2009年04月06日

2009年04月06日

道成寺詣で(2)

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道成寺に到着すると、いきなり現れるのが有名な「仁王門」と「62段の石段」
能の中の乱拍子は、この石段を上がるのを象徴していると言われています。

上る前に、深呼吸。気分は、大鼓一調のあと、次第を謡っていよいよ乱拍子へと入る何とも言えない緊張感です。
一段一段、心して登りました。一歩一歩、足の裏で石段の感触を噛みしめるように・・・

「あれ、もう上っちゃった。」

乱拍子の疑似体験を感じる間もなく、あっという間に登りきってしまいました。

「意外と楽だぞ、この石段」

この石段を登った感触は、毎日欠かさず稽古している能の乱拍子とは比べるべくもありません。
後で、道成寺の副住職に聞いたところ、この石段は「登り易くて、降り易い」階段として有名だそうです。
昔の人の知恵で、最も体が楽な傾きや高さになっていて、また石段に添って、逆ハの字に土手が築かれ、遠近法で石段が平面的に見えるように作られてあるそうです。

何でも、この昇降の楽な階段を、駅の階段を作るにあたって参考にするため、国鉄(と言うからには、ずいぶん昔)が石段の傾斜や階段の高さなどを調べに来たこともあったそうです。
今で言うところの、体に優しいユニバーサル・デザインなのが、この石段なのです。

それに、考えてみればたったの62段。神楽坂駅の階段は88段もあります。
確かに、神楽坂駅(ノンバリアフリー。未だにエスカレーターもエレベーターもない)の階段の方がよっぽど登って疲れます。

体に優しい石段と、体力と気力の限界に挑みながら演じる乱拍子。

なんだか、ミスマッチな気がします。

乱拍子に関しては、色んな人が色んな事を述べていますので、今さら何か言うこともないでしょう。
私なりに思うところもあります。機会があればまた書きたいと思います。


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何はともあれ、仁王門をくぐると、もうそこは道成寺の境内です。
満開の桜に、週末の土曜日。境内はたくさんの人で賑わっています。
敷物をひいてお弁当を食べているグループも数多く、その横で子供がキャッチボールしています。
14年目とは違う風景ですが、お寺は何も変わりません。

14年前はただの観光客でしたが、今回は事前に祈祷の予約を入れ、参拝者として寺務所を訪れました。
私が行くと、副住職がもう準備なさっています。

「では、本堂にご案内いたします。」
副住職の後に、ついて本堂に向かいました。
兄弟子に聞くと、本堂に入っての祈祷は本当に格別だそうです。

何と言っても、本堂には特別な祈祷の時しか入れないそうです。
薄暗い本堂に、お坊様と二人きり。眼前には奈良時代より鎮座まします千手観音。
それはそれは、厳粛な雰囲気で行われる祈祷であると伺っていました。

さあ、いよいよ本堂に着きました。
威厳のある佇まいですが、何かおかしい。聞いていた雰囲気と違うなあ・・・


at 23:54|Permalink