2012年11月

2012年11月30日

ただ一人落ち行きし

11月は、本当に忙しかったです。
忙しさのあまり、演能の案内を忘れていました。

明日、緑泉会にて能「巴」を演じます。

この所のハードスケジュールで、少々体調不良です。
今日はゆっくり休んで明日に備えようと思います。


さて、「巴」と言う能は色んな意味で異色の能です。

女性を主人公とする修羅能という設定が、全ての元のような気がします。


勝修羅三番を除く全ての修羅能のシテは、死んでしまった自分が、現世に残した未練が執心となって、この世に幽霊となって現れます。

そして、その執心を晴らして貰うように、僧侶に弔いを願います。

「巴」のシテの巴御前も、幽霊となってこの世に現れるということは何らかの未練があるのでしょう。

その未練は、能の最後で語られます。

「涙と巴はただ一人落ち行きし後ろめたさの執心を弔いてたび給へ」

と僧侶に向かって合掌します。

つまり巴御前の未練とは、愛する木曾義仲やその仲間達と、一緒に死ねなかったことなのです。

他の修羅能との最大の違いは、ここにあると思います。

「死んでしまった恨み」ではなく、「生き延びてしまった後ろめたさ」


晴れぬ未練を胸に秘める巴御前。

明日は心して演じたいと思います。


kuwata_takashi at 16:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2012年11月21日

見たことあると思ったら

今日は、新潟県上越市にて能公演。昼に学生能「羽衣」、 夜公演で「玉井」でした。

 

朝、東京を出て昼ごろ到着。午後2時からの昼公演をし、夜公演は午後6時半から。

終演は午後9時過ぎ。もう東京には帰れません。

 

明日は9時半から東京で申合があります。そのまま上越に宿泊しては間に合いません。

終演後、長野に移動することにしました。

 

長野にいれば、始発の新幹線で悠々間にあいます。

 

間にあってしまうのです。

交通が便利になればなるほど、忙しくなっていくように思います。

 

さて、今日は嬉しいことがありました。

 

夜公演「久比岐能」で、上越市在住の師範の方が仕舞を舞いました。

その方は、何と私が「道成寺」を披いた時に引き出物として引いた扇を使って舞って下さいました。

 

「道成寺」のような節目の曲を初演(披き)する時は、引き出物として扇を共演者や仲間内に配る習わしがあります。

 

私は、けっこう拘って作りました。

採算は度外視して、豪華な扇になってしまいました。

 

そうやって作って配った扇が、ふとした折で使われているのを見ると、とても嬉しく思います。

 

能「玉井」では、アイ狂言が短い舞を舞います。

その狂言方が舞っている扇を見ると、またもや私が「道成寺」の時に作った扇だったのです。

 

そう言えば、今日のアイ狂言を演じていた方は、私の「道成寺」にも出演して下さっていました。

その時に配った扇を使って下さいました。

 

とても光栄に思います。

赤字となりつつも、拘って作って良かったと思います。

 

自分のオリジナルの柄の扇なんてそうそう作る機会などありません。

その扇が、図らずも同じ公演で2度も使われているのを見て、何となくニヤニヤしてしまいました。



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2012年11月18日

あっちこっち、色々やってます

今月の忙しさは、群を抜いています。

稽古能や学生能を合わせると、今月は21公演もあります。

 

今週だけ見ても、水曜日は朝若竹会の稽古能、私は「紅葉狩」の地頭です。よく出る曲ですが、地頭となると緊張します。

昼から、鎌倉の名勝・建長寺にて能「鉢木」です。

北条時頼が創建したと伝えられる建長寺で、北条時頼をワキとする、鎌倉のご当地曲の「鉢木」の上演。

なかなか良い風情でした。お弁当は鎌倉の名店「鉢の木」の幕の内弁当でした。

 

金曜日は、午前は鎌倉県民能「猩々」。午後は県民能「天鼓」。夜はのうのう能「紅葉狩」

なんと3公演です。

 

土曜日は、同門の小島英明師の主催の会の碧風会。私は「熊野」のツレをさせて頂きました。

折からのハードスケジュールで、膝を痛め、ツレで座っているのが少々辛かったです。

周りの同門の人たちも、風邪引きや、腰や膝を痛めているものが続出です。

 

今日の日曜日は、新潟にて能公演。昼公演が「鷺」で、夜公演が「羽衣」

新潟には、「りゅーとぴあ」という、地方の公共の施設としては破格に立派な能楽堂があります。

そこの定期公演でした。

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地方では珍しい「鷺」の上演です。

九皐会最長老の遠藤六郎師、85歳の華麗な鷺の舞でした。

新潟でずっと活動していらっしゃる遠藤師だけあって、公演は昼夜共にほぼ満員の盛況ぶりでした。

 

今週は、稽古能を含めて8公演。

9月から、休みなしでひっきりなしに舞台が続きます。

 

秋の能繁期も、もう少しで終わりです。

体調に気を付けて、頑張りたいと思います。



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2012年11月07日

札幌新作公演「沙院」

東京のおさらい会が終わって、ホッとしたいところですが、翌日は新作能「沙院」の申合。

 

申合が終わると、その足で沼津に行きます。翌6日にかけて、沼津・富士でお稽古です。

 

火曜日の沼津稽古を4時半で切り上げると、車で羽田空港へ行きます。

2040分の飛行機に乗って、空路札幌へ。

 

札幌駅前のホテルについたのは、もう11時。

札幌は寒いと思っていましたが、そうでもありません。

 

ただ、もう紅葉は始まっています。

今が真っ盛りでしょうか。とても鮮やかでした。

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明けて7日は、いよいよ新作能「沙院」です。

 

この能は、アイヌの酋長・シャクシャインをシテとする能です。

現行曲に、北海道を舞台とする能はありません。

北海道に30年来お稽古に行っている永島忠侈師は、かねてより北海道を舞台とする能を作りたいと思っていたそうです。

 

その思いが、結集しました。

 

今回のために新調した蝦夷錦の装束をまとい、北海道のご当地能の上演でした。

 

会場は、札幌の能楽の殿堂である、札幌教育文化会館です。

ここには、仮設とはとても思えない立派な能舞台があります。

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去年改装された、真新しい気持ちの良い舞台でした。

 

 

終演後、新千歳空港へ直行して飛行機に乗り込みます。

少々時間があったので、何か食べることにしました。

 

とは言うものの、羽田空港に車を置いてあるので、ビールは飲めません。

下手に寿司屋なんかに入っちゃうと、ビールが飲みたくてしょうがなくなるでしょう。

ラーメン屋に入っても、やっぱり餃子とビールです。

 

ビールを飲まなくても良さそうなものを散々探しました・・・

 

結局、札幌名物・スープカレーを食しました。



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2012年11月04日

今週も茉莉会 

先週の静岡の社中のおさらい会に続いて、今日は東京の社中のおさらい会「茉莉会」です。

場所は、隅田川の厩橋のたもとにある神谷舞台。

舞台から、東京スカイツリーがよく見えます。


ベテランから初舞台の方まで、総勢47名の参加によって、賑やかな舞台となりました。


皆さん、この舞台に向けてお稽古を重ねてきました。

その成果が存分に出ていたように思います。


百度の稽古より、一度の舞台。


こう謂われます。上達するには、舞台に上がるのがいちばんのようです。


まあ、お尻に火がつかないと取り組まないのは、人間の弱い性ですねえ。

私も、いつも直前まで覚え物に追われています。


おさらい会があるから、お稽古する。


逆に言うと、お稽古する目標として、おさらい会を設定するのです。



先週に引き続いて、長男は仕舞「鶴亀」と素謡「百萬」の子方。

素謡では、足の組み換え方など教えておいたので、先週よりは足は痺れなかったようです。


次男も、仕舞「老松」で飛び入り参加。

先週より、お客様が多かったので、いくぶん緊張していたようです。



成功・失敗・思わぬこと。

いろいろありましたが、今年も無事におさらい会を開催できて、本当に嬉しく思います。


終演後は、隅田川を少し北上して、駒形橋のたもと「浅草むぎとろ」へ。

浅草を代表する老舗にて、楽しく酒宴を行いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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