導しに行くのは、何と7年ぶりです。
今回は、学校名も所在地も変わって、新期スタートです。

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こんな素敵な建物の中で、能を英語で指導します。

今回は、2学年合同の授業です。

構成は、シンガポール人5人(中国系1、インド系1、マレー系3)、フィリピン1人、インド2人、イタリア1人、フランス2人、台湾1人、中国本土広東1人、ボリビア1人です。

何とヨーロッパ人が3人もいます。また、ボリビア人は、学校では初めての南米人です。

この8カ国から集まった14人の学生さんたちと、また様々なドラマが生まれそうです。

様子は、随時この日記で伝えようと思います。


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2013年01月13日

天下泰平 国土安穏

今日は、九皐会の初会。
「翁」「国栖」という番組でした。

しかし、年の始めの「翁」は本当にすがすがしいですね。

正に日本の正月。
何とも言えない幸せな気分になります。

毎年、正月には「翁」を必ずTV放映して欲しいと切に望みます。

例年、正月三が日は毎日能の放映があって楽しみにしていたのですが、今年は元日のみの放映でした。

残念なことです。

能放送は、多分視聴率は悪いと思います。
だから、民放に放送しろとは言いません。

でも、NHKは公共放送の使命として、日本人のアイデンティティを失わないで欲しいです。

見ている人が多い少ないは関係なく、NHKの看板として、能の放送を堂々として欲しい。
バラエティやワイドショーは、民放に任せて、NHKとしての矜持を放送内容で見せて下さい。


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