2005年08月

2005年08月31日

シーエンから 3

今日は、今回のツアー全7公演の4公演目。つまり、中日(なかび)でした。

昨日今日と、イプセンの故郷・シーエンにあるイプセン劇場での公演でした。
今回、ずっと演じている「二人のノーラ」は、イプセンの「人形の家」を原作とした創作能でして、まさにこのシーエンで演じることが前提で作られた作品です。

熱狂的なイプセン・ファンで埋まるシーエンで、「二人のノーラ」は受け入れられるかどうか、まさに試金石です。


昨日の公演では不思議な体験をしました。
「二人のノーラ」の劇が、何か今までと違うのです。シテやワキ、または役者さんたちの動きの間や雰囲気が、全ていいムードで進むのです。
誰も意識していなかったと後で聞きましたが、何かが違うのです。
そのムードの中でこちらも地謡を謡いますと、やはりいつもと具合が違いました。
ワキの方に、「今日の地謡、いつもと全然違いましたね」
と言われました。いや、本人達はいつも通り謡っているんですがねえ。

これは、何なのでしょう。何か見えない力が「二人のノーラ」に働いているとしか考えられません。

大鼓のO氏が言いました。
「それはね、イプセンが降りて来てるんだよ」


この劇場は、今でこそイプセン劇場という名前ですが、もともとは違う名前であり、200年くらいの歴史を誇る由緒正しい劇場です。当然イプセンがシーエンにいた頃からありました。
イプセンもこの劇場で演劇をたくさん手がけたそうです。イプセンにとって、まさにホームシアターであったわけです。私たちはイプセンと同じ楽屋を使い、イプセンと同じステージに立ったわけです。
イプセンが降りてきても不思議じゃないですね。

昨日の公演の模様が、またもや新聞にデカデカとのっていました。
かなり地元では好評だったようです。実際、高校生くらいの女の子が、感動のあまり号泣しながら見ていたようです。確かにすすり泣く音が舞台にまで聞こえてきました。
ノルウェーの女子高生が、能のファンということは考えられないので、彼女はイプセンのファンなのでしょう。

本場のファンに受け入れられたのかどうかは分かりません。でも、本当にイプセンが降りて来ていたのなら、イプセンは受け入れてくれたのでしょうか。


今日の公演は、またいつもの感じに戻りました。
演劇って、不思議ですね。同じことを同じようにやっても決して同じようにはいかない。

今日は、イプセンが来ていなかったようです。


at 06:39|Permalink

2005年08月29日

シーエンから 2

シーエンでは、何もないのでとにかくホテルにいます。

周りにあるのは山と川だけ。都会派(?)の私は行くところがなくてとにかくホテルでゆっくり。
今日は夜公演があるだけなので、夕方までは何もなし。

こちらのホテルには、必ずプール(室内温水プール)があるので、昨日・今日と泳ぐ。
久々だったのでかなり疲れる。でも、毎日食べてばかりなので少しは運動しなくては。

ノルウェーに住んでいる日本人に、「こんな田舎町の小さなホテルに立派な室内プールがあるとは驚きです。」
と言うと、「日本だってどんな田舎の温泉宿だって大浴場があるじゃない。」
と返され妙に納得。

そうか、温水プールは温泉大浴場と一緒なのか。
そう思うと、プールにサウナが付いているのもうなずけます。

そう、北欧といえばサウナ発祥の地。ただ、本場のサウナは温度が低く、日本人には少し物足りないかもしれません。


私は、そんなこんなでホテルでノンビリ過ごしておりますが。同行の能楽師にアウトドア派がおりまして、とにかくハイテンション。今日も朝8時には川へ遊びにいった模様です。
都会のストックホルムでは、一歩も部屋を出なかったのに・・・

まあ、今は私が一歩も外に出ていません。
だって、外は寒いし・・・
ホテル内は、8月なのに暖房が入っています。


at 20:58|Permalink

2005年08月28日

シーエンから

ノルウェーは、シーエンからお送りします。

シーエンとは、イプセンの生まれた町。ノルウェーの首都のオスロから南西に150キロほどの田舎町です。

イプセン生誕の地というのが売り物のようでして、泊まっているホテルは「リカ・イプセン・ホテル」、公演を行うところは「イプセン劇場」といった具合。
この地で開かれる、イプセン文化フェスティバルに参加するのが目的です。

日本のガイドブックには載っていないので日本人は皆無。ストックホルムにあれだけあった日本食レストランも無い。(本当にたくさんあった。そこら中にSUSHI BARがある。日本より多いかもしれない。スウェーデン人に言わせると、SUSHIは国民食だそうだ。魚の旨い国なので、きっと美味しいのでしょう)


着く前に、シーエンとは本当に何もない田舎町と脅かされ、また土日は法律でお店がすべて閉まっていると言われていた。
「それは大変。」
皆、慌てふためく。
慌てる理由はそれぞれですが、私にとって大事なのは、今晩のビール。

バスを無理やりマーケットに寄らさせて、それぞれ思い思いに品を買い込む。
私は当然、両手一杯のビールを買ってホクホク顔。
エビやらムール貝などの美味しそうなつまみも買い込んで大満足。
4日間滞在するので、周りが驚くほど買い込んだ。

が、しかしホテルに冷蔵庫がない。ビールは我慢するとしても、食料は全部腐ってしまう。
さあ、困った。

結局、ホテルのレストランの冷蔵庫に無理矢理入れてもらった。いやあ、日本もヨーロッパも、田舎の人は人がいいなあ。


とにかく、周りに何もないので、ホテル内で過ごすしかない。
驚くことに、こんな田舎町なのに、パソコン環境は抜群。ロビーで無線LANが無料で使えるので、ロビーにはパソコンをもった能楽師たちが集結。

皆、忙しそうにパソコンの画面に向かっている。でも、覗いてみるとたいしたことはしていない。日本の新聞チェックしたり、メールを出しまくったり、囲碁ゲームに興じたり・・・

テレビ見ても、何言ってるのかチンプンカンプンなので、ロビーでパソコン見てた方が気が休まる。

もっとも私は、部屋でひたすら寝ている。今日は夕方からリハーサルがあるだけ。多分ずっと寝ているでしょう。

明日から、本番なので、もっと充実したレポートが書けるでしょう。


at 20:14|Permalink

2005年08月27日

ストックホルムから

今日は、スウェーデンはストックホルムからお送りします。

昨日、今日とストックホルムにて「ふたりのノーラ」の公演してきました。
この能の原作は、ノルウェーの誇る演劇人・イプセンの「人形の家」です。

北欧においてイプセンは大変な存在でして、特に代表作の「人形の家」は、知らない人はまずいないという話のようです。
その「人形の家」を、能にして日本語で本場で演じるのですから、プレッシャーがかかります。
お客さんがどう感じるのか、とても気になります。

そうですねえ例えるなら、イタリア人がイタリア語で、「忠臣蔵」のオペラを日本で演じるようなものですかねえ。

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昨日は新聞の文化欄にデカデカと(ほぼ一面使って丸々と)のり、またテレビでも特集が組まれていたようでして、地元の注目度はかなりのものです。もっとも、スウェーデン語の新聞は、何が書いてあるのかサッパリわかりませんが。

話題となっているようでして、今日も終わったあと、シテの津村氏は地元メディアにインタビューされていました。

今日でスウェーデン公演は終了。
明日は、いよいよイプセンの本国ノルウェーに向かいます。
しかも、最初はよりによってイプセンの生まれた町のシーエンにての公演です。劇場の名前は、その名もイプセン劇場。

正真正銘のホームタウンでの公演。気合が入ります。



at 07:04|Permalink

2005年08月22日

さあ、大変だ

今日は一日、沼津にてお弟子さんの稽古。
9時半ころ終わり、家路に着き、11時半到着。

我ながらここのところ、よく働いたなあ。
さあ、暑い日本での仕事はおしまい。明日からいよいよ北欧だ!
そう、意気込んでいますが大事なことを忘れていました。

明日からの荷物、まだ何の用意もしていない・・・・

いや、当然忘れていた訳ではありません。「そのうち、そのうち」と思っているうちに前日になっただけです。
昨日の小金井薪能に、北欧に行くメンバーがほとんど集結していましたが、みんなもう荷造り終わってました。
成田にもう送っている人もいます。
まだ何も手をつけていないと言ったら、あきれられてしまった。

まあ、これからやりますよ。朝までには出来るでしょう。寝ないようにしなければ。

ところで、旅慣れてくると荷物が減るってよく言いますが、ウソですね。
私、もう随分海外に行っていますが、行く度に荷物が多くなっている気がする。

最初の頃は、日数と用途を計算して、必要最小限のものしか持ちませんでした。
まあ、その頃もやはり準備は前日でしたが。

最近は、どれが必要で、どれが不必要か考えるのがめんどくさいので、取り敢えず片っ端から持っていってしまう。
で、無計画に向こうで買い物して、持って帰るスペースがなくなって、結局持っていった服とかバンバン捨ててしまう。
最近は「どうせ捨てるんだからあれもこれも持って行ってしまえ」
と開き直っているので、ますます荷物が増える・・・


明日から北欧に行くので、しばらく日記はおやすみになるでしょう。
もし、向こうでパソコンに接続できる環境があれば、書くかもしれません。

さあ、日記書いてる場合じゃない!
「荷造りしなくっちゃ」


at 23:45|Permalink