2020年07月

2020年07月19日

シンガポールの演劇を観る

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私が能の指導に行っておりますシンガポールの演劇学校で、演劇公演がありました。

この学校は、1年生と2年生は様々の基礎的なトレーニングをし、3年生は演劇公演を中心に実践的なトレーニングを行うカリキュラムとなっております。

その基礎トレーニングの目玉としてアジアの古典演劇を学びます。
必修科目は、日本の能、中国の京劇、インドのクーリヤッタム、インドネシアのワーヤン・オンです。

私はその能の講師をしております。

3年生は、年三回ほど卒業公演を行います。みんな能を教えた学生達なので、愛着があります。

彼らが行う卒業公演は是非とも見たいのですが、さすがにシンガポールへわざわざ出かける訳にはいきません。
たまたまシンガポール滞在中に公演があったこともありましたが、ほとんど見たことありません。


ところが、昨日行われた卒業公演は、オンラインでの公演だったのです。
シンガポールも、ただいまコロナ禍により、学校の授業はオンラインが中心だそうです。

観客を入れての演劇公演も、なかなか出来ない状況のようです。
その影響で、卒業公演もオンライン公演となったのです。

お客様の前で上演できる機会が失われた3年生は、たいへん残念な事態であると思います。
無念の思いでいる3年生の心情は、同じ役者としてよくわかります。

ただ、日本にいる私にとっては、オンラインで彼らの卒業公演を見ることが出来ることは、嬉しいことです。


彼らの卒業公演、興味深く観ました。

やはり皆で集まって演劇の稽古することは難しいのでしょう。
公演は全て一人芝居の形で行われました。

それぞれが、テーマを決めて20分ほどの短いパフォーマンスを行いました。
人によって、語りが中心の劇や、歌や踊りが中心の劇など、それぞれの個性が見えて面白かったです。

去年、能の稽古をしたときに感じたそれぞれの演劇的なスキルや、性格など、パフォーマンスによく表れていて面白いものですね。

2年間の基礎トレーニング積んだ彼らの演技は「さすが」とうなるばかりです。
声は通るし、動きもダイナミック。
また、感情表現もしっかりとしていました。

能の授業で、謡や仕舞に四苦八苦していた彼らのことを思い出しました。
そんな彼らの立派な姿に、ジーンときました。
もう、彼らは立派な役者となりました。


公演は、学校のスタジオで収録されております。
見慣れたスタジオの風景、また小道具として使われている椅子なども馴染みがあり、とても懐かしかったです。

終わった後の、座談会も含めて3時間ほどの公演は、あっという間に終わりました。
最初は、パソコンで演劇を観てもどうかなあ、と思っていましたが、とても楽しめました。

東京の自宅で、シンガポールで行われている演劇公演を、リアルタイムで観ることが出来るなんて、凄い時代になったものです。

この学校には、半年後の来年1月に能の指導に行く予定ですが、このコロナ禍ではどうなるか分かりません。
本当に、一刻も早い収束を望むばかりです。


kuwata_takashi at 19:17|PermalinkComments(1)

2020年07月12日

5ヶ月ぶりの九皐会

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本日、2月以来の九皐会定例会でした。3月から6月は中止または延期となりましたので、実に5ヶ月ぶりの九皐会です。

我が身に振り返ってみても、能公演に出演したのは、3月末以来です。
実に、3か月半ぶりに紋付を着ました。

3月には冬用の合わせ紋付を着ていましたが、この度、夏用の麻の紋付を箪笥から引っ張り出しました。

上記の番組を見ていただけばよくお判りかと思いますが、矢来能楽堂としても、お客様と出演者の安全を第一に考え、様々な対策を講じました。

とにもかくにも、能舞台に立てることが純粋に嬉しかったです。

これからも、様々な工夫を講じながら、徐々に公演は再開されていくと思います。
やはり我々役者は、舞台に立ってなんぼです。

ともすると、以前は連日続く舞台公演の数々に嫌気がさすこともありました。
そんな自分を、全力で叱ります。

今日感じた「純粋な喜び」
これこそ、舞台人として絶対に忘れてはならないことだと思います。

これまで以上に、一つ一つの舞台を大切につとめていきたいと思います。


kuwata_takashi at 23:00|PermalinkComments(0)