2010年03月

2010年03月21日

春の嵐

今日は、国立能楽堂とセルリアンタワー能楽堂を掛け持ちで仕事。
そろそろ春の能繁期です。


ところで、今朝はスゴイ嵐でした。
風と雨のすさましさに、思わず跳ね起きましたが、まあ大丈夫だろうと、そのまま安心して再びぐっすりと眠りに落ちました。

布団で入眠しながら、15年前のことを思い出していました。

私は、卒業旅行としてバイクにテントと寝袋をのせて道成寺に赴いたことは、一年前の日記に書きました。下記を参照してください。
http://shitashimu.dreamlog.jp/archives/2009-04.html?p=3#20090404

途中、伊勢の二見の浦の海岸でテントを張って寝ていました。
スキーウェアを着こんで、寝袋に潜り込んでスヤスヤ眠っていると、夜中に突如スゴイ嵐に襲われました。

ディスカウントショップで買った小さなテントは、ひとたまりもなく吹き飛ばされそうです。
雨はテントにたたきつけてくるし、強烈な海鳴りが轟き、波はザブンと押し寄せてきます。

誰もいない海辺で、まわりは真っ暗闇。

本当に怖かった・・・


たぶん、これが嵐の怖さなのでしょう。
昔の人が、嵐(野分)をどれだけ恐れたか実感しました。

そう思うと、あんなスゴイ嵐の中、安心して寝られる今の私の境遇というか住環境には、本当に感謝しなければなりません。


kuwata_takashi at 22:57|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年03月19日

ツレについて

ツレを最近たくさんさせていただけるようになりました。
実はこれは、能楽師にとって有難いことなのです。

ある兄弟子に、ツレがきちんと出来るのが、素人と玄人の違いだと教わりました。

能という演劇は、基本的にはシテ一人主義です。
ツレとかワキという役は、いかにシテの意図をくみ取って、シテを引き立てる演技が要求されます。

ツレが目立ってはいけません。あくまで、シテを目立たせるのがツレの役目です。

お稽古を何十年もなさっているお素人の中には、玄人はだしの名人芸を見せる方も多々いらっしゃいます。

発表会で、習物のい謡いを朗々と謡う姿をよくお見うけします。
ただ、そういう方がツレをなさるとどうにも具合が悪いことがしばしばございます。

どうしても目立ってしまって、シテを食ってしまうのですね。

いかにシテを際立たせるか。これはもう、経験が物を言います。

私も昔、ツレのお役を頂いて、嬉しさのあまり精一杯謡ううと、よく怒られました。

「お前、偉そうな謡を謡うんじゃない。ジャマなんだよ」

一生懸命自分の世界で演技して良いのがシテで、ワキやツレは、あくまでシテの演技を受けて、バランスを取りながら演技をしなくてはなりません。

これは、一朝一夕にできることではありません。
だから、キチンとツレが出来ることが、玄人の条件となるのです。

長年お稽古なさっているお素人の方の中には、発表会で能を舞う方もいらっしゃいます。

キチンと能面と能装束を着けて、囃子に合わせながら能を一曲勤める。

これは大変なことです。
だから、そういう時は、ツレやワキ、お囃子方などは、何が起こっても大丈夫なように、ベテランの玄人が演じて、一生懸命シテをサポートするのです。


以前、ある現代演劇の役者さん(けっこう有名な方です)と飲んだ時、上のような話をしました。
その役者さんは、大きくうなずきながら、こう言いました。

「なんだ、それじゃあTVの連続ドラマと一緒じゃないか」
「連続ドラマの主役は、あんなんで良いんだよ」

その役者さんは、飲み屋で流れていたTV画面を指差しました。
そこには、あるアイドルが主演している連続ドラマが流れていました。

「な、あのアイドルを引き立てるため、周りの役者は粒ぞろいだろう」

確かに、共演者は大御所の役者ばかりでした。

いずこも同じですね。

kuwata_takashi at 23:50|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年03月16日

ツレ強化週間

今日は、高校生の学生鑑賞能。曲は「敦盛」で、私はツレをさせて頂きました。

先週から今週にかけては、ツレのお役をたくさん頂戴いたしました。

7日の緑泉会では、「善知鳥」のツレ。
10日の県民のための能を知る会では、「正尊」のツレ。
13日の中野ZERO能では、「紅葉狩 鬼揃」のツレ。
今日15日が、「敦盛」のツレ。

実に1日か2日おきに装束を着させて頂きました。

こんなに集中してツレをさせていただいたことなんて、初めてです。
ツレって、シテやワキと上手くバランス取りながら演じないといけないので、たいそう気をつかいます。

いやあ、ツレー一週間でした。


kuwata_takashi at 00:08|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年03月09日

パンクで思い出すこと

先程、車のタイヤがパンクしたという日記を書きました。

私の車がタイヤがパンクしたのは、今回が二度目です。
前回のパンクを思い出しました。

前回のパンクは4年前、やはり沼津のお稽古の日でした・・・

その日は前の晩から、長男をお腹に宿していた家内が猛烈に苦しんでいました。
原因不明の痛みです。

私は慌てて、朝一番に病院に連れていきました。
家内の痛みは一向に収まりません。結局その日は家内に付き添い、沼津のお稽古を中止にしました。

病院の帰り、ガソリンが少なくなっているので、ガソリンスタンドに寄りました。

店員さんは言います。

「お客様、タイヤがパンクしていますよ」

「え、なんともないですよ」

「いえ、しばらくは大丈夫ですが、急にガタっときて大変危険です」


・・・私は背筋が寒くなりました。

もし、そのまま沼津のお稽古に行っていたらどうなったでしょう。
東名高速を走行中に、急にガタっときていたら、大変なことになったことでしょう。


私は、確信しています。
長男が、知らせてくれたんだと。

私が沼津に行かないように、家内の胎内で暴れてくれたのでしょう。

長男は、私の命を救ってくれました。


kuwata_takashi at 23:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

ツイてない

昨日は富士のお稽古。今日は沼津のお稽古。
いつもは宿泊してのんびり過ごします。

しかし、今朝急に稽古能が入った為、両日とも日帰りとなってしまいました。


今朝は、矢来能楽堂での稽古能を終えたあと、そのまま着物で飛び出し、車で移動の予定でした。

朝、車に乗ってしばらく進むが、どうもおかしい。
タイヤの感じがいつもと違います。

車を降りて確認すると、まんまとタイヤがパンクしていました。

「何てこった。ツイてない。」

これでは車で移動できません。
私は仕方なく、両手一杯の大荷物を抱えて、満員電車に乗り込み、矢来に向かいました。

矢来から沼津の移動も大変でした。
車より時間もお金もかかります。

「本当にツイてない」


夜、お稽古を終えて帰るべく、稽古場の外に出ると、温暖な沼津でもみぞれ交じりの雨。
聞けば、御殿場は朝から大雪だそうです。

「これはツイてる。助かった」

朝、あのまま車で出かけていたら、東名高速で立ち往生だったでしょう。

タイヤがパンクしてて、本当に助かりました。


kuwata_takashi at 23:03|PermalinkComments(0)TrackBack(0)