2010年07月

2010年07月24日

怒涛の三日間

昨日は、午前中は九皐会別会の申合。
私は、「山姥」のツレという大役を頂きました。

山姥はもちろん大曲で、そのツレですので、大事な役であるのは当たり前なのですが、この役は違った意味でも大変なのです。

だいたい1時間半位、舞台に立て膝で座っていなければならないという、苦しい役なのです。


苦しい申合が終わると、夜は神遊の蝋燭能「松山天狗」の地謡を謡わせて頂きました。

「松山天狗」は最近復曲された珍しい曲で、私は謡うのは初めてです。

頑張って覚えました。

とにかく昨日は、大変なダブルヘッダーでした。


今日は、愛媛に来ています。

しまなみ海道の中間点、大三島にて「しまなみ海道薪能」

能は「自然居士」。私は地謡でした。

また、私の郷里・福山に近いということから、仕舞「船弁慶キリ」をさせて頂きました。

この仕舞は、長刀を振り回して豪快に演じなければならない、難しい役です。
昨日の疲労が残るなか、頑張って勤めました。

薪能ですので、帰京は無理。今日は広島に宿泊です。

懐かしい友人と旨い酒を一杯やりたいところですが、今日はひたすら寝ます。

明日は、「山姥」の本番です。
体力回復に勤めます。


それにしても、大曲のツレやら、復曲能の地謡、地方の薪能に、長刀を使っての仕舞。

どれも、めったにないことです。
それが三日連続であるのですから、凄いことです。

充実した、怒涛の三日間です。


kuwata_takashi at 23:04|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年07月22日

身体表現研究 2

「身体表現研究」の講座を行う、芸術造形研究所は、私が学生時代を過ごしてお茶の水にあります。

昔よく言った、懐かしいカレー屋で腹ごしらえして、7時からの授業に臨みました。

6回のうち、最後の一回は発表会として、5回で「高砂」の仕舞と謡いを仕上げることにしました。

初めて取り組む曲が「高砂」とは、かなりのハードルです。

でも、受講生はみんな意欲を持って学んでいる方たちですので、高いハードルを設定しないと意味ないと思い、敢えて取り組みました。

そして五回の稽古の前半には、能の登場人物の五つのジャンル、いわゆる五番立てに沿った体の使い方の練習をしました。

神様の動き、武士の動き、女性の動き、狂女の動き、鬼の動き・・・

動きの課題を考えるのも一苦労です。


四苦八苦しながらも、なんとか6回の授業を終えました。
最終日の発表会では、みんな見事に「高砂」を舞い、地謡も謡えました。

最初は、「こんな難しいものは絶対に覚えられません」
と、悲痛の叫びを上げていた受講生たちでした。

でも講座の終了後は、「もっとやりたい」
と言ってくれました。

なかなか良い体験でした。

受講生の皆様、良い臨床美術士になってください。


kuwata_takashi at 17:02|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年07月21日

身体表現研究 1

5月から7月にかけて、芸術造形研究所というところで、「身体表現研究」なる講座をしておりました。

芸術造形研究所とは、臨床美術士を養成する機関です。
臨床美術士とは、認知症や心の病を患っている方に、絵画や音楽の力で心を豊かにして治療に役立てる医療技術士のことです。

元来、人間の心には絵や音楽を心地よく思う感性が備わっています。
感性を豊かにする臨床美術という医療行為は、今とても注目されている分野のようです。

臨床美術士の3級を取得するにあたり、「身体表現研究」という授業が必修となっています。

その講座を、私が担当させていただくことになったのです。

講座をお受けしたのは良いのですが、何をして良いのか迷いました。
臨床美術士を目指す人に、能楽師の私が何を教えられるのだろう・・・

そもそも「身体表現研究」とは、自分の体の効率のよい使い方を学んで、臨床美術の現場に役立てるための授業です。
きめられたカリキュラムはなく、どのように授業を組み立てても良いと言われました。

前任者は、どういう授業をしていたのか聞いてみますと、バリ舞踊や格闘技の体の使い方を練習して、自分なりのパフォーマンスを作るという授業だったようです。

実は、今まで二回、その授業の一環として一コマだけ授業を担当させて頂き、私は単純に謡いと仕舞を教えただけでした。

それが好評だったのか、今回は6回の講座の全てを受け持つことになりました。

担当者と打ち合わせします。

「前任の方は、バリ舞踊や格闘技の動きを教えていたんですよねえ。私はどうすれば良いですか?」

「どのようにしていただいても結構ですよ」

「でも、私に出来ることといったら、謡いや仕舞を教えることくらいしかありません。そんな普通のことやっても、どうですかねえ・・・」

「・・・・謡いや仕舞の稽古は普通のことではないですよ」

「え!! まあ一般の人にとっては確かにそうですねえ」

「よし、それでいきましょう」


かくして、絵や彫刻がならんでいる部屋で、6回シリーズで謡いと仕舞を教えることになりました。


kuwata_takashi at 16:46|PermalinkComments(0)TrackBack(0)