2006年01月

2006年01月15日

シンガポール第一便 4

昨夜、一人で食事をしていると、日本語を勉強しているというシンガポール人が話しかけてきた。
私が日本の雑誌を読んでいたから日本人とわかったようだ。

というのも、多民族国家シンガポールにおいて中国系は75%を占める。街行く人は、日本人とほとんど変わらない。街中でジロジロ見られないで住むのは有難いです。

彼は日本に興味があるそうで、いろいろ聞いてきた。私が能役者だというと、たいへん驚いて、その店のオーナーまで呼んできた。
私は能についていろいろ説明した。とても喜んでいた。
私もシンガポールについていろいろ質問して、楽しく時を過ごした。
彼は、二日後の10時半にまたこの店で会おうと、私に提案して帰っていった。

誰が行くもんか。
海外で日本人だと知ってて声をかけて来る連中に、ロクなヤツはいない。
タダの人懐っこいだけの男かもしれないが、日本人をカモする悪人かもしれない。店のオーナーと名乗った男も、本当にオーナーか分かったもんじゃない。
まあ、関わらない方が無難でしょう。

「私が日本人だからって、なめるなよ」
そう思って、ホテルに戻った。

ここでふと思った。何故日本人はなめられるのだろうか。

まず、お金をたくさん持っている。安全な国で暮らしているから、危機管理が甘い。語学に自信がないから、薦められるまま何でも買ってしまう。また基本的に弱気なので、少々のことは「マアいいか」で済ませてしまう。

どれも事実である。
日本は世界の中で、いやアジアの中でどんな存在なのだろうか。

小学校に、仮にアジア・クラスがあったとする。
日本は、お金持ちで勉強は出来るけど、内気で話し下手。クラス内のことにはあまり関心が無く、よそのクラスの顔色ばかり伺っている。特に学校を仕切るアメリカ番長には頭が上がらない。
他のクラスメイトも、普段は無視しているが、試験前になるといきなり頼り出す。貧しい友達にお金を貸してあげることもしょっちゅう。
そんなときはみんなから感謝されるから、自分はクラスのリーダーのつもりでいる。

まあ、こんなところじゃないでしょうか。


日本はアジアのリーダーなのだろうか?
そう思っている日本人は多いと思う。

確かに、日本の企業の競争力はすばらしい。ここシンガポールでも、車・電化製品・日用品、ほとんど日本製だ。
ビジネスに来ている日本人も多い。

でも日本にいても、アジアのニュースなんか殆ど入ってこない。アメリカやヨーロッパのニュースはほぼリアルタイムで流れてくるのに・・・
日本のアイドルが、アジアの国々で大人気というニュースを聞いて誇らしげに思うが、アジアのタレントというと、ジャッキー・チェンしか知らない。
アメリカやヨーロッパに留学したという人なんか、ゴマンといる。でも、アジアに留学した人なんて、聞いたことも無い。

これで、本当にアジアのリーダーなのだろうか。
ここ、シンガポールにいるとアジア中の、いや世界中の情報が入ってくる。

テレビは基本的に言語ごとに放送されている。
まあ、マレーシアのテレビも見れるらしいので、どれがシンガポールのチャンネルなのか正確には分からないですけど。
英語チャンネルでは、アメリカやイギリスの番組が流れている。同様に、中国語チャンネルでは中国の、インドチャンネルではインドの、マレーチャンネルではマレーシアの番組やニュースが放送されている。
またそれとは別に、「ニュース・アジア」というチャンネルがあり、アジア中のニュースやスポーツ、芸能情報が分かる。
「ニュース・アジア」には「ジャパン・アワー」という番組があり、日本のチャンネルもやっている。
また、今夜のニュース・アジアでは、なんと「Succession Of a Kyomai Master」というドキュメンタリーがやっていた。芸者の映画がヒットしているからなのだろうが、シンガポールで「京舞」のドキュメントを見るとは思いもよらなかった。内容は、最近5世・井上八千代を襲名した井上八千代さんの、苦労や芸に対する取り組みをつづった、本格的なもの。

それぞれのチャンネルには、当然、中国や香港、インドのスターが登場しているし、英語チャンネルでは、ハリウッド映画が吹き替えなしで放送されている。

シンガポールにいると、世界中の情報が入ってきます。私は毎朝、「ニュース・アジア」を流しっぱなしにしているので、特にアジア関係のニュースに詳しくなった。
当然日本のニュースもやっている。ヨーロッパに2週間もいると、日本の情報に疎くなるが、シンガポールではそんなことは無い。

私は、小泉首相がトルコに行っていることも知っているし、天皇陛下が、歌会初めで、トロンハイムを訪問したときの和歌を詠んだことも知っている。また、今週末は気温が上昇して、さらに雨も降って、各地で雪崩の被害が出ていることも知っています。

シンガポール人は、日本の歌手の歌も聞くし、台湾や香港のタレントにもキャーキャーいっている。
インドを代表する役者が、踊っているのも楽しんで見ている。

本当に面白い国だ。毎日、各国のTV番組を見てると、飽きないですね。
英語の字幕があるから、インド語や中国語放送でも、何となく分かります。
あ、英語チャンネルはあんまり見ないや。ハリウッド映画や、アメリカのホームドラマ見ても面白くないから。


at 14:39|Permalink

2006年01月14日

シンガポール第一便 3

シンガポールはよく言われていますが、たいへん清潔で、治安もよく、街も機能的な国です。
国といっても、広さは東京都の三分の一くらい。そこに450万人位がひしめき合っています。

4年前初めて行く前は、漠然と「東南アジアだからなあ・・・」
なんて思っていたのですが、行ってみてビックリ。
日本より、圧倒的に先進国です。

全ての車にETC(シンガポールではERPという)がついていて、街の至る所に料金所があります。因みにこのシステムが導入されたのは8年前です。それ以来、ETCが付いていない車はシンガポールを走れません。日本のETCシステムは、シンガポールから輸入しているそうです。

また、全ての電車バスは、東京でいうところのSuica(電子マネー)で運賃を払います。全ての電車バスに導入されたのは、4年前です。
シンガポールの駅の改札には、切符を入れる穴がありません。Suicaを持ってないと電車にもバスにも乗れません。じゃあ旅行者はどうするのかというと、通常よりは高い切符を、自動販売機で買います。これは、切符というよりは、一回だけ使える定額のSuicaのようなものでして、電車から降りると、返さないといけません。(切符の料金に、預かり保証金が含まれている。切符を返却すると、保証金は戻ってきます。)
という訳で、私は日本のSuicaは持っていませんが、シンガポールのSuica(ez linkという)は持っています。

VHSのビデオデッキなんてものは完全に消滅しています。全てDVDです。
4年前に、教材としてVHSのビデオテープを持っていったら、「あ、たしかまだ見れる機械があったけ? 倉庫を探してみよう」って言われてしまいました。
今は恥ずかしくてVHSなんて、持っていけません。


街にはゴミ一つ落ちていません。何故かと言うと、ゴミを落としたところを見つかると、罰金を取られるからです。
その額は、なんと初犯で約1万円!
ちなみに、これはタバコの箱より小さいゴミの額で、タバコの箱より大きなゴミは、最高7万円!!
さらに再犯の場合は、大きさに関わらず、14万円!!!  再々犯は、35万円!!!!
3回ゴミを捨てたら破産してしまいます。

シンガポールは多くの罰金がある国として有名です。
例えば、道に唾を吐く(7万円)、立ち小便(7万円)、信号無視した歩行者(3500円)、道の植木を折る(3500円)、犬の虐待(3万5000円)、歩行中の喫煙(7万円)、タバコのポイ捨て(7万円)、野生の猿への餌付け(70万円)などなど。

犬の虐待が3万5000円なのに、猿へエサやったら70万って面白いですね。
その他、ありとあらゆる公共道徳の違反に罰金が定められています。

汚水を捨てない(3500円)とか、トイレを流さない(1万円)など、余計なお世話って気がします。
街中を、警官がウロウロしていて、外国人でもよく捕まるそうです。
こうみると、千代田区や新宿区の歩行中の喫煙は罰金2000円なんて、カワイイものです。

民族は、中国系とマレー系とインド系に別れています。そして、それぞれの言語(中国系なら中国語というように)とは別に、英語を話します。
つまり、全てのシンガポール人は、2ヶ国語以上しゃべれるということになります。

この、シンガポール。私は大好きです。

ラッフルズホテル(世界有数の高級ホテル)でシンガポール・スリング(有名なカクテル)もいいですが、屋台村で、タイガー・ビール(シンガポールで最もポピュラーなビール)を飲むのが最高ですね。


at 22:44|Permalink

2006年01月13日

シンガポール第一便 2

シンガポールに来て、初めて太陽を見ました。
といっても少しだけ。いまだ雨季のようです。

今日は稽古の3日目。徐々に学生とも打ち解けてきました。
私がシンガポールで何を教えているかと言いますと、要するに謡と仕舞です。
今は「屋島」の謡と仕舞をやっています。

まあ、英語で教えているのですが、たいした英語はしゃべっていません。
謡は、基本的に一緒に謡ってあげて、「Up more」とか「Down to chu -on(中音)」とか言っているだけです。

仕舞も一緒に動いて、「Imitate me(私のやる通りにやって)」なんて言っているだけです。
あとは、「Raise your right hand(右手挙げて)」とか「Go to Sumi(角へ行って)」
などと、まあ中学生英語です。

ただ、物語の背景とか、型の意味とか複雑なことを質問されると困ります。身振り手振りで何とか四苦八苦しながら教えていました。

ただ今回は素晴らしいことに、授業に通訳が帯同してくれることになりました。
これで、学生に細かなニュアンスまで伝えることが出来ます。
前回までは、学生に注意する時はこうでした。


仕舞が終わる。私は何かコメントを言わなければならない。

「・・・・・・・・・」難しい顔して考えている。(実は、英語が頭の中で繋がらないだけ)

学生は思う。「先生があんな難しい顔をしている。きっと私は怒られるに違いない」

私はなお、「・・・・・・・・・」   (実は、結局何を言っていいのか分からない)

学生と私の間にしばし、緊張が走る・・・・

私「Nearly OK!(まあ、いいでしょう)」  学生は、拍子抜け。


こんな日々でした。文法的には間違ってないのですが、ネイティブにとって不自然な言葉である「Nearly OK」は流行語となりました。日本語で言えば、外人が怪しい発音で、「ほとんど、ダイジョウブ!」なんて言っているものなのでしょう。
2年前に教えた学生は、私の顔を見ると、未だに「Nearly OK」を連発します。


授業は、そんなこんなで通訳付きの快適なものとなりました。
実は、たいへんなのは授業のあとの食事。

一人で食べても面白くないので、学生か学校のスタッフに、どこかお勧めの店に連れて行ってもらいます。
通訳さんは授業が終わったら帰ってしまうので、いよいよ私の怪しい英語が本領発揮します。

まず、食事のときのお約束があります。
学生は必ず最初に、「飲み物は、何にしますか」と聞いてきます。
私は必ず。「Of cause Beer!(もちろん、ビール)」と答えます。

いつも元気よく言っているのが面白いらしく、「Of cause Beer!」もまた流行語となっています。

ビールが来ると、後は学生たちに注文は任せます。
ガイドブックにはまず載っていない、珍しい食べ物の数々が運ばれてきます。
別に、珍しい物が食べたいから注文を任せるのではなく、何を頼んでいいのか全く分からないだけです。

地元の人は、食事はだいたい屋台村みたいな処で食べます。メニュー持って店の人が聞きに来てなんてくれません。自分で好みの屋台から、適当なものを頼んで来るというスタイルです。

慣れないと、屋台の前で右往左往。知らないうちに変なものを買わされてしまいます。
学生に任せるのが、楽チンだし、確実です。


シンガポールは美味しいものも宝庫です。基本的に何を食べても辛い。辛いものが苦手な人にはチョッとツライかもしれません。
徹底的な辛党の私には、まさに楽園。
唯でさえ辛い料理に、いろんなチリ・ソースがついてきます。これがまた旨い。
地元の人が驚くほど、いつも様々なチリをかけています。

暑い中、辛いものを食べているから、ビールがまた旨い。
食事中、「Of cause Beer!」の連発です。


at 23:30|Permalink

2006年01月12日

シンガポール第一便 1

シンガポールに無事つきました。

寒い東京を離れて、着いたところは常夏の楽園。さんさんと降り注ぐ太陽の恵みが待っている,,,,,

はずでした。

着いて三日目ですが、未だ太陽を見ていない。
朝から晩まで雨が降っている。それも、尋常じゃない雨が。
そう、南国特有のスコールが一日中降っているようなものです。

そして、寒い。こんなはずではなかった。

まあ寒いといっても、最高気温は25度位はあります。
ただ、当然30度以上を予想していたので、半袖しか持ってきていない。
半袖で出歩くには、ちょっと寒い気温です。

シンガポール人にとっても、珍しい気候だそうです。

シンガポールには、雨季と乾季があって、通常雨季は12月までだそうです。
1月の半ばまで雨季が続くのも珍しければ、こんなに雨が降り続けるのも異常だそうです。
もう、6日間も雨が降り続いている様です。

日本の雪も凄いし、今は、どうも世界的な異常気象らしいです。

シンガポールでの単身生活は、この4年間に7度目の訪問なので、まあ慣れたものです。
好みの店や馴染みの店もいくつかあり、非常に暮らしやすい。

今回の学生は、7人。10ヶ国から15人位いた前回よりは、ずっとやり易いです。

内訳は、シンガポール2人(中国系とインド系)、マレーシア、香港、インド2人、メキシコ。5ヶ国から集まっています。

まあとはいえ、1人で、これだけの外国人に英語で能を教えるのは、やはり大変。

徐々に、ズッコケな授業の様子など書いていきたいと思います。


at 22:29|Permalink

2006年01月10日

またもや海外へ

昨日は師匠の社中の新年謡会。
1日中、謡った後は懇親会。

大変に美味しい中華のコースと、お決まりの大量ビールを頂き、大満足。あとは、帰路についてグッスリと寝れれば、言うことなしです。


ただ、そうは行きません。
今日から、一週間またもや日本を離れます。
今回の行き先はシンガポール。
能の講師をしております「Praatice Performing Arts School」にて、アジア各国の役者さん達に、能の謡と仕舞を教えます。


という訳で、日本を離れる前に、事務仕事や原稿書きを仕上げなければなりません。
とっくにやっておけばいいのですが、何故だかいつもギリギリになってしまいます。


朝5時までかかって、急ぎの原稿等は何とか仕上げました。
さぁ、荷造りしなくっちゃ。

しかし、ここで力尽きて寝てしまいました。

成田出発が夕方なので、昼過ぎに出ればオッケーなので、2~3時間仮眠をとっても大丈夫でしょう。
しかしお約束通り、しっかりと10時まで寝てしまいました。

結局、例のごとくあれやこれや無理矢理スーツケースに詰め込んで、荷造り終了。
さらに、スーツケースに入りきらない荷物を、両手に山と抱えての出発です。荷物を少なく出来る人、尊敬します。


この所、大変な寒波に襲われている日本ですが、シンガポールは赤道直下、常夏の国。
寒がりの私には、好都合です。


明日から、時間を見て、大好評の海外レポートを報告していきたいと思います。


2年前のシンガポール遠征の様子は、HP上の、2004年公演レポートをご覧下さい。


at 15:32|Permalink