2006年06月

2006年06月30日

大河ドラマ収録

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昨日は、NHK大河ドラマ「巧名が辻」の収録に行きました。

観世喜正先生が、「巧名が辻」の能楽監修をつとめている関係で、劇中の能のシーンの撮影に参加した訳です。

私の役名は、能楽師。
秀吉がねねを連れて帝と能を見るシーンで能を演じます。私は後見をいたしました。


「衣装は衣装部で用意してありますので、肌襦袢だけ持って来て下さい」

おお、なんて楽チン。いつも仕事には、紋付き袴一式持ち歩いているので、それだけのことがとても嬉しい。

楽屋入りすると、メイクさんにメイクをしてもらいます。私は座っているたけ。これはスゴい。

更に、時代劇ですのでちょんまげをします。
これも、座っていれば勝手にやってくれます。

私を担当したカツラ屋さん。私の頭を触るなり、顔をしかめ、首を振りながら棚の奥の方を物色しだしました。
確かに私の頭は大きいですが、そんなに顔をしかめなくても……
カツラ屋さんは、
「コレならどうだ」
と満足気にバカデカいカツラを持ってきました。

初めてのカツラを着けて、鏡をシゲシゲと見ると、「おお、なんだか時代劇の役者みたいだ」

喜んでいると、ちょんまげの上に烏帽子を着けられました。
それも、「翁」の時にいつも着けているのと同じ侍烏帽子。

せっかくのちょんまげが、侍烏帽子ですっかり隠れてしまいました。

そして、衣装さんが私たちの着る衣装を持って来て下さいました。
「よし、衣装を着せてもらうぞ」
と、待ち構えると

「あと宜しくお願いします」

と、衣装さんはどっか行ってしまいました。

「おい、どうするんだよ」
と、置かれた衣装を見ると、ただの直垂。

「おお、これならいつも着てるから大丈夫だ」

私たちは、何の問題もなく自分達で着始めました。

衣装さんは、能楽師ならこれ位自分達で着れる、と知ってたからどっか行っちゃったのでしょう。
試しに、他の楽屋を覗いてみると、やはり皆さん衣装さんに直垂を着せられていました。

考えてみれば、
「なんだ、ただの直垂か」
と、普通に着てしまう私達ってスゴい気がします。


今回の設定では、帝の御前での演能ということですので、直垂に侍烏帽子という最高礼装です。

普通の人にとって、そんな格好は映画村にでも行かなければ出来ません。

でも、私たちは「翁」の時にほとんど同じ格好をします。(「翁」の時は素襖を着ます。素襖と直垂とはほとんど一緒。それぞれ江戸時代と室町時代の礼装です)

せっかくのちょんまげも侍烏帽子で見えないですし、写真をアップしましたが、なんだかとっても普通。

皆、とりたて騒ぎもせず、たんたんと普通に能楽師の役を演じました。

特に、シテを演じたH氏。
普通に能装束を着て、普通に「高砂」を舞っただけ。

一番派手な格好をしているシテが、能楽師にとっては一番普通の格好と言うのも面白いですね。


放送は、8月27日(日)です。
まあ、一瞬の出番ですが是非ご覧下さいませ。


at 22:30|Permalink

2006年06月26日

子ども能「江間の小四郎」

先日金曜日に、狩野川薪能の事前デモンストレーションを兼ねて、伊豆の国市の能楽鑑賞教室が行われました。


最初に私が「中の舞」を装束着けて舞いました。
能を見るのが初めてであろう小学生に、能の舞と囃子を見せる。

そこで興味を示した子供達に、今度は囃子の体験をさせてみました。
ここは、狩野川薪能の主催者の囃子方のO師による天才的な盛り上げ方により、大盛況。


続いて、いよいよ2週間後に迫った狩野川薪能の子ども能「江間の小四郎」が披露されました。

普段は元気一杯の子どもたちも、さすがに同級生のお友達をはじめとする、市内中の小学生の前では緊張気味。
少しハラハラする場面もありましたが、総体的にはとても良い出来でした。
子どもたちも良い経験となったでしょう。

そして締めは、半能「船弁慶」の披露。
この子方も、地元の小学生です。
ホンワカとした子ども能から一転して、今度は玄人に混じって出てくる、地元の小学生。

見ていた小学生も、親しみを持って見れたのではないでしょうか。


「子どもたちに能に親しんでもらう」
ということが大事なことは、言うまでもありません。
でも、実際に能を見せても、遠い世界のものにしか感じられないようです。

この日のように、自分達の同級生が演じる子ども能や、玄人の中で子方を演じる同級生を見るという経験は、素晴らしいと思います。

この経験は、能を身近なものと感じさせることでしょう。


さあ、あとは本番の7月8日にむけて、最後の仕上げです。


at 15:19|Permalink

2006年06月22日

東京国際フォーラム

今日は、有楽町の東京国際フォーラムにて、能の講演会のお手伝い。
これは、同じ九皐会門下のB師の請け負いの講演会です。

なんと言っても、東京国際フォーラムです。
あの、国際会議などが頻繁に行われている、旧都庁の跡地。

ここの地下には、銀座地区にしては格安の大きな駐車場があるので、銀座で買い物したり映画見たりする時は、いつもこの駐車場に停めていました。
まさか、ここのホールで能の講演会のお手伝いをするとは思いもよりませんでした。


今日のB師の講演会を始め、先日の宮城は白石城にて薪能を主催したK師、または、先月に山梨の武田神社にて薪能を主催したS師などは、いづれも同年代の能楽師です。

つい5~6年前まで、師匠宅で一緒に内弟子をして、文字通り同じ釜の飯を食べた間柄です。

その彼らが、立派に自分の主催の催しを運営しているのを見ると、励みになります。


内弟子にいるころ、夜な夜な飲んだくれて、グチを言い合いながらも、互いの夢を語り合った仲間です。
かけがえの無い時間を共有していたと、今なら思えます。

当時は、一番下っ端の私(今も九皐会では一番下っ端ですが)は雑用ばかりこなし、めぐり合わせの悪さを恨んだものでした。

内弟子時代が、良い時だったなんて、やはりとても思えません。
ただ、そのどん底を経験しているからこそ、今頑張れるのかなあと思います。
何かつらい事がめぐってきた時、私はこう思います。

「内弟子時代の辛さに比べれば、どうってことないよ」


私も、仲間に負けずに頑張って芸道に励みます。


at 21:35|Permalink

2006年06月15日

インフルエンザ

長引いた風邪も、ようやく収束してきました。
かれこれ、ひと月位風邪で苦しみました。

昨日の新聞の記事で季節外れのインフルエンザが大流行との記事を見つけました。
きっと、私もこれにかかったのでしょう。

今、九皐会では、風邪が大流行。
楽屋内では、至る所でセキや鼻水をすする音が響きます。

私はようやく治ってきましたので、今度はうつらないように、必死で逃げています。

全ての風邪引きの、発信源であるに関わらず、無責任なものです。


そうそう、狭い地謡座に身を寄せ合って、時にはツバを飛ばしながら大声を出している我々は、すぐ風邪がうつってしまいます。


at 23:32|Permalink

2006年06月13日

町田ことぶき大学

「清経」は舞応えがありました。
終わった後も、何となく脱力感が体に残っております。

でも、脱力している場合ではありません。
能繁期の真っ盛り。連日忙しい日々が続きます。


今日から、「町田ことぶき大学」の今年度の「能楽コース」が始まりました。
去年から始まった「能楽コース」も、大好評のうちに二年目を迎えました。
今年は、定員30名に70人くらいの応募があったそうです。

第一回目のお稽古は、取り合えず小手調べ。
謡は簡単な小謡をやり、仕舞は主には「カマエ」と「ハコビ」(要は、立ち方と歩き方)をやりました。

ことぶき大学と言うくらいですので、高齢者が対象なのですが、そのパワーには毎度驚かされます。

いくつになっても好奇心と向上心を忘れてはいけないなあと、学ばされます。

今日、私が最初に仕舞と謡を模範としてやってみました。
すると、大拍手。大盛り上がりでした。
その盛り上がりを見て私は言います。
「拍手している場合ではないですよ。今から皆さんにもやってもらいます」

「えー!!!!」

「去年の受講生は、最後には見事に舞台で発表しましたよ」

「・・・・・・」


最終的には、去年のように舞台の上で、仕舞と謡の発表をいたします。
その発表会にむけて、一緒に頑張っていきたいと思います。

伊豆では、「こども能」の稽古が7月8日の本番に向けて、いよいよ佳境に差し掛かっていますが、平行して「ことぶき大学」も始まりました。

舞台の成功に向けて、お稽古を重ねてゆく過程って、私好きです。


at 23:26|Permalink