2023年08月12日
深川八幡祭 息子たち、大人神輿デビュー
深川八幡祭、盛り上がっています。
11日は子供神輿、次代を担う子供たちが粋でイナセな深川の神輿を担ぎます。
12日は午前中が子供神輿、午後は大人神輿の町内渡御です。
高2の長男と高1の次男は、大人神輿デビューでした。
へっぴり腰ながら、いっちょ前の顔して担いでいます。
町内渡御と言っても、我が町内は広いので、子供神輿で2~3キロ、大人神輿で5~6キロは歩いたでしょうか。
2日目で早くも身体がボロボロです。
明日は、クライマックスの神輿連合渡御。明後日は、「深川八幡祭 能奉納」です。
身体が持つのだろうか・・・・
2023年08月10日
深川八幡祭 6年ぶりの本祭り
今年は4年ぶりの通常開催。3年に一度の本祭りは2020年はコロナ禍により開催できなかったので、6年ぶりの開催です。
日に日に、祭りの飾りつけや旗やのぼりなどで街が彩られます。
我が家も今日から提灯を飾りました。
今回、提灯かけも新調しました。
普段は、鳶の方が作ってくださいますが、今回は頑張って自分で作成してみました。
ホームセンターを回って材料を集め、材木を切って組み立てます。
麻紐をよって縄をつくり、半紙を切って四手を付けて出来上がり。
普段、能の作り物制作などで慣れているので、そんなに苦労もしませんでした。
自分で言うのもなんですが、それなりのものが出来た気がします。
ちなみに、前回まではこの提灯かけがかかっていました。
これを参考にして今回は制作しました。
ちなみに、上の写真にある、我が家の看板を書いてくださったのは、柳澤大輔さんという方。
昔からの知り合いです。
今は、古石場一西の町会の総代をされています。
今回の神輿連合渡御の駒番は、この柳澤大輔さんが揮毫しています。
この看板を書いていただいたときは、こんなに偉い方になるなんて思いもよりませんでした。
明日からの、深川八幡祭が楽しみで仕方がありません。
2023年08月09日
復活!! 能楽サロン
コロナ禍により休止していた、能楽入門講座「能楽サロン」が4年ぶりに復活します。
この講座では、舞台で活躍する能楽師が、能のイロハや舞台の裏話など楽しく紹介します。
2000年に始めて以来、100回を超す講演をすでに行っています。
今回は能「絵馬」をとり上げて、作品の見どころや稽古のオフレコ話などを、実演を交えてお話したいと思っています。
会場は、我が家の稽古舞台「深川能舞台」です。
狭い会場ですので15人限定とし、午前(11:00~)と夕方(16:00~)の二回開催とします。
おかげさまで、午前の部は満席となりました。
夕方の部も、残り僅かです。
ご興味のある方は、お早めにお申込ください。
2023年08月08日
深川八幡祭 能奉納
今年も「深川八幡祭 能奉納」を致します。
今年は、6年ぶりの本祭りです。江戸三大祭りの一つに数えられる深川八幡祭が、久しぶりの通常開催です。
圧巻は、13日(日)の神輿連合渡御。53基の神輿が深川の街を10キロ以上練り歩きます。
祭りは深川の街の生活の一部のようです。至る所でお祭りに向けての準備に余念がありません。
お祭りの話をする時、深川の人はとても良い顔しています。
さて、その深川っ子の心の拠り所である深川八幡祭で、2009年から能奉納をさせていただいております。2020年と2021年はコロナ禍により奉納行事は中止でしたので、今年で13回目の奉納です。
去年は、親子3人でこじんまりとした能奉納でしたが、今年は玄人能楽師や社中の出演者も参加して賑やかな能奉納となります。
11日と12日は神輿町内渡御、13日は連合渡御。
狂乱の3日間の後、厳かな気持ちで満を持して14日に能奉納させていただきます。
今年は、袴能の形式で「嵐山」を上演します。
シテの蔵王権現は私が演じます。
ツレの子守明神は長男の潤之介が、勝手明神は次男の大志郎が演じます。
「嵐山」は、ツレ2人の舞が見どころです。
私は、豪快に蔵王権現を演じます。
そして時間が余るので、私と息子2人はそれぞれ仕舞も舞います。
「経正キリ」桑田大志郎
「田村キリ」桑田潤之介
「鞍馬天狗」桑田貴志
夏休みに、暇を見つけては息子たちの稽古をしています。息子たちの奮闘ぶりをお楽しみください。
他にも、社中の仕舞と連吟もあります。
奉納行事ですので、入場は無料です。
是非お運びください。
2023年07月31日
歌仙会
今日は、夏の稽古会・歌仙会でした。
九皐会門下が一堂に集まって、一人一番ずつ舞囃子を舞います。
大変に勉強になる稽古会ですが、そのぶんプレッシャーが大きい日です。
私は、舞囃子は、「融」に「舞返」という難しい特殊演出で舞いました。
地頭として「室君」「班女」をつとめました。
懸命に稽古して臨みましたが・・・
上手くいったところもありましたし、課題を突き付けられたところも多くあります。
稽古会ですから、課題が出る方が成果はあると言えます。
今回突き付けられた課題を、消化して身に着けてこそ稽古会の意義があります。
勉強になった一日でした。
2023年07月29日
4年ぶりの盆踊り
私の住む町会で、4年ぶりの盆踊り大会が開催されました。
久しぶりに集まった町内の人々。
コロナ禍により、すっかり疎遠になった方々とも顔を合わせ、楽しいひと時でした。
高校生となった長男と次男は、さながら同窓会。
小学校や中学校時代の友人と久しぶりに再会して、盛り上がっていました。
下町では、盆踊りが同窓会代わりのようです。
私は、地域の青年会の一員として、ずっと焼きそばを作っていました。
ただでさえ暑い熱帯夜の中、鉄板の前で大量の焼そばを延々と作っていました。
手元に缶ビールを置いて飲みながら作っていましたが、冷たい缶ビールは、瞬く間にビールの熱燗となってしまいます。
バテましたが、久しぶりの夏祭りの喧騒に、ほっこりしました。
2023年07月06日
「桑田貴志能まつり」スタイリッシュに紹介される
ポータルサイトというそうで、私の検索履歴などから、興味のありそうな記事を勝手に表示してくれます。
私は、能や伝統芸能の記事をよく見るので、そういった記事がよく出てきます。
能の記事は、だいたい開いてみます。
いつものように、スキマ時間にポータルサイトを開くと
「銀座で能と狂言を! 初夏の観劇スタイルは、リネンシャツ+光沢感で少しおめかしを。」
という見出しを見つけました。
銀座の観世能楽堂で能楽公演を観たという記事だろうなあ、と読んでみました。
おしゃれな方が、ファッションについて語っています。
「やはり、銀座で能楽を見るというのは、楽しいイベントなんだなあ」
「女性は、こういう時は、やはりおめかししていくのが大切なんだなあ」
「私も、自分の主催公演の時は、その辺をアピールしていくことも大切だな」
そんなこと感じながら、記事を読み進めました。
「いったい、この方はどの公演を観たんだろう」
なんて思っていたら、なんと私の主催公演「桑田貴志能まつり」でした。
まさか、こんなスタイリッシュなWEBサイトで、私の公演が紹介されているなんて思いもよらず、ビックリしました。
とても有難く思います。
記事の内容は、以下で見れます。お暇な折にでもクリックしてみてください。
https://mi-mollet.com/articles/-/43162?layout=b
2023年06月17日
「松風」御礼
第13回「桑田貴志 能まつり」 無事に終わりました。
暑い中、多くのお客様にご来場いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
「松風」は能を代表する名曲と呼ばれます。
稽古しながら、「ああ、松風って良い能だなあ」と何度も感じました。
「こんな良い能を演じられるなんて、嬉しいなあ」
そんな気分で当日を迎えました。
しかし、そんなウキウキした気持ちはすぐ吹っ飛びました。
「松風は」、大変な能でした。
まず、謡が極端に多い。それも、大半はツレと一緒に謡って(同吟)います。
ツレとの同吟は、たいへん気を使います。しかし、一緒に謡ってもらえる安心感はあります。
ずっと一緒に謡っている中、一人で謡う箇所では、謡いやすい反面、心細さを感じました。
一か所、フッと謡が出てこないところがありましたが、ツレの佐久間二郎さんが上手くフォローしてくださいました。
佐久間二郎さんは、私より先輩ですが、あえてツレをやっていただきました。
「松風のツレは、シテを演じた人にやってもらうと良い」と聞いていました。佐久間氏は、シテも演じ、また何度も松風のツレを経験しています。是非にとお願いしたら、快く引き受けてくださいました。所々で助けていただき、心強かったです。
また松風は、中入の無い能です。
普通の能は、シテは一度舞台から引っ込んで楽屋で装束を変えて登場します。
シテが装束を変えている間のことを、中入といいます。多くはアイ狂言が物語の背景などを語っています。
中入は休憩ではありません。だいたい10分くらいの間で装束を変えるので、とても慌ただしいのです。
でも、前半の装束をとき、心も身体も一瞬だけど緩みます。
水分補給をすることも出来ます。
それを考えると、中入の無い能は一瞬たりとも気の抜ける時間がなく、ただでさえ大変なのです。
その上松風は1時間40分程の長い能です。
中入の無い能でこれだけの長さの能は、ほぼありません。他には「木賊」くらいでしょう。
1時間40分もの間、集中力を保って演じ続けるのはかなりの体力を要します。
後半は、本当にキツかった。。。
装束は、前半は白い水衣。
下に着るのは縫箔を腰巻つけにしています。裾しか見えないので、裾の模様にはこだわりました。
シテは松風なので、松の模様の装束を選びました。
ツレは、妹なので可愛らしい明るい色のものを選びました。
こうやって装束の取り合わせを考えるのも能の楽しみの一つです。
途中、恋いしい在原行平の形見の舞装束と烏帽子をしみじみと見込む型があります。
ここは、わざとらしいほど情感たっぷりに演じてみました。
後半では、水衣を長絹に着替えます。物着といって、舞台上で着替えます。
といっても、シテはただ座っているだけです。後見が落ち着いた様子で手際よく装束を変えてくださいます。
松風は、舞台の真ん中辺りで前を向いた状態で着替えるという特殊な物着です。
私は、能面をしているのでほとんど見えていないので、落ち着いていました。もし、周りが見えていたら、恥ずかしかったことでしょう。
形見の装束を身に着ける後半になったら、舞が中心です。
ここまでくると、稽古や申合ではホッとしました。
「もうすぐ終わりだあ」
本番では、ホッとするなどという気持ちは全くありませんでした。
とにかく、「ツライ」
やはり松風は大変な能です。
終わったらもう、疲労困憊。
体感としては「道成寺」や「安宅」くらい疲れました。
終わってみて・・・
何だか、まだ舞台に気持ちが残ったままです。
「上手く出来たなあ」と思うところもありましたが、「ああ、ダメだった」と思うところも多々あります。
「もっと出来たのに・・・」という後悔の念も強く残ります。
「松風」、手ごわい能でした。
注 このブログで紹介している写真は、全て駒井壮介氏の撮影です。
2023年06月04日
観世喜之先生 米寿祝賀公演
師匠の観世喜之先生が、この度米寿を迎えられました。
私が内弟子入門したとき、先生の還暦祝いを大々的におこなったことが思い起こされます。
つまり私が入門して28年の年月が経ちました。早いものです。
当日は、喜之先生の下で育った門下が勢ぞろいして仕舞を1番ずつ舞いました。
私は「熊坂」という、薙刀を振り回す仕舞を舞いました。正直、この年には少々しんどい仕舞ですが、先生から学んだことを精一杯だし切ろうと、張り切って舞いました。
当日の番組は下記の通りです。
先生も、自ら舞囃子「菊慈童」を舞い花を添えて下さいました。
喜正先生と和歌さんと親子三大での仕舞「三笑」も見ごたえ充分でした。
先生に育てられた門下が集まり、終始和やかなムードで公演は行われました。
先生のお人柄がなせることだと思います。
私が入門して28年間、先生には言葉で尽くせないほどお世話になりました。
私がこのように能楽師として活動できているのは全て先生のおかげです。
今後ともよろしくお願いいたします。
2023年05月21日
深川能舞台チャンネル 「松風」見どころ紹介
一年ぶりの動画編集に四苦八苦。
二日がかりで何とか編集して、動画編集ソフトからYouTubeにアップしようとしたところ、何だかわからないけど、アップできない。
どうやら、動画編集ソフトをアップグレードしたせいのようです。
しょうがないから、動画編集ソフトを再び元のバージョンに戻したら、今度は二日がかりで編集した動画が読み込めなくなってしまいました。
いろいろ試したけど、どうにもならないので、再び編集し直しました。
相変わらずのデジタル音痴ぶりに、自ら呆れました。
何はともあれ、「松風」の見どころは、この動画を見ればバッチリつかめます。
ご視聴は無料です。お暇なときにご視聴いただければ幸いです。
2023年05月19日
桑田貴志 能まつり「松風」
自身の芸の研鑚のため立ち上げた「桑田貴志 能まつり」。第13回公演は、能「松風」に挑戦します。
日本の舞台芸術文化が集まる銀座にある能楽の殿堂・観世能楽堂にて、今年も開催できることを嬉しく思います。
俗に、「熊野、松風に米の飯」と言われます。何度見ても面白い能「熊野」「松風」を、どんなお惣菜にも合い、飽きが来ないおコメに例えた言葉です。また、「謡三井寺、能松風」という言葉もあります。この様に様々な言葉で語られるほど、「松風」は能を代表する屈指の名曲・人気曲と言われています。
この能を一言でいうと、9世紀から1200年続くラブストーリーです。
花の都の貴公子・在原行平を、須磨の浦で待ち続ける松風とのロマンティックな恋愛は、時を超え永遠に続いています。その悠久の恋物語が、能「松風」では美しく描かれています。
前半、旅の僧の前に若い海女の姉妹が現れ、汐を汲む所作を見せます。この段落は、後に歌舞伎や日本舞踊の「汐汲(しおくみ)」など様々な芸能に取り入れられるほど、よく出来た名場面です。うっとりするような流麗な節遣い、気高い文言の美しい詞章は、実に見事です。
この段落をキチンと演じられるかが、能「松風」のキモだと思います。気持ちを込めて演じたいと思います。
能の中程で、旅の僧に在原行平との恋を語るうちに、松風は恋慕の念が押し寄せてきます。そして、行平の形見の烏帽子と舞装束を取り出して、情感的に抱きしめたかと思うと、やがてそれを身にまとって狂おしく舞います。この舞が後半の見せ場です。
男性の衣装を着て舞うということは、男装の舞です。能には日本の芸能には、白拍子舞など男装の舞というジャンルはたくさんあります。現代でも宝塚歌劇団にそのスタイルは受け継がれています。
男性である私が、女性の松風を演じる。そしてその松風は男装の舞を舞う。この二重の変身によって作り出される艶やかな雰囲気が、この能の最大の見せ場です。
この舞は、「イロエ掛り中ノ舞」「キリ」「破ノ舞」と次から次へと続きます。囃子との兼ね合いも難しく、能楽師としての力量が試されるところです。自分の技芸を余すところなく出し切りたいです。
仕舞は、観世喜之師の「井筒」と観世喜正師の「船橋」です。どちらも恋物語を描いた舞です。
「井筒」は在原業平を思う紀有常の娘の懐旧の舞です。幼馴染が結ばれる純愛物語となっています。「船橋」は、親に反対されたことによって非業の死を遂げた男女の情熱的な舞。能版「ロミオとジュリエット」です。
狂言は、TVや映画など多方面で活躍されている人気狂言師・野村萬斎師にお願いしました。「文荷」は、恋文(ラブレター)を巡るやり取りが見せ場となっています。野村萬斎師の華麗で洒脱な芸を、お楽しみ下さい。
チケットは、私の公式ホームページの申込みフォームまたはメールからお申込みください。
お電話でのお申込みは、矢来能楽堂のみにて受け付けます。何とぞよろしくお願いいたします。
WEB予約 http://fukagawanohbutai.sakura.ne.jp/
E-mail shitashimu@hotmail.com
TEL予約 03-3268-7311(矢来能楽堂)
2023年04月02日
インド・マレーシア・オーストラリアから来たれり
生活も落ち着き、日常が戻ってきました。
そんな中、4年前にシンガポールで能を教えた学生が日本へやってきました。
シンガポールの学校で学んでいた学生ですが、出身はインドとマレーシアとオーストラリアです。
インドの学生は、クーリヤッタムの役者をしています。クーリヤッタムのワークショップが金沢であったので来日しています。ワークショップを終えて東京に来ているそうです。
マレーシアとオーストラリアの学生は、「鈴木メソッド」という演劇手法を学びに日本に来ています。
「鈴木メソッド」とは、日本人の演出家の鈴木忠志氏が考案した役者の身体訓練です。世界中の役者にとってバイブルとなっている演劇手法だそうです。
それぞれの用事を終えて、東京に集まってきた彼らを、今日矢来能楽堂で行われた緑泉会に招待しました。
「田村」「阿漕」の2番の能を観た後、まずは矢来能楽堂にて記念撮影。
右端のインド人と、左から2番目のマレーシア人は、寒くてしょうがないようです。
4月の春の日差しの中でも、ダウンジャケットを着ています。
その後は、神楽坂へ移動して楽しく食事しました。
シンガポールではタイガービールばかり飲んでいたので、お酒を飲むことを「Tiger Time」と呼んでいました。
日本では「Asahi Time」または「Kirin Time」だと、最初は言っていましたが、彼らは日本酒が気に入ったようで、日本酒をガバガバ飲んでいます。「Sake Time」となりました。
久しぶりに会う彼らと、色んな話をしました。
楽しいひと時でした。
ちょうど桜も満開となり、彼らは日本の春を満喫しています。
日本の桜は、海外でも有名だそうです。
店の外で、またの再会を祈ってパシャ。
今度会うのはどこでしょう。シンガポール? 東京? ひょっとしてインドやオーストラリアかもしれません。
2023年03月25日
深川能舞台 15周年
我が家の稽古舞台、深川能舞台は開場15周年を迎えました。
真新しい檜の能舞台でしたが、だいぶん落ち着いた色になってきました。
深川に自分の稽古と発信の拠点を構えて、なんやかんや15年が経ちました。
この街に育てられているなあと、日々実感しています。
15年たっても、私は全く変わりませんが、子供たちは大きく成長しました。
引っ越してきたときは、長男は1歳、次男は0歳でしたが、16歳と15歳になりました。
この春から、次男も高校入学です。
月日の移り変わりは早いものです。
「これからも、よろしくお願いします」
能舞台に感謝です。
2023年03月16日
2023シンガポール第2便 9
次は、「面白い顔で」とリクエスト
なかなかのヘン顔です。
一夜明け、今日は評価とミーティングの日です。
またこの日がやって来ました。
学生たちとお別れのをする日です。
学校なので、採点をしなければなりませんが、落第点を取る学生はいません。
素晴らしい成果が得られたITI能クラスの9週間でした。
私は学生たちにこのようなことを言いました。
私が、最初に来た2月13日を覚えているかい。
その日に自己紹介を兼ねて一人一人、仕舞を舞ってもらったね。これまで喜正先生が教えてきた4週間の成果を見たいと思ったんだ。1年生から始めたよね。その仕舞を見て、あまりに出来ないのでビックリした。その後、2年生3年生4年生と学年が上がるにつれ、上手になっていくので驚いた。
能は、1月に一斉スタートだったのに、こんなに差がつくものなんだね。それは、つまりこの学校のトレーニングが優れている証拠なのです。
やはり入学したての1年生(シンガポールは1月が新学期)は、訓練が圧倒的に不足しているし、12月に卒業した4年生は、さすがに様々な経験を積んでいるだけのことはある。
この学校で学んでいる、身体訓練や発声訓練などは、どんな劇をやるにも基礎となるのでしょう。この学校で学んでいる、能の他の3つの古典演劇(京劇・クーリヤッタム・ワーヤン・オン)も、基本的に根っこに流れるものは一緒のはずです。それらを総合的に訓練できる、この学校のカリキュラムのすばらしさを実感しました。
身体トレーニングの基礎をキチンと積んだ者は、どんなものを演じても、キッチリ出来ることをみんなは示してくれました。
あと、君たちは身体能力は抜群だから、能の舞の部分に関しては、出来ることは分かっていました。この学校で指導するようになって21年たちます。その経験から疑いもないことでした。
だから、今回はそれ以外のことをうるさく注意したね。
「ただ立つ」「ただ座る」「ただ歩く」
これがどんなに難しいか、分かってくれたと思います。
京劇などで、とてもアクロバティックな動きをしていると思う。だから能では、動かない演技をキチンと学んでもらおうと思いました。
そんなことをしみじみと語りました。
本当に、素晴らしい学校と学生たちです。
能の立ち役が出来ることは当然として、地謡の謡いっぷりも堂々としたものでした。
短縮版とはいえ、1曲30分以上かかる能の間、学生たちは身じろぎもせずに正座して謡っています。
30分動かずに正座が出来る日本人が、どれほどいるでしょうか。
「もし、全く知らない人が昨日の能を観たら、日本語がわからない外国人が演じている能だなんて、誰も思わないでしょう」
最大の賛辞を学生たちに送りました。
ミーティングが終わると、恒例の大宴会。
楽しい時間は、やがて終わります。
でも、この9週間の能クラスで得たものは永遠に残ります。
それは教わった学生はもちろん、教えた私にとっても大きなものでした。
宴会の時、ある学生がこんなことを言いました。
「能のクラスが終わって直ぐに、もっともっと能が学びたいと思った。こんなことは初めてです」
とても嬉しいことを言ってくれます。
「私も、君たちにもっともっと教えたいよ」
何人の学生が、日本に行って能を稽古したいと言ってくれます。
私は、いつでもおいでと言いました。
「君たちだったら、いつでも教えるよ。お金なんていらない」
「条件はひとつ。君たちの稽古は疲れるから、稽古の後マッサージしてね」
そう言うと、さっそく肩をもんでくれました。
色んな事がありました。
コロナ禍で2年延期になった能クラス。3年生と4年生は、ずっと楽しみにしていたそうです。
大いなる成果を得て、無事に修了することが出来て、本当に良かったです。
締めの写真は、能「紅葉狩」で出番を待つ鬼女たちです。
9週間の能クラス、お疲れさまでした。
再会の日を楽しみにしています。
2023年03月15日
2023シンガポール第2便 8
13期生から16期生たちの「Noh Presentation」がやってきました。
昨日の段階で、キチンと出来ていますので、今日の午前中の稽古は中止にしました。
不安そうにしている学生たちに、こう言いました。
「本番に向けてしっかり休息をとることも、役者として大事なことだよ」
昼過ぎに楽屋入りして、ゆっくりと準備を整えます。
学生たちが色々話しかけてきます。
本番前に、謡や型の最終チェックとして質問してくる者もいれば、他愛もない話をしてくる者もいます。
さあ、泣いても笑っても今日が最後です。
何だか、切なくなってきます。
14時半から、まずはドレスリハーサル(ゲネプロ)を行いました。
本番と同じ、タイムテーブルで、同じ手順で能面と能装束も着けて行います。
本番のための最終リハーサルでもあるし、関係者や報道の方へのお披露目でもあります。
また、仕舞では採点も行いました。
学生たちの対応力はたいしたものです。
一昨日、初めて劇場で通し稽古を行ったときは、問題が多かったのに、昨日・今日と日に日によくなってきます。
もう、発表会の成功に疑いはありません。
ドレスリハーサルの後、少し時間があります。
学生たちは、自主的に稽古しています。
シンガポール・マレーシア・フィリピン・インド・香港・マカオ・スウェーデン・オーストラリアの8か国から集まった24人の学生たちが、能の成功のために、懸命に取り組んでいます。
今年の学生たちも、また私を感動させてくれます。
何だか、始まる前から泣きたくなってきました。
ギリギリまで懸命に稽古する学生たち。
「もう大丈夫だから、そろそろ舞台にむけて心と体を準備しなさい」そう言って稽古をやめさせました。
皆で集まって、挨拶をして士気を高めます。
さあ、いよいよ始まります。
冒頭は、観世喜正師の「羽衣」です。
集まったお客様に本物の能楽師による能の舞台を見せることも大事なのですが、学生たちに玄人の技をしっかり感じてもらいたいと思います。
そして、学生たちの仕舞です。
堂々としたものです。
今回初めて演じさせた能「竹生島」
能らしい能です。
能として見せるため、
「ただ立つ」「ただ歩く」「ただ座る」
この稽古をひたすら繰り返しました。
続いて能「邯鄲」
劇的な展開の「邯鄲」は、毎回お客様の反応も良いようです。
学生たちが落ち着いて演じています。
最後に能「紅葉狩」
いざ始まると、慌ただしい中あっという間に終わります。
24人の装束を入れ替わり立ち替わり着け続けて、私はクタクタです。
首尾は上々でした。
最後にカーテンコール。
私たちも呼ばれて、舞台に上がりました。
学生たちから万雷の拍手をもらってジーンときました。
ああ、今年も終わった。最高の舞台でした。
そして、最高の能クラスでした。
2023年03月14日
2023シンガポール第2便 7
さあ、いよいよシンガポールITI能楽コースも大詰めです。
昨日の月曜日は、午前中に学校での最語の稽古をおこないました。東京より観世喜正先生も合流して、緊張感が高まります。
午後に、発表会の劇場入りです。会場は、グッドマン・アート・センターという、文化施設が集まる小さな劇場です。
舞台設営や照明調整などおこないます。
会場が出来ると、一番最初にやることは、これです。
舞台と楽屋の雑巾がけ。
月曜日は、舞台設営が終わった後、19時から22時過ぎまで通し稽古。ハードな一日でした。
今日は、午前中に装束を着けてフルでリハーサルをやり、その後、動きの確認を含めてもう一度通し稽古。
もうしっかり出来上がっています。
あとは、本番にむけ体調を整え、落ち着いてのぞむだけです。
能「竹生島」
能「邯鄲」
能「紅葉狩」
今回は、喜正師が、4週間、私が5週間、それぞれ通しで指導しました。
コロナ対応で、なるべく日本との行き来を少なくしたので、結果的にいつもより稽古時間がとれました。
例年だとそこまでキチンと稽古できない点まで、細かく指導しました。
謡の日本語の発音、地謡の扇の作法、後見の作法、細部まで徹底的に指導しました。
合間では、このようにリハーサルを動画をみて学生たち同士で動きを確認しています。
他にも、あちこちで謡の声が聞こえます。
大道具小道具の出入りや後見や裏方仕事の配置なども、学生たちが自主的に決めてそれぞれ打ち合わせをしています。そこで活躍するのが、ステージ・マネージャー(舞台監督)です。
テキパキと、他の学生たちに指示を送るステージ・マネージャー役の学生は、頼もしかったです。
しかし、昨日から今日までいろんなことがありました。
体調を崩す者、自分の演技が上手く出来なくて悔し涙を流す者、舞台の成功をめぐって衝突する者、何となくパニックになる者。
皆、発表会の成功に向けて一生懸命です。
8か国24人もの学生たちが、能の成功に向けてがむしゃらに頑張っている姿には、胸が熱くなります。
三曲の能は、どれもとてもキチンと仕上がっていると思います。
明日の発表会が楽しみです。
2023年03月12日
2023シンガポール第2便 6
日本ではたいへんな盛り上がりだそうですね。
野球が大好きな私はとても楽しみにしていましたが、大会期間中はシンガポールにいるので観戦は諦めていました。
毎回、WBCとシンガポールの指導は重なるので、まともに観戦できたためしがありません。
しかし今回は、アマゾンプライム・ビデオでインターネット配信があるので、シンガポールにいながら、全試合観戦することが出来ます。素晴らしい世の中になったものです。
熱戦が続くWBCですが、シンガポールでは全く話題に上りません。
オーストラリア人の学生に、「日曜日に日本とオーストラリアがWBCで戦うね」と話題を振っても、「何それ?」と言われました。
野球は、世界的には本当にマイナーなスポーツのようです。
ほとんどのシンガポール人は、野球のルールすら知りません。「ああ、そんなスポーツあるねえ」くらいの感覚です。
シンガポールで人気があるスポーツは、圧倒的にサッカーです。
去年のW杯は、シンガポールでも盛り上がったそうです。
私がよく行くインド料理のホーカー(屋台)の店員は、いつもサッカーチームのレプリカユニフォームを着ていますが、この前サッカー日本代表のユニフォームを着ていました。
私が、日本人だと話すと、「おお、日本チームはW杯で素晴らしい活躍だった」と喜んでいました。
今日本では、花粉が猛威を振るっていると聞きました。
シンガポールにはスギもヒノキも無いので、花粉症に悩まされることはありません。
日本に帰ってからが心配です。
学生たちは、8か国から集まっているだけあって、様々なので面白いです。
休憩中も、ひたすら練習する者、袴の着崩れを直す者。
謎のストレッチをする者など、様々です。
2023年03月11日
2023シンガポール第2便 5
稽古も総仕上げに入っています。
やはり演劇を志す学生たちですので、動きはすぐに覚えてしまいます。
でも、やはり日本語の謡がなかなか覚えられないようです。
何年か前この学校の校長先生に、日本語がなかなか覚えられないのはしょうがない。特に発音は難しいから、その辺は加減しようと思います。
といったら、校長先生は、「イヤ、手加減なしで指導してくれ」とおっしゃいました。
学生たちは、卒業後様々な場所で演劇活動をやっていくだろう。ひょっとしたら、日本人の役をするかも知れない。日本語の台詞を言わなければならないかも知れない。
そんな時「日本語は分からないので、台詞覚えられません」では、役者失格だ。
私は、なかなか謡が覚えられない学生を叱り、この校長先生の言葉を告げました。
役者として、台詞を覚えるのは当たり前。
厳しく指導しているうちに、ほぼ謡えるようになってきました。
日本人でもなかなか謡えない、能の謡を、日本語が全く分からない外国人がスラスラ謡っている姿は壮観です。
能面と簡単な装束も使用して、本格的な稽古となっています。
これは、能「邯鄲」で寝る型をしています。決して休んでいるのではありません。
能「紅葉狩」で、ワキを酒宴に誘うシテ。今で言う逆ナンです。
「紅葉狩」の後場
これは「竹生島」の前場です。
能面はこのように、自分たちで着けさせています。
最初に「O A TA RI(お当たり)」と、紐を締める場所を聞いて、次に「O SHI MA RI(お締まり)」と、紐の締まり具合を聞きます。
玄人の能の作法通りに着けさせています。
2023年03月08日
2023シンガポール第2便 4
3月15日の発表会を迎えて、稽古も熱を帯びてきました。
例年は「邯鄲」と「紅葉狩」の2つの能を上演しますが、今回は人数が多いのでもう1曲「竹生島」を加えました。
能が3曲になり、教える方は大変です。
ただ、能に懸命に取り組む学生たちの姿を見ると、その苦労は吹き飛びます。
日本語が全く分からない外国人が、能の舞台の成功にむけて一生懸命に稽古をしている姿を見ると、胸が熱くなります。
わりに動きが多くてストーリーがはっきりしている「邯鄲」と「紅葉狩」に比べて、「竹生島」は能らしい能です。
後場は、天女の美しい舞と龍神の力強い舞を楽しむ内容ですが、前場は地味な内容です。
「舟に乗って、竹生島に渡って、ワキを竹生島明神に案内して自分たちの正体を明かす」
これだけです。動きもそんなにありません。
始めは、動きと舞の多い後場を中心に上演しようと思いましたが、学生たちに稽古をしているうちに考えが変わりました。
彼らは、役者であり身体能力は抜群です。能の仕舞などもすぐに覚えてしまします。
また、上級生はアジアの色んな古典演劇を既に学んでいます。京劇などとても激しい動きだったそうです。
「そういった学生たちは、むしろ止まっている演技を教えた方が良いのではないだろうか」
世阿弥は能の演技を「せぬところが美しき」と言いました。
何もせずに止まっているところが美しくなければ能は成り立ちません。
自分を殺して、ずっと立っている。またはずっと座っている。
これこそが、能らしいと言えます。
せっかくだからこういう能らしさを、しっかり学んでほしいと思い、「竹生島」の前場もしっかりやらせることにしました。
さあ、あと一週間で発表会です。
2023年03月07日
2023シンガポール第2便 3
4年前の能のクラスの学生と通訳です。
シンガポールの演劇学校も、21年も教えているといろいろな人の繋がりが出来ました。
今の学校の先生には、21年前に指導した第一期生の学生もいます。
そういった人々が、こうして能のクラスに訪ねてくるのはとても嬉しいです。
稽古の後、学校の中庭にてお決まりのタイガータイムを開きました。
まず、4年前通訳をしてくれた、ヤグニャ。
彼女はインド系シンガポール人ですが、日本が大好きな人です。
日本にも3年ほど暮らしたことがあり、日本人より日本人らしいシンガポール人です。
日本の古典芸能に造詣が深く、能も大好きなのだそうです。
「能の仕事が出来て嬉しい。というより、これって仕事かしら?」
と、喜んで通訳をしてくださいました。
今は、若手演出家としてシンガポールで大活躍です。シンガポールの新聞の演劇賞にノミネートされたりしています。
ちなみに、私が着ている「Oh Noh お能」というTシャツは、彼女の友人のシンガポール人がデザインしたシャツです。その友達も、とても日本びいきだそうです。
限定品を、学校のスタッフからいただきました。
続いて、2004年からこの学校の活動を、ずっと注目している日本人の栗田さんと、4年前にオーストラリアからこの学校に留学していたサミュエルです。
栗田さんは、2004年のころは、インドの演劇を研究していた学生でした。
インドの役者の友達がこの学校で学んでいるので、能の発表会を見に来てくれたのでした。
それ以来、シンガポールでも東京でも、ちょくちょく会っています。
思えば長い付き合いです。
今は、大学の先生をしていますが、ちょうど研究のためにシンガポールに滞在していたので、学校に遊びに来てくれました。
サミュエルは、日本好きのオーストラリア人です。
去年の夏にも、同じく4年前の学生のインド人と日本に来ていました。
東京で能楽堂に招待して、一緒に食事をしました。
シンガポールでいつも飲んでいるタイガービールではなく、アサヒビールを飲んだので、「タイガータイムではなくアサヒタイムだ」と言って大喜びでした。
その時、栗田さんと意気投合してすっかり仲良しになりました。
サミュエルは絵が得意で、学校の扉にこんな絵を書いて、それを置き土産にオーストラリアへ帰ったのです。
腕には、こんな彫り物をしています。
続いて、4年前の学生のリエンです。
向かって左がリエン、右が今回の学生のユアン・チーです。
彼女たちは今、ルームメイトだそうです。
4年前の話に花が咲きました。
楽しいひと時でした。
おまけ
気が付いたら、タイガービールの箱で能面を作っていました。
これが本当のタイガーマスク。