2005年10月

2005年10月13日

作り物

今日は、明治大学へ行き、日曜日の公演の打ち合わせ、アンド作り物作成をしました。

作り物とは、舞台上で使う小道具のことです。善界には「車」と言う作り物がでます。
これは、数ある作り物の中でも、もっともややこしい部類の物です。
いつもは何の変哲もないただの竹の棒なのですが、それをあれよあれよと組み立てるうちに、「車」が出来ちゃうんですよ。

能楽師は、工作も出来なければならないんですね。
普段、この「車」の作り物は、3~4人で2~3時間ほどで作るのですが、一人で作ってたら、5時間もかかってしまいました。

さてここのところ、明大能の「善界」にむけて、自分の稽古をするのはもちろんなのですが、当日演じられる学生たちの仕舞や、能の地謡を、学生達に稽古しなければなりません。

明治の学生達には、折に触れて言い聞かせます。
「この舞台は、おそらく明大能研始まって以来の大きな舞台だ」
「1000人もの規模のお客様の前で発表したことは、明大能研54年の歴史のなかで無い」
「今回は、学生の発表会じゃなくて、プロの能の公演に、出演するのだ」
「明治大学が主催し、外部に広く宣伝して集められたお客様の前で、君達は、明治大学の3万有余の学生たちを代表して、仕舞を発表するんだぞ」

当日は、私が指導する明治大学能楽研究部の仕舞の発表が3番ございます。

学生達は、おそらく人生において、これだけたくさんの人の前で何かを表現することはそうないと思います。
最初で最後かもしれません。

10月16日は、私の能「善界」はもちろん、じっくり楽しんでいただきたいのですが、学生達の一生懸命の舞台も、温かく見守っていただきたく存じます。


at 23:27|Permalink

2005年10月09日

母校にて

いよいよ、明治大学での能公演が近づいてきました。
何だか不思議な気分です。

10年前大学を卒業した時、まさか母校で能を演じることがあろうとは思いもよりませんでした。
何せ、明治大学には今まで能が出来るホールはありませんでした。
新しくホールが建てられた場所は、昔は政治経済学部の校舎があった所です。
昔、講義を受けていた空間で、能を舞うことが出来るなんて、因縁をかんじます。
(もっとも、因縁が生じる程、講義に出てはないですけど)


能役者として、最高の形で母校に恩返し出来ます。


昨日は福岡で薪能。福岡泊まりで、朝一番の飛行機で帰京して九皐会。明日は富士市で発表会と講座。明後日は栃木で学生能。金曜から土曜は名古屋と四日市遠征。

まさに能繁期まっさかり。体調に気を付けて、明治大学能、がんばるぞっと。


at 22:51|Permalink

2005年10月02日

水に浮かぶ能舞台

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土・日と、伊豆修善寺の超高級旅館・あさば旅館で能の催しがございました。

この旅館の売りは、客室と池を隔ててある能舞台です。
客室からは、池の上に浮かぶ神秘的な能舞台を見る事が出来ます。
そこで鑑賞する能は、何とも言えない贅沢なものです。江戸時代のお殿様が見た能も、かくやあらん。

実際に舞台に上がると、その雰囲気の良さに、演じている私たちがうっとりします。
ただ、どんなに幻想的だろうと、どんなに神秘的だろうと、要は山の中の池に囲まれた野外の舞台です。私たちにとって最大の敵は小動物となります。

まず、10月にしては観測史上2位という記録的な暑さにより、蚊や羽アリが大量発生。地謡座では痒さとの戦い。
更に、今まで見たことのない奇妙な蛾やトンボ(ひょっとしたら新種かもしれない)は飛んでるし、蜂やブヨも襲ってくる。


客室から見た神秘的な能舞台と、舞台上で蚊や蜂に囲まれている能役者。
見所側と役者側がここまで違うのも珍しいのでは。


at 21:59|Permalink