2012年06月

2012年06月30日

バリから 3

バリ島は、島全体がテーマパークのようなところです。

近代的なビルなどは全くなく、建物はすべてバリ・ヒンズーの様式に則った様式で統一されています。

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これは、どこかのお寺か集会場に見えますが、普通の民家です。
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これは、隣の家です。
バスの中から流れる街並みの景色を撮ったので、あまり良い写真ではありませんが、こんな建物が島中に建てられています。
多分、法律で近代的なビルを建ててはいけないのでしょう。

私たちが泊っているホテルも、いわゆるヴィラという一軒家でした。

とにかく、統一された美しさは、倉敷の美観地区や飛騨高山を見ているようです。

私たちが滞在していたウブドという街は、さらに規制が厳しく、マクドナルドなどのファーストフード店も一切ありませんでした。

やはり神々の住む島・バリにマクドナルドの看板は似合いません。

ただ、スターバックスは最近、物議をかわしつつも、進出したそうです。
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看板が、ガムランのゴングという楽器風になっています。
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外観はこんな感じです。因みに、この横の寺院で最終日に公演を行うことになっております。

「バリ芸術祭」で私たちが演じた劇場は、こんな感じです。
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外観はこんな感じ。
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とても素敵な場所でした。

バリは、建物だけでなく、街のいたるところに石像が飾られています。
それがまた美しいです。

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通りに、普通にある石像ですが、「見ざる、聞かざる、言わざる」のようですね。

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これは、「ムーニーズ・ワルン」というバリ料理店の店内です。

店の中でも、普通に神々が祀ってあります。

このテーマパークの様な島で、様々な芸能が行われているのが、またバリの素晴らしさです。

今回も、公演と稽古の合間をぬって、バリ舞踊公演に趣きました。

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これが有名なバロンダンスです。

深川バロン倶楽部に所属する身として、これだけは外せません。

私は、とにかくバリが大好きです。
でも、今日からしばらくバリを離れて、ジャワ島のソロという街にむかいます。

バリ島とジャワ島では、同じインドネシア国内なのですが、文化や風習が全く違います。
ヒンズー教のバリ島に対して、イスラム教のジャワ島。

アルコールを飲まないイスラム圏へ行くことが、ビールが主食の私にはとっても不安です。


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2012年06月29日

バリから 2

「バリ島芸術祭」無事終わりました。

会場は、バリ・アート・センター内にある、クシラルナワ室内ステージ。

なかなか雰囲気の良い劇場でした。


バリでも有数のクオリティを誇るガムラン・メンバー「スダマニ」。また、バリでは巨匠と呼ばれる踊り手のスエチャ師と、チャンドリ師と一緒の舞台を勤めることは、とても刺激的でした。


神々の住む島・バリの芸能は、神への奉納を起源とし、その精神性は今でも固く守られています。


今回も、奉納に先立ち地元のヒンズー寺院の僧侶が舞台のお清めを行っていました。

場当たりとリハーサルも終わり、開場までの空いた時間に、僧侶が舞台にお供え物をして聖水で場を清めます。


この精神性がたまらないです。


公演が始まる前には出演者が一同に会して、僧侶によるお清めが行われます。

聖水をかけられ、花を頂きます。


バリでは、花は大事なお供物です。役者は必ず花を携えて舞台に上がります。

私たちも、バリ式に耳に花を挿して地謡に出ました。


神への奉納という面では、能の起源も同じです。

能でも、「翁」上演前には、楽屋に「翁飾り」という神棚をしつらえ、能舞台を清め、出演者全員が切り火で身を清め、お供物である「お米」と「塩」を頂きます。


その辺の公演に対する精神性は、バリと日本はかなりの部分で共通しております。


ただ、能では今やこういった儀式は「翁」でしかやらなくなりました。

全ての公演の前に必ず行っているバリの芸能者な方々を、本当に尊敬いたします。



バリ舞踊と、その音楽であるガムランは、基本的には楽譜や約束事が少なく、役者または演奏者の裁量が大きいそうです。


そのあたりも、能と同じです。お互い、演出家もいなければ指揮者もいないステージの上で、役者・演奏者が責任を持って自己主張をぶつけていきます。


「バリの人は、練習では本気を出さない。だいたい23割くらい」と聞いていました。

練習というのは、お互いの確認をする場で、そんなところで本気でやるのはカッコ悪いという風潮があるそうです。


その気持ちは何となく分かります。

私は、いつも余裕がないので申合でも全力投球ですが、ベテランの能楽師の様子を見ていると、申合は様子見のごとく演じているのが伝わります。


申合で感じをつかんで、本番に全力投球。

これが、能のスタイルのように思います。


バリの人たちのメンタリティは、もっと凄いですね。

リハーサルまでは、何となくダラシナイ感じだったのですが、本番になると、人が変わります。


もう、凄いテンションでした。

確かに、あのテンションは、リハーサルでは決して出せないですね。


本番のパフォーマンスは、感動的でした。


稽古やリハーサルと全く違うテンションで演奏してきます。

こちらも負けていられません。

超絶な勢いで取り組みました。


シテを勤めたT師も、そのテンションを受けて全開でした。

稀代のパフォーマーであるT師は、ノリノリでした。


とても勉強になった舞台でした。 



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2012年06月27日

バリから 1

独立10周年記念会が終わって、ホッと一息。

のはずだったのですが、今はバリ公演に参加しています。

 

発端は、4年前のバリ公演でした。

その時の主催の演劇事務所が、再びバリ公演を行いたいので、バリに行ってくれないかという打診が去年の夏ころにきました。

 

私は、「深川バロン倶楽部」というグループで、バリ舞踊を学び、富岡八幡宮の奉納演奏にも参加している身です。

バリ舞踊は大好きです。バリにもまた訪れたいと懇願していました。

 

多少なりともバリ舞踊が分かる能楽師がいるということで、今回のバリ公演のメンバーとして誘われました。

ただ、残念ながら6月中旬に出発して6月終わりまでいるというスケジュールでは、私の10周年記念公演と重なってしまいます。

 

「残念ながら、その日程なら行けません。自分の主催公演が終わったら行けますけど・・・」

 

その一言を主催者側はくんで下さいました。何と、私の都合に合わせて625日からの出発に変更したというのです。

 

私の都合で決まった日程です。「主催公演の次の日出発ではシンドイ」

なんて言ってられません。

 

ほぼ、強制的に参加することになりました。

 

 

自分の主催公演の翌日に飛行機に7時間以上ゆられてバリに赴く。。。。

 

ハードでしたが、着いてみると気分一新。

「神々の住む島・バリ」

 

この神秘的な島が、私は大好きです。

 

しかも今回は、バリの伝統音楽であるガムランの演奏グループとしてはトップクラスのクオリティをほこる、「スダマニ」というグループとの共同作品を作り上げて、「バリ島芸術祭2012」に参加するという、スケールの大きいプロジェクトです。

 

「バリ島芸術祭」とは、今年で34回目を迎えるイベントです。

今年は69日から714日の約一ヵ月間、芸術の島・バリから、様々な舞踊や音楽、絵画、工芸品などが一堂に会する大きなイベントです。

これに出演することは、バリの芸術家にとってたいへんに名誉なことのようです。

 

 

能とバリ舞踊とのコラボレーション。

バリ舞踊を少しかじっている私にとって、こんなに夢のある舞台はありません。

 

作品は、現地で作るという、ドキドキのシチュエーションです。

日本を出るときは、何をやるのか全く知らされていませんでした。

 

私たちより5日も早く出かけ団長のT師が、現地であらかた内容を煮詰めて下さいました。

 

題材は「バスールの物語」という、バリの古典物語作品です。

 

バリ舞踊の方は、バリの人間国宝クラスのダンサーが2名参加します。

気が引き締まります。

 

月曜日に日本を出て、昨日・今日と稽古を重ねて、だんだん内容がまとまってきました。

 

私は、629日の芸術祭では地謡を勤めます。

途中、ガムランに合わせて地謡を謡うシーンなどあります。

 

謡っていて、ドキドキします。

ガムラン楽器のきっかけを聞いて、謡いだす所などありますので、ガムランをしっかり聞いていないと上手く謡えません。

 

どんな作品になるか、29日が楽しみです。



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2012年06月24日

「隅田川」「船弁慶」 御礼

「独立10周年記念 桑田貴志 能まつり」無事終わりました。

会場はめでたく、ほぼ満席のお客様で埋め尽くされました。有り難いことです。

御来場の皆様、この場を借りて御礼申し上げます。

 

観世喜之先生に、何と私の主催公演で能「隅田川」を舞って頂きました。たいへん名誉なことです。

私は、「船弁慶」を「前後之替」の小書を付けて演じました

 

「船弁慶」は、7年前に沼津自主公演で勤めました。

また、6年前に狩野川薪能で前シテだけ演じました。

大好きな能ですので、再度挑戦したいとずっと思っていました。

 

この能は、とてもやりがいのある曲ですが、あまりにもポピュラーなので、かえって自主公演などではなかなか出来ないのです。

今回は記念の会なので、華々しく小書をつけてさせて頂きました。

 

 

さて、今日は朝から大忙し。

主催公演は、そもそも準備がたいへんなのですが、今回は、「隅田川」の子方を勤める長男の世話で大忙し。

 

この春6歳になったばかりの長男は、本格的な子方は初めてです。

当人はケロッとしているのですが、とにかく親があたふたしています。

 

何せ、子方として能楽堂に連れていくのは初めてです。

キチンとご挨拶できるかとか、何かそそうをしでかすんでは無いかなど、イロイロ気になります。

当然、舞台で首尾よく子方が勤まるかが一番心配です。

 

宝生能楽堂に着いたら、舞台で最終チェックです。

作り物を舞台に置いて、最後の稽古を行っていると、喜之先生が舞台に現れて、稽古のお相手をして下さいました。

長男にとって、こんなに心強いことはありません。

 

最終チェックが終わると、気を揉む私を尻目に、長男は兄弟子たちに遊んでもらいながら、落ち着いて過ごしています。

子供って、強いですね。

 

私の心配は、まさに杞憂に終わり、長男は堂々とした振る舞いでした。

会心の出来栄えでは無かったでしょうか。

親バカながら、長男の頑張りを称えたいと思います。

喜之先生からもお褒めの言葉を頂戴して、長男は舞い上がっていました。

 

喜之先生は、得意とする「隅田川」を大熱演でした。

見所のいたるところですすり泣きが聞こえてきます。まさに自家薬籠の「隅田川」。

師匠の、自在な舞台でした。

 

 

「隅田川」が終わり、お相手下さいました先生方に、長男を連れてご挨拶に伺います。

これで、一息と思いきや、今日はこれからが本番です。

 

三役の皆様に、ご挨拶と上演次第の確認をそれぞれ行うと、休むヒマなくすぐ、「船弁慶」の装束の着付けに入りました。

 

まあ、主催公演の常なのですが、とにかく忙しかったです。

 

能が始まると、さすがに落ち着いてきました。

稽古はたっぷり積んだので、謡や型に不安はありません。

 

中ほどからは、まさに体が勝手に動き出す感じです。

私の経験上、こういうときはかえって油断してミスをしてしまいます。

 

体は進みながら、気持ちは常にブレーキをかけつつ演じています。変な感じです。

 

喜之先生は、よく「慣れることは大切だけど、慣れすぎてはダメだ」とよくおっしゃいます。

「船弁慶」のようにお馴染の曲になると、慣れから油断することを、しばしば戒められます。

 

師匠のこの言葉を、胸に染みこませて演じました。

 

前場は、ほぼ破綻なく出来たと思います。

 

後場は、ずっと心配でした。

稽古はたくさん積みました。でもこういう動き回る能は、やはり何かトラブルが起こるリスクが高まります。

 

特に、自分の主催公演のいよいよオーラスを迎え、気分が高揚しているのが自分でも分かります。

こういう時こそ、「離見の見」です。

 

「離見の見」とは、世阿弥の有名な言葉で、一歩引いて自分の舞姿を客観的に見なさいという、教えです。

前場同様、常にブレーキをかけながら演じていました。

 

もっと、はじけて演じても良かったかと思うのですが、まあ、今日のコンディションだと、仕方ないと思います。

 

後の型で、飛び返りや小回りなど、アクロバティックなものは、回転しながら不思議とまわりが良く見えました。

こんな経験は、今までほとんどありません。

 

我ながら、落ち着いて出来たと思います。

 

無事に終えて、ホッとしました。

いつもは、ここで達成感にあふれた気持ちで家路に赴くのですが、今日は何だか違います。

 

演じ終えたのと同時に、また「船弁慶」をやりたなと思いました。

今日の舞台が消化不良なわけではないのです。ただ、次はもっと違うものが出来そうな気がするのです。

こんな気持ちは初めてです。

 

 

何はともあれ、独立10周年という節目を、迎えました。

これを新たなスタートラインと定め、また一歩一歩、歩んでいきたいと思います。



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2012年06月23日

ウン気上昇

今日は、「のうのう能プラス」
能は「屋島」で、シテは観世銕之丞師。

「弓流」「奈須与市語」の小書が付いて、たっぷり1時間50分の重厚な能でした。
私は、地謡を謡わさせて頂きました。

シテの観世銕之丞師はもとより、若手精鋭のお囃子方(竹市 学師、成田達志師、亀井広忠師)も大熱演。

地謡座で大いに刺激を受けました。

亀井師は、明日の「船弁慶」のお相手をして下さいます。

私も負けないよう、全開でやりたいと思います。


明日は、いよいよ「独立10周年記念 能まつり」です。
昨日、追い込んで稽古をしたので、今日は軽く確認程度で終わりにしました。
大事なのは、疲れをとるために休むことです。


さて、今日出かけようと家の外に出ると、車のボンネットに鳥のフンが付いています。

「何だあ、汚いなあ」
拭き取ろうと雑巾を取り出して、ふと思い直しました。

これは、ウンが付いたということだ。

そう、運気上昇の印なのでしょう。
明日までそのままにすることにします。


kuwata_takashi at 21:25|PermalinkComments(0)TrackBack(0)