2025年02月11日

2025シンガポール第1便 6

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今日は、日本では建国記念日で祝日ですが、シンガポールは平日。学校の授業は普通にあります。

ただ、旧暦で言えば今日は115日。いわゆる小正月です。

 

旧暦は、月の満ち欠けで暦を定めます。新月の日が1日で、満月の日が15日。

つまり、旧暦1月の新月から満月までが正月期間という訳です。

 

シンガポールでも今日までが正月ということで、様々なお祝いが続きます。

 

今日は学校のスタッフ達と、正月を祝う儀式ロー・ヘイをやりました。

毎年恒例の行事で、抽選会などあり盛り上がりました。

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さて、学校の授業が終わり、しばらく事務仕事をした後、帰宅の途につきます。

 

学校の所在地は、リトル・インディアという場所です。その名の通り、インド系の住民が多く住み、街中はインド料理や、雑貨屋であふれています。

 

いつものように駅前に向かうと、駅前の大通りは、凄い人で覆いつくされています。

「あ、今日はタイプーサムだった」

 

タイプーサムは、インド系のお祭りです。タミル歴のタイ月(10月)の満月の日がタイプーサム当日となります。

こう考えると、昔の人はいかに月の満ち欠けを大事にしていたかわかります。

 

様々なヒンドゥー教の宗教行事が行われますが、そのハイライトがカヴァディという装飾品の行列です。

その重量は40キロ、高さは4mにもなるそうです。

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それを背負った信者たちが、大通りを行列して歩きます。

この儀式に臨む信者は、祭りの数週間前から肉食を断ち、断食や祈りを続けることで心を清めるそうです。

(いわゆる精進潔斎ですね)

 

また、信者は身体に針を刺すそうです。苦行を行うことで身を清めるのだそうです。

痛ければ痛いほど良いそうです。

 

この男性の装飾品も、よく見ると身体に全て刺しています。

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その行列のあちこちではインドの伝統音楽が演奏され、それに合わせて信者たちはカヴァディを持ち上げたり回したり大騒ぎ。

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私は、その行列の最大の盛り上がりの場所に遭遇してしまったのです。

しばらく、カヴァディ行列行進を見物しました。

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趣向を凝らしたカヴァディが次々に現れ、見ていて楽しかったです。

路上には、インドの民族衣装をまとった人で埋め尽くされます。
椅子を持参して、ずっと眺めているご老人もいます。
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何だか深川八幡祭の神輿渡御を思い出しました。

 

行列の所々には、御仮屋みたいな場所があって、その前では一段と盛り上がります。

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信者は、重いカヴァディをぐるんぐるんと、回して跳ね上げ、大騒ぎ。

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深川神輿も御仮屋の前では、神輿を回したり叩いたり大騒ぎ。お祭りの根底に流れるものって、案外同じなのかも知れません。

 

中華系、マレー系、インド系住民から成り立つ多民族国家のシンガポールでは、様々なお祭りや儀式が堪能できます。


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2025年02月09日

2025シンガポール第1便 5

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中国正月のこの時期、シンガポールを歩いていると、あちこちで獅子舞をみます。

 

ちょっと買い物に出ると、ショッピングセンターで、突然始まるし

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食事をホーカーズ(屋台村)で食べていると、いきなり獅子舞のグループが入ってきてめでたい舞をみせてくれます。


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他にも、企業の玄関や商店の店先などでもしきりに行われます。


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そういう場合は、社長や店主が出迎えて、祝福を受けます。


こんな車に乗って街中を移動しているのでとても目立ちます。

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 獅子舞は、アジア各国で様々な形で伝えられています。

日本でも正月の風物詩ですし、バリ島のバロン・ダンスなど、とても大掛かりな獅子舞です。

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(バリ島のバロン・ダンス)


シンガポールの獅子舞は、「力や知恵の象徴」とされ「邪気を払い幸運を呼ぶ」と言われています。

 

終盤では、獅子はレタスを食べてミカンを口から吐きます。

これは、レタスの発音が中国語で富を表す言葉に似ていることと、「ミカンを渡す」が「金を渡す」と同じ発音であることからきているそうです。

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獅子は、ミカンの他にチョコレートやお菓子などもバラまきます。子供たちは大喜び。


遠くまで飛んできたチョコレートが私の足元に落ちました。

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子供と争う気はありませんでしたが、足元のものは頂きました。

 

幸運のおすそわけです。

 

獅子舞が終演間際、何かやっているなあと思ったら、ホーカーズの入口に、こんなものが

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良い一年になりそうです。



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2025年02月01日

2025シンガポール第1便 4

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今日は、土曜日。能クラスは午前中で終了です。

チャイニーズ・ニューイヤーのお祝いを兼ねて、午後からタイガータイムです。

 

タイガータイムとは、私が名付けた造語です。シンガポールの代表的なビールであるタイガー・ビールをたくさん飲む集まり。まあ、つまり宴会です。

 

この学校では、一般的な言葉となってしまっています。

他の先生たちも、「明日のタイガータイム、僕も参加するよ」などと、普通に話してきます。

 

まず。ロー・ヘイというシンガポールとマレーシアで行われている新年のお祝いの儀式をします。

 

様々な野菜や食材を、皆でプレートに盛り付け、奇声を上げながら(中国語なので、何を言っているのかさっぱり分かりません)、箸で食材を混ぜます。

その時、より高く混ぜ上げると良いそうです。

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毎回、チャイニーズ・ニューイヤーの時期にシンガポールに滞在しているので、私ももう何度もロー・ヘイに参加しているので、徐々に慣れてきました。

始めて参加するオーストラリア人などに、やり方を教えたりしています。

 

始めは、出来上がったロー・ヘイをつまみながら落ち着いて飲んでいます。

しかし、酔いが回るにつけなぜか踊り始めました。

 

始めは座って手を動かしているだけですが。

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そのうち、立ち上がって髪を振り回しながら踊り始め。

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最後には、皆で踊り狂っています。

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毎回、学生たちは色んなカラーがあります。

2年前の学生たちは、酔うと楽器の演奏を始めましたが、今回は踊り出すようです。

たぶん、インド人が多いせいでしょう。

 

インド映画を観れば、インドの役者たちは常に踊っています。

インドには、12とか20とか公用語があるそうなので、言葉で表現するより踊る方が手っ取り早いそうです。

 

授業では見せない、学生たちの色んな一面が知れて、楽しいタイガータイムでした。




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2025年01月31日

2025シンガポール第1便 3

シンガポールの演劇学校「Intercultural Theatre Institute」の稽古も順調に進んでいます。

 

今回の学生の最年少は、18歳です。

私が初めてシンガポールに来て、この学校の1期生を指導した2002年には、まだ生まれていません。

他の学生たちも、2002年には小さな子供だったそうです。

 

改めて、この学校との付き合いの長さに驚きます。

 

3週間の稽古で、何と「鶴亀」「紅葉狩」「羽衣」「屋島」「邯鄲」「竹生島」と、6曲仕上がりました。これは今までにないくらいハイペースです。

 

今回の能クラスは13人しかいないので、細かく指導できます。その成果が徐々に出てきているようです。

お稽古は、非常にスムーズに進んでいます。

 

学生たちは、役者や役者の卵たちなので、やはり身体能力や表現力が抜群です。稽古すればすぐに吸収してくれます。

学生たちの動きに、ハッとすることもあります。

「こう指導すれば、効果的だな」と、気づくこともたくさんあります。

 

私にとっても、かけがえのない経験となっています。

 

3月の発表会に向けて、ビシバシ稽古していこうと思います。

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2025年01月29日

2025シンガポール第1便 2

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シンガポールに来て3日目、もうすっかりこちらの気候にも慣れました。

 

よくシンガポールに行くと言うと、「暖かいところで良いですね」と言われます。

とんでもない、赤道直下のシンガポールは、常夏です。連日30度超えです。

 

ただ、最高気温はせいぜい31~32度くらい。東京の夏の様に35度を超えたりしません。

特に今は、雨季なので毎日雨が降ります。その分、あまり気温も上がらないので過ごしやすいです。

まあ、毎日雨ばっかり降っているので観光には向かない季節かもしれませんが、学校のスタジオで能の稽古をする分には、快適です。

 

今日は、旧正月。こちらではチャイニーズ・ニューイヤーと呼ばれます。

シンガポールは、多民族国家ですが、中華系が7割以上を占めています。やはり中国の影響が色濃くあります。

旧正月は、派手にお祝いします。

学校も今日はお休みなので、のんびりしました。

 

街に出ると、いたるところに正月飾りが施されています。


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門松やしめ縄など、シンプルな正月飾りの日本と違って、中華系の正月飾りはとにかく派手です。

 
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店の前には、必ずこのような一対の飾りがあります。たぶん、門松のようなものなのでしょう。

ブランド品も、干支の蛇の飾りつけです。
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駅の自動改札も、この通り。


そして、赤い服を必ず着ます。
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何でも、赤は鬼や悪魔が嫌う色という言い伝えがあるそうです。

だから、魔よけのため、飾りつけも、正月衣装も、赤が基調です。その分派手になっています。


いつも食事をするホーカーズ(屋台)は全て閉まっています。
まあ、日本でも正月はお店は閉まりますね。

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日本で正月をゆっくり過ごし、ようやく正月気分も抜けてきたかと思いきや、またシンガポールで正月気分に浸っています。




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2025年01月27日

2025シンガポール第1便 1

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今年もシンガポールにやって来ました。

 

シンガポールの演劇学校「Intercultural Theatre Institute」での能の指導が始まりました。

 

この学校は、シンガポールの著名な演出家である、故クオ・パオ・クンが設立した演劇学校です。アジア人によるアジア独自の演劇を作り上げることを標榜しています。

そのために学生たちは、日本の「能」、中国の「京劇」、インドネシアの「ワーヤンオン」、インドの「クーリヤッタム」の4つのアジアの古典演劇をそれぞれ3か月のコースで学びます。

アジア人が古代から大切にしてきた、表現方法や身体技法、また発声方法など学んで、それぞれの役者としての表現に生かしていくという、世界的にも珍しいコンセプトを持った演劇学校です。
その一環として、朝8時から太極拳まで習います。

 

この学校に最初に訪れたのは2002年。この時に1期生を教えて以来、23年が過ぎました。ほとんどライフワークになっています。

今回指導するのは、17期生と18期生。本当に歴史を感じます。

 

1月から3月までの3か月の能コース。既に主任講師の観世喜正師が2週間指導に当たっています。

私は、まず今週から3週間滞在して能の指導に当たります。

 

前回の2023年は、まだまだコロナの影響が残っていたので、いろいろイレギュラーなこともあり大変でしたが、今回はほとんど何も規制がありません。

 

今回指導する学生は、シンガポール1人、インド5人、マカオ1人、台湾1人、フィリピン1人、中国1人、そしてオーストラリアの演劇学校からの留学生3人です。

シンガポールの学校なのに、シンガポール人が1人しかいません。

 

7か国13人の学生たちによって、どのようなドラマが待っているでしょうか。

随時、この日記でも触れていきたいと思います。




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2025年01月09日

深川江戸資料館「新春能楽初め」

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毎年恒例の、深川江戸資料館での「新春能楽初め」です。

ミシュランで1つ星を獲得した深川江戸資料館の中の展示スペース内の、火の見櫓の前の特設舞台にて、新年にちなんだ謡と仕舞の紹介をいたします。

去年は、大河ドラマ「光る君へ」の影響で平安時代がブームでした。
今年の大河ドラマ「べらぼう」は江戸時代の江戸の街が舞台です。江戸時代ブームが来るかもしれません。

深川江戸資料館は、文字通り江戸時代の深川の街並みを再現した展示が圧巻です。
その展示の真ん中で能の謡と仕舞をご覧いただきます。

江戸時代にタイムスリップしたかのような、優雅な気分が味わえることと思います。

入館料(大人400円)のみで、ご覧いただけます。

ぜひお運びください。



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2025年01月07日

お稽古初め

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今日は、2025年のお稽古初めでした。
毎年、年始のお稽古は新鮮な気持ちになり、良いものですね。

自宅稽古舞台「深川能舞台」の玄関にも、ささやかな正月飾りを飾りました。

さあ、今年もがんばるぞ。


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2025年01月01日

謹賀新年 2025年

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明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

我が家の居間も、ささやかな正月飾りです。

今年も忙しい年になりそうです。

今月下旬から3月半ばまで、恒例のシンガポールの演劇学校に能の指導に出かけます。
またまた、真冬の東京と真夏のシンガポールの二重生活になります。

6月には、二度目の「道成寺」に挑戦します。
目下、「道成寺」に向けて心と身体を鍛えています。最高の舞台にしたいと思います。

今年は、今のところ以下の能を演じる予定です。

5月11日  「蝉丸」   九皐会
6月29日  「道成寺 赤頭」 能まつり
8月中旬  「深川八幡祭 能奉納」
9月14日  「阿漕」   九皐会
12月6日  「楊貴妃」  緑泉会

今年も一番一番を大切に演じたいと思います。


今年の元日は、恒例の深川七福神巡りを行いました。
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去年に正月は、香港に行っていたので、2年ぶりの七福神巡りです。

コロナ禍では、皆ひそやかにお参りしていましたが、今年はにぎやかです。
各所に、豚汁やチョコバナナなどの屋台が目立ち、ここ数年で一番にぎわっています。

今年も良い年となるように、懸命に頑張ります。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。



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2024年12月31日

御礼 2024年

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様々なことがあった2024年も、無事に暮れようとしています。
今年も多くの方にお世話になりました。

1月には、香港の演劇スタジオ「流白之間」のお招きで「風姿花伝 能劇大師班」というワークショップを2週間行いました。

能の指導に赴くのは、シンガポールに続いて2国目です。
香港でも様々な出会いがあり、充実した2週間を過ごしました。

コロナ禍は、完全に収まったとは言い難いですが、ほぼコロナ以前の生活に戻ったように感じます。

今年も様々な能を演じました。

2月13日  「敦盛」  文化庁学校巡回公演
2月25日  「大江山」 九皐会若竹能
6月30日  「融 舞返之伝」 能まつり
10月1日  「敦盛」  文化庁学校巡回公演
10月13日  「三輪」 九皐会
12月14日  「源氏供養」 緑泉会

6番もの能を演じる機会をいただきました。
これで私が演じた能は157番です。
ずっと付けておりますが、何年か前からこの日記で番数をカウントしています。
順調に番数カウンターが増えていくことは有難く思います。

また11月4日には、「茉莉会20周年記念大会」を開催しました。
20周年を記念して、能「小袖曾我」を息子2人にさせました。

リアル兄弟で曾我兄弟を演じました。
私は、曾我兄弟の母役です。こちらもリアル親子。

今まで多くの能を演じましたが、この「小袖曾我」は思い出に残る能でした。

来年もよろしくお願いいたします。



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2024年12月14日

「源氏供養」御礼

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緑泉会「源氏供養」、首尾よく出来ました。

今年は大河ドラマ「光る君へ」の影響で源氏物語ブームの年でした。
その一年を締めくくりとして、能「源氏供養」に挑みました。

源氏物語をもとにした現行曲は、「半蔀」「夕顔」「葵上」「野宮」「須磨源氏」「住吉詣」「玉鬘」「落葉」(金剛流のみ)「浮舟」「源氏供養」と10番あります。

「源氏供養」以外の9番は、源氏物語の登場人物がシテとして登場しますが、この「源氏供養」のシテは、作者の紫式部です。



紫式部が現れて、登場人物の光源氏の供養をお願いする、けっこうすごい内容の能です。

本来の「源氏供養」は、狂言綺語(嘘いつわりの物語を書いて大衆を惑わせる)を行ったがゆえに成仏できない紫式部を供養する法要なのです。
しかし、能では光源氏を供養することで紫式部を成仏させる内容になっています。

源氏物語の作者が現れて、源氏物語の内容を語る能です。
好きな能なのでいずれ演じたいと思っていましたが、今年は絶好のタイミングと思い、今回満を持して緑泉会にて舞う機会をいただきました。

お客様から、石山寺のお札をいただきました。
きれいなお札だったので楽屋に飾りました。
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一年間、大河ドラマ「光る君へ」を楽しんできました。
紫式部のイメージは、どうしてもドラマで演じた吉高由里子さんのイメージが強くなります。

なんとなく吉高さんのイメージで紫式部を演じてみました。

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前場は、白っぽい唐織を着ました。
清廉潔白なイメージの紫式部となります。

前場が終わった後、普通の能は中入で間狂言が始まります。
間狂言の間に後場の装束に替えるのですが、この能は間狂言がありません。

ワキがワキツレと短い掛け合いの後、待謡となってすぐ後シテの登場です。
その間は、5分もありません。

楽屋ではしっちゃかめっちゃか大忙しで装束を替えて、慌ただしく後場の舞台へ出ていかなければなりません。
楽屋は忙しくて大変なのですが、お客様からしてみれば間狂言の無いスピーディーな展開は良いものでしょう。
全体の流れがコンパクトになるように思います。

後場の装束は、紫式部をイメージして紫地に源氏香の図柄をあしらった長絹を羽織りました。
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兄弟子が所有している長絹を、拝借しました。
以前より、「源氏供養」にはこの長絹を着たいなあと温めていた装束です。

後場は、仕方の多い能です。
まず、ワキに巻物を授けて弔いを促し
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その後、長大なクセの舞となります。
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能「源氏供養」のメインは、このクセの舞です。
源氏物語の巻名が次から次へとと出てくるクセの詞章は、聞いていて楽しいものです。

空蝉の。空しきこの世を厭いては。夕顔の。露の命を感じ。若紫の雲の迎へ末摘花の臺に座せば。紅葉の賀の秋の」

こんな具合に詞章が続きます。下線の言葉が源氏物語の巻名です。
源氏物語ファンにはたまらない舞です。

このクセの舞は、節付けや拍の当たりも難しく、また舞いにくさも随一です。
型が多く、また謡と動きの兼ね合いが難しい舞です。

あるところは、謡に対して型が少なく、謡が余って間が持ちません。
そうかと思うと、次の段落は謡に対して型が多くてとても忙しい。

それを、うまく平準化して違和感なく舞を構成しなければなりません。
事前に舞い込んで、スムーズに舞えるよう心掛けました。


自分でも、舞っていて楽しい能でした。
こんな絶好のタイミングで、「源氏供養」を演じることが出来たことを嬉しく思います。

写真 駒井壮介
無断転載厳禁



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2024年12月04日

緑泉会「源氏供養」

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今年は大河ドラマ「光る君へ」の影響で、紫式部と源氏物語がブームとなっています。様々なところで関連した講座や書物を目にします。世界最古の長編小説である源氏物語と、その作者の紫式部は、日本はもとより世界的にも有名です。

 

能「源氏供養」のシテはその紫式部です。紫式部自らが源氏物語を語り、登場人物の光源氏の弔いをするという面白い趣向の能です。

 

 紫式部は、うそ偽りの物語で人々を惑わせた罪(狂言綺語)によって死後成仏できずに苦しんでいるという言い伝えが平安時代末期からありました。その紫式部を救うために行われた法要が源氏供養であり、そこで読まれたのが、「源氏物語表白」という法要文です。この法要文は、源氏物語の54の巻名を全て織り込んで、仏の教えを巧みに説いています。

 

能「源氏供養」は、その法要を能の形にしたものです。特にクセという段落では、「源氏物語表白」をそのまま取り入れた美しい詞章と巧みな節付けの謡にのせて、紫式部が華麗に舞を舞います。

「空蝉」「夕顔」「若紫」「末摘花」「花散里」「明石」「玉鬘」「浮舟」など、源氏物語に出て来る数々のヒロインたちの名前が次々登場するクセの詞章は、源氏物語の総集編を見ているかの如く、優雅な気分に浸ることが出来ます。

 

紫式部は、小説を書き和歌を詠み漢学の才もあり、また琵琶も嗜んだと言われています。ただでさえ世界的に有名な才媛なのですが、能はさらに舞の名手という設定を加えています。

 

平安時代の宮中絵巻の雰囲気に浸りながら、紫式部の優雅な舞をじっくり楽しむのがこの能の見どころです。

 源氏物語と平安文化が話題となった今年の締めくくりに、華やいだ気分で「源氏供養」を演じたいと思います。




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2024年11月04日

「茉莉会20周年記念大会」御礼

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私の社中の発表会「茉莉会」が、この度めでたく20周年を迎えました。

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記念大会を、矢来能楽堂という栄えある舞台で観世喜之先生・観世喜正先生はじめ九皐会一門の方々、また日頃お世話になっているお三役の皆様の御助演をいただき、華々しく開催できました。

私がお弟子様のお稽古を始めた頃(2000年前後)から続けていらっしゃるベテランから、お稽古始めて2か月ほどの初々しい方まで、多くの社中の皆様の精一杯の舞台でした。

お客様もたくさんお運びいただきました。
特に能「小袖曾我」の前後はほぼ満席のお客様で見所(観客席)が埋め尽くされ、賑わいの中開催できました。

素謡では、重習「求塚」に挑戦した土屋能江様や、初めての習い物・準九番習の「弱法師」に挑んだ野倉幸男様をはじめ、「野宮」「源氏供養」「融」「富士太鼓」など熱演が続きました。

舞囃子は、「西王母」「敦盛」「融」「猩々」「須磨源氏」「山姥」と、盛りだくさん。
特に「西王母」「敦盛」「猩々」を演じた方は初めての舞囃子に挑戦でした。
フレッシュで溌溂とした舞台でした。

他に連吟や仕舞など、一生懸命の発表が続きます。
私は舞台上で、時にハラハラ、時にシミジミしながらでした。


また、20周年を記念して長男・潤之介(高3)と次男・大志郎(高2)に能「小袖曾我」をさせました。

本格的な能を演じるのは二人とも初めてです。
稽古に入ったのは、夏前位から。3~4か月くらいしかお稽古が出来ませんでした。

なにせ、高校生はけっこう忙しいのです。
私もあんまり家に居ないので、なかなか稽古が出来ません。
平日は、息子たちは学校行っていますし、夜は私がお弟子さんの稽古をしています。
土日は、私は舞台があって息子たちは部活動。
三人一緒に家に居るタイミングを見つけては、少しずつ稽古しました。

10月になっても、別の高校に通う兄弟がそれぞれ、文化祭や体育祭や中間試験などあって、全然時間が取れません。

忙しい合間をぬって、よく稽古したなあと我ながら思います。
10月半ばには何とか形になってきて一安心。
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史実では、仇討ちを果たした時は数え年で、兄・曽我十郎は22歳、弟・曽我五郎は20歳だったそうです。数え年では19歳と18歳の息子たちは、曽我兄弟とほぼ同じ年齢です。

実の兄弟で曾我兄弟を演じるのでしたら、兄弟の母の役(ツレ)は実の親子の私が演じるしかありません。

リアル兄弟とリアル親子による能「小袖曾我」

私の能楽師人生の中でも思い出に残る舞台となりました。
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仇討ちの前に、母子と兄弟で盃を交わします。能面の中でちょっとジーンときました。

二人の息子に恵まれてから、この親子三人の能「小袖曾我」を、「いつかやりたい」と夢見てきました。
その夢が叶い、感無量でした。

思い起こせば、初めて社中会「茉莉会」を開催した2005年は、長男は家内のお腹の中でした。
大きなお腹で家内が楽屋を走り回っていたものでした。
二回目の「茉莉会」の時は、次男は家内のお腹にいて、長男は家内の背中に背負われていました。
その長男が18歳、次男が17歳となり能を演じているのですから、胸が熱くなります。

それ以来20周年(20回目)です。時の移り変わりの重さを感じます。


朝10時に開演し、終演は18時45分ころ。
最後は、私の番外仕舞「天鼓」ですが、その地謡は、息子二人に謡わせました。


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最後、親子三人で附祝言「高砂」にて大団円。

写真 駒井壮介
無断転載はお断りいたします。


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2024年11月02日

茉莉会 20周年記念大会

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11月4日に、私の社中会「茉莉会20周年記念大会」が、矢来能楽堂にて華々しく開催いたします。

師匠である観世喜之師・観世喜正師をはじめ観世九皐会の方々、お三役の方々のお力添えをいただきます。

重習「求塚」準九番習「弱法師」の素謡や、舞囃子「西王母」「敦盛」「融」「猩々」「須磨源氏」「山姥」など、盛り沢山の内容です。

また今回は、20周年を記念して長男・潤之介(高3)と次男・大志郎(高2)に能「小袖曾我」をさせます。
リアル兄弟で曾我兄弟を演じてもらいます。
曾我兄弟の母役は、父親の私が演じます。

久しぶりの親子3人の共演となります。

この日まで、長い人は1年以上の稽古を積んできました。
社中一同、稽古の成果が発揮できるよう、精一杯つとめます。

入場無料です。

何とぞよろしくお願いいたします。


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2024年10月13日

「三輪」御礼

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九皐会「三輪」、無事に終了いたしました。

シテが神楽という舞を舞う能は三番あります。
「三輪」「龍田」「巻絹」です。(「葛城」も「大和舞」という小書が付くと神楽の替えの舞を舞う)

その中で、「三輪」は特別な扱いです。
神楽を舞う能の中では、一番難しい能です。

小書も多く、中でも観世宗家のみ演じることが出来る「誓納(せいのう)」や、誓納に代わるものとして片山家が作った「白式神神楽」などは、特別な習いとして別格に扱われます。

能「三輪」は、以前稽古能で演じたことはあります。
また、「深川八幡祭 能奉納」で後場のみ演じたこともあります。
厄年の年回りに「三輪」を演じると良いと聞いていたので、42歳の時に富岡八幡宮の境内というこの上ない場所で「三輪」を演じました。

お客様の前で一番全て演じるのは、今回が初めてです。
ただ、稽古能や後場だけでも演じたことのある能は、初演のものより心に余裕があります。
今回は、落ち着いて演じられたように思います。


前場は、訳ありげな里の女。
謎めいた感じで演じてみました。
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能面は、白曲見(しろしゃくみ)
白っぽい顔立ちで、ミステリアスな雰囲気の顔立ちです。

中入は、舞台上の作り物の中で装束を替えます。
普通の能では、楽屋で行います。
楽屋で前場の装束を脱ぐと、ほんのひと時ですがホッとします。
広い空間でゆったり装束を替えるので、気持ちが切り替えられます。

「三輪」は、半間(90㎝)四方の狭い空間で無言での着替えです。
もっとも、実際に装束を着けるのは後見の仕事ですので、私は積極的には動きません。
ただ、狭い空間なのでなるべく後見が仕事をしやすいように体を動かしたり装束を自分で抑えたりと、気が休まりません。

何より、能舞台のピンっと張り詰めた空気感をもろに身体に感じます。

舞台上で装束を替える能は、疲労感が半端ないです。

後は、三輪明神。
神様の凛とした舞です。

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神楽を舞った後、「天の岩戸隠れ」の神話を見せます。

これは、三輪と伊勢の神は同一体という言い伝えに応じた演出です。
去年能「絵馬」にて、伊勢の神様、つまり天照大神(あまてらすおおみかみ)を演じているのも奇遇な縁です。

三輪明神の中に、日本総氏神の天照大神を重ねて舞いました。
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装束は、普通は紫の長絹(ちょうけん)という上着を羽織るのですが、今回は白の長絹を選びました。
神々しい感じになりました。
長絹が白だったので、烏帽子は金色の風折烏帽子を選びました。

本来は黒の風折烏帽子なのですが、師匠に特別にお許しをいただいて、本来は小書(特殊演出)の出で立ちである、白の長絹と金風折烏帽子を着けさせていただきました。

まさに御神体という恰好です。
気持ちよく舞うことが出来ました。

写真 駒井壮介
無断転載を禁止いたします。


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2024年10月11日

九皐会「三輪」

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10月13日(日)に、観世九皐会定例会にて能「三輪」を演じます。

今日、申合も無事に終わりました。
今日演じてみた感触は、まずまずでした。

やはりいくつか問題点が現れましたので、本番までの2日間でうまく修正したいと思います。

ここのところ急に寒くなったせいか、喉の調子が良くないのですが、今日は割に声が出ていました。
とにかく、体調管理が一番大事なことです。



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2024年08月12日

深川八幡祭 子供神輿連合

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今年の深川八幡祭は、子供神輿連合渡御です。

東京駅から皇居へ続く、天下の永代通りを封鎖しての子供神輿連合渡御です。
集まってきた神輿は、48町会から52基。
「わっしょい わっしょい」の可愛らしい掛け声をかけながら、威勢よく神輿が練り歩きます。

深川の神輿文化を次代につなげるこの子供神輿連合渡御も、コロナ禍により、5年ぶりの開催。
6年間の小学校を考えると、ギリギリ」のタイミングでした。
5年前、1年生で参加した子がギリギリ6年生となって、下級生たちのサポートに回っている姿はほほえましかったです。

うちの子供たちは、高校3年生と2年生。完全に裏方です。
大人たちに交じって、さまざまなお手伝いをしていました。

その姿を見ると、頼もしく思います。
幼少の頃、水がかかって大泣きしていた姿を思い出します。

私が住んでいる町会では、地元の中学生が作成した仮装神輿も担ぎました。

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小さな子供は、「豆しば」神輿に大喜び。

大人でも子供でもない中学生が、神輿作成という形でお祭りに参加しているのがすごいなあと思います。

深川八幡祭も佳境です。
明後日は、いよいよ「深川八幡祭 能奉納」です。

準備に余念がありません。


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2024年08月10日

深川八幡祭 能奉納「小袖曾我」

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今年も、「深川八幡祭 能奉納」致します。

今年の深川八幡祭は、子供祭りです。
東京駅から皇居へ連なる大動脈・永代通りを封鎖して深川48町会から52基の子供神輿(仮装神輿含む)が集まって渡御します。

子供祭りにあやかり、今年は息子たちに能をさせます。

曾我兄弟を扱った能「小袖曾我」を、リアル兄弟で演じます。
18歳の長男・潤之介と17歳の次男・大志郎は、張り切っています。

私は、仕舞「船弁慶」で暴れまわろうと思います。

他にも、桑田貴志社中の仕舞・連吟等盛りだくさんの内容です。

神社の奉納行事ですので、入場無料です。
お祭り見物がてら、是非お運びください。




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2024年06月30日

「融」御礼

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第14回「桑田貴志 能まつり」、大盛況でした。
客席は、ほぼ満員。暑い中、多くのお客様がお運びくださいました。
この場を借りて御礼申し上げます。


今回演じたのは、「融」です。「舞返之伝」という特別な小書に挑戦しました。

「舞返之伝」とは、舞を返す、即ち舞を2度舞います。しかも「早舞クツロギ」「急之舞」という難易度の高い舞を立て続けに舞います。
技量はもちろん体力と気力も、求められます。


最近、私は膝を痛めておりまして、当日は正座もままならない状態でした。

膝は、能を舞う時のキモです。痛いなんて言っていられません。痛いの痒いのなどと弱音を吐かず、気合を入れて臨みました。そうは言っても気合だけでは心もとないので、痛み止めの薬も飲みました。

上演中はアドレナリンが出ていますので、膝の痛みなど忘れています。
思う存分動き回ることが出来ました。
膝は大事にせねばなりません。もっと、体重を落とさねば、、、


さて、前シテは汐汲みの老人です。
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田子という汐汲みの桶を担いで登場です。
光源氏のモデルとも謂われるイケメン貴公子・源融ですので、老人とはいえ明るい色目の装束を選びました。

前シテは、とにかく謡が多い。次から次へと謡います。
ワキとの掛け合いも多いのですが、これが厄介です。
ワキの殿田謙吉師は下掛り宝生流のワキ方なので、観世流と謡が違います。
「融」は殊に違っているので、つい紛れてしまいます。惑わないよう気をつけました。

前場の見せ場は、田子で汐を汲む場面です。色んな汲み方がありますが、今回は舞台の外の白洲の水を汲むというケレン味たっぷりの型でいたしました。

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能面を着けていると足元が見えないので、舞台の端へ行くのは怖いものです。
すり足で舞台の前へ進みます。足元が見えない中、頼りとなるのは足の裏の感覚だけです。進んでいくうちに、足の裏で舞台のヘリが感じられました。手探りならぬ足探りでの前進です。

この辺が舞台の端だと察したら、えいやと深くかがんで桶にて水を汲みました。
なかなか上手くいきました。
こういう風に遊び心を持った型も、能には多くあります。

後場は、楽しんで舞えました。

後の源融の装束は、直衣という能装束の中でも格の高い装束を着けました。
通常は狩衣という装束を着ますが、直衣を着るとグンと位が上がります。
能では、天皇かそれに準ずる位の役が着けます。めったにお目にかかれません。

源融は、左大臣という最高位の大臣であり、何より嵯峨天皇の皇子という皇室の血筋を引いている貴公子です。直衣にふさわしいと思い、今回は着させていただきました。

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上着の直衣が気品のある白色なので、他の装束は朱色で統一しました。
下の大口袴と中に切る厚板から、腰に巻く帯(腰帯)や袖口のツユまで朱色です。

また、左大臣という偉い役職の人なので、自ら太刀を着けて戦ったりはしないのでしょうが、格好が良いので真の太刀という綺麗な太刀をはきました。

なかなか華やかな出で立ちの後シテ・源融でした。


「早舞クツロギ」は、囃子との兼ね合いが難しい舞です。
特に今回は、笛方の一噌隆之師が「句マタギ・吹きソラシ」という難しい替えの演奏をしてくださいました。

この替えの演奏は、聞く方は華やかで良いのですが、舞う方は聞きなれない笛の譜なので混乱します。
細心の注意を払いながらの舞でした。

「急之舞」は、文字通り急速の舞です。フルスロットルで動かなければなりません。
そうは言っても、ドタバタと舞うのでは台無しです。

左大臣・源融らしく気品を持って舞うよう心掛けました。24.06.30 能まつり (174)

体力的には辛かったのかもしれませんが、気力が充実していました。
イメージ通りの舞ができたように思います。


舞の前に、扇を投げるという珍しい型があります。

笛の前辺りから、角に向かって軽やかに扇を投げるのですが、常座の方へ転がっていきました。
一瞬、扇を見失って焦りました。
舞台に落ちる音がしたから、どこかにあると思われます。

この場合、最悪なのは舞台の外に落ちること。(もちろん、落ちた時のために替えの扇も用意してあります)
その最悪の事態は避けられたっぽいのですが、能面していて視界が狭いので、扇がどこにあるのかわかりません。
キョロキョロする訳にいかないので、落ち着いてゆっくり舞台を見回し、何事もなかったように扇を拾いました。

お客様から、「あれは扇を落としたのですか?」と聞かれました。
あれはそういう型です。決して失敗したわけではありません。念のため。

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大河ドラマ「光る君へ」の影響で、昨今平安貴族がブームになっております。

平安貴族の優雅な舞に思いを馳せながらの、楽しい舞台でした。

写真撮影 駒井壮介
無断転載厳禁


kuwata_takashi at 22:00|PermalinkComments(0)

2024年06月29日

明日、能まつり「融」です

融チラシ

いよいよ明日、「融」です。
チケットもコロナ以後では、売れ行き好調です。
まだ、若干チケットございます。当日券販売いたしますので、お運びいただければ幸いです。

申合も終わり、今日は明日に備えて、自宅舞台で最終チェック。

明日の用意も、ひと通り終わり、ホッとしたところです。

明日は良い舞台にしたいと思います。

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お客様に、いつも当日の能にちなんだお菓子を送ってくださる方がいます。
今回は、塩釜の浦の藻塩を焼くところにちなんで、「塩釜の藻塩」の「焼ショコラ」

毎回、趣向を凝らしたお菓子です。


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