2026年05月16日

GWは日本だけのもの

ゴールデンウイークも無事終わり、いつもの日常が戻っています。

ところで、ゴールデンウィークは日本だけのものです。
日本のカレンダーの並びが、たまたま祝日が続いていることからそう呼ばれているそうです。

私が学生のころまでは、5月4日は祝日ではなかったので、そんなに長期の休みという感じではありませんでした。ちょっと休みが多い一週間という感じでした。

今年の始め、海外での仕事が重なり、たまたま香港とミャンマーのカレンダーをいただきました。

PXL_20260430_040730968
香港では、粤劇のレジェンド・阮兆輝師のカレンダー(サイン入り)をいただきました。
これは稽古場に飾っています。


PXL_20260430_043200487
ミャンマーでは、世界遺産のシュエダゴン・パゴダのカレンダーです。
荘厳な寺院群と全く読めないミャンマー語(笑)が面白く、居間に飾っています。


香港とミャンマーの暦を見ていると、面白いです。
当然ながら、祝日は全く違います。

日本の様に4月から5月にかけて長期の休みはありませんが、両国とも4月に長期の休みがあります。
PXL_20260430_040701644
香港は、4月3日~7日が清明節という祝日です。
清明節とは、日本のお盆にあたる先祖供養の伝統行事です。毎年4月5日前後のようです。

その中国の習慣が日本に入ってきましたが、日本では「清明」は、二十四節気の一つとして季節の移り変わりを表す言葉のみです。ただ、沖縄では「清明祭」として中国の様に先祖供養の伝統行事を行うそうです。


PXL_20260430_043209244
ミャンマーでは、4月11日から19日まで、なんと9連休です。
「清明節」のように、漢字が読める香港と違って、ミャンマー語では何の休みなのかさっぱり分かりません。

最近のスマホには、Googleレンズという便利な翻訳機があります。スマホのカメラにかざすだけで色んな言語に翻訳してくれます。
試しにGoogleレンズにかざしてみると、この期間はどうやらミャンマーの暦の正月のようです。

気候が良く、外出して気持ちの良い4月から5月にかけて、日本でも香港でもミャンマーでも長期休みがあるのは面白いですね。(もっとも、ミャンマーは常夏なので、特に気持ちの良い季節という訳ではありませんが・・・)


他にも、色んな祝日があって面白いです。


kuwata_takashi at 22:00|PermalinkComments(0)

2026年04月27日

御礼「葵上 古式」

ad4fbd7b-4e30-497d-b99a-04cb00f779b0

03cdcee8-9708-4565-b31d-16eca181e230

九皐会別会にて、「葵上 古式」をつとめました。
ご来場の皆様、ありがとうございました。

定期能や個人の会など公の能楽堂での公演で「葵上」を演じるのは、3回目です。
今回は、「古式」という珍しい小書に挑戦致しました。

世阿弥が「世子六十以後申楽談議」という著書で犬王が演じる「葵上」の舞台記録を記してあり、それに則った演出が「古式」です。
1984年が初演で、以後様々な方が演じ、今では正式な小書(特殊演出)として扱われています。

通常の演出と大きな違いは、「破れ車」という作り物が登場して、前シテ・六条御息所のお供として「青女房」という前ツレが登場することです。

これは、今でも謡の詞章に
ツレ「不思議やな誰とも見えぬ上臈の。破れ車に召されたるに。青女房と思しき人の。牛もなき車の長柄に取りつき。さめざめと泣き給ふ痛はしさよ」

とあることから、本来「破れ車」と「青女房」は登場するのが自然に思えます。
能は省略・引き算の芸能なので、年月を経て上演が重なるにつれ、いつのころから「破れ車」と「青女房」は省略されたのでしょう。

能の特徴として、「お客様の想像力にゆだねる」ことを重視しています。そのため、余計なものは敢えて省略したのでしょう。
確かに色んなものが無い方が、六条御息所の苦悩によりスポットが当てられ、貴婦人の悲しみがより強調されます。
ただ、作り物や登場人物が多いとより華やかに分かりやすくなります。

通常の演出にも古式にもそれぞれの良さがあります。
今回は敢えて、色んなものをのせて、より分かりやすく、より華やかな演出を試みました。


まず、照日の巫女には「梓の弓」という小道具を持ってもらいました。
これにより「梓の弓」を弾いて怨霊をおびき出すという演技が分かりやすく見えます。
26.04.26 観世九皐会別会 (177)

そして、作り物「破れ車」を橋掛り一ノ松に出しました。
「破れ車」は、舞台の大小前や常座に出すことが多いのですが、国立能楽堂には広くて長い橋掛りがあるので、橋掛りに出すことにしました。
この作り物は、源氏物語の名場面「賀茂の祭の車争い」にて葵上の郎等に牛車を壊されたという記述に基づき、窓や天井、長柄などをあえて壊しています。

そこに、ツレ「青女房」と共に登場します。
前述の謡の文句のとおり、車の長柄に取りつきさめざめと泣くのは青女房にやっていただきました。
d43eca61-4ef3-458c-9e49-4a57f1760c8a

通常の演出ではシテが車の長柄に見立てた橋掛りの欄干に取りついて泣くのですが、この方が詞章に添った自然な形です。


クドキの段落は、小書ではツレ(照日の巫女)とシテ(六条御息所)が一緒に謡います(同吟)。
シテの実体は巫女にしか見えていなくて、巫女の口寄せでシテのコトバを語っているという形なのです。

ここを、ちょっと工夫しました。
全体を三つに分け、最初の段落は巫女が一人で謡い、二番目の段落は巫女とシテの二人で謡い、最後の段落はシテ一人で謡いました。

最初は巫女が語っているのですが、段々と巫女にシテが乗り移っている感じを出したかったのです。

前場のクライマックスで、恨みが爆発して葵上を象る出し小袖へ攻め寄るシーンでは、まずは青女房が六条御息所に「冷静になれと」止めるシーンを入れます。
4a41ecb7-05c1-4921-ab9d-251c72495034
「あら浅ましや六条の。御息所ほどの御身にて・・・」という詞章に合わせて、「松風」や「富士太鼓」のようにシテを一旦は止めます。

しかし、やがて恨みは爆発して、ついには二人で葵上を打ち据えます。
57c4ffe3-5bdd-46a6-8053-15cd89793bc4
青女房を演じていただいた小島英明師は、私と同様大柄なので、二人して葵上の枕元に攻め寄る場面はたいそう迫力があったことと思います。
626688a8-96b8-4989-b226-ec1ac35ce2ad

後場は、緋の長袴を履きました。
ef46c4d9-7c41-4721-a12c-69d3e5f349a4

緋の長袴を履くのは、4年前の能まつりで演じた「葵上 空之祈」、去年の「道成寺 赤頭」に続いて3度目なので、少々慣れてきました。

慣れてきたので思い切って今回は、今までの2回よりも裾の長い緋の長袴を着けました。その分華やかになりますが、長い分裾さばきは難しくなります。

「祈り」という段落では、ワキと激しく戦いますが、リアルな型を入れ込んで工夫しました。


他にも、様々な部分でイロイロな趣向を凝らして「葵上 古式」を組み立てました。

様々な方の映像に目を通して、色んな演出を少しずつ借りての演出です。
「葵上 古式」は、出来てまだ日が浅いので、様々な方が色々な演出で演じていらっしゃいます。

「この方が良いかなあ」
「こっちの演出の方が、見栄えがするぞ」
「そうか、こういうやり方もあるなあ」

色んな「古式」を見ながら、自分の中に落とし込んで自分の「古式」を組み立てる作業は、新鮮で刺激的でした。

通常の能では、出来上がった型付けの通りに演じなければなりません。
700年近く演じ続けられて洗練された型には、積み重ねの力があり、強固な説得力があります。

「葵上 古式」は、今その「積み重ね」を積み上げている段階のようです。
それゆえ、演出の幅が大きく存在します。

役者として、とてもやりがいを感じる舞台でした。


撮影 駒井壮介  無断転載を禁じます。


kuwata_takashi at 19:16|PermalinkComments(0)

2026年04月19日

九皐会別会「葵上 古式」

img20260419_22334267
img20260419_22345311

4月26日(日)、観世九皐会別会にて「葵上 古式」を演じます。「葵上」は、今まで二回演じておりますので、今回は「古式」という珍しい演出に挑戦いたします。

 

「葵上」は、能を代表する人気曲です。「源氏物語」を題材とし、華やかな装束と美しい詞章で平安貴族の世界を堪能できます。

主人公は、六条御息所。源氏物語のなかでも、その美貌と知性と身分の高さでは、トップクラスです。その貴婦人が嫉妬に狂い、理性では抑えら切れない感情が爆発し、最後には般若の形相となって恋敵の葵上に襲い掛かります。凄惨な物語ですが、その過程には様々な人間ドラマがあります。

六条御息所の、美しさ・激しさ・悲しさ。色んな感情が入り乱れた複雑な心を、上手く表現したいと思います。

 

「葵上」は人気曲ゆえ上演頻度も多く、小書(特殊演出)も多くあります。その中で「古式」は、最近作られた演出で、最も面白い小書と言われます。世阿弥著の「世子六十以後申楽談議」にある記述を元に新たに考案されました。

 

能は省略の芸能なので、年月が経つにつれ様々なものを省略してきました。「葵上」も本来もっと派手で賑やかなものだったものが徐々に省略されて今の形になったと言われます。

 

「古式」という小書では、実際に車の作り物を出し、「青女房」というツレが登場します。

賀茂の祭りの車争いで葵上の取り巻きに牛車を壊された恨みが、「破れ車」という壊れた車に乗って登場することによって強調されます。

また、ツレが複数出ることによって視覚的にも華やかになり、侍女を伴って現れる六条御息所の存在感が際立ちます。

 

他にも様々な新しい演出を加え、「古式」ではなくもはや「新式」と言っても差し支えないほどです。今回も、少々新しい試みや自分なりの解釈も取り入れて、演じたいと思います。

 

 

狂言は、人間国宝・山本東次郎師による「二人袴」です。現代狂言界の最高峰の至芸をお楽しみください。

 

もう一番の能は非常に珍しい能の「咸陽宮」です。秦の始皇帝の暗殺を企てる刺客と始皇帝との、緊迫した戦いが見どころです。シテ、ツレはもとより、ワキ、ワキツレが大活躍する活劇です。

あと、一週間。しっかり稽古して臨みたいと思います。




kuwata_takashi at 22:46|PermalinkComments(0)

2026年03月17日

三井記念美術館「在原業平と伊勢物語」

1774835303414

三井記念美術館にて開催中の「在原業平と伊勢物語」に行きました。

能ではおなじみの伊勢物語。
「井筒」「杜若」「雲林院」「小塩」「隅田川」など、様々な能が伊勢物語に題材をとっています。

興味深い展示の数々を堪能しました。

最近の美術館は、SNS拡散をねらって一部を撮影OKにしています。

MP

これは、有名な「杜若」の屏風絵です。中央の橋げたが、いわゆる八ツ橋です。


MP

これは、「ちはやぶる神世もきかず龍田川」の和歌で有名な「龍田川」の屏風絵。
能「龍田」でお馴染みです。

MP
これは、「筒井筒」の屛風絵。
能「井筒」でお馴染みの、井戸のそばで遊ぶ幼馴染の男女が、やがて思春期となりお互いを意識して、和歌を送って結ばれるという、甘酸っぱい物語。
在原業平の初恋物語です。

MP

でも、やがて高安の女に浮気する在原業平。妻の紀有常の娘が、夜中に龍田山を越えて行く業平を心配する和歌を詠むのを、業平はこっそり聞く場面です。


いやあ、楽しかったです。
「伊勢物語」は、和歌物語なので、様々な和歌が登場します。

色々な和歌が展示されていましたが、結構知っている和歌が出てきます。
何で知っているのだろうと思っていたら、「ああ、能に出ている」からだと気が付きます。

例えば、伊勢物語第23弾「筒井筒」に出てくる和歌
「筒井筒 井筒にかけしまろが丈 生ひにけらしな妹みざる間に」
「比べこし振分髪も肩過ぎぬ 君ならずして誰かあぐべき」
「風吹けば沖つ白波龍田山 夜半にや君がひとりゆくらん」
など、全部能「井筒」に登場します。
「井筒」は他にも第4段の「月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」など、色んな和歌が登場します。

第9段「八ツ橋」の和歌
「唐衣着つつなれにしつましあれば はるばるきぬる旅惜しぞ思ふ」
は、能「杜若」に出てくるし、

第9段4「東下り」の和歌
名にしおはば いざ言問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと」
は、能「隅田川」に出てきます。

能「小塩」のクセは和歌の宝庫
「春日野の若紫の摺衣 忍の乱れ限り知らずも」(第1段)
「陸奥の忍もぢずり誰ゆえに 乱れ染めにし我ならなくに」(第1段)
「武蔵野は今日はな焼きそ若草の 夫も籠れり我もまた」(第12段)
他にも、前述の「唐衣」の和歌など、次々に伊勢物語の和歌が出てきます。

他にも「伊勢物語」に直接関係ない能でも、例えば第50段「行く水に数書く」に出てくる
「行く水に数書くよりもはかなきは 思はぬ人を思ふなり」は、
能「水無月祓」に出てきます。

この和歌が展示の絵に描かれているのを見て、「ん? 聞いたことあるぞ、そうそう水無月祓に出てくる和歌だ!!」と分かると、なんだか嬉しくなってきます。

和歌以外にも、例えば伊勢物語の第1段「初冠」の冒頭
「昔、男」、初冠して、平城の京、春日の里に、知るよしして狩りにいにけり」
は、「杜若」のサシに出てきます。

また、能「雲林院」のクセに出てくる「芥川をうち渡り」は、第6段「芥川」であったかと気づいたりと、いろいろ勉強になりました。


謡曲15徳というものがあります。
「謡曲を稽古すると、こんな得ですよ」というものがまとめられています。

その中に「習わずして歌道を知る」というのがあります。

私はまさにそれを実感しました。
能の謡をそらんじているおかげで、知らず知らずのうちに様々な和歌を知ることが出来ています。そして、伊勢物語や源氏物語を読んだ時、どれだけその知識が役に立っていることでしょう。



kuwata_takashi at 22:00|PermalinkComments(0)

2026年03月15日

インドから香港から、日本の能楽堂に集合

Messenger_creation_4E9D402C-0E37-4BE6-AFC3-645383AED402

観世能楽堂にて、香港人の演出家の演劇が上演されました。
その演劇に、7年前シンガポールの演劇学校で能を指導したインド人と、今年香港で指導した香港人が出演するので観に行きました。


今年1月、香港で能のワークショップ参加者と飲んでいた時です。

「私、3月に銀座の観世能楽堂の公演に出演します」

その方は、ニーナと言って、日本大好きの香港人です。香港の善竹十郎先生の狂言ワークショップにも参加していたので、狂言の発表会に出演するのかと思いきや、現代劇に出演すると言っていました。
他にも、広東オペラ、中国の伝統武術、日本の伝統舞踊、インドのクーリヤッタムなど、多国籍・多文化の役者で演じられる演劇にだそうです。

日程をみたらちょうど空いている日だったので、ぜひ観に行くよと約束しました。

その後香港で、シンガポールの演劇学校の卒業生と飲んでいたら、「3月にレミットが日本の演劇に出演するらしい」という話を聞きました。レミットは、7年前に教えた卒業生で、インドの古典演劇であるクーリヤッタムの役者です。

よく聞いたら、ニーナと同じ演劇に出演するようです。
「そうか、彼女が言っていたクーリヤッタムの役者とは、レミットのことだったんだ」
私は驚愕しました。なんて世界は狭いんだろう。

シンガポールで能を指導したインド人と、香港で能を指導した香港人が、東京の能楽堂で行われる演劇に一緒に出演する。

何てことでしょう。こんなことって、あるんだろうか。

image_large

4OF3pykm162026050202

演劇は、香港人の演出家・アタ・ウォン・チュンタット氏による意欲的な作品。

アタ氏は日本に留学していたことがあり、その時に狂言を学んだそうです。
日本の伝統演劇に魅せられ、その後香港に善竹十郎師などを招いて、自分の劇団員には狂言や日本舞踊などを稽古させているそうです。

この演劇には監修として善竹十郎師もかかわっているそうです。当日、善竹十郎師にもお目にかかりました。
色んな事がつながっている、観世能楽堂での公演でした。


一方同じ時期に金沢の能楽堂で、やはりシンガポールで7年前に能を指導したインド人の役者が現代劇に出演するという連絡がきました。


Messenger_creation_0FCE772A-FAF0-4A05-87D1-5A2019167976

Messenger_creation_40B0217B-C8FA-4BA1-A6E2-6F533393532C

何という偶然でしょう。
その日は、私は東京で公演があり金沢へ行くことが出来ませんでしたが、公演後しばらく日本に滞在するというので、この観世能楽堂の公演に一緒に行かないかと誘ったら、彼は驚愕しました。

このインド人はプラジットといって、現在マルタ島に拠点を置いて演劇活動をしています。
レミットとはシンガポール演劇学校では同級生でしたが、レミットが自分と同じ時期に東京の能楽堂での演劇公演に出演することは知らなかったそうです。

プラジットは他に予定があったそうですが、レミットの舞台を見逃すわけにはいかないので、急遽東京に来てくれました。

Messenger_creation_F923EA61-354B-4EA8-9755-1BB3E6912674

それにしても、何ということでしょう。

そもそも、能楽堂で現代演劇が上演されることが稀なことです。
しかも、外国人の演出家による多国籍の役者による公演となれば、たいへんに珍しいことでしょう。

そのたいへんに珍しい公演が、同じ月に金沢と東京で開催される。
これは、奇跡的なことです。

しかも、その公演のどちらにも、シンガポールで教えたインド人の同級生の役者が出演している。
さらに、香港で教えた役者も出演している・・・・

もう、奇跡を超えた何かです。
それを人は運命と呼ぶのかもしれません。

運命に導かれた縁で、東京で再会した、インド人のレミット、プラジット、香港人のニーナ。
楽しい夜でした。

終演後は、再会を祝して銀座で飲みました。
シンガポールの演劇学校では、宴会のことをタイガータイムと言います。
私が、「宴会」を英語でどう言っていいかわからないので、シンガポールの有名なビール・タイガービールを飲む集まりと言うことで「タイガータイム」と呼んだらそれが定着したのです。
それ以来、代々の学生が「先生、今日は稽古の後タイガータイムしましょう」と普通に言ってきます。

銀座でのタイガータイムの場所は、銀座ライオン。
Tiger Time at Lion

Messenger_creation_9291C716-8818-4443-A5A7-B79E20AA1D21
(銀座ライオンの文字が逆になっているので、写真が反転していると思います)


kuwata_takashi at 22:00|PermalinkComments(0)

2026年02月23日

ヤンゴンから 2

golden-temple-259800_1280-1

予定していた三公演が終わり、19時の飛行機まで少し時間があります。
大使が、私たちをヤンゴンが誇る世界遺産のパゴダ(寺)であるシュエダゴン・パゴダへ連れて行ってくださいました。

ご覧の通り、何処を見ても金色・金色・金色
PXL_20260221_094805992
PXL_20260221_094850955.MP

この巨大な塔は、いわゆる仏舎利塔です。お釈迦様の髪の毛が安置されているそうです。
100メートルの高さを誇り、周りには60もの金ぴかの仏塔や廟で囲われています。
塔の一番上のには、76カラットのダイヤをはじめ、数々の宝石が埋まっているそうです。宝石の合計は2000カラットほどあるそうです。とんでもない豪華絢爛なパゴダです。

PXL_20260221_095057106

パゴダ内には、映画「ビルマの竪琴」で見た僧侶が歩いています。
PXL_20260221_095036849
僧侶もスマホで写真を撮るほど、圧巻の景色です。

PXL_20260221_093027191.MP

荘厳な景色に見とれていましたが、そのうちミャンマー市民の格好が気になりました。

みんなロンジーというミャンマーの民族衣装を着ています。
昨日の大使館のレセプションでは多く見かけました。たぶん、日本の着物と一緒で正装の時に着る伝統衣装なのかなあと思っていました。
しかし、街中では普段着として男女問わずみんな普通に着ています。

PXL_20260221_093031190

PXL_20260221_095704178.MP
同じ柄のロンジーですが、民族ごとに固有の柄があるそうです。

PXL_20260221_095706710
かと思うと、若い女性は思い思いのカラフルなロンジーを着てオシャレしています。
PXL_20260221_095921425.MP

現地の旅行会社の方に、お土産としてロンジーをいただきました。
試しにはいてみると、これが快適。
高温多湿のミャンマーにはもってこいの服です。

何せ、腰に布を巻くだけです。簡単に着れるし、涼しいし、動きやすい。
これは、手放せません。
日本でも履いてみようかなあ。


ミャンマーは2021年に起きた軍事クーデターによる内戦が続きます。
欧米諸国は軍事政権を認めずに、経済制裁を続けています。
日本も例外ではなく、輸入品がほとんど入ってこない日々だそうです。

何だか、恐ろしく殺伐とした国を想像していましたが、実情は全く違いました。
治安は良いそうです。

確かに、他の東南アジア諸国でよく見かけるスリやひったくりをするため路上にたむろしている怪しい集団は全く見かけません。

野犬がやたら多い気がしましたが、野犬に施し(つまりエサ)を与えると功徳をつめるということで、市民が積極的に食べ物を与えているそうです。だから、野犬もやたら人懐っこい。

人々は、本当にみんな純粋で温かい。
仏教の教えが人々の心に深く刻まれているようです。数々のおもてなしを受けて、とてもやさしい気分になりました。

大変ハードなスケジュールでしたが、ミャンマーに来て良かったと心から思います。
さあ、これから日本へ帰ります。
自分でも信じられませんが、明日は東京で若竹能。能「賀茂」と「百萬」の地謡を謡います。


ところで、午前中の日本人学校でのワークショップは、学校関係者以外に一般のお客様もいらしていました。
ミャンマー人の他に、在住の日本人も多くご来場くださいました。

終了後、お客様に能面を見せながら談笑し、写真を撮ったりして現地の方と交流していたところ、一人の日本人が話しかけてきました。

私のプロフィールを見て、
「あなたは福山市出身ですか、私もそうです」

そう言って渡された名刺を見ると、某有名商社の社員の方でした。
高校の同級生に何人か、そこの商社の社員がいるので名前を挙げたところ、

「ああ、○○はサッカー部の後輩です」

「ん!? ということは、同じ高校ですか?」

伺うと、広島大附福山の3学年上の先輩でした。私が中学一年の時の高校一年です。
3学年上の先輩の話や、当時の先生の話で盛り上がりました。

まさか、ヤンゴンで高校時代の話で盛り上がれるとは思いませんでした。
先輩とは、今度は東京での再会を約束しました。
PXL_20260221_055210335

思わぬ人との出会いに感謝です。
これも、ミャンマーの人の温かさからくるのでしょうか。



kuwata_takashi at 19:32|PermalinkComments(0)

2026年02月22日

ヤンゴンから 1

PXL_20260221_092843480.MP

1月に香港に15日間滞在していたので、日本での予定がタイトになっています。

そんな中、今度はミャンマーへ出発です。
とは言うものの、現地滞在は1泊2日。前後に機中泊2日です。

ミャンマーへは直行便はありません。バンコク経由で行きました。
20日(金)の0時20分羽田発のタイ航空に乗りバンコクまで7時間。バンコクで5時間近く乗り継ぎ時間があり、ヤンゴンまでは1時間半。
ヤンゴン到着は現地時間の11時頃でした。
日本とヤンゴンには2時間30分の時差があるので、13時間くらい掛かったことになります。

21日(土)の夜にはもう帰りますので、ミャンマーには実質一日半しか滞在しません。
一日半の間に三公演行い、その前後に13時間の飛行機移動です。

22日(日)の朝に東京に着くと、午後1時より若竹能です。私は「賀茂」と「百萬」の地謡を謡います。
20日から22日までの3日間で東京とヤンゴンを往復して4公演5番組に出演。

自分で書いていて、何だか訳の分からないハードスケジュールです。
ここまでの強行スケジュールは、初めてです。

ちなみにヤンゴンの日中の気温は、35度。恐ろしく暑いです。
しかも、電力事情があまり万全ではなく、何処もあまり冷房が効いていません。


20日は11時に到着した後、21日のワークショップ会場の下見と打ち合わせを行い、昼食をはさんで在ミャンマー日本大使公邸へ向かいます。

20日は、大使公邸にて天皇誕生日を祝うレセプションです。
その中で、能のイベントが行われました。


PXL_20260220_095155608

PXL_20260220_091852830

海外の日本大使館では、天皇誕生日をナショナルデーと定め、大使館主催で様々なイベントを行い、現地の政財界の方と交流するのが通例となっているようです。
昨年は、シンガポールにて在シンガポール大使館主催のレセプションに参加しました。

実は観世喜正先生と在ミャンマー日本大使は、高校大学を通じての同級生という間柄。かなり親しい間柄であることから、このイベントは実現いたしました。

レセプションの後は、大使公邸のプライベート空間。つまり大使が普段生活しているところへ招待され、食事をごちそうになりました。
友達関係でなければ、大使のプライベートの居間など入れません。

大使ご夫妻も、私たちもネクタイと上着を脱いで楽な格好で楽しく食事を致しました。


ホテルに帰って、シャワーを浴びて即ベット。
さすがに疲れ果てました。行きの飛行機内で少し寝ただけで、東京からヤンゴンに移動してすぐに公演です。
泥のように眠りこけました。

翌朝は8時にホテル出発。何だか今、何処にいて何をしているのか分からなくなってきます。

着いたところは、ヤンゴン日本人学校。

PXL_20260221_061658275.MP

入り口にはALSOKの方が警備し、学校内は日本語で溢れています。
ワークショップ会場となるホールは、どう見ても日本の小学校の体育館です。PXL_20260221_025935675.MP

ステージの横にある校歌のプレートまであります。
PXL_20260220_060345865.MP

能面など展示し、雰囲気は日本の学校公演と何ら変わりません。
PXL_20260221_025926872.MP

日本人学校の生徒さんたちに、簡単な能のパフォーマンスを見ていただき、能の謡や型や摺り足など体験してもらいました。

お昼までワークショップを行い、その後ヤンゴンの有名レストランに移動します。

PXL_20260221_005513468
池にそびえる宮殿のような雰囲気ですが、中はレストランです。

PXL_20260221_074839350.MP

レストラン内には立派な舞台もあり、ミャンマーの伝統芸能を見ながら食事ができるレストランです。
そこで、やはり能パフォーマンスをいたしました。

三公演終えて、ヘトヘトになるかと思いきや、結構元気。

ミャンマーの人たちは素朴で温かく、いろんなところで大変な歓迎をうけ、気持ちの良い2日間でした。



kuwata_takashi at 23:30|PermalinkComments(0)

2026年02月01日

香港から2026 11

PXL_20260201_043746132


今日は15日ぶりに日本に帰ります。
スタッフとワークショップ参加者数人にお見送りしていただいて、香港空港の出国手続きをしました。

この後、ちょっとしたミッションがあります。
ワークショップ参加者の中に、バーでバーテンをしている人がいました。
その方は、今日はちょうど空港のイミグレーションを抜けたところのブースで特別出店をしているそうです。

「先生、ぜひ寄ってください」
私も、必ず行くと約束しました。

さあ、そのブースを捜そうと思って気が付きました。
「香港空港には第1と第2ターミナルがあるけど、どっちか聞かなかった」
私がいるのは第1ターミナル。その時点で、確率2分の1です。

さらに、香港空港は想像以上に大きな空港です。
まあ、アジアを代表するハブ空港なので当然なのですが。

あちこち探しまわりましたが、どこにもいません。
「まあ、しょうがないか。後であやまりのメッセージを送ろう」
と思ってたら、彼の連絡先を聞いていないことに気が付きました。

「あらあら、どうしようもないなあ。歩き回って疲れたし、お腹もすいたし、あきらめよう」
と思った矢先、

PXL_20260201_043619351
見つけました。

向かって左側が彼です。
彼は、居合や殺陣をやっていて、大変な日本びいきのナイスガイです。

嬉しい再会です。

彼に特製のジンとカクテルを、何杯もおごっていただきました。


最後に、美味しいお酒をいただいて香港を後にします。

彼からは、店の特製ジンと特製カップをすでにお土産としていただいておりました。
「無名氏」と言って、サムライに因んだ名前だそうです。
せっかくなのでもう一本買いました。

日本で大事に飲もうと思います。
MP



kuwata_takashi at 19:42|PermalinkComments(0)

2026年01月31日

香港から2026 10

_DSC7520

能ワークショップ「風姿花傳 能劇大師班」を終えてホッとする間もなく、翌日は今回の香港滞在のもう一つの目玉がありました。

その名も「粤劇泰斗與能劇大師跨文化對談」
広東語は全く分かりませんが、漢字を見ればなんとなく意味が分かります。

粤劇の泰斗(巨匠)、および 能劇大師(私のこと) 文化を跨ぐ 對(対)談
ということでしょう。

粤劇と能劇との異文化対談。これは面白そうです。
現に、申し込み制の定員はすぐに埋まったそうです。

_DSC7257

対談の相手は阮兆輝という方で、日本で言えば人間国宝クラスの粤劇の巨匠です。
粤劇にとどまらず、テレビドラマや映画などでも活躍している香港の有名人です。
会場に集まったほとんどの方は、阮兆輝師の話を聞きにきています。

とは言うものの、私も能の代表として対談する以上、恥ずかしい真似は出来ません。
能の面白さを紹介すべく、張り切って臨みました。

まず、能のことをほとんど知らないと思われる会場の方に、能の説明をします。
能面を見せながら、丁寧に説明しました。

f551aa85-6e25-44f0-a99c-add3944c6652

本当は能の映像を見せたかったのですが、香港では公共の場で映像を見せる場合、手続きが大変なのだそうです。

私の右横に居る方が、広東語の通訳です。この方には、この後の打ち上げまで一日お世話になりました。


香港は、とても親日です。
人口750万人ほどの香港ですが、年間日本に250万人もいらっしゃるそうです。
単純計算で3人に1人が訪日しています。

そのことから分かるように、日本にたいへんに興味をもってくださっています。
アニメ、音楽、映画、ドラマなどの日本文化の人気はかなりのものです。

最近では、映画「国宝」が大ヒットだそうです。
司会者の方が、「映画「国宝」を見た人どれくらいいますか?」と聞いたところ、3分の2以上の方が手を挙げていました。

対談の中で、「国宝」の話も出ました。

司会者を務めていらっしゃるのは、「流白之間」のスタッフです。
普段はラフな格好をしているのに、ビシッとスーツを着ています。

さすがに緊張しているようですが、そんな中、首尾よく阮兆輝師と私に話題を振ってくださいました。
私も最初は緊張しましたが、阮兆輝師が上手に盛り上げてくださるので、徐々に饒舌になってきました。
能の特徴、修業時代の思い出、今後の課題など、様々な話を致しました。


後半は、お互いに実演を交えながらそれぞれの古典芸能の特徴を比べました。

MAX_1857


f4e3d02e-4812-42d2-8b04-10f0fe63a070


MAX_1840

MAX_1876

たいへんに盛り上がりました。

_DSC7472

フィナーレは、スタッフもステージに上がり、記念撮影です。

私にとっても実り多き対談となりました。

阮兆輝師とは、「今度は日本でこの対談をやりたいね」とお話ししてお別れしました。
日本で出来たら、面白いでしょうね。


夜は、香港最後の大宴会。
シンガポールの演劇学校の一期生であるアンディや、マカオ在住の3年前の卒業生も駆けつけてくれました。
a75fde92-53a4-4b13-b9ce-872fc005fa14

名残惜しいけど、今回の滞在はこれで終わり。

次回は、もっと大きなことが出来ると良いね。
そんな前向きな話をして、最後の夜は更けていきました。



kuwata_takashi at 23:30|PermalinkComments(0)

2026年01月30日

香港から2026 9

605779839_1412588847545602_2197204963394129518_n

香港の能のワークショップ「風姿花傳 能劇大師班」、大好評のうちに幕を閉じました。

最終日は、10日間の総仕上げとして発表会を開催しました。
全員に、「吉野天人」と「経正キリ」の仕舞を舞ってもらいました。

わずか10日間で、「経正キリ」まで稽古するのはかなりハードトレーニングでしたが、参加者はみな頑張ってくれました。

昨日と今日のリハーサルを通じ、みるみる上達していきます。
やはり目標があると稽古に対する意識が変わってきます。
人前でパフォーマンスをするというのは、やはり特別なことです。


金曜日の21:15開始という遅い時間でしたが、発表会にはそれなりにお客様もお見えでした。
参加者の友人や家族、また2年前のワークショップに参加していた懐かしい面々も来てくださいました。

623861172_10162055850551746_8956674299775441625_n

けっこう様になっています。

着物を持っている参加者も多くいたので、華やかな舞台となりました。


発表会の終演後は、近所のバーに移動して打ち上げ大宴会。
いやあ、盛り上がりました。

でも、毎回のことなのですが別れは寂しいです。

二週間、毎日稽古に明け暮れた日々。とても楽しく、充実した日々でした。

幸い、このワークショップ「風姿花傳 能劇大師班」は、好評のようでして次の開催も期待できそうです。

近いうちの再会を約束して、メンバーたちとお別れしました。


kuwata_takashi at 23:30|PermalinkComments(0)

香港から2026 8

PXL_20260129_122406798

「風姿花傳 能劇大師班」も大詰め。9日目を終えました。
昨日までの8日間で「船弁慶クセ」「吉野天人」「経正キリ」の3曲の仕舞を仕上げました。

参加者たちは、驚くようなペースで覚えていきます。

参加者のほとんどは役者やダンサーなので、吸収が早い。
また身体能力も高く、初心者にとっては複雑な動きもすぐ出来るようになります。

また、声も立派でローマ字で作った謡本を片手に、なかなか良い声で謡います。

謡や仕舞という能の基礎技術は、ほかの演劇や舞踊とそんなに変わらないのでしょう。
それは、毎回シンガポールの演劇学校でも思います。

最終日の10日目には簡単な発表会を致します。
どんなことになりますでしょうか。


さて、今日は能の大事なエッセンスとして、能面の体験をしました。

体験講座などで、「能面を着けてみよう」などといった能面体験はよくあります。
そんな表面的な体験では意味がありません。

既に構えもすり足もキチンと稽古しているこのワークショップの参加者なら、良い経験となることでしょう。

最初に、能面の説明をします。
種類や効果などなど。

そして、能面を着けるのあたっての心構えと作法を説明します。
「能面は、能役者の命であり魂がこもっている。神が宿るともいわれます。くれぐれも丁寧に扱ってください」
参加者は、心して能面を取り扱っています。大事な精神です。

PXL_20260129_122919737

いざ、能面を着けて実際に仕舞をやってもらいました。


PXL_20260129_123939216.MP
この写真のように、バラバラの動きです。

お互いの動きが見えないので、四苦八苦。

それでも、体験が進むと徐々に慣れてきました。


PXL_20260129_123941851.MP

PXL_20260129_124635146

PXL_20260129_125315317

参加者にとって、良い体験となりました。

ワークショップの初回に能のビデオを見せました。
「能役者は何気なく、飛んだり跳ねたりし、違和感なく動いている。それは、たいへんに難しいことなのですよ」

私が説明すると、皆大きくうなずいていました。

9日目の後半は、発表会のリハーサル。
それぞれ課題も見えてきたことと思います。

あと一日です。しっかり準備して本番に臨むことでしょう。


kuwata_takashi at 12:23|PermalinkComments(0)

2026年01月27日

香港から2026 7

PXL_20260126_033027361.MP

日曜日もワークショップはありません。
昨日の阮兆輝師との夕食で感銘を受け、また粤劇が観たくなりました。

ネットで検索して、高山劇場というところで粤劇公演を見つけました。

この劇場は、2年前に地元の人に連れて行っていただいた劇場です。
ちなみに2年前は、こんな劇を観ました。
DSC_0569

2年前は、本格的な粤劇でしたが、今回は「新秀展演」という題名で推察されますが、若手の発表会です。
しかし結構人気があるようです。
夜の部開演30分前に劇場に着きましたが、1000人以上収容できる大きな劇場で、3階席しか空いていませんでした。
PXL_20260125_112704741.MP

本格的な粤劇というよりは、粤劇の一幕(だいたい20分から30分位)を、若手が次々に発表するという上演形式です。
若手のエネルギッシュな粤劇を7演目も見ることが出来ました。

粤劇の表現の特徴は、美しい歌唱にあります。高く澄んだ声は大変耳に心地よいものでした。
また、指の表現や袖の使い方など独特の所作も多く、美しい所作につい見とれました。

先日の阮兆輝師との夕食にて粤劇の演技の特徴など伺いました。鑑賞において、たいへん参考になります。

言葉は全く分かりませんでしたが、全く退屈せずに7番見続けました。

能と同じように言葉がわからなくても、歌や舞踊を観て楽しめるのが歌舞劇の良さです。
これば対話劇だとそうはいきません。
台詞が分からないと、たぶん退屈でしょうがないでしょう。


終わった後は、カーテンコール

MP

観客への挨拶の所作もぎこちないのが、いかにも若手という感じです。

その後、指導している先生方も舞台に上がってきました。

広東語が分かりませんが、たぶん今日の演技の講評を述べているようです。
そして優秀な役者は、表彰もされていました。
MP

MP

しかし、この勢ぞろいの舞台を見て何だか違和感。。。。

そうです。先生たちの服装です。
みんな、ダウンや厚手のコートを着ています。

前の記事で、香港の人はたいへんに寒がりと書きました。
実際に寒いのです。

この国には暖房というものは存在しません。
劇場内は、換気のためなのでしょうかなぜかクーラーが効いています。たぶん送風なのでしょうが、常に冷たい風が吹いています。

外の気温は15度くらいあるのでそんなに寒いわけではないのですが、むしろ室内の方が寒く感じます。
観客も皆コートを着たまま鑑賞しています。

冬でも室内の方が寒いというのが、不思議な感覚です。

以前、薄着で外出した時のことです。
バスを待っている間、思いのほか寒いのです。寒さに震えていましたが、まあ、バスに乗れば大丈夫だろうと思っていたら、バスの中の方が寒かったということがありました。

東京ではありえません。外はどんなに寒くても、電車やバスの中は暑いくらいです。


また、香港はヨーロッパ式で夜の時間を楽しむ風潮があるようです。
ヨーロッパは劇場は夜9時開演なんてざらにあります。
以前、スペインで薪能をしたときは、開演夜10時でした。

「今回の公演は、夜7時30分開演で、若手の発表会だからすぐ終わるだろうなあ。たぶん9時くらいには終わるだろうから、その後ゆっくりビールでも飲みながら夕食だ」

こんなつもりでいたら、終演はなんと11時過ぎ。
寒さと空腹にジッと耐えていました。

観客の年齢層は、おおむね能と同じ感じ。つまり、若い人もいるけどメインは年配の方。
しかし、その年配の方も、コート着たまま普通に11時まで鑑賞しています。

日本のお年寄りは、寒い中で11時まで鑑賞してくれないだろなあ。
そう思うと、香港のお年寄りは元気です。


kuwata_takashi at 15:04|PermalinkComments(0)

2026年01月26日

香港から2026 6

dba74611-526d-450f-891f-ac3a0a5ccdd3
(粤劇の巨匠・阮兆輝師とご夫人と記念撮影)


土曜日は、ワークショップはありません。
流白之間のスタッフと広東オペラ(粤劇)公演を観に行きました。

PXL_20260124_075423038.MP
カーテンコールは撮影しても良いようです。

このブログでは、広東地方の伝統演劇のことを広東オペラと書いてきましたが、地元の人は粤劇(えつげき ユエ・ジュ)と呼んでいます。
また、中国の伝統演劇・昆劇(こんげき)や、北京近辺で演じられる京劇(きょうげき)に対して、広東地方で演じられる粤劇という呼び方がしっくりくるので、以後このブログでも粤劇と書きます。

確かに、京劇のことは英語ではPeking Opera(北京オペラ)と言いますが、日本で北京オペラと呼ぶことは無いですね。普通は京劇と呼んでいます。

粤とは、広東地方を指す言葉です。広東語は粤語と言ってます。


香港の粤劇(広東オペラ)の殿堂「戯曲中心」にある小劇場「茶館劇場」は、定員200人ほどのミニシアター。
昔の粤劇の雰囲気を再現した劇場です。

PXL_20260124_062458148.MP

観客は、お茶と点心を楽しみながら粤劇を鑑賞します。
PXL_20260124_062711758.MP

内容は、初心者のための粤劇講座といった感じです。
ストーリや楽器の解説が広東語と英語でなされたあと、粤劇の一部分を鑑賞するというスタイル。
全部で1時間半ほどのプログラムでした。

広東語と英語の字幕もつくので、初心者にも観光客にも分かりやすい構成です。
能と同じように、粤劇も昔の広東語を使っているので、現代の人は聞き取りにくいそうです。

ちなみに、この戯曲中心には、本格的な粤劇を上演する1000人以上収容する大劇場やホールやホールなどもある、粤劇の一大拠点です。

31日に私もここのホールで講演を致します。

612330625_1418065853664568_8042824307388673690_n


さて夜は、その講演での対談のお相手・阮兆輝師家族と流白之間スタッフとのお食事会です。

水曜日の粤劇の楽屋では、衣装や冠の着け方の実演を見せていただき、たいへんにお世話になりました。
楽屋内での阮兆輝師は、威厳に溢れ周りの方々の敬意もすさまじいものがあります。

それもそのはず、阮兆輝師は日本で言えば人間国宝のような存在です。

ウィキペディアにはこうしょうかいされています。
香港の広東オペラ俳優。「天才」「万能の達人」ともよばれている。名誉勲章、芸術後続賞、銅紫紫星を受賞。いぎりす・ロンドンでエリザベス2世女王の前で南音音楽を披露した最初のアーティストでもある。現在、香港広東オペラ協会副会長を務めている。


こんな偉い方の家族との食事会です。たいへん緊張します。
いつも冗談ばかり言っている流白之間スタッフたちも、さすがに緊張しています。

710c3837-582d-4569-aad2-ebcea0a880cc
私の隣にいる方が、阮兆輝師でその隣が奥様。奥様の後ろにいらっしゃるのがお嬢様とその夫。

なんと、お嬢様のMusette(ムセット)さんは、2年前の「風姿花傳 能劇大師班」の参加者でした。
奇遇なご縁です。
2年前は、きさくな女の子というイメージでした。こんな偉い方の娘だったなんて思いもよりませんでした。

c1ef754f-c7dc-4b9e-9881-2effc385b610

広東語の通訳を間に挟んで有意義なお話をたくさんしました。
能と粤劇の違いや共通点など、いろいろなお話をさせていただきました。

阮兆輝師は、水曜日に楽屋でお目にかかった時とは違い、とてもフレンドリーでした。

日本で話題の映画「国宝」は、香港でも上演され人気が高いそうですが、阮兆輝師もご覧になったそうです。
映画の話から膨らんで、能と歌舞伎との違い、若いころのお稽古方法など、お話しさせていただきました。

夜7時から始まった夕食は、気が付くと11時を超えていました。
楽しい夕食でした。

阮兆輝師から、「阮兆輝カレンダー」をいただきました。
一番好きな写真をお選びになって、それにサインまでくださいました。
PXL_20260126_033113602.MP




kuwata_takashi at 14:54|PermalinkComments(0)

2026年01月25日

香港から2026 5

PXL_20260121_072518228.MP

先日の21日(水)に、「錦田郷十年一届酬恩建
」というイベントに行ってきました。

これは10年に一度、神々への奉納のため、臨時で作った竹の舞台で広東オペラを上演するイベントです。

31日に対談をさせていただく、広東オペラ界の巨匠・阮兆輝師よりお招きをうけました。

とにかく10年に一度の大きなイベントです。会場はすごい人でした。

PXL_20260121_070300665 (1)
劇場の大きさに圧倒されます。

PXL_20260121_075511609
世界最大の竹の建築としてギネス世界記録に認定されているそうです。

内部はこんな感じ。
PXL_20260121_081243981

本格的な広東オペラが上演されています。
PXL_20260121_071429288.MP

特別に楽屋も見学させていただきました。
PXL_20260121_083319436
楽屋の仕切りも竹。

PXL_20260121_082936712

緞帳や背景の幕を吊るバトンも全て竹製です。

特別に舞台袖の特等席で鑑賞させていただきました。
PXL_20260121_085130512

長い髭の威厳のある王様が阮兆輝師です。出番を待つ佇まいにオーラがあります。

PXL_20260121_073342466.MP

劇場の外には数々の屋台でにぎわっています。
PXL_20260121_074221017
屋台では定番のたこ焼き(日式章魚小丸子)もありました。
PXL_20260121_074212746.MP

10年に一度の素敵な舞台に立ち会えた幸運を喜びます。

多謝。



kuwata_takashi at 12:00|PermalinkComments(0)

2026年01月24日

香港から2026 4

PXL_20260122_141440245

香港での能ワークショップ「風姿花傳 能劇大師班」も、5日間が終了。
はや半分終わりました。

稽古は順調で、3曲目の「経正」は、サムライの舞だというと、興味津々。
楽しんで太刀を抜く型などやっています。

さて、上の写真に着物を着ている女性が写っています。

今回のワークショップは見事に日本文化が大好きな人たちが集まりました。

参加者の中に、日本舞踊や茶道を習っている人が多くいます。
善竹十郎・大二郎師が去年香港で行った狂言ワークショップに参加した人もいます。

他にも、日本の殺陣や居合を習っている人、日本語の先生などもいます。

PXL_20260121_143305293

3年前シンガポールの演劇学校(ITI)で指導した香港人の学生の、ヨーヨーとマンイックも参加しています。
能が大好きと言ってくれます。
再び能が学べることをたいへんに喜んでいます。



気が付いたら、参加者は自主的に持っている着物を着始めました。

ジェシカという方は若柳流日本舞踊の名取と聞いて驚きました。
香港では日本舞踊が結構流行っているそうです。
「うちの先生は少なくて、弟子は50人くらいしかいない」
などと言っています。いや、すごく多いですね。

若柳流名取も10~20人ほどいるそうです。
名取試験は、日本まで受けに行くようです。
PXL_20260122_144258886
ジェシカは着付けも習っているらしく、浴衣の畳み方を他の参加者に指導しています。

他にもメイという方は表千家の茶道師範だそうです。
PXL_20260122_144302429
綺麗に着物をたたんで風呂敷に詰める姿は、決まっています。さすがお茶の先生です。


MP
狂言と日本舞踊を習っているキーナと、殺陣を習っているデビットは、袴を丁寧にたたみます。

稽古場では日本語が飛び交います。


ワークショップも半分終わったので、金曜日の稽古終了後、参加者達と飲みに行きました。
ワークショップは22:30までやっています。着替えてスタジオを出たらはや夜の11時。
そんなに飲み会には来ないかと思ったら、多くの方が参加しました。

80b91e47-7990-4a42-afe9-53b0bea5dab0

シンガポールでも香港でも、お酒の席では英語で話さなければならないので、けっこう大変です。

しかし、今回は心配無用。日本語がしゃべれる人がかなりいます。
日本語で会話が始まり、日本語が分からない人は会話に入れないという不思議な現象が起こりました。
いつもは、英語の会話に入れなくて困っているのですが、今回は逆でした。

バーのオーナー(たぶん)の娘さんも、日本語を勉強していて日本が大好きだそうです。
カウンターにいた娘を呼んできて、日本語で挨拶していただきました。

オーナーからドリンクのサービスもありました。

多謝。



kuwata_takashi at 13:29|PermalinkComments(0)

2026年01月23日

香港から2026 3

PXL_20260118_103724568.NIGHT

このところ、日本ではたいへんな寒波に見舞われていると聞いています。
日本海側では記録的な積雪だそうです。

そのすさまじい寒波は、香港にも押し寄せています。
記録的な寒さだそうです。
Screenshot_20260122-232858

と言っても最高気温は14度位はあります。

しかし、私はかなり寒がりですので、結構寒く感じます。
冬用のセーターやコートなど持ってきていなかったので、薄手のモノを重ね着してなんとか過ごしています。
香港には暖房というものが存在しないので、結構寒いです。ホテル内やバスは、湿気対策のため下手すると冷房がかかっています。
今朝は10度を下回っていましたので、暖房なしだと結構寒いです。

しかし、香港の人は私に輪をかけて寒がりです。

突然、ダウンや厚手のコートにマフラー手袋で完全装備。
みんな「スキーにでも行くんですか?」って恰好をしています。
ずっと暖かい気候なので、香港人は寒さには本当に弱いようです。

でも、この寒さはすぐ終わります。来週にはまた20度超えの日々に戻ります。
何だか、香港の人たちが「寒い! 寒い!」と興奮しながら厚着しているのも、短い冬を楽しんでいるようにも見えます。



kuwata_takashi at 14:00|PermalinkComments(0)

2026年01月22日

香港から2026 2

MP

香港での能楽ワークショップ、順調に進んでいます。

このワークショップは、2週間(10日間)の能のトレーニングです。
能の謡と仕舞をみっちり稽古しています。

このワークショップを企画しているのは、ウィリアムという方が主に運営している「流白之間」という演劇スタジオです。

ウィリアムは、24年前にシンガポールの演劇学校で能を教えた学生のアンディの弟子です。
アンディから能のことをよく聞かされていたそうです。

またウィリアム自身も能と狂言を見たことがあり、学んでみたいと思ったそうです。

24年前は演劇学校の学生だったアンディは、今では香港の演劇界で大きな影響力のある人だそうです。
そのアンディが能を推薦してくれるのは、とても嬉しいことです。
シンガポールでまいた種が、このように外国で広がっていっていることを、とても嬉しく思います。

PXL_20260122_141440245

今日で4日目が終了しました。
その間に「船弁慶クセ」を仕上げ、今日でおおむね2曲目の「吉野天人」が仕上がりました。
明日は、3曲目「経正キリ」の稽古を始める予定です。

3曲目にいきなり修羅物を稽古するのはかなりハードルが高いのですが、10日間という限られた時間のワークショップなので、あえてハードなカリキュラムを組んでいます。

参加者たちは演劇の役者やダンサーなどが大半なので、とても動きがよいです。
身体能力も高く、声も立派です。
謡も仕舞も、瞬く間に覚えていきます。


シンガポールの演劇学校(ITI)でもそうなのですが、外国人だからといって特別な指導はしていません。日本人と同じように教えています。
さすがに日本語の謡本で稽古するのは難しいので、ローマ字で作ったオリジナルテキストを使用していますが。

いろんなことを教えて、「能って、面白いなあ」と思っていただければ、たいへん嬉しく思います。


kuwata_takashi at 23:00|PermalinkComments(0)

2026年01月18日

香港から2026 1

605779839_1412588847545602_2197204963394129518_n

今日から2週間、香港にて能の指導をします。

2年前に行った能のワークショップが好評だったので、今回また招待されました。
主催は、流白之間という演劇スタジオです。他にも様々な演劇ワークショップを行っています。

ワークショップの名前は
「風姿花傳 能劇大師班2026」
かっこいい名前です。どう読むのか分かりませんが、漢字を使っているので意味は分かります。


今回集まった参加者は16人。多くが役者やダンサーで活動している人々です。
今年はどんなワークショップとなるのでしょうか。楽しみです。


今回は、能のワークショップとは他に、広東オペラの役者との異文化対談の講演会が計画されています。
対談のお相手は、阮兆輝という方です。
80歳にして広東オペラの第一線で活躍なさっている巨匠です。

国内外数々の受賞歴があり、現在香港広東オペラ協会の副会長を務める伝説的な役者です。
日本で言えば人間国宝レベルの存在です。

そんな方と対談するなんて、身が引き締まります。
612330625_1418065853664568_8042824307388673690_n

定員は瞬く間に埋まったそうです。
(火速爆満。火の速さで満員になったという意味だと思います)

これから、チョイチョイ香港での様子を書いていこうと思います。


kuwata_takashi at 23:00|PermalinkComments(0)

2026年01月12日

「翁」御礼

59c2c9bf-b83d-4232-acde-8a9a629eede4

令和8年 観世九皐会初会にて、「翁」披きました。

「翁」は、能が今の形に大成される前から存在しています。何もかも普通の能とは異なっています。
ストーリーらしいものはなく、ほぼ儀式です。

舞台上で能面を着け、演者がご神体になるのが大きな特徴です。

7303841d-0ffa-4375-aae1-26a8251e93fd

ご神体になるので、「翁」を演じる役者は、精進潔斎をおこなって身を清める習わしがあります。
私も一週間は精進潔斎をおこないました。

とはいうものの、そんなに厳しいものではありません。
食べるものは、四つ足の動物は食べてはいけないことになっています。
つまり、鶏肉や魚介類は食べても構いません。

また、精進部屋に籠って身を清めます。
我が家の稽古舞台のある部屋をお籠り部屋に定め、そこで寝起きしました。

一連の精進潔斎のことを総称して「別火(べっか)」などと言います。
穢れを避けるため、竈の煮炊きや暖炉の火を別の火にておこなうのですが、我が家のコンロはIHヒーターですし、暖房は電気で動くエアコンですので、別火はもはや名前だけ残っています。

でも、「翁」上演中は、楽屋に「別火」でとった火鉢が置かれていたりします。

PXL_20260111_021648045

当日は、朝風呂にて身を清め、下着や肌着は全て新しいものを身につけました。
そして開演の4時間近く前には楽屋入りです。

「翁」のときはとにかく準備が大変なのです。楽屋に「翁飾り」という祭壇がしつらえられます。

PXL_20260111_021639241

そして、開演の3時間前には、「翁膳」という食事を千歳の演者と共に別室にていただきます。
赤飯や鯛のお頭付きなど、おめでたいものを集めた食事です。これは、神の御下がりをいただくということのようです。
食べた後は、神饌なので手付かずまま、翁が終わるまで床の間にあげておきます。

「翁」の時は、囃子方や後見も、素袍(すおう)上下に侍烏帽子という最高礼装で舞台に臨みます。
そして、開演の15分前には祭壇の周りに身支度を終えた演者が集結します。

盃事神事が始まります。
演者一同、翁飾りに飾ってある洗米を口に含み、塩を身体にふり、お神酒をいただきます(といっても、ゴクゴク飲むわけではなく、口に含む程度です)。
そして、火打石で舞台と演者を清めます。

「翁」と「道成寺」の時は舞台を清めるために開演前に橋掛りで後見が火打石を切っているのを見るかと思います。あれを、楽屋では全ての演者に対して行っているのです。

そこまでやると、さすがに厳粛で神聖な気持ちになります。

幕の前に立った翁は、心中で「天下泰平・国土安穏・五穀豊穣」を唱え、ゆっくり「お幕」と発します。

こんな状態で開演するのが「翁」です。
橋掛りをゆっくり運んでいるとき、なんだか普通と違う感覚でした。

一言では言い表せないのですが・・・
「何か普通じゃない」状態で舞台に入っていきました。
ee4a8a09-4e87-48e6-aabf-74b90e1afb1b

今思うと、たぶん何かが降りてきていたのだと思います。

終演後、何人かのお客様から「いつもと声が違った。とても響いていた」と言われました。
実は私も、謡いながらいつもと声の響きが違う気がしていました。

何か通常ではない感じで演じていました。

「翁」の舞の部分は、無我夢中のうちにあっという間に終わりました。
8e51ee07-0599-4dab-b2e1-e61f0572b01a

ひと月前に稽古能2日前に申合と、既に二度演っているので本番はずいぶん余裕がありました。
ややこしい小鼓との絡みも落ち着いて出来ました。

何だか、物事があまりに客観的に進んでいく感じがしました。

物事が上手くいくことを「神がかる」なんて言います。
この日の私は、文字通り「神様が(身体に)かかっている」状態だったように思います。一種のトランス状態とでも言いましょうか。
こんなことは初めてです。
b6ccf50b-644a-4cf4-b7d5-7195bfe56d73



終わった後、しばらくは何だか「ボーっ」としてしまいました。
何もする気が起こらず、楽屋でひたすら呆然と座っていました。

「ずいぶん疲れたな」などと思いましたが、今思えば「神がかり」の状態がなかなか抜けなかったのだと思います。

その日は一日中「ボーっ」としていました。


撮影 駒井壮介
無断転載を禁じます。 


kuwata_takashi at 16:34|PermalinkComments(0)

2026年01月10日

「翁」 前日

img20251220_14354395

いよいよ、「翁」前日となりました。

「翁」は、普通の能とは何もかも違います。
能というより、神事に近いものです。
ストーリーというものはなく、天下泰平・国土安穏・五穀豊穣を祈念する儀礼をおこなっているかの如くです。

「翁」の時は、楽屋に「翁飾り」という祭壇を飾ります。
そして出演者全員、開演15分前くらいに鏡の間に集まり、身を清めます。
塩を振り洗米を口に含み、お神酒をいただきます。火打石で身と場を清めます。

楽屋内は、何とも言えない厳粛な雰囲気に包まれます。


翁の演者は、舞台上で翁面をつけて神体となります。
それが故に、翁をつとめるものは決まった作法で精進潔斎を行います。

私は現在、まさに精進潔斎の真っただ中。
身体が清らかになっています。

明日は、清廉な気持ちで翁をつとめます。


いつも、演目にちなんだお菓子をくださる方から、このような素敵な最中をいただきました。
1768010827514

食べるのがもったいないですね。



kuwata_takashi at 11:33|PermalinkComments(0)