2009年11月

2009年11月22日

「大般若」飛天

今日は、横須賀にてろうそく能。曲目は、「大般若」です。

喜正先生の、3度目の上演です。
過去二回は、龍神の役をさせていただいたのですが、今回は天女役(飛天)です。

この飛天という役はたいそう曲者です。
二人同じ格好で現れて、まず下端の舞を舞います。

この舞がとにかく複雑で難しいのです。しかもそれを二人合わせて舞わなければなりません。

今回は、忙しい合間をぬって、もう一人の飛天役のK氏と何度も合わせました。

なかなか息の合った舞となっていたようです。

「大般若」という能は、とにかくスペクタクル満載の能です。
今日のような大劇場(よこすか芸術劇場。2000人は入る、凄い劇場)にはうってつけの能です。

そもそも、現在の梅若玄祥先生が復曲なさった能で、初演は国立大劇場です。
最初から、大きな会場を想定した作りとなっています。


とても複雑な、飛天の役を終えて、とにかくホッとしました。

このところ、お役ラッシュでした。
一区切りですね。

ただ、まだまだ予断を許しません。
今年は12月に入っても、舞台が続きます。

本当に充実した一年です。


at 23:42|Permalink

2009年11月21日

初めての地頭

昨日、「のうのう能」公演にて「安達原」が出ました。
私は、地頭という大役を勤めさせていただきました。

地頭とは、地謡のリーダーでして、一曲の成否を決定するといっても過言でない、とても重要な役割です。
普通は、経験豊富な年長者が勤めます。

「のうのう能」は、観世喜正先生が能楽初心者への普及を目的に主催なさっている公演です。
またこの公演は、九皐会門下の若手の底上げをはかる目的も備えています。

シテや地頭などは、柔軟に若手が登用されています。
そういう趣旨の会ですので、私も地頭という大役を仰せつかることとなった次第です。

今まで、稽古能や学生能などで勉強のために地頭をさせていただくことはありましたが、こういう有料の催しで地頭を勤めるのは初めてのことです。

とにかく緊張しました。
シテと地頭は同格と、良く言いますが、それはあくまで表面上のこと。

シテのミスは、自分に返ってくるだけです。結局、自分が評価を下げるだけです。
地頭のミスは、シテの演技に大きく影響します。それによってその日の能を台無しにしてしまうことになります。

地頭は、あくまでシテが気持よく舞えるための縁の下の力持ちなのです。

先日、NHKの芸能花舞台という番組で、私が敬愛する能楽師の追悼特集をやっていました。
その中で、「シテと地頭は野球のバッテリーのようなもの」
という言葉を聞きました。

当代一の名地頭と呼ばれた方らしい、良い言葉です。地頭とは、ピッチャーを影で支えるキャッチャーなのです。


そんな身に余る大役です。
本当に緊張しました。シテを舞うときより、よっぽど緊張しました。
「安達原」なんて、しょっちゅう謡っている曲なのに、不安でしかたありません。


初めての地頭を、終えて見て。

うーん。あんなものかなあ・・・

終わった時の感想は、
「精一杯謡ったなあ・・」
「ふー。無事に終わった・・」


シテの演技に影響するような大きなミスは無かったかと思います。
でも、それだけだったのかもしれません。


とにかく良い経験をさせていただきました。

魅力ある地謡を謡えるように、日々精進していきたいと思います。


at 23:40|Permalink

2009年11月17日

「茉莉会」御礼

日曜日、私のお弟子様の発表会「茉莉会五周年記念大会」が無事終了いたしました。

前日までの冷たい雨が嘘のように、当日は晴天に恵まれポカポカの小春日和でした。

たくさんの来場者の方にお越し頂き、大盛況でした。
その中で、参加者は生き生きと謡に仕舞に頑張っていました。


私の社中の発表会も、今年が5周年となりました。
5周年にして初めて能楽堂での開催です。
出演者のほとんどは、初めての能楽堂です。

また、今回は去年までは別々に行っていた、東京の教室と沼津・富士の教室との合同の発表会でもありました。

お互いに刺激になったようです。

さらに、茉莉会として初めての舞囃子に、初めての習物の謡。
特に舞囃子に挑戦したお弟子様たちは、ほぼ1年がかりのお稽古でした。


このように、初めて尽くしの発表会です。
主催の私も、初めてのことだらけで、てんてこ舞いでした。

さらに今回は、私の長男・潤之介(3歳6ヶ月)の初舞台までありました。
冷や冷やものでしたが、何とか無事に終わってホッとしております。

長男の仕舞には本当にドキドキしましたが、他の出演者の舞台は、安心して見ることが出来ました。

やはり、能楽堂という檜舞台での発表ということで、例年よりお稽古にも熱が入っていました。
皆様、精一杯の発表が出来ました。

出演者の皆様、お疲れ様でした。
これからも、お稽古頑張りましょう。


at 15:38|Permalink

2009年11月11日

「茉莉会」五周年記念大会

日曜日に、「葛城」を終えホッとしたのもつかのま。
今週末の15日の日曜日には、「茉莉会」五周年記念大会があります。

「茉莉会(まつりかい)」とは、私が指導しております能楽愛好者の社中の会です。
発足以来、五周年という記念の年を迎え、今年は矢来能楽堂にて記念大会を行います。

五周年といっても、今までは小さな会しか行っていません。
能楽堂を会場として使用することも初めてです。
初めて舞囃子を指導しましたし、初めて習物の素謡も指導しました。

初めて尽くしの発表会のなかで、極めつけは、

長男の初舞台

です。

長男・潤之介(3歳6ヵ月)が、仕舞「老松」を勤めます。
いったいどうなることやら・・・

心配でなりません。


晴れの日に向け、社中一同お稽古に励んでおります。
入場は無料です。ご興味がございましたらお運びくださいませ。


at 23:48|Permalink

2009年11月08日

「葛城」御礼

本日、九皐会にて「葛城」を無事に終えました。

御来場のみなさま、どうも有難うございました。

初めて演じます蔓物の能は、一言で言うと、「楽しかった」です。
蔓物、とりわけ序之舞は時間がゆっくりと流れるので、自分を客観的に見やすいです。
世阿弥が言うところの、離見の見ですね。
何だか、舞っている自分のことがよく見えた気がします。

ただ「葛城」という能は、いわゆる蔓物の中ではかなり異質な能です。
普通、蔓物のシテは美女というか、美しい存在として描かれていますが、この葛城の女神は、容姿が醜いことを恥ずかしがっているというとっても人間的な神様なのです。

能というものは、とにかく美しさにこだわります。
どんな、卑しい身分の人物でも、演技に美がないと能は成り立ちません。

だから、葛城の神も、容姿が醜くても、美しく演じなければなりません。

今日は、前場は少し影のある女として暗く演じましたが、後場は女神らしく華やかに舞ってみました。
師匠から勧められた能面が、まさにそういう顔をしていました。

その能面をみて、「葛城」の方向性が定まったように思います。


やっとひと段落です。今年のシテはもうお終いです。

来週は、私の素人会が五周年記念大会ということで、矢来能楽堂にて華々しく行われます。

私の社中として初めて、舞囃子や、習物の素謡など出ます。

さあ、今週は最後の追い込み稽古です。


at 22:28|Permalink